ボルドーアーカイブ

2011.04.23

ワインブログ再開~東京・広尾の「ア・ニュー」でパーカーが満点をつけたラトゥールを飲む!

 

大・大・大・・・お久しぶりでございます。

更新が滞ってしまったこのブログ、心を入れ替えて再開することにします!!
どうぞよろしくお願いします。

相次ぐ余震で、被災地におかれては気が休まらない日々が続いていると思います。心より皆様の平安をお祈りしております。
 

さて、再開第一弾は、予約が取りにくいフレンチレストラン、東京・広尾にある「ア・ニュー」(私も実際、3度チャレンジして振られました!)で先日催されたワイン会をレポートすることにします。
シェフの下野昌平さんは、「ル・ブルギニオン」のオープン時から携わり、フランスでは、トロワグロやタイユヴァンで活躍、代官山の「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」で3年ほどシェフを務めていました。代官山のお店は自宅近くでもあったので、何度か訪ねたことがあります。


今回のワイン・セレクションは、アカデミー・デュ・ヴァンの奥山久美子副校長。ご自宅のセラーで寝かせた、今では入手困難なボルドーのグラン・ヴァンが楽しみです。

 


 ワインリストは以下の通り。


 2000 Jacquesson Grand Cru Avize
  2007 Puligny-Monrachet 1er Cru Les Combettes  (Etiennne Sauzet)
  2001 Chateau Haut Brion (Pesaac)
  2001 Chateau Margaux (Margaux)
  2001 Chateau Mouton Rothschild (Pauillac)
  1995 Chateau Lafite Rothschild (Pauillac)
  1982 Chateau Latour (Pauillac)

 

2011042002.jpg 最初のシャンパーニュは、アヴィーズ村のビオの自社畑シャルドネ100%で造るブラン・ド・ブラン。  「白ブドウから造られる白ワイン」の意味をもつブラン・ド・ブランですが、シャンパーニュでは、コート・デ・ブラン地区のアヴーィズ、メニル・シュル・オジェ、クラマンなどで栽培されるシャルドネが有名です。ドサージュ(シャンパーニュの甘みを調整する砂糖の量)は3.5㌘(1㍑当たり)なので、かなり引き締まった辛口です。

マグナム瓶だったので、特に凝縮感とバランスが抜群でした。


つい最近、1997年ヴィンテージの通常サイズを飲みましたが、最初の印象は青リンゴやミネラル感が強く、香りはおとなしめだったように思います(時間とともにどっしりした広がりが出てきましたけれど)。やはり、マグナム瓶恐るべし、です。


ちなみに、金属の蓋ミュズレを開発したのもこの老舗メゾン(1798年創業)。ナポレオン皇帝の寵愛を受け、結婚式でも振る舞われた話は有名です。また、エジプト遠征、ロシア遠征にと、皇帝が戦いに勝っても負けても販路を拡大し、ナポレオン3世の時代になっても成長は続きました。1867年のパリ万博では100万本を売り上げたそうです。


合わせて、アミューズ3品。古代米のリゾット、タスマニア産オーシャントラウトのタルタル、ベーコンキッシュ。お皿にアミューズがちょうどよく収まるように穴が開いていて、そこにガラスの小器を差し込みます。

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続いて、桜海老のクルスティヤンとキャビアのサンド。駿河産の桜海老をピューレにしてからぱりぱりのえびせん状に仕立てます。サンドしたサワークリームがやさしい味。


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2011042004.jpg二番目の白は、ピュリニ・モンラッシェ村一級畑の中で芳醇さを誇り、最もモンラッシェに近い味わいともいわれるレ・コンベット。エティエンヌ・ソゼの娘婿ジェラール・ブドは1992年から買いブドウからもワイン造りをしているので、ドメーヌ名は冠していないそうです。2007年のブルゴーニュ白は、寝かせずいま飲んでも、おいしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

料理は、今回私が一番気に入った、冷製白アスパラガスとアワビ・生ハムのコンソメジュレとともに。
ランド産の白アスパラガスは、砂地土壌での露地栽培。茎も太く、独特のえぐみが特徴で、これがとにかくおいしい!! 旬の味を堪能できる幸せを感じます。キャビアが添えられていましたが、こちらはカザフスタン産のベルーガ。最上のものです。お皿に飾られたハーブは、長野産のコウサイタイ。赤紫の茎の菜花です。


