トスカーナ州アーカイブ

2011.04.30

アンジェリーナで久しぶりのワイン講座

3か月に1回開催している、プランタン銀座本館2階「サロン・ド・テ アンジェリーナ」でのワインと料理のマリアージュを楽しむワイン講座。

3月は計画停電の影響で、営業時間を短縮していたので、開催を見送りましたが、4月、希望者が10人集まり、営業時間も通常に戻ったので、再開することにしました。


テーマは、「春のうららかな空気を楽しみながら・・・」にしました。心落ち着かない日々が続いていますが、ちょっとリラックスして元気になりましょうよ、という企画です。今回は初参加の方が3人いらっしゃいました。

 

ワインリストは次の通りです。


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2002 カドリーユ・クレマン・ド・ロワール ブリュット(ラングロワ・シャトー)
IGP ペイドック・トゥールーズ・ロゼ(ドメーヌ・ピッチニーニ)
2008 ブルゴーニュ・アリゴテ(ドメーヌ・ピエール・モレ)
2008 メルキュレイ・ラ・フランボワジエール(ドメーヌ・フェヴレイ)
2008 DOCボルゲリ ポッジォ・アル・ジネプリ(テヌータ・アルジェンティエーラ)

 

すべてのワインは、プランタン銀座地下2階のワイン売場でそろえました。

 


2011042102.JPG最初の泡は、ロワールの名門、ラングロワ・シャトーのヴァン・ムスー。現在、シャンパーニュのグランメゾン、ボランジェの傘下にある名醸蔵で、評価も高い!

 
「カドリーユ」とは、ロワール地方のソミュール地区にある陸軍乗馬学校主催の競技会の名前だそう。

 

収獲はすべて手摘み。シャンパーニュと同じ製法で造られ、4年間じっくり寝かせています。深い黄金色で、きめの細かな泡が繊細。ハチミツ、バタートースト、クレームブリュレ・・・。厚みのある味わいが魅力的でした。シュナンブラン50%、シャルドネ30%、カベルネフラン15%、カベルネソーヴィニヨン5%のブレンド。

 

 


合わせた料理は、プロシュートのオマールエビとカニの詰め物、プチサラダ添え。


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2011042104.JPG2番目は、春の季節に味わいたい色も華やかなロゼワイン。地中海沿岸・ラングドック地方の西、60キロほど内陸に入ったミネルヴォワの造り手です。

 

設立は1990年と比較的新しいのですが、シラーを使ったスパイシーで引き締まった味わいで人気上昇中のドメーヌ。


エチケットがショッキングピンクで、かわいらしいのも特徴です。

このロゼも、グルナッシュとシラーが主体。果実味が豊かで、スパイシーなニュアンスが楽しめました。

 

 

 


料理は、赤ピーマンのムース・ペルノー酒のジュレとウニ添え、桜のクリームチーズのパン詰め、タイの赤飯詰め・笹葉蒸しの3点盛り。


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2011042107.JPG3番目のアリゴテは、造り手に注目です。

 

ムルソーの名門、コント・ラフォンは、長年、メタヤージュといって、別の栽培家に畑を貸し、収穫したブドウを分け合ってワインを造っていました。その畑の多くを1980年代後半まで栽培していたのが、このピエール・モレ氏でした。最高峰モンラッシェを含む4ヘクタールの畑です。造り出されるワインの評判も高く、その腕をかって醸造長として迎えたのがドメーヌ・ルフレーヴでした(2007年まで)。

 


モレ氏が自らの畑で造るビオデナミ100%。酸味が先行しがちなアリゴテも、彼の手にかかると、こんなにも洗練され、豊かなミネラルと樽の香りと溶け合ってクリーンでエレガントな味わいになるのかと、ちょっと驚きでした。

 

料理は、ツブ貝のブルゴーニュ風、子海老のパスタ巻きとともに。

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2011042109.JPG 4番目は、ジョセフ・フェヴレイのコート・シャロネーズ地区のモノポール(単独畑)です。

 

老舗ドメーヌのクラシックなスタイルは、ピノノワールの繊細さを生かしつつ、熟成のポテンシャルを感じさせる安定感があります。

 

 

 

 

 

 

 

