2010年3月アーカイブ

2010.03.31

ニューワールドのピノ飲み比べ

更新がしばらく滞りました。


皆さまはお元気にお過ごしでしたでしょうか?

3月半ば、ギリシャと北イタリアの旅から無事帰国したのち、たまっていた仕事やメールを処理し、さて旅行記に移ろうかと思っていたやさきにひどい風邪をひきました。追い討ちをかけるように、寒さがぶり返したせいか、久々に高熱にうなされ、喘息のようなせきが残り、辛かったです。


書きたい!、書かなければならない!

ネタは数多くあれど、手つかずのまま3月を終えそうで、いや、これはいけない!!

というわけで、まずは、3か月に1度開催している私のワイン講座のレストラン実習のレポートから。

この企画、プランタン銀座本館2階「サロン・ド・テ アンジェリーナ」の塩川シェフが、毎回、私がセレクトしたワインに合わせて料理を作ってくれるので、生徒さんの間でなかなか好評なんです。


さて、今回のテーマは、生徒さんのリクエストもあって、「ニューワールドのピノノワール飲み比べ」です。


ワインリストは次の通り。

 

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NVクカトゥー・リッジ ブリュット・キュヴェ
2009ショウ・アンド・スミス ソーヴィニヨンブラン
2008イージー・バイ・エニーラ(エニーラ)
2008モンテス リミテッドセレクション ピノノワール 
2008バルダ ピノノワール(ボデガ・チャクラ)
2007コールドストリーム・ヒルズ ピノノワール
2006クラウディ・ベイ ピノノワール

7種類で、白はたったの1本です。


 

10033102.JPG最初のスパークリングは、南オーストラリア・バロッサヴァレーの淡いピンク色の辛口ロゼタイプ。

 

シラーズ45%、カベルネ33%、コロンバール7%、グルナッシュ7%、セミヨン4%、メルロ2%、ピノ2%。

果実のすっきりした甘みとキレのある酸のバランスがよく、初夏にかけて食事と一緒に味わいたい1本。

 

 

 

 

アミューズは、

杏露酒に漬けてちょっと甘みのあるトマトをモツァレラチーズのスープと一緒に。


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10033104.JPG2番目のソーヴィニヨンの産地は、バロッサヴァレーの南にある冷涼なアデレードヒルズ。

 

1989年、従兄同士のマーティン・ショウとマイケル・ヒル・スミスにより設立されたワイナリー。マーティンは、フライングワインメーカーとしてフランスやスペインなど各地を飛び回り、また、マイケルは、マスターオブワインの称号をオーストラリア人として初めて取得したことで知られます。


ぎゅっと凝縮された梨のような果実味はニュージーランド的、そして、ハーブやアスパラガスの青っぽさはサンセールを思い起こさせるようで、いや、オーストラリアの白ワインは、市場を実にうまくとらえて造っていますね。

ソーヴィノヨンとシャルドネが得意らしいのですが、最近取り組んでいるというリースリングもぜひ飲みたいです。

 


料理は、コウバイ蟹のロワイヤルとウツボのブランシール。

ウツボって、あまり食べませんよね。アボカドとからめてバターで白くふっくら仕上げてあると、アナゴみたいな食感でした。


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10033106.JPG3番目までは、おまけです。

 

以前もご紹介したブルガリアのメルロ。

「ラ・モンドット」で知られるボルドー右岸のスター生産者、ナイベルグ伯爵が手がけるエニーラのカジュアルワイン。

 

ミントの風味、オークの香りが柔らかく、とっても飲みやすい。「このワインでシェフの料理を食べたい」とのリクエストがあり、再びセレクトしました。

 

 

 


料理は、ハンガリー産フォワグラのミルフィユ うるいとシャンピニオンのサラダ添えゴルゴンゾーラソース。

そういえば、ブルガリアも、フランス、ハンガリーに続くフォアグラの産地なんですよね。


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さあて、ここから、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランドのピノの飲み比べです。


生徒さんの投票で人気があったのは、5番目のアルゼンチンと7番目のニュージーランドでした。


10033109.JPGアルゼンチンは、アンデス山脈を抱えるパタゴニアのリオ・ネグロヴァレー産。

年間降水量わずか18センチだとか。

大河と砂漠に囲まれて、昼夜の寒暖差が激しい乾燥した土地で、ブドウはしっかり鍛えられるのでしょう。

 