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さて、本日注目は、2001年ヴィンテージの3種類のボルドー・グランヴァン。2001年は、「エレガンスの年」ともいわれ、とても上品な味わいが期待できます。

 

コルクの状態も良好です。

 

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2011042008.jpgブラインドでいただきましたが、私が一番おいしいと感じたのは、オーブリオンでした。

メルロ52%(通常37%)、カベルネソーヴィニヨン36%(通常45%)、カベルネフラン12%。メルロの配合が多い分、早く色調が進んでいるようです。チョコレートの甘やかさとエレガントな印象、肉付きもいいです。

2000年が偉大過ぎてかすんでいるけれど、2001年はメルロの年として評価できるのです。

 

 

 

 

 

 

 

2011042009.jpgマルゴーとムートンを比べると、今まで飲んだ印象では、ムートンの方が若干苦手。ムートンというと、色が濃くて、エスプレッソの香りのイメージがあります。若いヴィンテージは固くて深みがイマイチ、10年くらい寝かせると、今度は「もうこんなに老いてしまったの?」というくらいへたり気味。

 

でも、今回のムートンは、ちょっと見直しました。収斂性も強く、時間の変化でこなれていく味わいが楽しめます。ブレンド比率は、カベルネソーヴィニヨン86%(通常77%)、メルロ12%(通常11%)、カベルネフラン2%。

 

 

 

 


2011042007.jpgただ、マルゴーと比べてしまうと、やはりマルゴーに軍配を上げたくなります。

 

オーブリオンよりもさらにチョコレートのイメージが強く、エレガントさに磨きがかかっていました。ブレンド比率は、カベルネソーヴィニヨン82%(通常75%)、メルロ7%(通常20%)、カベルネフラン4%。

 

 

ちなみに、パーカーポイントは、オーブリオン94点、マルゴー93点、ムートン89点。いつもはパーカーの評価とくい違うことが多い私ですが、今回の点数には異論がありません。

 


 

 

料理は、タケノコとフォアグラのソテー・中伊豆ベーコンの泡。こちらも旬の味わいですね。

 

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そして、お魚も赤ワインのシヴェソース。ネギ好きの私はうれしかったけれども、ネギの香りが少々きつく感じました。 


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さて、最後に、1995年のラフィット、1982年のラトゥールをいただきました。

 

 

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2つ比べると、やはり色の違いは明らか。写真ではわかりにくいかもしれませんが、左が熟成が進んでいます。右はまだルビー色で、十数年たった今もまだ若い。

 

 

2011042011.jpg1995年は骨格の年ともいわれます。ラフィットは、カシスの果実味、スギの土っぽさが特徴でしょうか。

 

奥山さんが購入したのは、まだ東京の帝国ホテルでクリスティーズのオークションを行っていたころで、1ケース買いした時の価格は、1本2万円ほど。いえ、私もワイン初心者のころ、1995年のボルドーのグランヴァンをプリムール買いしましたが、今から考えると、驚くほど安い価格だったこと、覚えています。

カベルネソーヴィニヨン75%、メルロ17%、カベルネフラン8%。


 

 

 

2011042012.JPG1982年はボルドーの偉大な年。ラトゥールはミネラルと塩味を強く感じて苦手でしたが、さすが1982年。文句なく、圧倒的なおいしさでした。カベルネソーヴィニヨン75%、メルロ20%、カベルネフラン4%、プティヴェルド1%。

 

1980年代のラトゥールは、生産量を増やして「薄っぺらい感じ」(奥山さん)が多いそうですが、1982年育ちのブドウの力でしょうか。

 

1982年は暑い年で、ボルドー好きの英国人からは酸が足りなくてダメといわれていたのを、パーカーが濃縮感と長熟の可能性を評価。それによって、パーカーは神の舌をもつワインジャーナリストとして、成功を収めます。1982年は、パーカー出世のきっかけになった年でもあるのですね。


ちなみに、パーカーは、1995年ラフィットに95点、1982年のラトゥールには100点をつけています。


 

料理は、肉が続きます。熟成和牛のロティ・トリュフソース。

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デザートは、さくらのパンナコッタ・春の泡とともに。

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アンリ・ジローのロゼと一緒にいただきました。

 

 

 

改めて、本日のワインのラインナップ。並べてみると、こんな感じです。

 

