2010年5月アーカイブ

2010.05.28

平安朝の日本人の知恵“扇子”

京都の老舗扇子店「宮脇賣扇庵」

  • 創業180年を超える「宮脇賣扇庵」は、銀座8丁目の三井ガーデンホテルのすぐ近く
  • 見ているだけで涼風を感じる店内のディスプレイ

 祖母が観世流の能楽を趣味にしていたこともあって、幼いときから、色鮮やかな舞扇に囲まれて育った。だから、扇は大好きだ。

 13歳の誕生日のことは忘れられない。それまでの小ぶりの童用と違って、大人と同じ大きさの扇子を祖母から贈られた。「そうか、大人の仲間入りかあ」と、ちょっと胸を張りたい気分になったものである。

 銀座8丁目にある「宮脇(みやわき)賣扇庵(ばいせんあん)」は、文政6年(1823年)創業の老舗である。昭和34年、当時の皇太子殿下のご成婚の際には祝の扇を献納したことでも知られる名店だ。

 美濃国出身の初代が、当地で扇子の商いをしていた近江屋新兵衛から扇子屋の株を譲り受けて、京都で創業した。現在の屋号は、明治20年から。書画をたしなみ、文人墨客とも交流があった3代目新兵衛の時に、画家の富岡鉄斎が「賣扇桜」という京の銘木にちなんで名付けたのだそうだ。

 東京に進出したのは戦後だが、現在の銀座8丁目に路面店を構えるようになったのは7年ほど前という。

元はメモ帳代わり

 冷泉(れいぜい)為紀(ためもと)の筆による「美也古扇(みやこせん)(=美しきなりいにしえの扇の意)」と書かれたのれんをくぐって店内に入ると、見た目も涼やかな扇子がずらりとディスプレイされていた。

 左手には、投扇興向けの扇子があった。扇子を投げて、台の上に立てられた的(蝶と呼ぶ)を落とし、点数を競う江戸時代の遊びだが、いや、なんて優雅な古典遊戯なのだろうか。当時の人々は、好みの色の扇子を買い求めて、ゲームに興じたことだろう。

 店長の増渕義明さんに、まず、実物を見ながら扇子の歴史をうかがった。起源は平安初期にさかのぼる。

  • 投扇興の関連商品は入り口入って左手に
  • 扇を投げて点数を競い合う優雅な遊び「投扇興」(同店のパンフレットから)
  • 最初の扇といわれる「檜扇」。増渕店長が歴史を語ってくれた

 最初の扇子は、「檜扇(ひおうぎ)」と呼ばれ、木簡という長さ30センチくらいの細長く薄い木の板を綴り合せたものだった。紙が貴重品であった時代である。宮中行事の作法や会議の場での議事録を記すなど、メモ帳代わりに使われていたそうだ。

 その後、扇面は上絵で飾られ、形状も洗練されて、宮中女子の間に広まった。女性たちにとっては、顔を隠し、恥じらいのポーズを取るとき、欠かせない小道具でもあったに違いない。

世界に広まった平安の知恵

  • 紙扇の原型「かわほり」

 紙扇の原型は、「かわほり」という。漢字を当てると、「蝙蝠扇」。扇を広げると、その形が蝙蝠(こうもり)の羽に似ていたために付けられた。片面にだけ紙を貼ったタイプで、それが鎌倉時代に禅僧などによって中国に渡り、紙が両面に貼られるスタイルに変化。室町時代、「唐扇」として日本にも逆輸入されるようになったという。その後、紙の貼りあわせ方などが改良されて、江戸期には庶民の間にも普及し、インドやルイ王朝のヨーロッパへと伝わっていく。

 風を送る道具として、それまでウチワのようなものは中国や東南アジアに存在したが、折りたたみ、常に携帯できる扇子を生み出したのは、平安の日本人の知恵だった。

 扇子の骨は、基本的には15本から45本。扇骨・扇面作りから、扇骨と扇面を組み合わせる作業まで、その工程は25ステージほどに分かれ、職人の手を87回通るといわれている。手間を惜しまぬ大変な作業だ。

 最近では職人の確保がなかなか難しく、同店の白檀扇を造れる人はいま、日本にたった一人しかいないという。そう聞くと、白檀扇に12万円から30万円くらいまでの価格が付いているのも仕方のないことなのかもしれない。

 45本の骨を使うタイプの誕生は昭和初期と比較的新しい。開くと180度まで広がって、大ぶりだ。一応男性用として作っているらしい。実際に仰いでみると、たっぷりの風を包み込むようにして運んでくれて、女性にとっても使い勝手がいい。仰ぐ動作も自然とゆっくりになり、それだけで気持ちがゆったりしてくる。