この造り手は、スーパートスカーナ「サッシカイア」のオーナーの甥っこのピエロ・ロケッタ氏。

フィルターもかけず、徹底した自然派の造り手です。きめ細かなタンニン、しっかり存在感のあるミネラル感は、とても個性的で味わい深いものがありました。

 


10033112.JPGニュージーランドは、モエ・エ・シャンドングループが所有する、南島の北端、マルボロ地区ワイラウ・ヴァレーの1本。

 

赤いベリー系の豊かな味わいに、ドライハーブやスミレの香りの広がりに、タンニンの滑らかな舌触りが重なって、余韻を楽しめるピノでした。

やはり私はこれに1票でした。

 

 

 

 


10033111.JPGオーストラリアの支持も結構ありました。

 

1985年にワイン評論家のジェームズ・ハリディ氏が設立したワイナリーで、オークの複雑な香りとスパイシーさがお好みなら、このピノがおすすめでしょうか。

 

チリは、他の3本に比べると、かなり平板な印象。軽めです。もちろん、きれいに造られてはいるのですけれど。

 

 

 


料理ですが、魚系は、オマール海老と山菜のフリット 桜の手打ちパスタ添え。

早春の味ですね。


 

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お肉は、骨付き仔牛背肉ロースト プロヴァンス風ジンジャーソース。

流行りのジンジャーソースで、風邪が吹き飛びそう!


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で、デザートは、左から、アプリコットのアイスキャンディ風、ジェノバ風バナナパン、マスカルポーネのムース。

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中でも、ジェノバ風バナナパンは大人気。

塩川シェフは、グルメな画家のモネの好物を再現した「モネの食卓」という本の中から、レシピを見つけたそうです。


ニューワールドと一口に言いますが、同じ南半球なのにこうして飲み比べると、違いますねえ。

だから、ワインは止められない!か。


新年度もよろしくお付き合いくださいね。
 

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2010.03.26

真っ暗闇のエンターテイメント

視覚障害者と健常者の交流プログラム

  • 常設されている「ダイアログ・イン・ザ・ダークTOKYO」の入り口

 幼いころ、電気を消してお風呂に入ることが好きだった。ちゃぽんちゃぽんとはねる水面の音、浴槽の木の香り、冷えていたからだが徐々に心から温まってゆく心地よさ……。

 「明るくして、ちゃんとせっけんで洗うのよ」とさとす母の声がするまで、私は、暗闇の中での豊かなぬくもりの時間を子どもながらに楽しんだ。

 そうした闇の中での感覚は、大人になるとともに忘れ去られ、いまはすっかり目や耳に頼る日々である。

 銀座のデパートで働き出して、閉店後明かりが消え、人の気配もない(それでいて、洋服を着た物言わぬマネキンだけがあちらこちらに立っている)真っ暗な空間に身を置くと、暗闇パニックとでもいうのだろうか、楽しみどころか恐怖心だけがわき上がってきた。

 赴任したばかりのころ、残業を終えて、職場から従業員用の夜間通用出口に至るまでの時間がなんと長く感じたことか。いや、あれから5年ほどたついまも、閉店後の暗闇が苦手なことに変わりはない。

 先日、知人の紹介で、「みえない。が、みえる!~まっくらやみのエンターテイメント」というのを体験した。

 東京・渋谷区神宮前に常設スペースを構えて1年になる「ダイアログ・イン・ザ・ダークTOKYO」。

  • 会場は地下にある

 日常生活の様々な環境を織り込んだ真っ暗な空間を、視覚以外の感覚を使って体験する話題のソーシャルエンターテイメントである。参加者は、8人程度のグループになって、暗闇のエキスパートでもある視覚障害者の「アテンド」のサポートのもと、完全に光を遮断した会場に入り、約1時間、暗闇の世界を探検する。

 1989年、ドイツの哲学者アンドレアス・ハイネッケ博士が考案した視覚障害者と健常者の交流プログラムで、20年間にヨーロッパを中心に25か国120都市で開催、600万人以上が体験しているという。

 商品開発のマーケティングやコンサルタントをしていた金井真介さんは、15年ほど前、新聞の囲み記事でこのイベントを知り、実際にイタリアで体験した。言葉がわからない金井さんは、途中で一人、グループからはぐれてしまったのだが、忍者のごとく人が現れ、グループに連れ戻してくれた。あまりの的確さと素早さに驚き、てっきり暗視ゴーグルをした健常者だと思っていたら、外に出てその人が全盲と知り、衝撃を覚えたという。

