エミリア・ロマーニャ州パルマから、一路ピエモンテ州アルバを目指します。
約230キロの旅です。
西側はフランスと国境と接するピエモンテ州。アルプス山脈の麓に位置することから、ピエモンテ(山麓)と呼ばれるようになりました。
千年以上も前からワイン造りを始めた土地です。
イタリアワインの王様、バローロや、弟分のバルバレスコなど、イタリアを代表する赤ワインで知られていますね。
伝統品種のネッビオーロ種を使いますが、名前は、晩秋にネッビア(霧)が立ち込めるころにブドウを収穫することに由来するとの説があります。
ピエモンテ州の中部から南部、アルバを中心にするランゲ地方が、バローロの産地。
約1600ヘクタールの土地に、千近くもの生産者がいるそうです。
今回の訪問ワイナリーは、フォンタナフレッダ社。
フォンタナフレッダは、小規模生産者の多いこのエリアで、全体の約7%に相当する110ヘクタールを所有。最大の所有面積を誇ります。
その半分以上でネッビオーロ種が栽培されており、全バローロの15%を造っているリーダー的存在です。
イタリア全土統一(1861年)後の初代国王ヴィットリオ・エマヌエーレ二世の息子が相続した狩猟地を切り開き、ネッビオーロ種を植えたのがワイナリーの始まり。
クーネオ県のセッラルンガ・ダルバで、19世紀後半のことです。
設立から100年以上が経った1999年、新たな改革が始まります。
若き醸造家ダニーロ・ドロッコ氏を招き、2002年から新シリーズ「テニメンティ・フォンタナフレッダ」をリリース。
以来、伝統の重厚な造りに近代の技の新風を吹き込み、「モダン・トラディショナル」という地位を確立しつつあるといいます。
広報担当のピエール・マリオ・ジョヴァノーネさんが案内してくれました。
深い緑に包まれた「思索の小径」を散歩しながら、
同社を象徴する噴水の広場へ。
元王家の領地だけあって、敷地内には高貴な雰囲気が漂います。
黒鳥さんもお出迎えしてくれました。
従業員宿舎も敷地内に完備。300人が暮らすそうです。ベランダに洗濯物が干されていたりして。もちろん、チャペルも。
ネッビオーロ種が植えられた畑へ。水はけのよい石灰質の土壌です。
醸造所を見学して、
この地下道、王様が愛人のところに通うために造ったとか?
愛人たちには、タバコや塩を売る権利を与え、自立の道を開いたそうですが。
カウンターを囲むモダンなテイスティングルーム。
試飲したワインは次の通りです。
代表的なピエモンテの4品種です。
1)2008 ガヴィ・デル・コムーネ・ディ・ガヴィ
2)2007 ドルチェット・ディアーノ・ダルバ ラ・レプレ
3)2005 バルベーラ・ダルバ・スペリオーレ パパゲーナ
4)2005 バローロ セッラルンガ・ダルバ
1)は、「ガヴィ村で造られたガヴィ」という名の生産地区限定の白ワイン。コルテーゼ種を使います。青リンゴやレモンのような、クリーンでフレッシュな香りが特徴。若干あとに苦味が残り、これがまたアクセントになって飲みやすかったです。
お刺身にも合いそう!
2)は、ドルチェット種です。
ドルチェットといっても、甘みが特徴ではありません。色は黒味の強いルビー色で、ミントのようなハーブの香りを感じました。柔らかな果実の甘さの味わいがありますが、タンニンもしっかり。
エレガントというよりぴちぴち元気な印象です。
夏場は13-14度で飲むのがいい、とアドバイスを受けました。
3)は、バルベーラ種特有の強い酸味だけでなく、果実味、タンニン、アルコールのバランスが取れていました。
木樽の香りがかなり強く感じられました。
聞けば、熟成の木樽は、9割がフランス・アリエ産、1割がアメリカンオークを使用しているとか。
4)は、さすが限定地域の「バローロ」です。
バローロ地域の入り口、セッラルンガのブドウを使います。
より複雑な香りとブドウの凝縮感のある味わいです。
品種はネッビオーロ種。
タンニンもソフトで、エレガント。
濃厚な色合い、赤い果実やフレッシュなチェリーの味わい、カモミールの香り、バラのニュアンス、それにバルサミコやキャラメルの印象も。
ピエモンテ州のワインは、コルテーゼとかネッビオーロとか、基本は単一品種で造ることが特徴なのですね。畑も細分化されていて、なんかフランス・ブルゴーニュに似ていますね。
ちなみに、バローロを選ぶなら、1996-2001年、2004年ヴィンテージがグレートだそうです。
1996年、1999年、2001年、2004年が特にグレート!
それだけ、価格も高いわけですけれど。
さあ、日も暮れてきましたので、ディナーへ。
フォンタナフレッダの敷地内にあるグリルで、招待ディナーです。
パルマで生ハムランチを楽しみ過ぎたあとなので、おなかの余裕に自信がありません。
素敵なバーカウンター。本日のおすすめなどが記されています。
とりあえず、泡から。
2005 コンテッサ・ローザ アルタランガ スプマンテ・ブリュット
「コンテッサ・ローザ」とは、ヴィットリオ・エマヌエーレ二世夫人でワイナリー創設者の母でもある、ローザ伯爵夫人のこと。夫妻が住んでいた館は、現在も「ローザの館」と呼ばれ、世界中から訪れるVIP顧客をもてなすゲストハウスとして使われています。
シャンパーニュと同じく、瓶内2次発酵で仕込まれたスパークリングです。
泡はきめ細かく、トーストしたナッツの深い香りが・・・。
泡好きな私の胃は実に心地よく刺激され、なんか食欲が出てきました!
2008 ロエロ・アルネイス プラダルポ
ロエロの地域は、アルバの北側を流れるタナロ川の北。ちょうど川をはさんで、バローロ生産地域の反対側に位置します。
赤はネッビオーロ種、白はアルネイス種です。
アルネイス種の来歴ははっきりしていません。
19世紀から20世紀に知られるようになり、一時は忘れられていた品種だったようですが、トリノ大学の研究が農家の実践に生かされ、1960年に復活したようです。
淡い麦わら色、トロピカルフルーツやハチミツの味わい。
スカンピのシンプルなグリルに合いますね。
2006 ネッビオーロ・ダルバ マルネ ブルーネ
大樽のピエモンテ・スタイルでなく、小樽での熟成後に瓶内熟成させるモダンスタイルのネッビオーロです。
手軽に、この偉大なるブドウを味わうのにはよいのではないでしょうか。
フルーティーでタンニンも豊かですが、軽やかで若飲みできるタイプです。
カジュアルに、サーディンのグリルやマグロのたたきといただきました。
お肉とたっぷり野菜のグリルに合わせたのは、
待っていました!
2004 バローロ・ヴィーニャ ラ・ ローザ
先にご紹介した、伯爵夫人の名前が付いたバローロ。
3つのクリュ(畑)の中では、もっとも女性的なやわらかさやエレガンスさをもったバローロといわれています。
こなれたタンニン、しっかりした骨格。豊かな果実味とともに、カカオやミントの香りも。深い味わいの高貴なバローロでした!
売店で、即買いの1本でした。
「食べられるかなあ」などと心配したのは、まったくの杞憂でして。
デザートまで、しっかりいただきました!
かくして、グルメの里での夜も更けゆきます。