どこまでも広がる青い海と白い砂浜、海面にきらきらと反射する太陽の照り返し、エキゾチックな亜熱帯の植物たち、
まず、色彩だ。南国特有の明るくて鮮やかな色づかいがある一方で、赤瓦民家や芭蕉布などにみられる素朴でシンプルな色彩表現にも心惹かれる。
生活と歴史に深く結びついた自然素材も魅力的だ。沖縄には、ものづくりの文化が元気に残り、そして、伝統と技を継承しようと、情熱をもった若者たちが集まってくる。
銀座わしたショップで展示即売
前職の百貨店で仕事をしていた時ときにご縁のできた沖縄県工芸産業協働センターの大城亮子さんから、銀座で開催中の素敵なイベントのお知らせをいただいた。
「想いをつなぐ暮らしの品展」といって、作り手が本当にこだわったデザイン、納得して作った工芸品を厳選、展示即売している(2月25日まで)。
場所は、2009年7月3日付の小欄でも紹介したことがある、銀座1丁目の「銀座わしたショップ」。沖縄県物産公社が運営するアンテナショップだ。私は、いつもは1階の食材売り場で珍しい旬の食材を物色するのが好きなのだが、展示のある地下1階に直行した。
今回の商品づくりは、(1)素材を生かし、技を生かし、先人の知恵を生かしている、(2)そこにあるだけで沖縄の空気が感じられる、(3)生活スタイルに溶け込み、人がつながり会話が生まれ、皆の心が豊かになる、といった考え方を基本に進められた。そうした新しい沖縄スタイルを編み出している若い作り手の作品が集まった。
沖縄経済を支えてきたアダン
まず目に留まったのは、「ori to ami工房」のアダン葉で編んだ帽子である。琉球パナマ帽とも呼ばれているようだ。
アダンの木は沖縄の島を取り囲むように生えていて、昔から台風などの自然災害から島を守ってくれたという。お盆などの供え物として、また、旬の限られた時期だけだが、新芽は炒めて食べる。帽子のほかにも、カバンや
アダンの葉は鋭いトゲがあって、扱うにはなかなかやっかいだ。トゲをそぎ落として2ミリほどの幅に割き、それを煮てから天日干しする。数週間後、水に戻して帽子に編む。たくさんの工程を経てできあがる、想い思いがいっぱい詰まった帽子なのだ。2万円前後と価格は安くはないが、その素朴な風合いと驚くほどの軽さには感動した。
祝いの鍋に、幸せの木
沖縄独特のアルミ鋳物に植えた琉球プランツも面白い。シンメーナービと呼ばれるアルミの大鍋は、沖縄の祝い事には欠かせない調理道具で、ホームセンターに行けば必ず売っている。漢字で書けば、「四枚鍋」。4枚分の鉄板から作ったからとも、40人分の料理を作って多くの人が幸せを分かち合ったからとも、諸説ある。商品の背景にある物語を聞くと、さらに興味が増す。
沖縄伝統の製法を守り続けてシンメーナービを作る工場は、現在、1946年創業の宇良アルミ鋳物ただ一つ。手間がかかり、アルミの大鍋は、1日わずか4個しか作れないという。これを小型化し、多幸の木として知られるガジュマルを植えたのは、なかなかのアイデア。5000円から。贈り物には重宝しそうな気がした。
沖縄の色、赤瓦と青空
伝統的な沖縄の屋根材、赤瓦が、私は好きだ。明るめ煉瓦色というか、あの独特の「赤」は、青い空によく映える。その伝統素材が、コースターやアロマスティックに変身し、現代のリビングを彩る生活雑貨になった。
製造しているのは、1951年創業の新垣瓦工場。沖縄での老舗工場も、時代とともに進化を続けている。赤瓦には、高い吸水性と速乾性といった特徴がある。コースターにすることで、コップの水滴を吸い取り、テーブルを濡らすこともない。アロマオイルを吸い上げて素早く発散させるスティックも便利そう。素朴な色合いも、香りファンの心をくすぐる。
ほかにも、琉球漆器や三線のバチなど、どれも長く使えるように考えられていて、丁寧な手仕事に見入ってしまった。
リサイクルであり、エコであり、なるべく土に帰る素材を使っているところも、沖縄のものづくりの原点であるような気がする。
おおらかで温かみがあって、ゆったりした時の流れを感じさせる……。そんな手作りの品を見ていると、沖縄に旅したくなるのは、私だけだろうか。
(読売新聞編集委員・永峰好美)