料理は、ウナギとタケノコのデュエット、フォアグラ添え。ウナギには赤ワインが合いますね。

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2011042111.JPG 5番目は、イタリア・トスカーナの赤を選びました。

 

トスカーナのボルゲリといえば、サッシカイアやオルネッライア? それと並んで、最近大注目がこのテヌータ・アルジェンティエーラです。


アンティノリが資本参加し、また、ボルドー・サンテミリオンのシンデレラワイン、ラ・モンドットで知られるステファノ・ドゥルノンクール氏もアドバイザーとして参加しています。

 

穏やかな果実味とやわらかな酸、こなれたタンニン、そして樽のニュアンスもバランスよく感じられ、スパイシーな肉料理が恋しくなりました。

 

 


合わせた料理は、仔牛のタラの芽・アンチョビ詰め焼き、カレーの香りを添えた古根(ショウガ)ソースで。

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デザートには、ハーフグレープフルーツとハチミツのパフェ。

 

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今回、参加した皆さんの一番人気は、最初の泡、カドリーユ クレマン・ド・ロワール。それから、ドメーヌ・ピエール・モレのアリゴテ、最後のボルゲリも評価が高かったです。
 

 

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2010.02.04

リニューアルした新生「ラ・ボンバンス」で

10日間ほどのご無沙汰です。
お酒はいろいろいただいていたのですけれども、年末、突発的に左肩周辺に痛みが走りまして。

あらら、四十肩?五十肩? 十数年前に患ったムチウチ症の悪化? それとも・・と、整体やら整形外科の病院やらをいろいろ渡り歩いた結果、現在、電気鍼治療でようやく快方に向かっている次第です。

 


ブログを書き始めると、どうも根をつめてしまうので、しばらくお休みしようかなとも思ったのですが、美味しいニュースをぜひお伝えしたい衝動に駆られました!


1月半ばにリニューアルオープンした西麻布の「ラ・ボンバンス」のお料理です。


部下の送別会で予約をしたら、忍者部屋みたいに「ええっ! この壁の奥にこんな空間があるの!」といった驚きの個室に通されて、最初から参加者のテンションも上がりっぱなしでした。


1月最後の週末のメニューは、


新酒粕のスープ野菜の沢煮仕立て

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紅白胡麻豆腐 車エビ山葵醤油和え

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・豆(天豆でしょうか?)の塩茹で+カワハギ肝すし+紅白まゆ玉飾りtheピーナツ~墨(カラスミです!)+子持ち若布と生うに+牛ロースの焼きおにぎり+ケヅリブノドサ(逆から読んでください!)


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1月30日の茶碗蒸し

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ユリネが入ったふんわり茶碗蒸し。フカヒレ、フォアグラ、それに黒トリュフがいっぱいです。

 

寅福

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トラフグを無駄なく使ったさっぱりサラダです。

 

29料理 伏見唐辛子と新じゃがふぃー

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じゃがふぃーは、ジャガイモのコンフィだそうです(料理長の駄洒落はますます乗ってきた感じ!!)

切り干し大根と刻んだ奈良漬と一緒にお肉をいただくと、後味がさっぱり。

 

佐渡ヶ島のアンコウ鍋 

 

10013007.JPG下仁田ネギと白菜・春菊、それに嫉妬(やきもちと読みます!)入り。とってもあったまります。


旬野菜の一皿

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ギンナン、ニンジンなど「ウン」がつく野菜たち、メが出るクワイ、熊本の塩トマト、シントリ菜と干しえびのお浸し、わさび菜、そしてチヂミホウレンソウ。

 

福福福福福・・・・・・・・∞

 

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お待ちかねのフグの雑炊。無限大に続く「福」に、参加者それぞれがお願い事を託しました。

 

定番の白いコーヒーゼリーと黒ゴマいっぱいのソルベ

 

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さて、合わせたワインですが、


10013011.JPGNVル・レーヴ ブラン・ド・ブラン(ドメーヌ・カーネロス)
2006シャサーニュ・モンラッシェ レ・シャリエール (ドメーヌ・ルネ・ルカン=コラン)
2006マガーリ(ガヤ)
1999アロース・コルトン(ルモワスネ)

泡と赤2本を持ち込ませていただきました。

 