 日本でもこの試みをぜひ広めたいと熱い思いを手紙にしたため、博士に送ったところ、快諾を得た。

 日本には10年ほど前に上陸、金井さんが代表を務めるNPO法人(特定非営利活動法人)が運営にあたっている。不定期で短期開催していたが、好評なので、1年前から常設スペースでの展開が始まっている。

闇の中で新しい自分に出会う

  • 探検が終わったあと、皆で感想を話し合うのも楽しい

 さて、大きな荷物や落としたら困る携帯電話や時計を預けて、探検に出発だ まず、自分の目の代わりになる白杖の使い方を教わり、ランプ一つがともる薄暗い小さな部屋に参加者8人が集まって、アテンドの「ナポリさん」を囲み、自己紹介を行う。当日初対面の人がほとんどである。

 「これから少しずつ暗くしていって、最後は光が一筋も入らない真っ暗な中に入ります」。「ナポリさん」の説明に、胸がどきどきした。

 「まっすぐに進みましょう。何か触れてわかるもの、ありますか?」

 会場内には、公園や秘密基地、高台の展望台、カフェなどがあって、様々なシーンを体験できるように工夫されているらしい。「ナポリさん」の声に導かれながら、視覚以外の感覚に集中していく。

 これは、木の幹だろうか。

 鳥のさえずり、草や土の香り、枯れ葉や芝生を踏みしめる足元の柔らかな感触。からだの奥深くに眠っていた感覚が徐々に呼び覚まされていくような気がした。

 自分でいろいろ試してみることも重要だが、特にカギになるのは、一緒に探検する仲間たちである。

 「その声はシマさん? 背中触っちゃってもいい?」

 「いえ、ヤマですけど、どうぞ」

  • 参加者からは、いろいろなメッセージが届いている

 最初は心細さも手伝ってぎごちなく呼び合っていたが、しばらくすると、8人の声やたたずまいが何となく区別できるようになっていくのだから、不思議だ。

 「ゴメン、足踏んだ?」

 「大丈夫ですよ。ここにも段差あります。気をつけて」……。

 最近、こんな風に人と手を携え、声を掛け合ったことって、あっただろうか。

 実は、私は、真っ暗闇に慣れるためにと光を遮断した最初の部屋で5分ぐらい静止していたとき、少々パニックに陥った。

 闇の底に突き落とされたような不安感が広がり、ここから一刻も早く飛び出したいという衝動にかられたりもした。声を出していないと不安なので、「探検、楽しみです!」「体調万全です!」など、無意味なことを口走っていた。

 動き出して少しずつ冷静さを取り戻したが、恐怖心がほぼ完全に払拭(ふっしょく)されたのは、仲間たちの声とぬくもりだったように思う。こうしたチームのコミュニケーション能力の醸成効果に目をつけて、多くの企業が新入社員研修に活用し始めているとも聞いた。

 探検の最後、カフェに立ち寄るころには、すっかりリラックス。それにしても、暗闇の中でグラスに入れたワインやジュースを正確にサービスするスタッフには、ただただ脱帽だ。

 主催のNPO法人では、視覚障害者が持つ鋭敏で繊細な感性を生かした商品開発にも取り組んでおり、第一号として、より柔らかな風合いと肌触りを大切にした「ダイアログ・イン・ザ・ダーク・タオル」が誕生している。

 今後は、ピクニックや婚活パーティーなど、楽しい企画も目白押しだとか。

 暗闇の中の対話――今まで気づかずにいた新しい自分に出会う機会でもあった。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆ダイアログ・イン・ザ・ダーク

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2010.03.19

端末お供に「IT銀ブラ」

東京ユビキタス計画に参加

  • ユビキタス・コミュニケータという端末をお供に、銀ブラへGO!
  • 端末の貸し出しは、地下鉄の銀座駅の広場で

 「未来の街で遊んでみませんか?」

 そんな誘い文句につられて「東京ユビキタス計画・銀座」なる実験に初めて参加したのは、3年前のことだった。

 「ユビキタス」とは、ラテン語で、「どこにでも存在する」という意味。どこでもだれでも好きな時に欲しい情報が得られる「ユビキタス社会」を実現しようというのが国土交通省の構想で、ちょうど銀座でも実験が始まったばかりだった。

 銀座4丁目を中心とする実験エリアでは、地下街の天井や銀座通りの街灯などにICタグ(電子荷札)や無線マーカーが設置され、手のひら大の専用端末をかざすと、現在位置や周辺情報が画面上に次々と送られてくる。音声ガイドもある――。

