大・大・大お久しぶりのブログの更新です。
ほんと、更新のサボり癖って恐ろしいもので・・・。
ところで、あまりに素晴らしく、記録に残しておかないと忘却の彼方に消えてしまうという焦りもあって、再びブログと向き合うことにしました。
それは、11月19日、ホテル西洋銀座3階のフレンチ「レペトワ」で開かれた、阿部誠さんのヴィンテージシャンパーニュの会でした。
阿部さんは、銀座で「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」を営むオーナー・ソムリエ。2002年度全日本最優秀ソムリエで、「阿部誠のシャンパーニュを極める」(ワイン王国)などの著書があります。
この本に掲載されているシャンパーニュを中心に、今まで8回のシャンパーニュディナーが開催されてきたのですが、その最終章ということで、今回、ヴィンテージ・シャンパーニュを比較試飲する企画が実現しました。
実は、この秋、8回目のシャンパーニュディナーに参加して、「ヴィンテージ・シャンパーニュもぜひお願いしますね」と阿部さんに言ったときには、「なかなか垂直で揃えるの、大変なんですよね」と、ちょっと弱気な反応だったのです。
でも、サ・ス・ガです!!
本と同じアイテムのMoet et Chandon社のグラン・ヴィンテージをしっかりそろえてくれました。
ワインリストは以下の通りです。
Moet et Chandon Brut Imperial NV(マグナム)
Moet et Chandon Grand Vintage 2003
Moet et Chandon Grand Vintage 2002
Moet et Chandon Grand Vintage 2000(マチュザレム)
Moet et Chandon Grand Vintage Collection 1995(蔵出し)
Moet et Chandon Grand Vintage Collection 1992(蔵出し)
Moet et Chandon Grand Vintage Rose 2002
マグナムは1500mlで、通常ボトルの2本分。瓶が大きい分、熟成が倍の時間でゆっくり進み、通常のものよりも「美味しい」といわれています。
マチュザレムは6000mlで、通常ボトルの8本分。いや、これは私は初体験。せいぜい店頭で空ボトルがディスプレイされているのを見たくらい。阿部さんでさえ、それほど開ける機会がないそうです。あまり大きなボトルになると、かえって熟成が進みづらいとも聞いていましたが、どうかなあ。
蔵出しの1995年と1992年は、直前までシャンパーニュのモエ・エ・シャンドン社のセラーで熟成させていたものだそうで、市場にはほとんど流通することがありません。
AOC規定では、ヴィンテージ・シャンパーニュは3年間の熟成が義務付けられていますが、実際は、規定よりも長く熟成させて出荷されるのが一般的。醸造責任者にとっても、「NVは毎年同じ味わいのものを造らなければならない苦労があるけれど、ヴィンテージ・シャンパーニュはその年の特徴を生かして造れるので造りやすい」ともいわれています。
では、阿部さんのテイスティング・コメントを中心に・・・。
まず、2003年。
ピノ・ムニエ43%、ピノ・ノワール29%、シャルドネ28%。春に激しい霜と雹害に見舞われ、また、夏は記録的な猛暑で、酸は穏やか。難しい年でもあったので、生産しているメゾンは比較的少ない。
出来の良かったピノ・ムニエの比率が高いのが特徴で、味わいやわらかい。濃いイエローで、泡はどこまでもきめ細かい。洋ナシ、カリンの果実の甘いニュアンスが支配的。ブリオッシュ、キャラメル、ナッツの上品な熟成香も。ドサージュは5gと少なめ。
料理は、柔らかなフォンダンフォアグラと冷製マツタケ入りコンソメゼリー。
2002年は、今年のリリースで、市場ではほとんど完売状態。阿部さんは、2007年に、2003年産がリリースされる時、現地カーヴでこの2002年産もテイスティングしたそうだが、その時に感じた角がとれてやわらかくなり、エレガントさを増している印象とか。シャルドネ51%、ピノ・ノワール26%、ピノ・ムニエ23%。ドサージュ5.5g。2003年よりも外観にグリーントーンが残る。白桃や洋ナシといった果実香に加えて、バタートースト、ミネラル感、鉄っぽい香りも。全体的に若さをが感じられ、ポテンシャルの高さがある。
料理は、オリーブオイルでソテーした手長エビ、細切りサラダ添え。柑橘類のビネグレットソースで。
2000年のマチュザレムは、ヴィオニスのセラーで1年間ほど寝かせたものだそう。
コルクを開ける阿部さんの手にも随分と力が入っていた。見ているこちらも、いきんでしまった感じ。でも、さすが、最後は、汗しながらも、ぽんっと、上品な音で締めくくられました。
それにしても、おっきなコルクです。通常サイズのコルク(右)と比べると大きさの違いが歴然!
ミレニアムということで、多くのメゾンがヴィンテージ・シャンパーニュを造ったけれど、雨が多く不安定な気候で、開花後は気温が高く、難しい年。シャルドネ50%、ピノ・ノワール34%、ピノ・ムニエ16%。ドサージュ9g。色調はきれいな黄金色で、熟成が進んでいる印象。黄色の果実、バタートースト、オレンジピール、加えてキノコやアーモンドの熟成香も。酸が柔らかく、泡立ちも滑らかに溶け込んでいる。
料理は、真ダイの山ゴボウ、フランス産キノコ添え。栗のカプチーノ・ソース。
蔵出しの1995年。ピノ・ノワール50%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%。熟成が早く進んだ年で、濃縮したドライフルーツやコンポートの果実香、シナモントースト、それにスパイスの香りも。香りのふくらみに厚みがある。
続いて、蔵出しの1992年。ピノ・ノワール40%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%。酸とミネラルがエレガントに溶け合って、素晴らしいバランス。キャラメル、ヘーゼルナッツ、ピスタッチオ、クレームブリュレのニュアンス。
2本の蔵出しに合わせた料理は、青首鴨をシンプルなジュドブフと。
最後は、2002年のロゼ。
ピノ・ノワール62%、シャルドネ30%、ピノ・ムニエ8%。赤ワインとアッサーブラージュ。ドサージュ5..5g。穏やかなスパイス香、酸もきれいにまとまっていて、全体的に若々しい印象。
デザートは、赤い果実を添えたパンデピスとはちみつ香るヌガーグラッセ。
私の印象ですが、2000年はマチュザレムのボトルだったせいか、思った以上にミネラルが感じられ、意外に若々しさを感じました。
蔵出しの2本は、実に感動的でした。厚みのある95年と酸のバランスのいい92年とでは、味わいは違うものの、ともに、デゴルジュマンまでの12-13年間、メゾンのカーヴで一定の温度・湿度管理の下保管されていたというから、ほぼパーフェクトな保存状態なのでしょう。泡立ちは弱くなっているけれども、余韻の長さはどこまでもどこまでも舌の上に広がっていきました。
そして、ロゼ好きの私は、グラスに注がれたこの色を見てフィニッシュするだけで、幸せな気分になるのでした。