最初の泡は、「ル・レーヴ」=夢。シャンパーニュの名門テタンジェがカリフォルニアで造る限定発売のブラン・ド・ブランです。テタンジェ社長が若きころに抱いていた夢を実現させた一品で、今回の主賓の新たな旅立ちをお祝いして、選びました。ライチやパッションフルーツなど南国のフルーツの香りにトースト香が加わって、繊細かつエレガント。

白のシャサーニュは、岡元料理長からのプレゼント。小規模家族経営のドメーヌで、とっても丁寧に造られたきれいな白でした。

さて、主賓の「赤ワインが飲みたい!」とのリクエストにこたえ、旬の和食素材を邪魔しない2本をセレクト。
「マガーリ」は、イタリア語で、「そうだったらいいのに!」という願望を表す言葉。メルロ50%、カベルネソーヴィニヨン25%、カベルネフラン25%。酸はやわらかく、程よい渋みがあって、さすがバランス重視のガヤのワインでした。
飲み頃を迎えるまで巨大なカーブで寝かせてから出荷しているルモワスネ。適度な深みのあるピノが、和牛にもアンコウにも、ほんとよく合いました。


ちょっとセンチメンタル気分になる送別会ではあるけれど、夢と希望がいっぱいの旅立ちを皆でお祝いする楽しい会になりました。

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2009.07.27

1990 ブルネッロづくし

知人が毎月主催しているワイン会の今回のテーマは、1990年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノの飲み比べ。
最近すっかりイタリアにはまっている私は、メールでお知らせが入るやいなや、即申し込みました!

場所は、神田のワイ・ヴィラージュ。

 

イタリア旅日記の連載もちょうどトスカーナを後にしたばかりなので、ここで閑話休題。

味わいの記憶が残っているうちに、この素晴らしい出会いをご紹介しておきます。

 

ワインリストは、次の通りです。

 

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1)NV アグリパール ブラン・ド・ブラン レ・セット・クリュ
2)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(テヌータ・フリジアリ)
3)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(バンフィ)
4)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アジィエンダ・アグリコーラ・ラ・トーレ)
5)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ レニーナ(ピエーヴェ・ディ・サンタ・レスティテュータ )
6)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アルジャーノ)
7)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(シロ・パチェンティ)
8)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ウゴライア(リジーニ)
9)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ヴィーニャ・ディ・ピアンロッソ (チャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナ)

 

スイマセン、後から気づいたのですが、9)のブルネッロを並べるのを忘れていました。

この中で、一番高価なのにぃ・・・。

 

ところで、この人気イタリアDOCGワインについて簡単なおさらいをしておきましょう。

 

ワイン好きなら、一度は聞いたことのある名前、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。


濃いルビー色で、熟成するとともにガーネット色に変化していきます。

プラムやアーモンドの個性のある香り、凝縮した果実味、アルコール分は高く(12.5%以上)、タンニンもしっかりしているので、力強いけれども独特の柔らかさの印象が残る赤ワイン。

 

赤身肉やジビエ料理に合うといわれ、私も大好きなイタリアワインの一つです。

 

本日のお料理は、こんな感じでした。

 

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ホタテのスモークのサラダ仕立て・レモン風味、

フォアグラとトリッパのソテー・バルサミコソース、

豚白モツと野菜の煮込み風ペンネ、

牛ハラミのロースト・キノコの赤ワインソース。


内臓好きなので、特に、モツの食感とペンネの歯ごたえ、さっぱりした味わいが気に入りました。

 

ブルネッロの歴史は比較的新しく、今から140年ほど前、新しいブドウ品種の誕生に始まるといいます。


モンタルチーノは、トスカーナ州シエナの南東50キロ、標高500メートルほどの丘陵にある小さな街。

14世紀には、シエナ共和国の要塞として栄えました。

古くから岩がちな土地で、石灰分が多い粘土質の石灰質土壌です。

 

そんな街で、地元に農場をもつクレメンティ・サンティという男が中心になって、キャンティなどに使われていたこの土地原産のサンジョヴェーゼ種の分枝系(クローン)から、サンジョヴェーゼ・グロッソ種(ブルネッロ)を生み出したのです。


石灰質土壌に強く、また、従来のサンジョヴェーゼよりも色が濃く力強い味わいでした。19世紀の中ごろ、140年も前のことです。

 

