2009.07.27

1990 ブルネッロづくし

知人が毎月主催しているワイン会の今回のテーマは、1990年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノの飲み比べ。
最近すっかりイタリアにはまっている私は、メールでお知らせが入るやいなや、即申し込みました!

場所は、神田のワイ・ヴィラージュ。

 

イタリア旅日記の連載もちょうどトスカーナを後にしたばかりなので、ここで閑話休題。

味わいの記憶が残っているうちに、この素晴らしい出会いをご紹介しておきます。

 

ワインリストは、次の通りです。

 

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1)NV アグリパール ブラン・ド・ブラン レ・セット・クリュ
2)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(テヌータ・フリジアリ)
3)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(バンフィ)
4)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アジィエンダ・アグリコーラ・ラ・トーレ)
5)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ レニーナ(ピエーヴェ・ディ・サンタ・レスティテュータ )
6)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アルジャーノ)
7)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(シロ・パチェンティ)
8)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ウゴライア(リジーニ)
9)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ヴィーニャ・ディ・ピアンロッソ (チャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナ)

 

スイマセン、後から気づいたのですが、9)のブルネッロを並べるのを忘れていました。

この中で、一番高価なのにぃ・・・。

 

ところで、この人気イタリアDOCGワインについて簡単なおさらいをしておきましょう。

 

ワイン好きなら、一度は聞いたことのある名前、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。


濃いルビー色で、熟成するとともにガーネット色に変化していきます。

プラムやアーモンドの個性のある香り、凝縮した果実味、アルコール分は高く(12.5%以上)、タンニンもしっかりしているので、力強いけれども独特の柔らかさの印象が残る赤ワイン。

 

赤身肉やジビエ料理に合うといわれ、私も大好きなイタリアワインの一つです。

 

本日のお料理は、こんな感じでした。

 

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ホタテのスモークのサラダ仕立て・レモン風味、

フォアグラとトリッパのソテー・バルサミコソース、

豚白モツと野菜の煮込み風ペンネ、

牛ハラミのロースト・キノコの赤ワインソース。


内臓好きなので、特に、モツの食感とペンネの歯ごたえ、さっぱりした味わいが気に入りました。

 

ブルネッロの歴史は比較的新しく、今から140年ほど前、新しいブドウ品種の誕生に始まるといいます。


モンタルチーノは、トスカーナ州シエナの南東50キロ、標高500メートルほどの丘陵にある小さな街。

14世紀には、シエナ共和国の要塞として栄えました。

古くから岩がちな土地で、石灰分が多い粘土質の石灰質土壌です。

 

そんな街で、地元に農場をもつクレメンティ・サンティという男が中心になって、キャンティなどに使われていたこの土地原産のサンジョヴェーゼ種の分枝系(クローン)から、サンジョヴェーゼ・グロッソ種(ブルネッロ)を生み出したのです。


石灰質土壌に強く、また、従来のサンジョヴェーゼよりも色が濃く力強い味わいでした。19世紀の中ごろ、140年も前のことです。

 

そして、この新しい品種でワイン造りを手がけたのが、クレメンティの孫にあたる、カテリーナ・サンティとフェルッチョ・ビオンディ・サンティ。

フェルッチョは、ジュゼッペ・ガリバルディ率いるイタリア統一運動に参加、仕事を終えてトスカーナに戻ったとき、ウドンコ病にやられて荒れ果てたブドウ畑に唖然とします。
「愛するトスカーナのために、ブドウ畑を取り戻そう」と心に決め、祖父が開発した品種を徹底研究したそうです。

 

とはいえ、最初からビジネスがうまくいったわけではないようです。

開発から数十年、ブルネッロで造られるワインはパリの博覧会などでも好評で、徐々に人気者になりました。
特に米英で人気を博し、1970年ごろからは投資もスタート。

1980年にイタリアで初のDOCGに認定され、生産量が飛躍的に増えて、90年代にはバローロの生産量を超えるほどに。

 

モンタルチーノ周辺に広がる約千ヘクタールのワイナリーの中で、百か所以上で造っているそうですが、ワイナリーごとに熟成のヴァリエーションが異なり、それもまた魅力の一つなんです!

 

・・・と、長くなりましたが、
改めて、今回の飲み比べの感想を少しばかり。


イタリアワインに詳しい方々も参加していた会でしたが、10人の参加者の中での一番人気は9)でした。

ぴちぴちと若々しいのに、ちょっとローヌのようなワイルド感もあり、セクシーでエレガント。

文句なくおいしい!! なんか、格が違うって印象です。


モンタルチーノの偉大な造り手、カーゼ・バッセで修行したロベルト・チプレッソ氏が醸造責任者を務めるようになって、設備も一新、次々とヒットを生み出しているようです。

と語ってばかりですが、スイマセン、このエチケットも撮影し忘れました。

 

私がほかに気に入ったのは、5)と7)です。

 

09070806.jpg5)は、言わずと知れたガヤが作るブルネッロ。

 

紀元前8世紀から続く伝統ある畑だそうで、とっても厚みのある印象。

ガヤの丁寧な醸造管理が力強さを造り出している、という感じ。

ブルーの手描き風イラストのエチケットも素敵です。

 

もしも出会いがあったら、即買いたい!

 

 

 

09070808.jpg7)のシロ・パチェンティは、もとはモンタルチーノのブドウ栽培農家で、ワイナリー元詰めを始めたのは1988年からだそうです。

 

ボルドー大学で学んだジャンカルロ・パチェンティ氏が最新式のステンレスタンクなどを導入、新しい試みに挑み、いまや「モダンブルネッロの最高峰の一つ」などといわれています。

 

モンタルチーノの北と南の異なる2つの畑のブドウをブレンドしています。
ロバート・パーカー氏は1990年ヴィンテージを92点と評価して以来、今までずっと90点以上の高ポイントを付けてきたとか。

難を言えば、ちょっとまとまり過ぎ、ですか。

私は、はねたブルネッロが好きなので。

 

09070807.jpgもう一つ気になっていた6)のアルジャーノは、スーパー・トスカンの「ソレンゴ」で知られるワイナリー。

 

500年以上も続く伝統の造り手です。

サシカイア、ソライア、ティニャネロなどのハイパー・タスカンを手掛けたジャコモ・タキス氏もコンサルタントとして参加しているとか。

 

酸はまろやか、タンニンも滑らかで、樽熟成のバニラ香も豊かで、おしゃれな造り方の印象です。

でも、ちょっとおとなし過ぎ?

 


いずれにしても、

8本のブルネッロにハズレがまったくなく、マーヴェラス!!! でした。

 

1990年ヴィンテージのポテンシャルの高さを感じさせる会でした。

 

それにしても、この会を主催するFさんの段取りのよさと人集め、声かけの上手さ、

ワイン調達担当のIさんの的確なセレクト眼に、今回も脱帽! です。

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)