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2010.11.07

「眠れる巨人」を飲み干す会

グラフィック・デザイナーで、ワイン愛好家としても著名な麹谷宏さんの主催で、「眠れる巨人」を飲み干す会というドキドキわくわくするワイン会に参加しました。

場所は、恵比寿のシャトー・レストラン「ジョエル・ロブション」。ボルドー5大シャトーとクリスタルの素晴らしいヴィンテージを、すべてマグナムでいただく、とってもゴージャスな企画です。


いずれも、麹谷さんが自宅のセラーで長年ゆっくり熟成させたボトル。
私は新聞記者時代、企画でセラーをのぞかせていただいたことがあるのですが、それはそれは素敵な地下室で、「私もワインになってここで眠りたい!」と思ったほどでした。

 

ワインリストは以下の通りです。


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 ルイ・ロデレール クリスタル 1994
 シャトー・オーブリオン 1983
 シャトー・ラトゥール 1978
 シャトー・ムートンロートシルト 1976 
 シャトー・ラフィットロートシルト 1970
 シャトー・マルゴー 1967
      (すべてマグナム)

 

2010110202.JPGワインの状態はパーフェクトでした。恐るべし、麹谷セラー!です。
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「クリスタル」は、白トリュフのような芳醇な香りを十分楽しめました。

泡も繊細で口当たりがやさしく、熟成したシャンパーニュの素晴らしさを経験しました。

 

 

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スモーキーな葉巻の印象、スパイシーな力強さを感じる「オーブリオン」、

筋肉質で骨太で偉大なる存在感で迫る「ラトゥール」、

コーヒーのような香りのニュアンス、90年代の華やかさはないけれど控えめでやさしい味わいがかえって愛おしくなる「ムートン」、

シルキーでエレガントで、ブルゴーニュワインにも似たクリアな表情をもち、「これぞ熟成の極致」の声も上がった「ラフィット」。


私は、若いヴィンテージではどちらかといえばアミノ酸の印象が強くて苦手だった「ラトゥール」が、熟成を経ると、こんなにしなやかに素晴らしく仕上がることに大いに感激しました。まだしばらく置けるくらい若々しさも感じました。


16人の参加者の人気投票で、一番だったのは、「マルゴー」でした。
いきいきした酸、凝縮感のある豊かなボディ、繊細さ、甘やかで官能的な誘惑・・・。

「いまだ紫色の力強さを感じる。マグナムの力ですね」と、麹谷さんも「マルゴー」に一票でした。 

 

 

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では、料理もご紹介しましょう。

 

アミューズブーシュは、レモンゼリーにウイキョウの香りのムース、タプナードをのせて。爽やかな味です。

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上品なブーダンノワールはフォアグラと共に。

テクスチャーがとっても繊細なガトー仕立てです。ピスタッチオのメレンゲは焼き菓子風。相性のいいリンゴがアレンジされて、シードルとハチミツのソースとともに供されました、

このブーダンノワールのスタイルはパリのレストランでも流行でした。

 

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パンもいろいろ。昔よりもバリエーションが増えて、楽しい!

アンチョビ入りミニクロワッサンやバジルのフォカッチャ・・・。

 

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帆立貝のポワレは、シチリア産アンチョビのちょっぴり塩味でアクセント。ユリ根のカプチーノは甘さが際立ち、帆立貝との微妙な味のバランスが絶品でした。サルディニア産のフレゴアというパスタはリゾット仕立てに。


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タスマニアのサーモンは低温でゆっくり火入れ。タマネギ、ピーマン、トマト、生ハムなどを炒め煮したバスクの伝統料理ピペラードを添えて。

 

 

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大山地鶏は筒状にして、72度の低温で1時間20分蒸し上げたという料理。とろけるようで、鶏肉の繊維が全然感じられませんでした。エシャロット、無臭ニンニク、ベーコン、小さなチイタケ(かわいい!)などをアレンジした赤ワインソースで。

 

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デザートは、リンゴと干しブドウとクルミのクランブル。

 

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美味しいミニャルディーズ

 

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さて、ボルドー5大シャトーについては、様々な挿話を伝え聞きます。せっかくの機会、麹谷レクチャーを中心に、頭を整理する意味でまとめてみました。

長くなりますが、歴史的エピソードは面白いので、ご興味のある方はぜひお付き合いください。「ワインの女王」(山本博著)も参考にしました。

 

まず、シャトー・オーブリオン。


2010110217.JPG1855年、パリの万国大博覧会の目玉商品として、フランスで最高のワインを出品することになりました。そこで、ボルドー・メドックで赤ワインの格付けが行われたのですが、ラフィット、ラトゥール、マルゴーと肩を並べて、メドック以外から選ばれた唯一のワインが、オーブリオンです。