そして、この新しい品種でワイン造りを手がけたのが、クレメンティの孫にあたる、カテリーナ・サンティとフェルッチョ・ビオンディ・サンティ。

フェルッチョは、ジュゼッペ・ガリバルディ率いるイタリア統一運動に参加、仕事を終えてトスカーナに戻ったとき、ウドンコ病にやられて荒れ果てたブドウ畑に唖然とします。
「愛するトスカーナのために、ブドウ畑を取り戻そう」と心に決め、祖父が開発した品種を徹底研究したそうです。

 

とはいえ、最初からビジネスがうまくいったわけではないようです。

開発から数十年、ブルネッロで造られるワインはパリの博覧会などでも好評で、徐々に人気者になりました。
特に米英で人気を博し、1970年ごろからは投資もスタート。

1980年にイタリアで初のDOCGに認定され、生産量が飛躍的に増えて、90年代にはバローロの生産量を超えるほどに。

 

モンタルチーノ周辺に広がる約千ヘクタールのワイナリーの中で、百か所以上で造っているそうですが、ワイナリーごとに熟成のヴァリエーションが異なり、それもまた魅力の一つなんです!

 

・・・と、長くなりましたが、
改めて、今回の飲み比べの感想を少しばかり。


イタリアワインに詳しい方々も参加していた会でしたが、10人の参加者の中での一番人気は9)でした。

ぴちぴちと若々しいのに、ちょっとローヌのようなワイルド感もあり、セクシーでエレガント。

文句なくおいしい!! なんか、格が違うって印象です。


モンタルチーノの偉大な造り手、カーゼ・バッセで修行したロベルト・チプレッソ氏が醸造責任者を務めるようになって、設備も一新、次々とヒットを生み出しているようです。

と語ってばかりですが、スイマセン、このエチケットも撮影し忘れました。

 

私がほかに気に入ったのは、5)と7)です。

 

09070806.jpg5)は、言わずと知れたガヤが作るブルネッロ。

 

紀元前8世紀から続く伝統ある畑だそうで、とっても厚みのある印象。

ガヤの丁寧な醸造管理が力強さを造り出している、という感じ。

ブルーの手描き風イラストのエチケットも素敵です。

 

もしも出会いがあったら、即買いたい!

 

 

 

09070808.jpg7)のシロ・パチェンティは、もとはモンタルチーノのブドウ栽培農家で、ワイナリー元詰めを始めたのは1988年からだそうです。

 

ボルドー大学で学んだジャンカルロ・パチェンティ氏が最新式のステンレスタンクなどを導入、新しい試みに挑み、いまや「モダンブルネッロの最高峰の一つ」などといわれています。

 

モンタルチーノの北と南の異なる2つの畑のブドウをブレンドしています。
ロバート・パーカー氏は1990年ヴィンテージを92点と評価して以来、今までずっと90点以上の高ポイントを付けてきたとか。

難を言えば、ちょっとまとまり過ぎ、ですか。

私は、はねたブルネッロが好きなので。

 

09070807.jpgもう一つ気になっていた6)のアルジャーノは、スーパー・トスカンの「ソレンゴ」で知られるワイナリー。

 

500年以上も続く伝統の造り手です。

サシカイア、ソライア、ティニャネロなどのハイパー・タスカンを手掛けたジャコモ・タキス氏もコンサルタントとして参加しているとか。

 

酸はまろやか、タンニンも滑らかで、樽熟成のバニラ香も豊かで、おしゃれな造り方の印象です。

でも、ちょっとおとなし過ぎ?

 


いずれにしても、

8本のブルネッロにハズレがまったくなく、マーヴェラス!!! でした。

 

1990年ヴィンテージのポテンシャルの高さを感じさせる会でした。

 

それにしても、この会を主催するFさんの段取りのよさと人集め、声かけの上手さ、

ワイン調達担当のIさんの的確なセレクト眼に、今回も脱帽! です。

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2009.07.24

イタリア縦断の旅から~その4

イタリアのワイン産地の中でも世界的に最も知られているトスカーナへ。

中世の文化都市シエナの郊外にあるサンフェリーチェ社を目指します。


トスカーナ州は、さらに北のピエモンテ州と並ぶ、DOCG、DOCワインの宝庫。

トスカーナからウンブリアにかけての一帯は、紀元前8世紀にはエトルリア人がワイン造りをしていたという伝統ある地域でもあります。


思えば、30代の初め、休暇でシエナに住む友人を訪ね、その友人の紹介でキャンティを訪問したのが、私にとって初のワイナリー体験だったのでした。

とはいえ、「おいしい! おいしい!」と、何杯もグラスを傾けたことしか覚えていないのですけれど。


さて、トルジャーノからシエナに向かう途中、ヴァルディキアーナという高速道路の出口近くのアウトレットモールでお昼休憩。

 


