お店で、路地裏で、再び愛でる桜花
花曇り、花冷えが続き、今年は開花からちょっとゆとりをもって「桜の季節」を楽しむことができて、なんだかうれしい。
東京・銀座では、今年初めて、「銀座で桜を咲かせましょう~GINZAKURA(銀桜)まつり」が開催されている(4月6日まで)。
桜の花を美しく咲かせるためには、良好な生育環境を整え、
まさに「いのち再生の桜」である。
今回使われた桜は、アカデミー賞受賞作として話題の映画「おくりびと」のロケ地、山形県鶴岡市のソメイヨシノ。桜の枝は、ビルの谷間の路地裏に鎮座する4丁目・宝童稲荷神社の鳥居周りをはじめ、店舗などのウィンドウディスプレイに使われ、元気に花を咲かせている。
プランタン銀座では3月中、桜マスや桜モンブランなど桜づくしのメニュープレートを注文された毎日先着10人のお客様に桜の枝をプレゼントした。今ごろはそれぞれのお客様の手元で、桜のいのちがよみがえっていることだろう。
前回のこのコーナー「GINZA通信」で紹介したオーガニックなお宿「銀座吉水」では、女将の中川誼美さんが、桜の花を楽しんだ後の枝のリサイクルを考えている。「ご飯を炊くかまどの燃料としてはもちろん、サクラチップでサケやコンニャクなどの
着物専門店の「銀座もとじ」では、燃料として使われた後、その灰を用いて桜染めをとの計画もあるようだ。
桜は散っても、銀座のどこかで、また、銀座を訪れた人々の周りで、そのいのちはつながり、さらに輝きを増していく。
酒喰う樹を眺めワインを
さて、春の俳句に、「桜ほど酒
先日銀座で開いた「桜の季節を楽しむワイン会」で、参加者に好評だったワインをご紹介しよう。価格はいずれも1000円台~2000円台。
1)アンリ・メールの「グラン・フローロン・ブリュット・ロゼ」
スイス国境にあるジュラ山脈の
2)ヴィッラ・スパリーナの「モンテイ モンフェラート・キアレット・ビアンコ2007」
丸っこいクリアなボトルが愛らしい。フレッシュで若々しい北イタリア・ピエモンテの白ワイン。ほんのり白い花の香りがする。品種はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランに加えてドイツ系のミュラー・トゥルガウがアクセントになり、ボリューム感が出ている。魚のスモークなどがベストマッチ。
3)シレーニの「セラーセレクション リースリング2006」
ニュージーランド北東部の海岸地域、ホークスベイの白ワイン。国際コンクールでベストバリューワインにも選ばれた。シレーニは、ローマ神話に登場する酒の神バッカスの従者。なので、食事をよりおいしく演出してくれる。さっぱりと軽いが、レモンなど柑橘系の皮の酸味がほどよい。
4)ドメーヌ・マズールの「コート・デュ・ローヌ カルト・マロン1996」
花見弁当の肉類に合わせるには、柔らかなタンニンのフランス南部の赤ワインはいかが。生産者は、自らのワイン蔵でしっかり熟成させてから出荷していると評判が高い。甘い果実味とエレガントな酸味が絶妙なバランスをつくる。軽く冷やしてもおいしい。マロン(栗)色のラベルがポイントに。
花見の締めは甘味
花見の締めには、やはり甘味だろうか。
銀座木村屋総本店の名物「桜あんぱん」は、明治天皇が向島にある水戸藩下屋敷に花見で出掛けられた際に献上されたのが始まりとか。米と麹(こうじ)でパン生地を発酵させ、奈良・吉野山から取り寄せた八重桜の塩漬けを埋め込んだ。この季節ならではの味わいだ。
私のおすすめは、リ・チーズの「チーズカラーさくら」。カラーという南アフリカ原産の花の形に見立てた生地を桜の葉でくるりとひと巻き。しっとりしたチーズクリームにさくらんぼのシロップ漬けと桜の花の塩漬けがトッピングされ、すこぶる美味。酸味としょっぱさで、新感覚の桜餅として味わえる。
もう一品、ガトー・ド・ボワイヤージュの「とろけるシブースト・櫻」は見た目がとても華やか。クレーム・ブリュレと桜のクレーム・シブースト(カスタードクリームにメレンゲを合わせたもの)が重なり、間にフランボワーズペーストがサンドイッチされている。おすすめ2品の販売は、プランタン銀座地下2階で4月6日まで(ただし、シブーストは桜の季節が終わるころまで)。
今年の花見も、私の場合、やはり「花より団子」で終わりそうだ。
(プランタン銀座取締役・永峰好美)