  • 扇子作りの工程は扇骨作りに始まり、25ステージにも分かれている
  • 同店の白檀扇を作れる職人は日本で1人だけ

洒脱なアイテムがずらり

 銀座限定の商品としては、柳をモチーフにしたシリーズが素敵だった。裏面に、銀座界隈の地図がさりげなく書かれていたりして、手土産によさそう。地方の友人・知人には、扇状のハガキに一筆書いて送るのもしゃれている。

 変わり種として、利休百首が書かれた扇子を発見。「三得扇」と呼ばれている。茶人たる者の心得百首が書かれているのだが、親骨には尺の物差し(扇子の世界ではいまだに尺寸を使っています)の目盛り、また、親骨の先端からは掛軸を掛けるための棒状の道具、矢筈(やはず)が飛び出す仕掛けがあって、まさに「三得」というわけだ。

  • 柳をアレンジした銀座限定商品「銀の風」
  • 裏側に銀座マップが描かれたタイプ。こちらも銀座限定

 「習ひつつ見てこそ習へ習わずに 善し悪し言ふは愚なりけり」など、茶人でなくても肝に銘じたい言葉であふれている。

 さて、いろいろ見て回って迷いに迷ったあげく、私が自分用に購入したのは、子羊の皮製の扇子。7980円。

 もともと紳士用シャツの胸ポケットに収まるようにと作られたものだが、ストラップも付いていて、男性に独占させておくのがもったいないほどかわいい。さすが皮製で、小ぶりながら送風パワーも十分。黒、茶、白、ピンク、オレンジの5色から、私はエネルギッシュなイメージのオレンジを選んだ。

  • 扇子ハガキで暑中見舞い、なかなか粋です
  • 利休百首が書かれた変わり種扇子
  • 子羊皮製の小ぶりの扇子。私が購入したのは一番上のオレンジ

 ちなみに、有名なグランドメゾンでも、似たタイプの扇子を見つけた。日本だけでなく、世界の市場でもこのおしゃれな扇子は人気らしい。

 暑い季節を元気に乗り切るため、この夏は平安朝の日本人の知恵を改めて見直してみてはいかがだろうか。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆宮脇賣扇庵

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2010.05.21

築地本願寺に“ちょっと前の日本の朝市”が出現

「安穏朝市」は毎月16日に

  • 毎月16日、築地本願寺で開かれる「安穏朝市」
  • 竹の支柱を組み立ててつくるエコなテントが使われている
  • 築地本願寺の宗祖・親鸞聖人像

 東京・銀座にある、日本の自然素材に徹底的にこだわったオーガニック旅館「お宿・吉水」のことは、2009年3月27日付の小欄で紹介したことがある。

 その女将の中川誼美さんから、耳寄りな情報が寄せられた。

 「かねてから実現を願っておりました“ちょっと前の日本の朝市”の開催を、築地本願寺様のご協力を得まして『安穏(あんのん)朝市』と名付け、始めさせていただきます。宗祖・親鸞聖人の御命日にちなみ毎月16日の開催となります」

 中川さんによれば、宿の名前「吉水」は、親鸞聖人の師である法然聖人の開山の場所にちなんでいるそうだ。「来年2011年は、法然聖人800年忌、親鸞聖人750年忌にあたり、このような時期に朝市の開催が実現できたことを大変意義深く感じています」

 「安穏」とは、「親鸞聖人御消息」の中に記され、「御念仏こころにいれて申して、世のなか安穏なれ」と、平安の世を願った言葉である。

 「安穏」とは、なんてやさしい響きなのだろう。殺伐とした事件に心痛むことの多い昨今、この言葉の重みはさらに増しているのではなかろうか

 中川さんが「安穏朝市」と名付けたのは、都市の生活者と農村の生産者とが顔の見える交流を繰り返し、安全な食材や生活用品を安心して買えるような、信頼できる関係性を築いていきたい――そんな願いが込められているのだな、と私は思った。

 第1回目は4月16日だったがこの日は立ち寄ることができなかったので、2回目の5月16日は絶対に行こうと、スケジュール帳に太字で書き込んでおいた。

東北で採れる珍しい野菜も

 澄んだ青空が広がる日曜の朝。午前9時前に、築地に到着。本堂前には支柱部分はすべて竹を使ったエコなテントが並んでいた。

 まずは、正門を入って左手にある親鸞聖人の像にお参り。境内にはほかに、九条武子の歌碑や赤穂浪士・間新六の供養塔などがある。

 一通りお店をまわって、いくつか気になる食材を買うことにした。

  • 「ボウナ」を勧めてくれた岩手県軽米町の人たち
  • とっても甘い新タマネギは千葉県産

 一つは、青森県境に近い岩手県軽米町のブースで見つけた山菜いろいろ。東北は、5、6月が山菜シーズンだ。ウルイと山ウド、それに、珍しい「ボウナ」という青菜に注目。

 「茎がまっすぐに伸びるから、ボウナ。東京では手に入らないだろうけど、ほんと、うまいよ」

 その日の夕食では、お店の人に勧められたように、葉は天ぷらに。中が空洞な茎はお浸しにしたら、しゃきしゃきと歯ごたえが残って美味しかった。

  • 沖縄野菜は移動販売車で
  • フェアトレードの雑貨類も充実

 千葉県産の新タマネギは、1個33円。「水にさらさなくても、スライスしてそのままサラダでどうぞ」と説明を受け、試食してみると、確かに甘い。3個買ってみた。

 八ヶ岳山麓産の日本ミツバチのハチミツはコクがあって、濃厚な黒糖のような味わいが印象的だった。その隣に沖縄の野菜を売る移動販売車があったので、大好きな島ラッキョウを迷わず2束ゲット。