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ランチには、バールで、チェリートマトがいっぱい載ったフォカッチャと冷たいビール。

 


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高級ブランドというより、イタリアのお手ごろブランドの衣服から、下着、コスメ、台所雑貨など70店舗近くが大集合のアウトレットでした。


リゾート仕様のオーガンディーのチュニックを見つけたので、70%オフにひかれて衝動買い!
今回の旅では。ワイン関連以外は買わないつもりだったのですが・・。早くも決心が緩みます。

 

シエナに向かう道はまっすぐです。

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ゆったりとなだらかに続く緑の丘陵の風景を楽しみつつ、この景色は中世のころからそれほど変わっていないのかもしれないな、と悠久の時の流れを思いました。

 

09060329a.jpg糸杉の道をしばらく走ると、サンフェリーチェ社が経営するシャトーホテル「ボルゴ・サンフェリーチェ」に到着。

 

サンフェリーチェは、714年から続くという古い畑でしたが、1978年、イタリア最大の保険会社RASの手に渡り、その豊富な資金力により、事業を拡大しています。


モンタルチーノのカンポジョバンニ農園の買収、マレンマ地方のペロッラ農園の買収、豪華な宿泊施設の経営など、ビジネスは成功しているようです。

現在210ヘクタールを所有、ワインやオリーブオイルのほか、トスカーナ地方特産のキアーナ牛の飼育もしているのだとか。 

 

 

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まずは、広いホテルの敷地内をツアー。

ボガオさんが案内してくださいました。

 

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醸造所を見学して、

 

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いよいよテイスティング。
オリーブオイルをたっぷりかけたパンをお供にします。

 

 

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ワインリストは、以下のとおり。

1)2008 ヴェルメンティーノ (マレンマ・トスカーナIGT)

2)2007 ペローラ (マレンマ・トスカーナIGT)

3)2006 DOCGキャンティ・クラシコ

4)2005 イル・グリッジョ (DOCGキャンティ・クラシコ・リゼルヴァ)

5)2006 プニテッロ

6)2004 ヴィゴレッロ

7)2004 カンボジョヴァンニ(DOCGブルネロ・ディ・モンタルチーノ)

 

 

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ヴェルメンティーノは、スペインからコルシカ島を経て、イタリアに伝わったといわれる品種。

トスカーナ州の北、リグーリア州サンレモあたりに植えられたようです。海の近くの風通しのいい乾いた丘陵地が好みのよう。

麦わら色で緑がかった色調。フレッシュでフルーティーで、わずかに苦味が残るのがアクセントに。

ソーヴィニヨンブランが15%ほどブレンドされているそうです。 

 

 

 

 

09060339.jpgこちらは、同じトスカーナのマレンマ地方で造られた赤ワイン。

地元のサンジョヴェーゼに、シラー、メルローを3分の1ずつブレンドしています。

 

シラーのコクのある甘みが加わって、果実の味わいが増しているように思いました。

 

 

 

 

 

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おなじみのキャンティ・クラシコ。

キャンティの歴史は古く、14世紀ごろに始まります。

プラートの街に始まり、フィレンツェの貴族、リカゾリ家によって広められ、さらに、アンティノリ、フレスコバルディ、フリーノ、チェッキなどの貴族が加わります。

 

ベッティーノ・リカゾリ男爵は、この土地に住み、香りのよいサンジョヴェーゼ種、甘みを増すカナイオーロ種、味わいにコクをもあらすマルヴァジア種やトレッビアーノ種を研究、食事に合うブレンドを考案した、というわけです。

これが今日のキャンティの基礎になりました。

その後、リカゾリ男爵は1848年に政界入りし、イタリアの首相になったそうです。

 