 街歩きのお供として、何やら便利そうな道具に思えたが、実際に使ってみると、当時はトラブル続きだった。

 ある実験協力店の店頭で、ICタグに端末を何度かざしても、情報が送られてこない。携帯電話で事務局を呼ぶと、「最近貸し出しが増えて、読み取り装置の不具合が出ている」といわれ、端末を代えてもらったものの、他店でも同様のトラブルに見舞われた。

 無線で情報を飛ばす数寄屋橋交差点周辺では、いくら歩き回っても、情報をキャッチできなかった。

 「うーん、銀座は多様な電波が飛び交っていますからねえ」と、事務局の弁。

 「IT銀ブラ」はまだまだ発展途上だなあというのが、当時の印象だった。

 あれから3年。

 「IT銀ブラ」は、確実に進化していた。

ほしい情報がすぐわかる

  • 銀座4丁目角では、和光の紹介が音声ガイドで流れる

 まだ風が冷たい3月の初め、地下鉄の銀座駅の広場で端末を借りて、銀座の街を2時間ほど歩き回った。実験エリアは、銀座4丁目交差点を中心に銀座通りと晴海通りの地上と地下。

 「銀座の顔」ともいえる4丁目角に立つと、和光の建物の歴史や店舗情報が音声でさっそく流れてきた。周辺の見どころ情報も自動的に表示されるし、行きたい店や施設を検索して目的地に設定すれば、音声と写真で道案内してくれるので、銀座に不慣れな人でも安心だ。

 端末と一緒に渡される銀座マップは、銀座らしい見どころのツボを押さえていて、音声ガイトとともに楽しめる。「銀ブラ」の由来になった喫茶店「カフェーパウリスタ銀座本店」やポークカツレツ発祥の店「煉瓦亭」など、「銀座はじめて物語」にしばし耳を傾けるのもいい。

未来のツールで過去へタイムスリップ

  • 銀座ガス灯通りでは、明治のガス灯が一部復元されている

 銀座煉瓦街にガス灯がともされたのは、1874年(明治7年)のこと。芝金杉橋と京橋の間に85基のガス灯が建てられ、銀座を照らした。

 当時のガス灯は黄色の炎が燃えているだけで、周辺を「照らし出す」ほどの明るさの威力はなかったようだが、行灯やろうそくの明りが頼りだった人々にとってはハイカラで珍しく、多くの見物人が集まったらしい。

 銀座通りの和光の1本裏手には、銀座ガス灯通りが残っていて、3丁目には、明治のガス灯を復元したものも設置されている。

  • 2丁目のカルティエの壁には、アーク灯建設のプレート

 ちなみに、銀座2丁目のカルティエ前は、電気を使った街灯が初めて建てられた場所。カルティエの店舗の壁面下に、「東京銀座通電気燈建設之図」というプレートが残る。そこには、「明治15年11月、始めてアーク灯をつけ不夜城を現出した」と刻まれている。

 アメリカ製発電機を用いて二千燭光のアーク灯が点灯されたそうで、こちらはガス灯よりもはるかに明るく、「まるで昼間のようだ」と人々を驚かせた。

 21世紀の先端ツールを使いながら、文明開化に沸く当時の銀座にタイムスリップするのは、わくわくする体験だった。

 体験期間は3月31日まで(要予約)。情報提供は、日本語のほか、英語、中国語(簡体字、繁体字)、ハングルの4言語5種類から選べる。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2010.03.01

スイス・ロマンドのワイン

 

私のワイン講座で、生徒さんのリクエストがあって、スイスワインを飲む企画を催しました。
「ラヴォーのワインを飲みたい!」とのリクエストです。

 

レマン湖の北岸にあるラヴォーのブドウ畑は、急斜面の段丘の美しさにより世界遺産に認定されています。写真でもご覧になった方は多いのではないでしょうか。

太陽の照射、湖面からの反射、そして太陽の熱を蓄積して夜放熱する土壌から、「3つの太陽がある畑」とも呼ばれています。チャップリンが晩年を過ごした土地としても知られていますね。


スイスワインは生産量が少なく、日本のワインショップの店頭ではほとんど見かけません。スイス名物チーズフォンデュを出すレストランでさえ、置いていないところも多いのでは?


でも、なんとか探し出しました!