 

80年代では、82年、83年、85年、86年、88年、89年、90年が素晴らしいといわれています。


16世紀のころは、「ポンタック」の愛称で呼ばれていたそうで、今でもボルドーの古いネゴシアンの間では使われているといいます。

 

当時のメドック周辺は治安が悪く、最初にボルドーワインとして発達したのは、オーブリオンのあるグラーヴ地区でした。ボルドー市議会に勤めていたジャン・ド・ポンタックが妻の持参金として土地を受け取り、以来200年同家の所有になったところに由来しています。


1785年に駐仏全権大使として渡仏した後の米国第3代大統領のトーマス・ジェファーソンは大変なワイン好きで、フランス中のワイン産地を旅しています。ジャフェーソンは、ボルドー赤の中でもオーブリオンが一番米国人の舌に合うと絶賛、ホワイトハウスにも大量に送っています。したがって、ホワイトハウスの晩餐会で最初に供されたフランスの極上ワインは、オーブリオンということになるようです。


その後、1801年に売りに出された時、手に入れたのが、ナポレオンの外相で美食外交の元祖として有名なシャルル・モーリス・ド・タレーラン・ペリゴール。

映画「会議は踊る」では、メッテルニヒをはじめヨーロッパの各国元首を手玉に取った傑物として描かれている人です。お雇いシェフ、アントナン・カレームが作り出した数々の美食には、常にオーブリオンが花を添えたといいます。

このように評判の高いオーブリオンゆえ、1855年の格付けの際に選ばざるを得なかったということでしょうか。


しばらくぱっとしなかった時期もありましたが、1935年に米国カ銀行家、クラレンス・ディロン(息子のダグラスは、ケネディ大統領の財務長官)が買い取り、孫娘でムーシィ公爵夫人であるジョアンが継承。1960年、グランクリュの中で初めてステンレスの発酵タンクを設置するなどして品質が一気に向上しました。

ちなみに、1875年、フランス全土を襲ったブドウの疫病、フィロキセラ対策のために、米国の苗木に接木して凌いだのも、オーブリオンが最初だったとか。米国とはどこか因縁深いワインです。

 

 

 

 お次はシャトー・ラトゥール。

78年は良い年ですが、麹谷さんの娘さんの生まれた年でもあるそうです。

 


2010110218.JPGラトゥールは、ポイヤックの3つの1級シャトー(ラフィット、ムートン、ラトゥール)の中で一番南にあり、また、一番ジロンド川に近い場所にあります。

 

一般に不作とされる年でも、このシャトーが非常に良いワインを生み出すことは定評があり、「これだけ条件が整っていればだれでも良いものができる」と嫉妬心いっぱいにささやかれるほど。「ジロンドの恵み」を独り占めしているのです。


その昔、英国との百年戦争の舞台になったともいわれ、ラトゥールのエチケットには、往時の要塞を物語る塔がシンボルとしてデザインされています。現在でもシャトー・ラトゥールのブドウ畑の中に丸屋根の塔がぽつんと残されていますが、これはずっと後の17世紀に建てられたものだそうです。


17世紀後半、セギュール家が持ち主になり、以後300年近く所有、そのころからメドックのシャトーもグラーヴに追い付くほどめきめき腕を挙げてきて、主に英国の上流階級の間で大ブレイクしました。

 

セギュールといえば、バレンタインデーによく登場するハートのデザインのワイン、カロン・セギュールを思い出します。セギュール家のニコラは、どうやらラトゥールよりも、サン・テステフにあるカロン・セギュールの方にゾッコンだったらしいのです。

 

1960年代になって、このお金のかかる偉大なシャトーを維持できなくなって、英国のピアソン家に売ってしまいます。最近では、1993年にフランス国内で小売業で財を成したフランソワ・ピノーの所有に。グッチやイヴ・サンローランなどを傘下に置くピノーグループは、つい最近までフランスのプランタンも所有していた財閥です。

フランソワ氏はモダンアートの収集家としても知られていて、セーヌ川に浮かぶルノーの工場跡地に美術館を建設する計画を発表していましたが、実務の遅れから断念したとも伝えられています。

 

 

 

次に、シャトー・ムートンロートシルト。

 

2010110219.JPG歴史をひもとけば、18世紀後半、フランクフルトのユダヤ人街の一両替商だったマイヤー・A・ロスチャイルドの5人の息子の成功話から始まります。5人は、フランクフルト、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリで互いに助け合いながら政商として巨額の富を築いで、ロスチャイルド財閥の基盤を作りました。

