ウンブリア州アーカイブ

2009.07.22

イタリア縦断の旅から~その3

滞在4日目の朝!
快晴です!!

 

私の宿泊した家族向けのファームハウスは、まさにルンガロッティのブドウ畑のど真ん中。

朝のやさしい光に誘われて、窓を開ければ、すくすくと元気に育つブトウ畑の緑が広がります。


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09060302.jpg部屋は4部屋。私の部屋は奥の左手。

各部屋の扉には、このあたりで古くから育てられているかわいらしいリンゴの絵が描かれていました。
   

09060303.jpg 窓からは、ブドウ畑が・・・。

 

 

 

 

 

 

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長期滞在が基本ですから、キッチンも食器類も充実です。


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広い芝生の庭には、パラソルと白いリクライニングチェア、プール・・・。

テラス席の青いタイルのテーブルが素敵だったので、昨晩飲んだ「ルビスコ・リゼルヴァ」を置いてみました。


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なんか映画の世界みたいです!

ブドウ畑を眺めながら、ひがな1日ワイングラスを傾けていたい気分!!

 

早起きの私は、朝の散歩も楽しみました。

リンゴの古い産地と聞きましたが、真っ赤に熟したチェリーも発見!

 

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朝食は、メインビルディングの小ぢんまりとした部屋で。手作りのパンと甘さ控えめのリンゴジャムがおいしかったです。

 

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09060312.jpg朝食のあと、ルンガロッテイ社の広報さんが醸造所を案内してくれました。

 

日本からのおみやげの金平糖に大喜び!です。


 

 

 

 

醸造所はこんな感じ。

 

 

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同社は、イタリア農務省からの委託で、ワイン造りの過程で生まれる残留物からエネルギーを再生するバイオマス・プロジェクトを、ペルージャ大学と共同研究しているそうです。

将来的には、醸造所で使用するエネルギーの70%をまかないたいのだとか。

 

ティスティングルームも素敵です。

昨日ワイン博物館で見た逸品のヴィジュアルが、右の壁ぎわに・・・。

 

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ワインリストは、以下のとおりです。

 

09060316.jpg2008 ブレッツァ

2008 フィアンメ
2003 ルベスコ・レゼルヴァ

2003 サン・ジョルジオ

 

09060317.jpg「ブレッツァ」は、ヤングラインと呼ばれ、「あらゆる人々に、特に若者たちに捧げる若々しいワイン」がキャッチフレーズ。グレケットが主要品種のウンブリアIGTの白ワイン。


フレッシュで、リンゴのようなさわやかな果実の香りと甘みを感じます。少々発泡が残っていました。

真夏、ぎんぎんに冷やして飲みたいです。

 

ちなみに、IGTワインとは、イタリアのワインの法律で、原産地表示ができるDOCG、DOCといったカテゴリーに分類されないけれども各地方の特色をもったワインのこと。

 

 

  

09060318.jpg「フィアンメ」は、サンジョヴェーゼとメルロのブレンド。

ダークチェリーの果実味にスパイシーさが加わります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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DOCGの「ルベスコ・リゼルヴァ」。

サンジョヴェーゼ種70%、カナイオーロ種30%。

標高300メートル、12ヘクタールの単一畑モンティッキオのブドウをセレクトして使います。年間生産約5万本。

1年の木樽熟成のあと、4年間瓶内熟成。

 

美しいルビー色、エレガントな果実味にうっとりです。

それでも、昨晩いただいた2001年と比べると、まだまだ若い!

 

 

 

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「サン・ジョルジオ」は、ウンブリアIGTの赤。

5ヘクタールという限定畑のカベルネソ-ヴィニヨンに、サンジョベーゼ(40%)とカナイオーロ(10%)をブレンド。

「ルベスコ・リゼルヴァ」と同様、1年の木樽熟成、4年の瓶内熟成です。

ルンガロッティ社は、日本を含む44か国に輸出しているそうですが、ボルドータイプに造ったこのワインは、インターナショナルを意識したもの、と説明していました。

 

凝縮感があり、とってもパワフル。

タンニンもしっかりしていて、長熟による変化が楽しめそう。

ただし、私の好みは、サンジョヴェーゼのよさが出ている「ルベスコ・リゼルヴァ」かなあ。 

 

  

09060321.jpgワイナリーの売店で、お気に入りのルベスコ・リゼルヴァとスプマンテ、

それから、昨日のディナーで、リゾットの上にかけてあったバルサミコがおいしかったので、即購入。

 

さらに、瓶の形も気に入ったので、特産のウォルナットのリキュールもゲット!
荷物ばかり増えてしまいますね。

 

 

最後に、もう一人のオーナー、テレーザ・セヴェリーニさんが、ご挨拶に駆けつけてくださいました!
とってもエレガントな方です。

 