 ほかにも、フェアトレードの雑貨類などが充実しているブースもあって、ちょっとした縁日気分だ。

 午前9時半から、親鸞聖人の御命日法要があると聞いたので、本堂に向かった。

二度の再建を経て

 ここでちょっと築地本願寺の歴史に触れておこう。

 同寺の発祥は、1617年(元和3年)、京都の西本願寺別院として建立された。当初浅草・横山町にあったことから「浅草御坊」と呼ばれていたが、1657年、明暦の大火で焼失。その替え地として、江戸幕府から八丁堀の海上が指定され、そこで佃島の門徒が中心になって海を埋め立てた場所を築き、再建した。大火から約20年後のことだった。

  • 築地本願寺の本堂は美しい古代インド様式
  • 本堂に続く階段脇を守る獅子は翼をもっている
  • 本堂正面入り口にあるステンドグラス

 その後も、暴風や高潮など幾度もの災害に見舞われ、1923年の関東大震災で本堂が焼失。1934年(昭和9年)、東京帝国大学の伊藤忠太博士の設計で、古代インド様式の美しい石造建築物が完成した。本堂へと続く階段の脇を守る獅子像は前脚を立て、翼を翻し、勇ましい。

 本堂に入ると、まず目につくのが、ステンドグラス、そして繊細な装飾が施されたシャンデリア。デザインがおしゃれで、インテリアの細部を見ているととても楽しめる。

荘厳な御命日法要に参列

  • 心静かに法要が始まるのを待つ

 親鸞聖人御命日法要は、(しょう)篳篥(ひちりき)、太鼓など、雅楽の演奏で始まった。雅楽というと、神前結婚式などで触れる神社の音楽というイメージがあるが、実は、仏教伝来とともに日本に伝わり、平安朝の宮廷で育まれた「お浄土の音楽」なのだそうだ。

 これは、「築地本願寺新報」で知った。本堂に響き渡る声明は、大地の底からわきあがって来るかのような迫力があり、親鸞聖人がおられた時代へとタイムスリップさせてくれる。

 本堂には、ドイツ製のパイプオルガンもあり、毎月ランチタイムコンサートが開かれているという。そういえば、5月初め、X JAPANのギタリスト、hideさんの13回忌法要が行われたのも、この場所だった。

 法要を終えて本堂を出ると、午前10時半。朝市もにぎわいを増していた。

  • 築地場外市場はすぐお隣り。帰りに寿司をつまむのがおすすめ

 築地本願寺をあとに、お隣りの築地場外市場に足を延ばして、握り寿司をつまんだ。日曜なので開いている店はごくわずかだったが、それでも、私が手に提げていた山ウドを見つけて、「あれえ、山菜、どこで買ったの」などと、市場の人たちは気さくに声をかけてくる。

 私は「安穏朝市」を大いに宣伝してしまった。

 「へえ、面白いね。絶対行くよ。山菜、まだ残っているかなあ」と、皆が口々に言う。

 中川さんが目指す、「ちょっと前の日本にあった、素朴でにぎやかな生活のにおいが感じられる朝市」は、温かな思い出をたくさん残してくれた。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2010.05.18

篠先生の撮影レッスンで

ブログの写真を撮りながら、いつも思うことがあります・・・。

カメラの性能が向上し、それなりの写真(ムカシ、そんなCMがありましたね)は撮れるのだけれど、もう少し味のある写真って、撮れないものだろうか、と。

 

今回は「上海の旅で」編はちょっとお休み。

週末、エコールプランタンの人気講座、篠利幸先生の「レストランメニュー&ドリンク撮影レッスン」に参加したので、そのご報告を。

フォトジャーナリスト、篠先生は、イタリア中心に多くの作品を発表、著作もいっぱいです。

美味しい料理とワインを飲みながら、プロの写真家の技に触れられるのだから、

一挙両得!!