ロスチャイルド財閥といえば、新橋と横浜間の最初の鉄道敷設や日露戦争、関東大震災後の復興などの融資元として日本との関係も深いですね。


この5人兄弟のうち、有名なのは、3男のロンドンのネイサンと5男のパリのジェームズ。


ネイサンの息子、ナサニエルは、1853年、ボルドーのトップクラスといわれたシャトー・ムートンを買いました。しかし、1855年のメドック格付けでは、第2級に。畑と建物の荒廃が理由でしたが、実際はロスチャイルドの国籍や新参者への反目があったのではないかといわれています。


そして、100年を越す努力の結果、ついに1973年、ムートンは一級に格付けされる時を迎えます。これは、ボルドーのワインの歴史の中でも例外中の例外。

「われ一位なり。かつて二位なりき。されどムートンは変わらず」と、同シャトーは記しています。ちなみに、この時の農業大臣はジャック・シラクでした。


ムートンの大成功の裏には、1923年、20歳でシャトーを任されて1988年に亡くなるまで様々な改革をしたバロン・フィリップ(かなりのプレイボーイだったらしい。でも、ワインはまさに天職だったようで)の存在があります。

特に、他のシャトーにも呼びかけて、いわゆるシャトー元詰めを始めた功績は大きいといわれています。それまでメドックでは、樽のままボルドーのワイン商人に販売され、彼らの手で熟成、瓶詰め、販売されていたのです。

 

ミロ、ピカソ、シャガールなど、著名な画家にモダンなデザインのエチケットを発注したことでも知られています。デザイナーだった夫人の影響もあり、ワインにまつわる美術品の蒐集を始め、シャトーの一角に美術館も建てています。

 

 

 

続いて、シャトー・ラフィットロートシルトです。

 

2010110220.JPG前項でお話したロスチャイルド家5人兄弟のうちフランスを受け持ったパリのジェームズが、1866年、自分の邸宅のあったラフィット通りと同じ名前だから買ったと伝えられています。


もともとラフィットは、先に登場したセギュール家所有の時代に名前を知られるようになり、ルイ15世の愛妾マダム・ポンパドゥールのお気に入りのシャトーでした。


当時、マダム・ポンパドゥールとコンティ王子がフランス最高の畑を手に入れようと競ったことがありました。狙いの的は、ブルゴーニュ。そして、王子の勝ちとなり、自分の名前を付けた「ロマネ・コンティ」を手に入れることに。

 

争いに敗れたマダム・ポンパドゥールは悔しくて仕方がありません。そこで、「これこそ本当のフランスワインの最高峰」としてラフィットを勧めたのが、ボルドーに島流しにあっていたリシュリュー男爵(「三銃士」に登場するリシュリュー宰相の親戚筋らしい)です。

 

男爵は、60歳のときに25歳の姫君と再婚するなど、かなりのドン・ファンでした。久しぶりにヴェルサイユに戻って、ルイ15世から若さの秘訣を尋ねられたところ、「強壮剤として医者からラフィットを勧められた」と答えたそうな。

かくして、マダム・ポンパドゥールはその豪奢な晩餐会の食卓にラフィットを欠かさないようになったといいます。

ちなみに、1970年、72年は、素晴らしい年でした。

 

 

 

最後は、シャトーマルゴーです。

 


2010110221.JPGフランス文化の華、ワインの女王・・・。マルゴーを形容する言葉はいろいろあります。

大戦後、米国の企業がシャトーを買いに乗り出した時、フランス政府は、「シャトー・マルゴーを売るのを認めることは、エッフェル塔やモナリザを手放せというのと同じこと」と、反論したといいます。


ラトゥールには古塔と瀟洒な邸宅があり、ムートンには輝かしい美術館があり、ラフィットにはフェリエール宮から運び込んだ由緒ある家具があります。

でも、佇まいの気品さ、優雅さからいえば、美しく整えられた並木道の奥から姿を現すシャトー・マルゴーの神々しさは群を抜いているのではないでしょうか。

ギリシャ風の円柱を並べたファサードをもつ建物は、典雅で端正。フランスのエスプリとシックさが結晶しているといえましょう。


シャトー・マルゴーの栄光の歴史には、常に女性たちの影があることも特徴です。

 