スイスワイン3本を入れた当日のラインアップは、

 

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NVノートン コセチャ エスペシアル エクストラ・ブリュット(ボデガ・ノートン)
2007ウィユ・デュ・ペルドリ ヴァランタン ロゼ(ジャン・ポール=リュダン)
2006ベ・ブラン(ソシエテ・ヴィニコル・デュ・ベ)
2007甲州 白根シュール・リー(シャトー・マルス)
2008ドール・セレクション(ドメーヌ・コルニュルス)
2005ラ・モット カベルネソーヴィニヨン(ラ・モット)
山梨の「甲州」を入れたのには、ちょっと理由があります。それは、またのちほど。

 

最初に飲んだノートンのスパークリングは、アルゼンチン・メンドーサ地区の畑で、オーストリアのクリスタルメーカー、スワロフスキー社が1989年から所有しています。

ボトルの形がユニークでおしゃれですね(写真左)。さすが、ガラス細工へのこだわりを感じます。泡はきめ細かく、ちょっと甘みのあるさわやかな柑橘系の味わい。これからの季節によさそうです。

 

 

さて、スイスのワインについて概要を復習してみますと、ワイン産地は大まかに3つの地域に分類されます。
①南西部のフランス語圏スイス・ロマンド
②東部のドイツ語圏スイス・アレマニック
③南部のイタリア語圏ティチーノ

このうち、主にレマン湖の北岸からローヌ川流域にかけて広がるスイス・ロマンドで、全体の8割以上を生産しています。今回選んだ3本も、この地域のものです。

 


10022802.JPG「ウィユ・デュ・ペルドリ ヴァランタン ロゼ」は、レマン湖の北、ヌーシャテルを代表するロゼワイン。

山うずらの目という意味で、ピノノワール100%で造られます。収穫したブドウをプレスする前24時間桶に浸すことによって、サーモンピンクの美しいロゼ色になります。

 

フレッシュな赤い果実の香りが印象的。しっかり冷やして、シーフード料理と合わせたい! 

 

 

 

10022803.JPG「ドール・セレクション」は、ローヌ川渓谷のヴァレー州で古くから親しまれてきた赤ワイン。

ピノノワールとガメイで85%以上、そのうちピノが51%以上なければならないと決められているそうです。

 

チェリーの香り、タンニンも優しく、イチゴジャムのような風味を感じたのは、やはりガメイの影響でしょうか。

ほかに、ガメイとピノを掛け合わせたガラノワールという品種もブレンドされていました。

味わいは軽やか。チキンのグリルとか、ハムなどの盛り合わせとかと、美味しくいただけそうです。

 

 

さて、白ワインの「ベ・ブラン」です。

 

10022804.JPG実は、ラヴォーのワインが入手できず、お隣のシャブレ地区のベ村の白ワインを取り寄せました。

ミネラル感のあるいきいきした仕上がりで、飲みやすいです。

 

品種は、スイスで最も主要なシャスラ。「火打石の香りが特徴」と、説明にありましたが、いささか硬めのミネラルな感じを指すのでしょう。


 

 

 

 

10022805.JPGこのシャスラと味わいの比較をしようと、日本の甲州を選びました。

先日来日した、ワイン評論家の大御所、ジャンシス・ロビンソン女史が、甲州と最も似た味わいとして「スイスのシャスラ」を挙げたからです。生徒さんの評価は、「甲州の方が透明感があるけれど、コクがあってより美味しい」でした。

 


それにしても、スイスワインはカジュアルでどんな料理にも合いそう。特に女子には楽しめます。ジャンシスが語るところの「これからは白ワインの時代」を象徴する1品種であることは間違いなさそうです。

 

ジャンシスへのインタビューは、日本ソムリエ協会の「ソムリエール」5月号に掲載の予定ですので、また改めてレポートします。

 

10022806.JPGおまけですが、今回の講座で最後に飲んだ「ラ・モット」は、やはりリクエストに応じて用意した南アフリカのワイン。


ケープタウンから内陸に入ったフランシュフックにあるワイナリーで、オーナーは、カルティエやピアジェをもつリシュモングループ。

フランシュフックとは、フランス地方の意味。17世紀、ルイ14世により追放された新教徒のユグノー派の僧たちが移り住み、ワイン醸造技術を広めたのです。

カシスのような熟成した果実の芳醇な香りと豊かなアルコールのボリューム感の広がりに、圧倒されました。カベルネ好きには、おすすめ!です。

 

  

 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)