 

場所は、広尾のおしゃれなイタリアンレストラン「ANGOLO(アンゴロ)」。

天現時橋の交差点にあります。車で通りかかるたびに、気になっていたレストランです。

 

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汗ばむような陽気の土曜日、まずは冷えた白ワインをいただきます。

2008 シャルドネ アルトキルシュ (Schreckbichl Colterezio)

イタリア最北端、オーストリアに接するアルト・アディジェの果実味豊かでさわやかな辛口白DOC。

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グラスを持ちながら、早速撮影レッスンです。

天井のステキな明かりを利用して・・・

 

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グラスの位置が悪くて、あまり上手に撮れません。

 

今度は、ガラス戸越しにみえるグリーンを写し込み。

 

10051704.jpg これは、なかなかいい感じ、ではありませんか!!

 

おしゃれなカゴに手作りフォカッチャが載ってきました。

 

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私は、サービスのイケメン君にレンズが向きます。

スカルパ・マッシミリアノさん。

イタリアの大学で日本映画を専攻、タケシの通訳もしたことがあるのだそう。

メニューを一生懸命日本語で説明してくれました。

 

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あれ、篠先生はどうしているのかな?

生徒さんの一眼レフカメラでパンを撮影中でした。

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「先生、私のカメラでも撮影してみてください!」とお願いして・・・

 

10051708.jpg う~ん、同じカメラを使っても、立体感が違う!

背景の工夫と、アングルがポイントです。

 

お料理、いただきましょう。

ソラマメとエンドウマメのスープなど、季節感いっぱいの前菜です。

 

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パスタは2種類。トマト・バジル味のシンプルなものとホワイトソース系のペンネ。

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「アップで撮影するだけでなく、お店のロゴなんかも上手に生かしてね」と、先生のアドバイスです。

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もう1種類、白をいただくことにしました。

 

レガレアリ・ビアンコ(コンテ・タスカ・ダルメリタ社)

 

こちらは、南のシチリアの土着品種、インツォリアを使った白ワインIGT。

インツォリア種は、古くからシチリア特産のマルサラに使われてきた品種だけれど、近年、単独もしくは少量のカタラットやシャルドネとブレンドするなどして、白ワイン品種としての価値が急上昇中。

アルザス・リースリングタイプのスマートなボトルでした。

ミネラル豊富で酸もすっきり、柑橘系の果実味も凝縮していて、好きな味わいです。

造り手のタスカ家は、ブルボン家のフェルナンド5世から爵位を受けた貴族だそう。

 

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メインは。岩手産の地鶏。

皮の焦げ目にもう少しフォーカスした方が美味しそうに撮れますね。

 

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同じテーブルにいた生徒さんが、ブラッドオレンジジュースを注文したので、パチリ!

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フルーツたっぷりのデザートです。

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篠先生はといえば・・・

撮影に夢中でした。10051717.jpg

料理をつくってくれた斉藤大滋シェフ。

登場と同時に、皆が一斉にカメラを向けたので、ちょっとビックリ(?)させてしまいました。

生徒さん皆熱心で、被写体への反応も早い、早い。

 

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私のお隣りのカメラ女子は、様々な撮影会やレッスンに参加していらっしゃる、と聞きました。

失礼ながら、彼女の小物を撮影させていただきました。

携帯ストラップもペンケースも、しっかりカメラグッズでまとめられています。

さ~すが、です。

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おなかもいっぱいになったので、先生と一緒に広尾の裏通りを散策。

 

広尾には、10年以上住んでいたことがあるのですが、変わる街並みの中で、こんな「変わらない」空間も残されています。

ほっとしますね。

 

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路地歩きをしながら、リラックスしたわんちゃん発見!

 

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写真モデル慣れしているのか、おとなしいのです。

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緑の垣根に、様々な色の花が咲いています。

ほんと、街歩き、路地歩きの楽しい季節です。

 

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同じ花を撮るのであれば、「路地の雰囲気と組み合わせて撮ると、一味違いますよ」と、先生のアドバイスを受けて、パチリ。

都会のど真ん中に残る水辺です。

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篠先生お気に入りのギャラリーに行きました。

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Quico Rivasさんの追悼展でした。

 

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ギャラリー内の撮影許可をいただいたので、パチリ。

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スペインのポップなカラーに魅せられます。

レモンイエローの画用紙を使うなんて、やはり太陽いっぱいの南の国ならでは。

 

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ふと、先生の手元を見たら、なんともポップな腕時計をしていらっしゃいました。

この春、フランス・コートダジュールで買われたそうです。

こちらも迷わず、パチリ。10051730.jpg  

 

カメラ好きの生徒さんたちの刺激をたっぷりいただいて、とっても楽しい講座でした。

 

篠先生のイタリアの旅紀行ブログでは、プロの技満載の美しいシーンが展開されていますよ。

見ているだけで、またイタリアに出掛けたくなります。

 

なお、エコールプランタンでの篠先生のフォト・ワークショップは、7月開講。まもなく6月1日から受付開始ですので、WEBチェックをお忘れなく。

 

 

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2010.05.15

上海の旅で~その2

上海滞在2日目。


朝食を終えて、早速向かったのが、上海の流行発信基地といわれて久しい新天地の近くにある評判の「グリーンマッサージ」。
友人には、「ええっ、朝からマッサージなの」と若干呆れられましたが、いえ、混み合わないうちがいいかな、と思って。


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足つぼから始まって全身120分で、2800円くらい。

店内は照明を落とし、リラックスできる広い空間。

若いお兄さんでしたが、とっても上手。クリーンで、部屋も落ち着いた造りで、日本人の感覚からすれば、お得な感じでした。


 

さて、体調万全、ランチにGO!