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テレーザさんは、ジョルジオ氏の妻マリアさんの最初の夫との娘。ペルージャ大学で醸造学の学位を取り、さらに、ボルドー大学の醸造学研究所で専門を究めました。

イタリアでは、女性のワインメーカー先駆者の一人として、とっても有名。

キアラさんと同じく、醸造関係の様々な組織の重職にあります。

1992年からマネジメントに携わり、また、国内外の広報やマーケティングも担当しているそうです。

「ブレッツア」など、いくつかのルンガロッティ・ブランド開発も先導してきました。

 

 

さて、これから車で約2時間半、トスカーナ州に向かいます。

 

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2009.07.17

イタリア縦断の旅から~その2

 ここ10日間ほどなんやかやとあわただしく日々が過ぎて、更新が遅れておりました。

「旅日記2回目はいつですか?」とのお声もちらほらと・・・。


気合いを入れ直して続けますので、どうかお付き合いください!!!

 

さて、6月2日。

イタリア滞在3日目から。

朝9時にナポリのホテルを出発、スーパーストラーダで約370キロ北の内陸ウンブリア州・トルジャーノを目指します。正味約4時間半の旅。ローマ周辺を廻って北へ、といったイメージです。


 

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イタリアの高速道路はアウトストラーダと呼ばれており、日本のETCに似たテレパスという無線式料金収受システムが整備。

アウトストラーダに続く高規格道路がスーパーストラーダですが、こちらは無料。

今回走ったのは快適な高速道路でしたが、場所によっては、牛の群れが出没するような田舎道だったりすることもあるそうです。


ところが・・・

 

1時間ほど走ったところで大雨というかゲリラ豪雨に降られ、なんとバスのワイパーが壊れてしまったんです。
あらら、いきなりのアクシデント!


サービスエリアに避難です。

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雨合羽を着て運転手さん1人奮闘して大変でしたが、私はといえば、どうすることもできず、おいしそうなサラミやらチーズやらを物色して時間を過ごしました。


それでも、思いのほか早く代替車が到着。

 

さあ、気持ちを入れ替えて、出発です!

 


09060203.jpgイタリア半島のちょうど真ん中に位置するウンブリア州は、イタリアで唯一海に面していない州。

北東にアペニン山脈が走り、その西側に緑の丘陵地帯が広がり、「イタリアの緑の心臓」とも呼ばれています。


州都ペルージャは、ローマからもフィレンツエからも、車で2時間ほど。

ペルージャををはじめ、アッシジ、オルヴィエート、スポレート、モンテファルコなど、エトルリア、古代ローマ、中世に栄えた都市国家の面影が数多く残されています。
 

 

私たちが目指すのは、ペルージャから南西に20キロほど下ったトルジャーノ。

テヴェレ川とウンブリア渓谷の間にある小高い丘陵地帯。車窓からの景色も変わってきました。

 

09060204.jpg紀元前のエトルリア時代からの要塞の街で、見張りの塔が今も残されています。


09060205.jpgちなみに、トルジャーノの地名の由来は、見張りの塔のトーレ・ディ・ジャーノから。

 

ジャーノとは、ギリシャ神話のヤヌスの神のことで、前後にある2つの顔で過去と未来を見つめることができる双頭の神様です。

そう、新年の1月、ジャニュアリーの語源としても知られていますね。

 

敵の侵入をどちらの方向からも見張ってくれるジャーノ神は、この街の守り神だったのでしょう。

 


今回の訪問ワイナリーは、ルンガロッティ社です。


トルジャーノのワイン造りはローマ時代から始まり、中世にはベネディクト派修道院によって保護されたという古い歴史があります。

 

でも、現在この地のワインが高い評価を受けるようになったのは、1960年代の初め、地元の地主、ジョルジオ・ルンガロッティ氏の村おこしによるところが大といえましょう。


彼は、世界中のワイン銘醸地をまわり、研究し、ワイン造りに投資を惜しまなかったといいます。

そして、当時は大量消費用で特徴もなく水のようだったこの地方のワインの改革を行ったのです。

現在は、2人の娘、キアラさんとテレーザさんに受け継がれ、先駆的な女性オーナーのファミリービジネス成功例としても注目されています。


ファミリーは文化活動にも熱心で、世界的にも有名な「ワイン博物館」の設立、また、五つ星ホテルやアグリツーリズモのファームハウスの経営などにも携わっています。


 

ファームハウスに到着したのは、午後5時半を回っていました。

ローズマリーの香りが漂います。


09060206.jpgオリーブに囲まれた自社畑は約250ヘクタール。

畑を見渡せるファームハウスは、17世紀の建物を解体し、木材をしっかり乾燥させてから再建したというこだわりよう。ファミリーの伝統への敬意と革新への情熱が、伝わってきます。