1960年代後半から評価が落ち出したシャトーを蘇らせたのは、1977年、ギリシャ出身でフランス全土に展開するスーパーチェーンで成功したアンドレ・メンツェロプーロス。当代きっての醸造学者、ボルドー大学のエミール・ペイノー教授に教えを乞いました。

アンドレ亡き後も、妻のローラ、そして娘のコリーヌが引き継ぎ、シャトーは不死鳥のように昔の輝きを取り戻しているのです。
 

 

 

今回の饗宴のテーブルセッティングもおしゃれでした。


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テーブルの中央に並べられたのは、麹谷さんがヴェネツィアで製作しているワインクーラー。

 

手作りなので、色も形も、同じものはありません。

 

グリーン、レッド、ブルー、薄墨色・・・。

 

クーラーの背後に写しこんでしまいましたが、アカデミー・デュ・ヴァン副校長の奥山久美子先生です。奥山先生は、このクーラー、3つも持っていらっしゃるそうです。

 

 

 

こうやって、並べてみると、なかなか壮観でした。

 

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2010.05.15

上海の旅で~その2

上海滞在2日目。


朝食を終えて、早速向かったのが、上海の流行発信基地といわれて久しい新天地の近くにある評判の「グリーンマッサージ」。
友人には、「ええっ、朝からマッサージなの」と若干呆れられましたが、いえ、混み合わないうちがいいかな、と思って。


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足つぼから始まって全身120分で、2800円くらい。

店内は照明を落とし、リラックスできる広い空間。

若いお兄さんでしたが、とっても上手。クリーンで、部屋も落ち着いた造りで、日本人の感覚からすれば、お得な感じでした。


 

さて、体調万全、ランチにGO!


お肌ぷるぷるを目指して、フカヒレ・ランチが楽しめる烏魯木斉南路の「京翅坊(ジンチーファン)」へ。

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姿煮とはいかなかったけれど、濃厚なフカヒレのスープ。

黒酢をかけると、さらにコクが出ます。

薬味はネギとシャンツァイ。

 

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2品目は、アワビか牛肉ステーキが選べて、私はアワビを選択。

とっても柔らかい!

 

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ハート型豆腐・海老のあんかけ。

 

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青菜の炒め物。シャキシャキとした歯ごたえは水菜に煮ていますが、ミーシェンというそうです。

 

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煮卵と牛肉をのせたごはん。

 

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   ワインは、フランス・ボルドー産のヴァン・ド・ターブル白。

フランスGVG公司生産、インポーターは上海万彩貿易有限公司。

辛口のきりりとし味わい、ボルドー独特の醗酵のニュアンスが感 じられます。

 

料理の邪魔をしない手軽なワインですね。

 

最後は、スイカとマンゴーのフルーツで締め。

昼からちょっとぜいたくランチを取って、かなり満足度アップです。

この店には、日本人女性のサービスの方がいて、メニュー選びもラクチンでした。

上海で語学を勉強して、一度日本に戻ったけれども、やはり現地でもう少し力を蓄えようと、今年3月に舞い戻ってきた若きキャリアウーマンです。

15-16歳で、中国の奥地から出て来て頑張って働く妹分をみていると、「ものすごく刺激になりますね」と、言っていました。

 

彼女のおすすめで、このあたりに広がるフランス人租界あとをぶらぶら散歩することにしました。

銀ブラならぬ、シャンブラです・・・

 

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建国西路を東に向かって歩くと、嘉善菜場。市場です。

麺やら肉やらキノコやら魚やら・・・

何でもあります。

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市場を抜けて、てくてく。

日本のゲームソフト(海賊版かな?)は大人気のよう。

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町並みもどこか西欧風です。

 

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高層の高級マンションも建設ラッシュです。

 

不動産バブル(?)、いつまで続くのでしょうか。

 

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「シテ・ブルゴーニュ(ブルゴーニュ街)」と書かれたレンガ造りの門を発見!

 

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1930年に造られたようです。歩高里と書いて、ブルゴーニュですか。

 

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この一角、通り抜けはできませんが、歩くと楽しいです。

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鉄の門には、やはりブドウのデザインが。

今回は発見できなかったけれど、この庶民の生活臭いっぱいの一角にも、いまにワインバーとかができるのではないでしょうか。

 

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さらに、歩きます。

緑の並木がまぶしいくらいステキなのに、張り巡らされた電線が邪魔!