お肌ぷるぷるを目指して、フカヒレ・ランチが楽しめる烏魯木斉南路の「京翅坊(ジンチーファン)」へ。

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姿煮とはいかなかったけれど、濃厚なフカヒレのスープ。

黒酢をかけると、さらにコクが出ます。

薬味はネギとシャンツァイ。

 

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2品目は、アワビか牛肉ステーキが選べて、私はアワビを選択。

とっても柔らかい!

 

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ハート型豆腐・海老のあんかけ。

 

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青菜の炒め物。シャキシャキとした歯ごたえは水菜に煮ていますが、ミーシェンというそうです。

 

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煮卵と牛肉をのせたごはん。

 

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   ワインは、フランス・ボルドー産のヴァン・ド・ターブル白。

フランスGVG公司生産、インポーターは上海万彩貿易有限公司。

辛口のきりりとし味わい、ボルドー独特の醗酵のニュアンスが感 じられます。

 

料理の邪魔をしない手軽なワインですね。

 

最後は、スイカとマンゴーのフルーツで締め。

昼からちょっとぜいたくランチを取って、かなり満足度アップです。

この店には、日本人女性のサービスの方がいて、メニュー選びもラクチンでした。

上海で語学を勉強して、一度日本に戻ったけれども、やはり現地でもう少し力を蓄えようと、今年3月に舞い戻ってきた若きキャリアウーマンです。

15-16歳で、中国の奥地から出て来て頑張って働く妹分をみていると、「ものすごく刺激になりますね」と、言っていました。

 

彼女のおすすめで、このあたりに広がるフランス人租界あとをぶらぶら散歩することにしました。

銀ブラならぬ、シャンブラです・・・

 

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建国西路を東に向かって歩くと、嘉善菜場。市場です。

麺やら肉やらキノコやら魚やら・・・

何でもあります。

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市場を抜けて、てくてく。

日本のゲームソフト(海賊版かな?)は大人気のよう。

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町並みもどこか西欧風です。

 

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高層の高級マンションも建設ラッシュです。

 

不動産バブル(?)、いつまで続くのでしょうか。

 

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「シテ・ブルゴーニュ(ブルゴーニュ街)」と書かれたレンガ造りの門を発見!

 

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1930年に造られたようです。歩高里と書いて、ブルゴーニュですか。

 

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この一角、通り抜けはできませんが、歩くと楽しいです。

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鉄の門には、やはりブドウのデザインが。

今回は発見できなかったけれど、この庶民の生活臭いっぱいの一角にも、いまにワインバーとかができるのではないでしょうか。

 

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さらに、歩きます。

緑の並木がまぶしいくらいステキなのに、張り巡らされた電線が邪魔!

 

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ここは、ネイルサロンだったかな。

バラの花びらでディスプレイ。おしゃれですね。

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クロワッサンやバゲットなど、フランスパンのお店もなかなかの人気でした。

 

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いろいろ立ち寄りながら1時間半くらい歩いたかな?

いま一番注目の田子坊に、いつの間にか到着。

次回は、田子坊のレポートから始めます。

 

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2010.05.14

歌と旅で触れる七夕伝説

女性の心を歌い続けて30年

  • 日本の女性の心を歌い続けて30年の吉岡しげ美さん

 万葉集の歌や、日本女性の生き方に影響を与えた与謝野晶子、金子みすゞ、岡本かの子らの詩歌500編あまりに曲をつけ、女性たちの心を30年以上歌い続けている、シンガー・ソングライターの吉岡しげ美さん。

 私は古くからお付き合いをさせていただいているのだが、その吉岡さんが6月、「七夕」をテーマに、プランタン銀座のカルチャースクール「エコールプランタン」で素敵な講座を開いてくれることになった。

“男は仕事、女は家庭”から自由に

  • 昨年夏に開かれた中国での日中七夕友好コンサート(上)、七夕伝説ゆかりの鎮江市でのイベント

 吉岡さんは音大卒業後の20代半ば、東北に住む女性詩人、新開ゆり子の作品に出合って以来、女性ならではの豊かな生命感にあふれる言葉にこだわってきた。

 低音のアルトで、静かに情感たっぷりに、ピアノを弾き、歌い上げる。1970年代のウーマンリブ運動の洗礼を受けた「アラ還(アラウンド還暦)」世代で、「“男は仕事、女は家庭”といった伝統的な男女の性別役割分業にとらわれず、もっと自由に生きようよ」というメッセージは、同世代の女性たちを中心に共感を呼んだ。