キャンティを算出する地域は石灰質土壌や砂利土壌で、ワイン造りに適した気候です。

生産量年間1億3千万本ほどで、DOCG、DOCワインの中でもっとも生産量が多いのです。

生産量の7割が輸出に回されています。

古くからキャンティを造っていた中心地は「クラシコ」と呼ばれて、全体の3割ほど。 

サンジョヴェーゼが主体です。

 

このワインは、酸がきわだち、とっても若々しい感じ。

それにしても、サンジョヴェーゼ=スミレの香り、とよく言われているようですが、

うーん、スミレの香りって思い出せないんですけれど。

   

09060341.jpgこちらは、「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ」。

よりエレガントで、タンニンもこなれ、まろやかに仕上がっています。

最初のビンテージが生まれたのは1974年。

上品な芳醇さをアピールするため、エチケットには、ルネッサンスの画家ティチアーノの描いたLorを採用。

ちなみに、絵のモデルは、ティチア-ノ本人の父君らしいです。

この君主の髪と髭の色がグレーだったことから、「イル・グリッジョ」、つまり灰色の髭と名付けられました。

 

映画「ハンニバル」では、フィレンツェのカフェのシーンで登場、狂気のレクター博士がこのワインを飲んでいるんですって。

 

ところで、「キャンティ・クラシコ」のシンボルマークといえば、ガッロ・ネーロ(黒いオンドリ)。その由来にはこんな言い伝えがあるそうです。

中世の時代、シエナとフィレンツェが領土争いを繰り返していたころのお話です。

両都市の騎士が、日の出を告げる雄鶏の鳴き声とともに互いの国を騎馬で出発し、出会ったところを国境にしようという取り決めをしました。シエナ側は、美しい白いオンドリに美味しい餌をたくさん食べさせ、一方、フィレンツェ側は、小さな黒いオンドリを選んで、餌を与えずお腹を空かせたまま夜を過ごさせました。

その結果、黒いオンドリは空腹のために日が昇る随分と前に時を告げ出し、フィレンツェの騎士の出発はかなり早まったのです。こうして、フィレンツェは、キャンティのほとんどを手に入れ、領土を広げることに成功したといいます。

ちなみに、黒いオンドリは、1924年に発足したキャンティ・クラシコ協会の商標でもあります。

 

以上は、トスカーナの伝統的かつ代表的な品種のワインでした。

 

ところが、この「プニテッロ」は、ちょっと変わっています。09060342.jpg 

 

1981年から、サン・フェリーチェ社がフィレンツェ大学と独自のサンジョヴェーゼ種の共同研究を20年間続た結果、229種類の中から最後に選別したものなのだそうです。

 

長期熟成の品種で、DNA鑑定の結果、今までのものとは異なるまったく独自のブドウであることがわかり、2003年、トスカーナ州の土着品種として認められました。

「プニテッロ」とは、ポニーテールの意味。ブドウの房がこぶし状になっているところから。

濃いルビー色でダークチェリーの香り、タンニンもしっかり、力強いワインでした。
 

 

09060343.jpg 「ヴィゴレッロ」は、トスカーナで最近人気者のスーパー・トスカンの一つです。

 

スーパー・トスカンは、1968年、ピエロ・アンティノリ氏によって提案された「サッシカイア」が草分け的な存在です。

ティレニア海に面したトスカーナ州マレアンマ地方のボルゲリ地区。 現当主ニコロ・インチザ・デ・ロレッタ侯爵の父で大のボルドーファンだったマリオ氏が1944年、ボルゲリの小石の多い畑にカベルネソーヴィニヨンを植えていました。


ピエロ・アンティノリ氏は、ニコロ氏のいとこ。

伝統的で保守的なトスカーナで、カベルネソーヴィニヨンを使った、世界に通じる新しい味わいのワイン造りに挑戦を試みたのです。

1994年に、「ボルゲリ・サッシカイア」という単独DOCを取得。トスカーナ州のワイン造りを大きく変えていきました。

 

さて、この「ヴィゴレッロ」も、「サッシカイア」と同じころから研究されてきたワイン。

2004年ヴィンテージは、サンジョヴェーゼ種45%、カべルネソーヴィニヨン40%、メルロ15%のブレンドだと伺いました。

「ヴィゴレッロ」という名前は、生命力を意味するVIGOREから。

うーん、名前負けしていません!