 

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ここは、ネイルサロンだったかな。

バラの花びらでディスプレイ。おしゃれですね。

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クロワッサンやバゲットなど、フランスパンのお店もなかなかの人気でした。

 

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いろいろ立ち寄りながら1時間半くらい歩いたかな?

いま一番注目の田子坊に、いつの間にか到着。

次回は、田子坊のレポートから始めます。

 

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2009.12.10

「ランシュ=バージュ」を楽しむ会で

フランス・ボルドーで、1855年の格付けでは5級ながら、5大シャトーにも匹敵するとの高い評価を得ている「シャトー・ランシュ=バージュ」。「スーパーセカンド」などとも呼ばれていますね。


 

北にムートンやラフィット、南にラトゥールやピションの畑が広がる間の、ポイヤック地区の抜群の位置。アイルランド系移民のリンチ家が所有していた「ドメーヌ・ド・バージュ」を、現在のカーズ・ファミリーが1934年から受け継いでいるのです。


ファミリーのゼネラルマネージャー、ジャン=シャルル・カーズ氏がこのほど来日、南青山のレストラン「ランベリー」で、岸本直人シェフと「カーズ・セレクション」の素敵なマリアージュが実現しました。

 

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父上のジャン=ミッシェル・カーズ氏は「ランシュ=バージュ」の顔、そしてボルドーのワイン文化の語り部としてよく知られている方。「神の雫」にも、にこやかな笑顔で登場しています。


 

今回来日したジャン=シャルルさんはその息子。

ボルドー大学で経営学を学んだ後、フランスの自動車メーカーのブラジル支社に勤務して2年間ほど財務を担当、ブドウ収穫期には里帰りし、ワインメーカーとしての修行を積んできたそうです。


2001年に故郷に戻り、国際セールスのマネージャーを務めながらボルドー大学醸造学部でプロのワインテイスティングの資格を取得。国際感覚を生かしながら、新しいプロモーションのアイデアも豊富です。
 

 

今回の「カーズ・セレクション」のワインリストは次のとおり。
2007シャトー・ヴィラ・ベレール
2006ブラン・ド・ランシュ=バージュ

2004ロスタル・カーズ・ラ・リヴィニエール
2001シャトー・コルディアン=バージュ 
1990シャトー・ランシュ=バージュ

  

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まず、アミューズ・ブーシュは、上のふんわり冷たいムースをすくうと、下から温かいポトフが顔をのぞかせるといった寒暖2つが楽しめる内容。

シャンパーニュは、 NVボランジェ ブリュット スペシアル・キュヴェ をいただきました。

 

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「カーズ・セレクション」のワイン1本目は、

ボルドー・グラーヴのAOC、「ヴィラ・ベレール」。

18世紀後半に建設されたイタリア風ヴィラのようなシャトーの美しさに魅かれて、1980年代後半、カーズ・ファミリーが買収しました。1990年が初ヴィンテージです。

ソーヴィニヨンブランとセミヨンの50%ずつが基本ですが、2007年は白の当たり年で、ソーヴィニヨンがやや多めのブレンドに仕上げているそうです。魚介類との相性もなかなか。


料理は、岩手の寒サバのタルティーヌとハーブのサラダ。50度のオリーブオイルでゆっくり火を通しているので、見た目も魚の青みがいきいきしていました。

 

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2本目のワインは「ブラン・ド・ランシュ=バージュ」。

もともとプライベートに飲むためにわずかな量だけ造っていたのが評判を呼び、一部小売用にも造るようになったそうです。

ソーヴィニヨンブランとセミヨンが45%ずつ、残り10%ミュスカデールが加えられています。

2006年から樽を使う期間を減らし、ソーヴィニヨンブランのフレッシュな酸味をより生かした新スタイルに。ジャン=シャルルさんの自信作。
 

アンポ柿とフォワグラのポワレ マカロンと胡麻のアイスクリームのフリット。デザート感覚で楽しめるお料理でした。

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3本目のワインは、「ロスタル・カーズ」。

2002年にカーズ・ファミリーが買収した南仏ラングドックの畑。

2004年は、シラー65%、カリニャン13%、グルナッシュ12%、ムルヴェドル10%。スパイス、ローズマリーのようなハーブ香に地中海のパワフルな陽光と心地よい風が感じられました。

苗木の植え替えから新規設備の導入まで、徹底的に改革したそうです。

それにしても、ボルドーのワインメーカーは、南仏の畑では、自由になんだかウキウキしながら造っているような気がします。

 