 

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荷解きもそこそこに、さっそく「ワイン博物館」の見学へ。


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1974年、先代のジョルジオ氏(1999年、89歳で逝去)が地域振興の思いを込めて設立したものです。 

この建物にもこだわりがあり、17世紀の貴族、ガラツィアーニ・バリオーニ家が夏の避暑用別荘として用いていたものとか。

 

そして、ジョルジオ氏の妻、マリアさんの存在も忘れられません。

美術史とアーカイヴについて学んだ彼女は、博物館づくりでも大きな役割を果たし、博物館を運営する基金設立では中心になって活躍したのです。

 

そう、ルンガロッティ社は、才能ある女性たちによってしっかり継承されている・・・のでした。

 


博物館の中は、ワインにまつわるコレクションがいっぱい。考古学的にも芸術的にも様々な観点から楽しめる21もの部屋がありました。

エッチングやデザイン画、また、ワインやブドウ栽培をテーマにした書物や資料が数多く収集されていて、時間が許せば、1日でも過ごしたいなって思いました。


撮影自由という寛容な施設だったので、気になるものをいくつかパチリ。

 


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09060224.jpgこの日のディナーは、

博物館のすぐ近くにあるルンガロッティ社経営の五つ星ホテル「ル・トレ・ヴァセーレ」のレストラン「ル・メラグラーネ」で。

 

 


まずは、ウェイテイングバーで、

冷たいスプマンテ「ルンガロッティ ブリュット」をいただきました。


 

 

 

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置物も気になりましたが、さらに、バーカウンターにあったスプマンテのお供(?)に、サクランボと一緒に丸い揚げせんべいがあったのが、とっても気になりました!

 

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そして、ダイニングに移動。


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09060231.jpgオリジナルの皿には、ホテルのブランドマークが・・・。


 

 

 

 

 

ワインリストは、以下の通り。ルンガロッティ社の代表的なワインです。
 2008 トッレ・ディ・ジャーノ
 2006 ルベスコ
 2005 ダルキス


 

トルジャーノDOCの白と赤をいただきました。

 

「トッレ・ディ・ジャーノ」は、トレッビアーノ・トスカーノ(70%)とグレケット(30%)をブレンドしたフレッシュでフローラルな辛口白。

 

「ルベスコ」は、ルンガロッティ社の旗艦となるワイン。サンジョヴェーゼ主体にカナイオーロを加えたソフトな果実味の赤ワイン。名前のとおり、ルビーの輝きに魅惑される外観でした。

ステンレスタンクで醗酵後、オークの樽で12か月、さらにセラーに12か月寝かせてから出荷されます。


 

赤ワインのルベスコで作ったリゾットには、羊乳から造る地元産ペコリーノチーズを使用。

コクがあって、私の一番のお気に入りでした。ワインもどんどんいけちゃいます。

 


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09060235.jpgデザートは、セミフレッド。

生クリームやメレンゲを加えソフトに冷凍させたイタリアの冷菓です。

グラッパに漬け込んだレーズンが添えられ、デザートワインの「ダルキス」との相性が抜群!

 

 


 

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CEOのキアラ・ルンガロッティさんがご挨拶に来てくださいました!

案内人の林茂さんとは、長いお付き合いのようです。

 

キアラさんは、ペルージャの大学で農業の学位を取り、ボルドーでも醸造コース で学び、早くからワインビジネスに携わっています。

モットーは、"maintaining, continuing,expanding "

伝統を重んじるがゆえに、その先に、様々な改革や実験への情熱がわき、また、発展に広がると、確信しているそうです。

CEOの仕事だけでも大変なのに、イタリアのワインツーリズム振興のための全国協会会長をはじめ、様々なワイン関連組織の役職もたくさん!

クラシック音楽への造詣も深く、ワインの仕事とともに世界中を飛び回っていたことが多かったそうですが、2007年にジョヴァンニ君が誕生し、休日はほとんど彼との時間を楽しんでいるのだとか。

 

 

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帰りに、2001年の「ルベスコ・リゼルヴァ」をいただき、部屋に戻って4人でグラスを傾けました。

1990年にDOCGに昇格した赤ワイン、トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァです。


サンジョヴェーゼ主体で、トスカーナ州を代表するキャンティとほぼ同じ品種だそうですが、ウンブリアの穏やかな気候を反映してか、とってもまろやか。

いきいきとしたルビー色で、タンニンも柔らかです。

 


 

バスの長旅の疲れを一気に忘れさせてくれる、エレガントなワインの香りに包まれ、今夜もぐっすりです。
 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)