タンニンしっかりで力強く、のみ応えを感じるワインでした。

こういうワインを飲むと、活力がわきますねえ。

 

09060344.jpg 最後を締めくくるのは、大人気の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」です。

まだまだ濃いルビー色、プラムの香り、力強いけれど、後口がとっても柔らかくって。

 

 

 

 

  

 

 

 

私は、「ヴィゴレッロ」が気に入りました。

売店でさっそく評判のよい2001年を2本購入、ブルネッロの1999年ヴィンテージも購入。

あと10年くらい寝かせたいです。

 

さて、夕食までの時間、広い施設を探検です。

 

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ゼラニウムの赤い花があちらこちらに植えられています。

 

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犬を散歩する人も楽しそう!

テラコッタのそばでたたずむネコちゃんも、しっとりした風景になじんでいました。

 

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教会もあります。

 

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ちょっとベンチで一休み・・・

 

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ブドウを使ったヴィノテラピーの美容スパの施設などを通り過ぎ、奥の方には、ハーブ園もありました。ラベンダーやミントなどなど。

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明るい陽光に誘われて、プールも大にぎわい。

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いったん部屋に戻りました。

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部屋には、うれしいワインのサービスもありました。

 

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そうこうしているうちに、ディナーの時間。

先ほどのプールサイドのレストランで。

 

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09060359.jpg マリネしたサーモンにハーブのレモン風味添え、タリオリーニというちょっと太麺のパスタはセージが練りこまれていて、白インゲンのコクのあるソースでいただきました。

地元産牛肉のサーロインステーキは、ナスのピューレでさわやかな味わいに。

パンがとっても美味でした。

 

 

 ワインは、先ほどテイスティングしたものの中から、

2008 ヴェルメンティーノ

2005 キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ

2004 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

 

 

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デザートは、昨晩と同じく、冷たいセミフレッド。

イタリアの夏のスイーツなのですね。

モスカートワインとパッションフルーツの風味です。

デザートワインは、

2003 ヴィンサント・キャンティ・クラシコ DOC

 

ヴィンサントは、厳選されたブドウを数か月間陰干しし、干しブドウのようになった果実をゆっくり圧搾、小樽による醗酵のあと、5-6年の熟成を経て出荷される、とっても手間のかかったワインです。

トスカーナでは、カントチーニという、アーモンドが入った硬い焼き菓子ビスコッティーとよく合わせるみたいです。

 

このヴィンサントは、ちょっとローズがかったガーネット色。焼きリンゴや焦げたキャラメルの香り。

シェリーのアモンティリャードのような、余韻が残りました。

 

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教会の屋根の十字架のあたりに、月が上っていました。

静かな、静かな、満月の夜でした。

 

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2009.06.24

青木冨美子さんの「映画でワイン・レッスン」

ワインジャーナリストの青木冨美子さんによる「映画でワイン・レッスン」という魅力的な講座が、プランタン銀座の「エコールプランタン」で開かれています。ちょっとお邪魔してみました。


今回のテーマは、「ローマの休日」でイタリアワインを学ぼう! です。
オードリー・ヘップバーン(アン王女役)の際立つ愛らしさ、グレゴリー・ペックの新聞記者役もカッコいい! 大好きな映画の一つです。

 

いただいたワインは、
1)2007 キアンティ・フィアスコ (チェッキ社)
2)2005 キアンティ・クラシコ・リゼルヴァ・ドゥカーレ (ルフィーノ社)
3)2007 ソフィア ブラン・ド・ブラン (フランシス・コッポラ)

 

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ワインのお供は、もちろんチーズ!!

 

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「ローマの休日」で、サンタンジェロの船上パーティーでの大混乱から逃れたアン王女が、彼のアパートで彼のガウンを羽織って口にするのが、「キアンティ・フィアスコ」です。 

 


09062402.JPG気取ったワイングラスなど使わず、日常使いのタンブラーで、水を飲むようにカジュアルに飲んでいます。アイスクリームをなめながら街歩きを楽しんだように、王女には新鮮な体験だったに違いません。

 

フィアスコとは底が丸いフラスコ型ボトルのこと。藁で包まれたこのボトル、以前より見かけなくなったような気がします。藁苞(わらづと)を編む職人が減っているのが要因の一つのようです。