 私自身はそのちょっと下の世代だが、金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」や与謝野晶子の「君、死にたまふことなかれ」は、何度聴いても心が震える。

思いは時代や国境を超えて

  • コンサートで地元の人々と親交を深める吉岡さん(中央)

 活動の場は国内にとどまらない。欧米はもちろん、近年は韓国、フィリピン、中国などのアジアを中心に、現地の語り部の朗読を交えつつ、コンサートを開いている。「君、死にたまふことなかれ」は、中国でも歌った。時代、そして国境を超えて連綿と流れる反戦・平和への想いを伝えたい――活動の軸足はぶれることはない。

 とはいえ、どこか乙女チックな面影の残る吉岡さんが続けている毎年恒例のイベントに、7月の東京都内での「七夕コンサート」がある。今年で13回目。中国からイケメンの二胡奏者や京劇スターを迎え、吉岡さんの音楽詩とのコラボレーションが楽しめる企画になるそうだ。

あなたも作詞、作曲に挑戦!

  • マルコ・ポーロの「東方見聞録」にも登場する鎮江は、長江沿いの風光明媚な街(左)、女性には見逃せない、美肌をつくる黒酢の産地としても有名

 さらに、七夕コンサートは広がりをみせている。

 「織姫と彦星の出会いをはじめ、ロマンチックな世界に誘ってくれる七夕って、幼いころから大好きでした。七夕についていろいろ調べているうちに、中国の鎮江市が七夕伝説発祥の地であることを知り、市の関係者に、『七夕祭りを盛り上げてはいかがでしょう』と提案したところ、驚いたことに即採用。その翌年、鎮江市主催の第一回・日中七夕友好コンサートが開かれ、今年で4回目になります。私も毎年出掛けて、七夕伝説にちなんだオリジナルの新曲を捧げているんですよ」と、吉岡さん。

 さて、今回6月にエコールプランタンで開催する3回シリーズ(6月5日、12日、19日)の講座のタイトルは、「吉岡しげ美の七夕に願いをこめて~世界にひとつだけの、あなたのオリジナルソングを作ろう」である。

 「七夕」にそれぞれの想いを託し、作詞と作曲に挑戦。音譜が苦手でも、「こんな感じに」と鼻歌を歌えば、それを吉岡さんがアレンジしてくれるというからすごい! 出来上がった曲は譜面にして渡してもらえるので、記念になる。

 いつの間にか、あなたも立派なシンガー・ソングライターになっているというわけだ。

七夕のロマンを求め、中国の古都・鎮江へ

  • 近年は観光都市としても発展。ライトアップも見事に

 さらに希望者は、旧暦の七夕にあたる8月15日から3泊4日の鎮江ツアーに参加して、吉岡さんのコンサートの舞台に一緒に立てる。

 中国の鎮江市は、上海市の北東230キロほどに位置する。ちょっと調べてみると、美肌づくりに欠かせないといわれる高級黒酢「香酢」の産地だったり、雪舟が「唐土勝景図巻」で描いた禅寺・金山寺(味噌でも有名ですね)があったり、「大地」を書いたパール・バックが18年間暮らした旧居が残っていたり、見所はいろいろ。ツアーでは、七夕伝説ゆかりの地を巡ったり、地元の人々と交流を深めたり、なんだか楽しそうだ。

 この夏、あなたも、七夕のロマンを歌うシンガー・ソングライターを目指してみてはいかがだろうか。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

◆吉岡しげ美さんのホームページはこちら

 http://shigemin.com/

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2010.05.11

上海の旅で~その1

上海万博開幕の数日前、4泊5日で上海旅行に出かけました。


記者時代、中国取材は10回以上。

1984年が初訪問で、当時上海に行ったときには、格式ある錦江飯店で黒焦げのかた~い牛肉ステーキがどーんと出てきて、唖然としたものです。


前回上海を訪ねてからはや5年。
いや、ほんと、この街の激変は「スゴイ!」の一言に尽きますね。、

様々なビルの看板から高速道路の高架下まで、上海の街全体のイルミネーションはブルーで統一されていました。どれだけ電力を使っているのでしょう。ちょっと心配・・。

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さて、最初の夜は、友人が上海在住の外国人に人気の「1221」という店を予約してくれていました。人民広場の近くにあるホテルから15分ほど、延安西路1221号の番地からのネーミング。


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こんなお茶のサービスから始まって、

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なんだかとっても美容と健康によさそうなお茶でした。

 

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料理はこんなおつまみ系からスタート!!