料理は、豚足とオマール海老のガレット 軽く煮たアキテーヌの栗を添えて。スパイシーのシラーは、オマールとの相性もいいことを実感しました。

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4本目は、 「コルディアン=バージュ」。

同名の、ボルドー・ポイヤックにある2つ星シャトーレストランとしても有名。1980年代にファミリーが買収して蘇らせた畑です。

カベルネソーヴィニヨン80%、メルロ20%。

飲みごろの2001年は、チェリーやカシスの果実味がとっても豊かで、全体的にしなやかな印象でした。「あと15年は熟成させてもよさそう」と、ジャン=シャルルさん。


メインの料理は、子羊のマティニョン コーヒーの香るソースをそえて。

 

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さて、トリを務めたワインは、

「ランシュ=バージュ」の1990年。

文句なしの当たり年、でした。

甘いクレーム・ド・カシス、土の下草、タバコ、少しコーヒーのようなニュアンス、適度な渋みもあって、複雑な表情をみせてくれます。

 

88年、89年と、ボルドーは当たり年が続きましたが、「90年は中でも秀でている」と、ジャン=シャルルさんも太鼓判を押しました。「90年は、輝かしい89年をより肉付きよくセクシーにしたもので、ランシュ=バージュが一体何なのかを象徴するボトルといえる。享楽的でありながら知的な興味をかき立てる」と、97点を付けたロバート・パーカーも絶賛です。
 

最後のデザートは、ムースショコラと温かいショコラの組み合わせ。入荷したばかりのトリュフのアイスクリームと一緒に・・・。

 

 

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今年は、イタリア、アルゼンチン、カリフォルニアを周りましたけど、来年はボルドーを再訪したくなりました。

   

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2009.06.18

シャトーマルゴーの誕生年ヴィンテージ

6月のわが「誕生日月間(?)」に開けようと思って用意していたボルドー・グランヴァンの誕生年ヴィンテージを、とうとういただきました!


シャトーマルゴー 1956

 

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そう、あの小説「失楽園」ですっかり有名になってしまったワインです。

 

お願いしたのは、私のお気に入りのフレンチレストラン、東京・白金の「シェ・トモ」で。

市川知志シェフの料理は、西麻布の「レストランW」時代から大好きでした。

まだバブルの泡が消えていない時代、キャビア・ナイトを懐かしく思い出します。

市川シェフは、エコールプランタンでも料理レッスンをお願いしたことがあり、男前の風貌に女性ファンも多いのです。
 

入手してから、かれこれ10年たつでしょうか。

最初は「人生半世紀」を記念してと思っていたのですが、それから、1年、2年・・・。


今年は、食事する3日前くらいにお店にワインを届けて、ソムリエの大芦一人さんが、静かに状態を整えてくれたんです。

2回の引越しをはさみ、ワインの保存状態にいささか不安があったのですが、大芦さんの「いいですよ」の一声にホッと安心。


抜栓はもちろん完璧!

 

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デカンタ後、グラスに注がれた落ち着いたレンガ色の色調、バニラや木、熟したイチジクなど、複雑でエレガントな香り。

 

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マルゴーはどちらかというと、「やさしく女性的」と評されることが多いのですが、グラスに注がれた液体には、エネルギーがみなぎっていて、活力を感じました。

その印象は、最後のチーズをいただく時まで変わりませんでした。


 

実は、1956年というのは、どのヴィンテージ・チャートを見ても、不作の年。ブルゴーニュなど、話にならないということか、点数さえついていないチャートもあるんです。
 

でもでも、今回のマルゴーは◎。

まろやかに熟成しながらも力強さの残る「同い年」のワインに、背筋がピンと伸びました。

 

料理はまず、豚のリエットにタプナードでおいしいバゲットをいただき、お得意定番の「ウニの貴婦人風」。


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前菜はブータンノワール、続いて、季節の有機野菜30種盛り(カボチャとズッキーニのあいのこのようなコリンキィが珍しかったです)。


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季節のポタージュのあと、イタリア・ロンバルディア産の仔豚ちゃん。

 

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きょうは、チーズもしっかりいただきました。木炭粉をまぶしたサント・モール・ド・トゥーレーヌは甘いコンフィチュールが組み合わされて、デザート感覚で。 

 

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大好きなショコラのケーキ。やさしい音色のオルゴールの「ハッピーバースデー」に、ステキなひとときを過ごせました。

 

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皆さんも、誕生年のヴィンテージワイン、チェックしてみてはいかがでしょう。
 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)