青木先生によれば、フィアスコ型ボトルに付いている紐は、農作業の間に、農夫がブドウ畑にある木の枝に引っ掛けておくのに使われたとか。生活の知恵、なんですね。

チェッキ社は、ルイジ・チェッキ氏が1893年に創設した、トスカーナ地方で最も古いワイナリーの一つ。息子たちが事業を引き継ぎ、かなりの設備投資をして広く世界市場に乗り出しています。


品種はサンジョヴェーゼを主体に、コロリーノ、カナイオーロ。果実味豊かで若飲みタイプのフレッシュな味わいです。


 

さて、教室では、興味深い体験をしました。2つのグラスに注がれた赤ワインの飲み比べをしたのですが・・・


1つ目のワイン、なんかヘン。色調に濁り、腐葉土の匂いばかりが印象に残り、酸が強く、飲んだ後も雑味があって。

そうです。やはり「ブショネ」でした。
なかなかできない体験です!

 

ブショネとは、フランス語のBouchon(コルク)が語源。バクテリアに汚染された状態のワインのことで、通常コルクの汚染が原因に挙げられます。コルクは自然界の植物が素材ですから菌が存在しており、その中に悪性のものがあれば、ボトル内で化学変化が起こってワインの質を変えてしまうのです。ちなみに、飲んでも特に害はないといわれています。

 

青木先生は、ブショネ・チェックの名人で、有名ソムリエさんを負かしたこともあるそうです。ブショネの印象を、「締め切ったコンクリートの部屋に入ったときのホコリっぽい感じ」と表現していました。
もちろん、2つ目のグラスには健全なキアンティが注がれていました。念のため。


 

2番目のワインは、同じキアンティでも、限定畑で厳選したブドウを使った「キアンティ・クラシコ」です。
「キアンティも、クラシコを選べば、まず失敗ありません」と、青木先生。

 

今回いただいたのは、「公爵のためのとっておきワイン」。1890年、時のアオスタ公爵がキアンティを訪問した際、ルフィーノ社のワインに感銘を受けて注文したことに由来する名前とか。

2年間の樽熟成を経ているので、チョコレートのような甘みやローズマリーなどの香りの余韻があって、バランスのいいワインでした。


 

3番目は、イタリアつながりで、マフィアの内幕を描いたフランシス・F・コッポラ監督のナパのワイナリーから。

 

09062403.JPG監督が、愛娘のソフィア・コッポラのために造ったスパークリングワイン。1999年6月に結婚した彼女への贈り物でした。

 

彼女のリクエストは、「シャンパンのようでシャンパンほどガスっぽくなく、値段も高過ぎないワイン」だったそうです。

 

グレープフルーツのような果実味、酸もしっかりしていて、チャーミングなワイン。2007年ヴィンテージは、ピノブラン81%、ソーヴィニヨンブラン12%、ミュスカ7%。最初にリリースされたときは、ピノブランの比率がもう少し低く、ミュスカの比率がもう少し高かったようです。


 

いまは、ストロー付きのミニ缶タイプも発売されています。こちらも瓶入りよりもミュスカの比率を増やしていて、より万人受けしそうな味わい。

私は以前、ロゼタイプ(瓶タイプ)を飲んだことがあります。ピノノワール100%の明るいルビーカラー。フレッシュなベリーの爽やかさが印象的で、冷やしてくいくい。これからの季節にはおすすめです。
 

 

青木先生の「映画レッスン」は、ご好評につき、、エコールプランタンで7月期も続きます。

7月16日(木) 「ニキータ」(違いのわかる男が選ぶシャンパン)
9月17日(木) 「エビータ」(アルゼンチンワインの魅力を探求)
の全2回。いずれも午後7時から。税込11,500円(おつまみ付き)。
受講のお問い合わせは、エコールプランタン(03-3567-7235)へ。


 

また、青木先生の著書「映画でワインレッスン」(エイ出版社)には、映画とワインのステキなマリアージュを楽しめるエピソードがたくさんあって、おしゃれなうんちく好きにはたまりません。

青木先生のブログはこちら

http://non-solo-vino.blog.so-net.ne.jp/


 

というわけで、講座の受講生の皆様も、とってもおしゃれ。ロングヘアでレモンイエローのスーツがお似合いの女性が、青木先生です。

 


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皆様、撮影に協力していただきまして、ありがとうございました!
 
 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)