9月にカリフォルニア・ナパを久しぶりに旅して、ワインとともに楽しむ「美味しいカリフォルニア」を再発見しました。
そこで、現地報告を何回かに分けてお届けすることにしました。
1回目は、「全米一予約の取れないレストラン」といわれている、「フレンチ・ランドリー」。
カリフォルニア・ナパの隣り街、ヨントヴィルの閑静な住宅街にある石造りの2階建て、なんとも素朴な佇まいの店。
6年前、サンフランシスコの対岸、バークレーに住んでいたころ、日本から家族や友人が訪ねてくるたびに予約を取ろうとトライしたのですが、いつも振られてばかり。
というのも、2か月前の10時きっかりに電話をかけるというユニークな予約システムがあるからなんです。今回はちょっと奥の手を使って、予約に成功!
訪問したのは9月4日。午後7時45分からの1階のテーブルでした。
毎日メニューは変わります。
オーナーシェフのトーマス・ケラー氏から歓迎のレターが届いていました!
レストランの建物は1880年代に造られ、最初は酒場として使われていましたが、1920年から始まる禁酒法の時代には一時売春宿に。
さらに、20年代後半、フランス人がスチームを使った洗濯屋を営むようになり、それが現在の店名の由来といいます。
74年にヨントヴィルの町長夫妻が買い取りレストランにリニューアル、そして、94年、現在のシェフでオーナーのトーマス・ケラー氏がフレンチ風のアメリカ料理を提供するレストランをオープンします。
ただし、7月のオープニングの日は散々の結果だったそう。しかし、スタッフの団結は逆に強まり、その後、地元の「サンフランシスコ・クロニクル」紙をはじめ、97年に「ニューヨーク・タイムズ」紙で絶賛されたのをきっかけに大ブレイク!
メニューは、240ドルのプリフィックスのみ。
「シェフのテイスティングメニュー」と「ベリタリアン向けのテイスティングマニュー」で、どちらも9品が並びます。
ベジタリアンメニューもとても美味しそうだったのですが、
ジェネラル・マネジャーのニコラス・ファヌチさんの「初めて召し上がるのであれば、そして食事の制限がないのであれば、シェフのメニューを選ばないと、後悔なさるのでは」との強力なるサジェスチョンがあって・・・もちろん、そちらを選びました。
洗濯バサミを模したナプキンホルダーがしゃれています。
テーブルを飾る花もランプも大げさでなく、可憐なところが素敵です。
まず、チーズ風味の小さなシューをつまみながら、アペリティフは泡ですね。
2002ロデレール・エステート キュヴェ・レルミタージュ
ナパの北、メンドシーノ郡・アンダーソンヴァレーにあるこのワイナリーは、シャンパーニュの名門、ルイ・ロデレールがスパークリングワイン専門に設立。100%自社畑のブドウを使用。
太平洋から吹く冷たい風と深い霧によって冷涼な気候が保たれ、気候条件がシャンパーニュ地方とよく似ているのです。
「キュヴェ・レルミタージュ」は、ホワイトハウスの晩餐会でも使われる同社の最高級品。黄金色の輝き、酸の切れもよく、ヘーゼルナッツや洋ナシの豊かな味わいが広がります。
定番のサーモンのタルタル・クレープ包み。ケラー氏がアイスクリームショップでひらめいた仕立てだそうです。
では、コースの始まり!
oysters and pears
アイランドクリークのカキと真珠に見立てたタピオカ入りサバイヨンソース。
セブルーガのキャビアがたっぷり載って。お店の代表的なメニューです。
salad of lobster mushrooms
歯ごたえのあるロブスターマッシュルーム。キノコというより、魚介類系の味?
イエローコーン、ベビーリーキ、卵黄仕立てのベルナーズ・シロップを添えて。
白ワインをいただきました。
2006レミィ シャルドネ(ハイド・ヴィンヤード)
ナパの玄関口、カーネロスの栽培家、ラリー・ハイド氏のワイナリー。
「キスラー」や「ポール・ホブス」、「フロッグス・リープ」などの生産者にブドウを提供していることで知られています。
「レミィ・ワイン・セラーズ」もその一つで、オーナーで醸造責任者のレミィ氏は、「ドミナス」や「シミ」で素晴らしいワインを生み出した実績を持つ人。フィルターをかけず、ブドウ本来のいきいきとした酸味やフルーティーさが伝わってきました。
パンも自家製。
grilled pave of japanese toro
軽く炙った日本産のトロに組み合わせたのは、秋田小町のお米、ネーブルオレンジ、アボカド、スプリングオニオン、コリアンダー。マツタケ風味のブイヨンで。
かなり日本の素材を意識しています。
cesar salad
メーン州のロブスターテールにロメーン・レタスをほどよく焦がして。ニンニクとオリーブ風味のガーリックメルバとカラスミが添えられています。
へえ、これを米国名物「シーザース・サラダ」というの? 洗練されてます。
赤ワインをいただきます。
2007ポーター・バス ピノノワール(ロシアン・ヴァレー)
写真ぼけぼけになってしまったので、ワイナリーのロゴを紹介します。
虫さんマークに象徴されるように、こちら、1980年に古いジンファンデルやパロミノが植えられていたブドウ畑を買い取り、土壌を改良、徹底した有機栽培でピノノワールを育てています。
干したプラムやブラックチェリーの香り、森の土のニュアンスも感じられ、エレガントなタンニンを楽しめ、余韻も十分。
ちなみに、この店のワインリストは、100ページ近くあります。
カルトな「スクリーミングイーグル」の1997年ヴィンテージは、なんと1万ドルを超えていました!!
marcho farms cœur de veau
仔牛の心臓です。内臓好きなので、うれしいメニュー。
ハックルベリーの実、シポリーニオニオン、ターニップ、コーンサラダのソービーズソース。タマネギの甘い味わいに酔えます。
elysian fields farm lamb saddle
メインのラム肉です。サマースクワッシュ、オリーブ、そしてデミ・セックのトマト、タイムがアクセントに。
「常にゲストにサプライズを与える料理」が同店の哲学らしいのですが、メインはごく平凡な印象。
それにしても、アメリカ人には量が少ないのではないか、と心配でした。
andante dairy cavatina
二重唱、「カヴァティーナ」にたとえたチーズのプレート。
ピーチ、ベルギー産アンディーブ、パンプキンシード、ウォータークレソン、バスク地方のピメント・・・。インターナショナルな味わいです。
honeydew melon sorbet
ホームメードのハニーデューメロンのソルベ。バジルでさっぱりと。
最後のデザート、二者択一なのですが、選びあぐねて、両方いただいちゃいました。
gateau saint nizier au manjari
濃厚なチョコレートケーキにマンゴの味わい、ライムとココナッツミルックのソルベが優しい味に。
lemon verbena vacherin
パンナコッタとレモンとバーベナを合わせたソルベ、地元シルヴァラード・トレイルの冷たいストロベリーコンソメと一緒に。 これ、絶品でした!
バーベナのハーブティーをいただきました。
プティフールやショコラも、全部食べてしまいたいくらい、美味しかった!
最後に、キッチンに案内していただきました。
トーマス・ケラー氏の右腕としてキッチンを守るティモシー・ホリングスワース氏と。
2002年からケラー氏のもとで腕を磨き、ケラー氏がニューヨークにつくったレストランのオープンを任された方です。
野菜は、店のすぐ近くにある自家農園で育てているそうです。
うーん、機会があれば、今度は野菜づくしのメニューに挑戦したいなあ。