 

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10人いたので、皆それぞれに食べたい物を注文していきました。

ベジタリアンもいたので、野菜のお皿がやや多め、かな。

 

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私がリクエストしたカニと春雨の土鍋煮込み。やさしい味でした。

 

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スープはマンゴーと白キクラゲ。 

 

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小籠包。上海では焼いたのが人気ですけれど。 

 

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北京ダック。上海で食べても、やっぱり美味しい!

 

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甘めの味付けに飽きてきて、辛い四川を追加で注文。

 

辛いはずの四川のメニューなのに、唐辛子で炒めた上からでんぷを振りかけたような甘さを感じてしまうのです!

 

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もち米とバナナのデザート。 これもあま~い。

食感はもちもち、真ん中あたりにバナナがたくさん埋まっていて、私は気に入りました。

でも、苦手な人が多かったみたい。

 

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さて、ワインは中国産に挑戦です。

立派なワインリストはありましたが、輸入ワインは異常に高く、とても飲む気が起こりませんでした。

 

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赤は、2007龍徽赤霞珠葡萄酒(ドラゴンシール カベルネ・ソーヴィニヨン)
白は、2007龍徽夏多内葡萄酒(ドラゴンシール シャルドネ) 

 

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龍徽(ドラゴンシール)は、北京にある中国とフランスのジョイントベンチャー会社。

カベルネは、1999年、香港国際葡萄品評会で最優秀赤ワイン部門賞を受賞した、中国ワインブームの火付け役なのだとか。どちらも日本円で千円前後。
実に軽やかです。やわらかな果実味とペッパーのニュアンス、オーク樽のほのかな香りもあって、まあ、飲めますね。

白は、裏側のラベルに「バターとトースト」「ヴァニラ風味」などの英語の説明が書かれていたが、ほんと、これ、シャルドネなの?という味わいでした。

ライチのような甘さのあるフルーツの味わいで、上海料理には合っていましたけれど。


 

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2010.05.07

東京の真ん中にひっそり佇む、日本橋七福神

コースマップを手に七福神めぐり

  • 稲荷大神のお使い、キツネの大軍団が鎮座する(笠間稲荷神社東京別社にて)

 4月16日付の小欄で、庶民に愛される笑顔の神様、ゑびす・大黒の話題をご紹介したが、その取材以来気になっていたのが「七福神めぐり」である。

 街歩きに繰り出したくなるような晴天が続いた5月初め、銀座のお隣、日本橋の七福神めぐりに挑戦することにした。

 まずは、東京中央ビジネスナビの「日本橋七福神」のWEBサイトをチェック。お社マップをプリントアウトして、いざ、出発だ。また、途中立ち寄った神社でもらった日本橋七福会作成のマップは、裏側に神社の由緒が書かれていて大いに役立った。

 七福神めぐりというと、正月の風物詩。新年のみ七福神の鎮座所を公開しているところも少なくないと聞いたので、今回は、本殿・本堂の巡拝を基本に歩くことにした。

 日本橋七福神はすべて神社で占められているのが特徴だ。「七福神」といいながら、巡る神社はなぜか8社あり、いくつかの神様はダブっているという。まあ、神様にたくさんお会いできるのだから、これはありがたいことではありませんか!

 お参りする順番は特に決め事があるわけではないようだ。私は、今回のきっかけになったゑびす様に敬意を表し、地下鉄の三越前を起点に、寶田恵比寿神社から巡ることにした。

ビルの狭間の恵比寿さま

  • 寶田恵比寿神社は駐車場に挟まれた狭い空間

 首都高速1号線の高架下を抜けて、広い道をしばらくテクテク。曲がり角を間違えて行ったり来たりしてしまい、最初の神社を探すのにちょっと手間取ってしまった。近くに、縁起のいい名前の「富久ビル」があるので、この建物が目安になる。

 寶田恵比寿神社は江戸城外宝田村の鎮守で、もとは皇居前にあった。祭壇中央に安置された恵比寿神像は、運慶作とも左甚五郎作とも。1月20日の初恵比寿のほか、10月19日と20日には商売繁盛を祈る“恵比寿講”が開かれる。

 そんな由緒ある神社なのに、両側から駐車場に挟まれ、敷地は思いのほか狭く、狛犬もいない。なんだか居心地が悪そうで、恵比寿様が気の毒だった。

 問屋街を抜けて、椙森(すぎのもり)神社へ。ここも恵比寿神が(あが)められているのだが、鳥居も大きく、境内はきれいに整備されていた。創建は1000年余前にさかのぼり、「江戸名所図会」にも掲載されているという。戦国時代初めには、太田道灌が雨乞いを祈願した。

 境内の片隅に、富塚を見つけた。ここは江戸商人発祥の地としても栄えた場所で、数多くの富くじが興行されたとの記録が残る。それを記念して富塚が造られたが、関東大震災で崩壊、氏子有志で戦後の昭和28年(1953年)に再建された。いまは、宝くじ当選祈願で訪れる人々でにぎわっている。

