2009.07.06

イタリア縦断の旅から~その1

 6月初めのイタリアの旅からはや1か月。

ブログでもリポートすると予告していたにもかかわらず、帰国後もワインイベントが相次いで、なかなかご報告できずにいました。

来週には、旅の友との写真交換会+ワイン会も開催の予定・・・。

記憶が薄れないうちに、旅の連載を始めることにします。

 

5月31日。成田からまず向かったのは、南イタリアのナポリ。ローマ乗り換えの国内線が遅延したこともあって、ホテルに到着したのは真夜中でした。

風呂上がり、冷蔵庫から冷えた「ベローニ・ナストロアズーロ」を取り出してグビッ。

ぐっすり眠れました。

今回のワインの旅は、アカデミー・デュ・ヴァンで講師を務める遠藤誠先生の企画。

イタリアワインの第一人者、林茂さんが同行。なんとも心強いです。


最初の訪問ワイナリーは、テッレドーラ社。

ナポリのある南のカンパーニア州で、ワイン・ルネッサンスを常にリードしている名門ワイナリーです。テッレドーラとは、黄金の大地の意味。

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ナポリやサレルノ、アマルフィなどの海岸沿いの温暖な地域はリゾート地として有名だけれど、カンパーニア州全体でみると8割以上が山がちだそうです。

そう、ヴェスヴィオ火山だけではないんですね。

そして、ブドウ造りは寒暖差の大きい山間部で行われてきました。

 

ナポリから内陸に60キロほど、山を二つほど越えたアヴェッリーノ。

マロングラッセに使う栗の産地でもありますが、南イタリアを代表するDOCGの赤ワイン、タウラージで知られています。


タウラージといえば、16世紀ごろから続くマストロベラルディーノ社の存在が忘れられませんが、そこから分家したテッレドーラ社は同ファミリーの一員。1978年にタウラージをはじめとする畑を引き継ぎ、独自にワイン生産をスタートさせています。

ここでは、カンパーニアの伝統品種しか栽培・醸造されていないんです。

 

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タウラージのアリアニコ種をはじめ、フィアーノ種やグレコ種など。

ギリシャ伝来の良質な品種があるのだから、何も国際市場で人気だからといってシャルドネとかカベルネソーヴィニヨンとか外来品種を取り入れる必要はない、との発想。

土着品種の見直しは、地産地消の考え方につながります。

 

 

  

テッレドーラ社の国際部門の営業を担当するルーチョさんはマストロベラルディーノ家の10代目。

祈りの場としての教会跡が残る畑、そして醸造所内を案内していただいてから、 


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いよいよ試飲です。

 

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まずは、カンパーニア州で一番有名(?)な「ラクリマ・クリスティ・デル・ヴェスーヴィオ」(2008年)。

 

09060110.jpgこのワインにまつわる逸話も有名です。

天国の土地の一部を持って逃げようとしたサターンがヴェスヴィオ火山の麓で落としてしまい、そこにナポリの街ができました。

ところが、街の人々が悪の限りを尽くすので、天から見ていたキリストが涙を流し、そこにブドウの木が生えたそう。

そこから「ラクリマ・クリスティ」(キリストの涙)と名付けられました。

 

コーダ・ディ・ヴォルベ(キツネの尻尾の意味)種から造られる白はフルーティーでミネラル感を感じるスタイル。

ピエディ・ロッソ(ハトの赤い脚の意味)種主体の赤は、とっても果実味豊かでした。

 

続いて、DOCG3本です。


09060111.jpg古代ローマ時代からあったという白ワイン、「グレコ・ディ・トゥーフォ」(2007年)は、2003年からDOCGに昇格。

名前から推測できるようにギリシャ伝来種で、トゥーフォという軟らかい凝灰岩の土壌で育ちます。

濃い目の麦わら色で、ピーチやマンゴーなど南国のフルーツのフレッシュな香りがしました。


「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」(2008年)も、2003年からDOCGに昇格した白ワイン。

フィアーノ種は、古代ローマ時代、アピ(ハチ)がよって来ることからラテン語でヴィティス・アピチアと呼ばれ、変化していったのだとか。

マスカット、ヘーゼルナッツの香りに、若干苦味がアクセント。

 

最後に、赤ワインの「タウラージ」(2003年)。

1993年に、南イタリアでは初めてDOCGに認められたワインです。

主品種のアリアニコ種は、古代ローマ時代にフェニキア人がギリシャから持ち込んだ品種。2003年の「タウラージ」は、100%アリアニコ、2年間の樽熟と聞きました。

濃いルビー色で、スパイス香、タンニンもしっかりした力強いワインでした。ピエモンテの長熟ワイン、バローロやバルバレスコの弟分ともいわれています。


お昼は、テッレドーラ社の招待ランチをいただきました。


09060112.jpgモッツアレッラにオリーブ、生ハム、パスタなど、当たり前だけれど、思った通りの"イタリアづくし"。 

 

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  09060120.jpgワインは「アリアニコ」(2007年)。

あまり日本ではお目にかかりませんが、果実味と木の香りがやさしく、トマト味のパスタや肉料理との相性が抜群。

 


 

さて、閑話休題。ミニ知識をいくつか・・・


ボンペイ遺跡の貴族別荘跡からは、ワインの貯蔵などに使われた壷、アンフォラが大量に発見されています。ワインの歴史を紐解くには欠かせない場所です。

そこで、マストロベラルディーノ社は、国の遺跡管理局からの依頼で、古代の品種を8種類実験的に栽培・醸造しており、販売も始まっているそう。

売り上げは、発掘現場の修復作業に当てられているといいます。

貯蔵や運搬に使われたアンフォラは、高さ50センチほどで、表面には美しく装飾されているものもあったようです。

古代ローマでは単位としても用いられ、1アンフォラ=25.79リットルと定められていました。
ちなみに、現在メールアドレスなどに使う「@(アットマーク)」はアンフォラに由来するともいわれています。アンフォラの形を記号で「@」と記したというわけです。


また、キッスの習慣はワインから? というエピソードも残っています。

古代ローマ時代、ワインは超貴重な飲み物で、財産と考えられていました。

そして、女性はワインを飲むことを禁じられていました。ある時、「主人が外出したあと、妻たちはこっそりとワインを楽しんでいるようだ」とのウワサが広がりました。

夫たちは一計を考え、帰宅したときに妻の口の周りをチェックするために、キッスを試みたというのです。挨拶としてのキッスはここから始まったという、イタリアらしいお話でした。


夕刻、ホテルに戻ると、大雨に降られました。


それでも、クリントン元大統領ら熱烈なるファンが多いといわれる老舗ネクタイ店マリネッラ(MARINELLA)をのぞきに、街に繰り出しました。店内は大雨にもかかわらず、満員御礼状態でした。

09060124.jpg90ユーロ、さすがイタリア、発色が素晴らしい! 旦那に紫色のを1本買いました。


近くのバールでしばし雨宿り。レモンチェッロをいただきました。

雨が上がってきたので、サンタルチア港に向かって、海岸沿いをぶらぶら。

空はどんよりしていましたが、雨上がりの歩道と潮風が心地よかったです。

 

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夜はピッツェリアで、カリカリのブルスケッタと本場もちもちのマルガリータをいただきました。

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ピッツアの向こうのお茶目顔は、旅のリーダー、遠藤誠先生、です!

ワインはもちろん、地元の「アリアニコ」で。


伝統品種の味わいに、発見、発見! の1日でした。

 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)