天然ポリフェノールできれいになる
突然1日休みが取れることになったら、あなたなら何をしますか? 私は迷わず、「スパ(温浴施設)へGO!」でしょうか。
あわただしい日常から離れて、心身の疲れを癒してくれる極上リラクゼーションで、しばしプチぜいたくを味わいたい……。最近のお気に入りは、銀座にほど近い外資系ホテルのスパ。当日の体調や気分に合わせて、セラピストが2時間ほどの施術を組み立ててくれる、わがままなプログラムが好きだ。38階のガラス張りの角部屋から見下ろす大都会の景色もなかなか圧巻である。
とはいえ、やはり緑に包まれた環境でのスパ体験はリラックス度が格段に違う――そう実感したのは、先日、北カリフォルニア・ワインカントリーを旅したときだった。しかも、ワインの香り漂う中でとなると、なおさらだ。
赤ワインに多く含まれる天然ポリフェノールの抗酸化作用や抗炎症作用、アンチエージングの効果などが注目されるようになって久しい。高濃度のポリフェノールは、特に、ブドウの種子や果皮に多く含まれているといわれる。
欧米諸国では、このブドウの自然のパワーを利用したヴィノテラピー(ワインセラピー)の研究が進んでおり、「ワインできれいになる」といったキャッチフレーズで、スパ・トリートメントに取り入れるリゾートホテルも続々と登場、人気になっている。
ブドウの丘のリゾートスパ
最初に訪ねたのは、ナパにある「ザ・メリタージュ・リゾート・アンド・スパ」。「メリタージュ」とは、カリフォルニアでフランス・ボルドー品種をブレンドしたワインの呼称で、merit(利点)とheritage(遺産)を組み合わせた造語だ。ミーティングルームには、「カベルネ」「メルロ」などの名前が付けられており、もちろん室内にはワインセラーも完備。ワインカントリーらしい演出である。
中庭にあるプールの向こう側には、なだらかなブドウの丘が一望できる。丘の下にはワインカーブが掘られていて、そこに、2年前、スパ施設「スパ・テッラ」とワインバーがオープンした。
鈍い灯りに導かれて洞窟のような通路を抜けた先に、トリートメントルームがある。モザイクタイルや錬鉄製のインテリアで飾られた空間は、どこか幻想的だ。岩室なので、適度な湿気があり、ひんやりして心地よい。
50分のボディトリートメントを選んだ。まずは、細かく砕いたグレープシード(ブドウの種)でスクラブ。古くなった角質を取り除き、ジェットシャワーリンスでしっかり洗い流す。ワインのエキスとローズヒップをブレンドした泥ラップにくるまり、最後はグレープシードローションでたっぷり保湿する。
日焼け跡の手入れを怠っていた私の肌はしなびた野菜のようにシワシワで、かなり危険な状態だったが、少しばかり潤いを取り戻せた気がした。
いや、これだけでは満足いかない。が、さらなる修復は可能なのだろうか……。
ワインの香りに包まれ、セレブ気分
翌日は休息日にしていたので、思い切って半日をスパで過ごすことに決めた。
ナパを北上し、目指すは、ハリウッド・セレブもお忍びで来るというソノマの「ケンウッド・イン・アンド・スパ」。トスカーナ風建物の正面入り口は、ブドウやツタのつるが絡まる白亜の壁。緑のじゅうたんで覆われていて、隠れ家的な佇まいである。一歩中に入ると、手入れの行き届いた植栽や軽やかに響く噴水の水音に癒され、中世イタリア貴族の館に招かれたようなリッチな気分にさせられる。
ここはちょっとぜいたくして、「ヴァレー(谷間)の真髄」というたっぷり5時間のコースに挑むことにした。
待合室には、各種ハーブティーやシェリー酒などが用意されていた。私は、「記憶力が高められる」「ブッダのような穏やかな気持ちになる」といった文言が記されたハーブエキスに魅かれ、スパークリングウォーターで割ってみた。効果のほどはさだかではないが、「キレイになるぞ!」というやる気は高められたと思う。
セラピストに案内され、まずはワイン風呂へ。ワインエキス配合の淡いピンク色のジャグジーで、クレオパトラを気取ってリラックス。窓越しに、葉が色付き始めたワイン畑が見渡せた。芳醇なワインの香りに包まれ、アメニティも、「ワインボディウォッシュ」とか「ホワイトティークレンジング」とか、なんだか体によさそうだ。
「自分へのご褒美」で心も体も潤う
50分間のスクラブでは、サトウキビ、グレープシード、シャルドネ・オイル、リースリング・オイル、そして赤ワインのエキスが配合されたものを使った。ペットの犬のように首から下をブラッシングされると、実に“痛(イタ)きもちいい”のだ。続いて、インエキスとローズマリー、それに精油がブレンドされた泥ラップに80分間包まれて、全身ぽかぽかしてきた。代謝がよくなって、体内の老廃物を排出、デトックス効果があるという。仕上げは、普段まったくノーチェックの首周りや背中、頭皮をグレープシードローションで軽くマッサージ。
さらに、50分間のボディー全体のアロマ・マッサージが続き、私はとうとう途中で寝てしまった。「グレープフルーツのマッサージクリームは鎮静効果抜群なんですよ」と、担当のセラピストが教えてくれた。それだけリラックスできたということなのだろう。
小休憩。部屋に戻り、ぱちぱち燃える暖炉の前で、サラミやチーズをつまみ、ワインを片手にゆったりくつろぐ。そして最後は、これまたワインエキス入りのマスクで顔をしっかりパック。
「もう完璧!」と、私はつぶやいた。
カサカサに乾燥していた肌が、それなりにプルプル、しっとりした質感に戻った感じ。まあ、危機は脱したのだろう。そして何よりも、からだが軽く、清清しい気持ちになっている自分がうれしかった。
円高のお陰もあって、カリフォルニアでのスパ半日コースは、日本のホテル・スパ2時間の料金とほぼ同じ。おとな世代の「自分へのご褒美」に、こんなお籠もりの楽しみを加えてみてはいかがだろうか。
(プランタン銀座取締役・永峰好美)
◆ザ・メリタージュ・リゾート・アンド・スパ(英語)
http://www.themeritageresort.com/
◆ザ・ケンウッド・イン・アンド・スパ(英語)