 人形町通りを歩き、甘味喫茶の店頭のお品書きをチェックしつつ、あんみつを食べた気になって、次の神社へと急ぐ。

  • 1000年の歴史がある椙森神社
  • 境内にはユニークな富塚も
  • 寿老神がいらっしゃる笠間稲荷神社東京別社

 お次は、日本三大稲荷の一つ、笠間稲荷神社の東京別社。江戸末期、笠間藩主牧野貞直公が常陸の国(茨城県)にある本社の御分霊を奉斎したことに始まる。長寿の神様、寿老神がいらっしゃる。

 本殿に向かって左手に、稲荷大神のお使い、キツネの大軍団が鎮座しており、なかなか迫力があった。

 ランチタイムで、どこからか焼き鳥のいいにおいが漂ってくる。老舗の鳥専門店の手作り弁当は、近くのOLさんに大人気で、飛ぶように売れていた。先を急ごう。

近くのビジネスマンも気軽に参拝

  • 日本橋人形町にある末廣神社

 末廣神社の守り神は、勝運を授ける毘沙門天。両側からビルに迫られた狭い敷地ではあったが、勢いのある大木に守られ、すがすがしい風を感じた。17世紀に社殿を修復した際、縁起のいい中啓(末廣扇)が見つかったことから、「末廣神社」の名が付いた。

 甘酒横丁を通り過ぎ、赤い鳥居が目立つ松島神社(大鳥神社)へ。ビルの1階にあり、付近のビジネスマンがふらりと立ち寄る姿に出会った。

 鎌倉時代、このあたりは入り海で小島があり、毎夜掲げる灯火で舟人たちの安全が守られた。江戸になり、武家屋敷造営のために埋め立てが始まり、日本各地から技をもつ人々が集められ、それぞれの故郷の神々が合祀された。歓楽街としてにぎわい、人形細工の職人や呉服商人、歌舞伎役者、葭原(吉原)の芸妓(げいぎ)傾城(けいせい)など、商売や芸能に携わる人々の参拝が盛んだったという。ここには、大黒天がいらっしゃる。

 さて、新大橋通りの交番を曲がれば、水天宮だ。安産祈願で有名だが、守り神は、芸事や学業貨殖の神様として信仰されている弁財天。久留米藩主、有馬頼徳公が加賀藩主、前田斉広公と宝生流能学の技を競われることになり、弁財天に願をかけ、満願の日にめでたく勝つことができたとの逸話があり、宝生弁財天とも呼ばれている。そういえば、情け深いことに敬意を表した江戸のはやり言葉に「なさけ有馬の水天宮」というのがあった。

  • ビルの1階にある松島神社
  • 安産祈願で有名な水天宮

約2時間の下町散策

 細い路地を入って、昭和レトロな雰囲気の水天宮駄菓子バーを横目に、茶の木神社へ。

 「お茶の木さま」と庶民に親しまれている神社で、丸く刈り込まれた茶の木の緑が見事だったことからこの名前が付けられたそうだ。守り神は、袋の中にいっぱいの宝物を入れて福運大願を成就させるといわれる布袋尊。ビルの谷間ながら、いまも緑に囲まれた静かな環境は守られている。

  • 緑に囲まれた静かな環境の茶の木神社

 御影石の列柱が荘厳さをかもし出す東京穀物商品取引所を通り過ぎ、いよいよ最後の小網神社へ。こちらもいっぱいの緑に囲まれ、心地よい空間であった。福徳金運長寿の神、福禄寿とともに、弁財天もいらっしゃる。11月に行われるどぶろく祭りは奇祭として知られる。ぜひ一度行かなければ……。

 ここまで8社を巡って、約2時間。最初の神社を見つけるのに少々迷ったものの、その後は狭いエリアに神社が点在しているので、非常に歩きやすかった。

ゴール後のお楽しみは人形町で

 一休みしようと立ち寄ったのは、甘酒横丁の交差点近くにある喫茶の「快生軒」。看板に、「創業大正八年」とあった。東野圭吾氏のベストセラーで、テレビの日曜劇場で放映中のドラマ「新参者」にも登場する店である。ステンドグラスの窓、クラシックなランプ飾り、赤い革張りの椅子……。マーマレードがのったバタートーストをつまみながら、じっくり煎ったブレンドコーヒーをいただく。

  • 東京銭洗い弁天でも知られる小網神社
  • 「新参者」にも登場する老舗喫茶店「快生軒」
  • マーマレードをのせたバタートーストがおいしい

 神社の巡り方はいろいろあるのだろうが、私は、最後は人形町で足を休めることを考えて、小網神社で締めくくるコースをおすすめしたい。

 江戸下町情緒が残る街の中に、ひっそり(たたず)む神社群。銀座とはまたひと味違う楽しみがあった。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)