このところ、日本の産地で栽培・収穫したブドウを使い、その土地の特徴を生かして造った「日本ワイン」の評価が高まっています。
「日本ワインを愛する会」事務局長の遠藤誠さんの案内で、日本ワインの有名どころ5社のワインがそろったメーカーズディナーが開かれました。合わせる料理は、日比谷のザ・ペニンシュラ東京の「ヘイフンテラス」の中華という、ユニークでゴージャスな企画です。
遠藤さんは、ワイン評論家として著名な山本博さんと一緒に2001-2002年に国内のワイナリーを集中的に訪問し、2003年、「日本のワイン」の著作出版と同時に、「日本ワインを愛する会」を設立しました。
輸入原料をブレンドして造るものもある「国産ワイン」と差別化するため、あえて「日本ワイン」と名づけたそう。
日本の土壌の個性を表した、日本の醸造家による世界に通用するワインが「日本ワイン」というわけです。
ワインリストは次のとおりです。
2005ドメーヌ・タケダ キュヴェ・ヨシコ
2008グレイス甲州鳥居平
2008ドメーヌ・ソガ シャルドネ・ムラサキヴィンヤード
2007ココファーム&ワイナリー 第一楽章
2005シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー
蔵王連峰のふもと、山形県上山温泉郷近くにあるタケダワイナリー。タケダワイナリーは、1920年(大正9年)からワイン造りをはじめ、現在の岸平典子社長で5代目。開園以来、ワイン製造には自社畑か山形県産のブドウのみを使用することにこだわってきたワイナリーです。
また、カベルネソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネなどのヨーロッパ系品種を日本でいち早く栽培を始めたことでも知られています。
20年の土壌改良を経て、15ヘクタールの自社農園ではいま、自然のサイクルを最大限に生かした減農薬、無化学肥料の自然農法栽培を行っています。
「キュヴェヨシコ」は、シャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。シャンパーニュと同じ製法で造られた本格的なスパークリングワインです。12月1日にいよいよ発売とのことでしたが、予約で完売。今回は熟成試験用に取りおいていたものを特別にいただきました。「ヨシコ」は、経営に尽力した岸平社長のお母様の名前だそうです。
泡立ちがきめ細かく、とってもクリーンな味わいでした。最初は閉じていた印象でしたが、2時間余の食事の最後には、まろやかでクリーミーなニュアンスも出てきて、変化が楽しめました。数年置いて飲むと、またとても美味しくなるのでしょうね。日本でも、こんなに潜在力を秘めた泡ができるなんて、素晴らしいですね。
料理でまずサーブされたのは、ヘイフンテラス特製焼き物入り盛り合わせ前菜。
ナツメと豆腐の香料煮、特製釜焼きバーベキューミート、バイ貝の辛味ソース煮が盛られていました。
マスター・オブ・ワインのジャンシス・ロビンソンさんが2000年、「グレイス甲州」を「私が飲んだ一番美味しいワイン」と英字紙で紹介してから世界でも注目されている中央葡萄酒。
ボルドー大学のデュブルデュー教授の指導で造ったキュヴェは、アジア初のパーカーボイントを取得、2007年、EU基準を満たした日本ワインとしての輸出認定第一号にもなり、話題でした。
「祖父から教えられた地ブドウ、甲州種にこだわり、これからも大事にしていきたい」というのは、ワインメーカーの見澤彩奈さん。4代目三澤茂計社長の娘で、ボルドー大学ワイン醸造学部で学位を取得。「透明感のある甲州種は、どこか日本の文化を象徴しているようでユニークな品種。世界に広めたい」と夢を語ります。
鳥居平畑は、勝沼でも標高が高い山路地帯にあり、日照量、昼夜の寒暖差、水はけのよさなど恵まれた栽培地域。ホワイトオークの小樽を使用。
三澤さんが表現するように、本当にガラスのように透き通った色が魅力的です。果実の凝縮感もあり、さわやかな味わいです。
待っていました! ふかひれです。
特選気仙沼産ふかひれ姿入り極上蒸しスープ 菊の花茶の香り。
「ドメーヌ・ソガ」の小布施ワイナリーは、以前9月28日のブログでも紹介しました。長野県で最も古い歴史をもつ須高地区で、フランス系品種を中心に栽培しているワイナリー。ヨーロッパ式垣根仕立てを採用、低農薬栽培を実践しています。
遠藤事務局長が5年前、初めて最高栽培・醸造責任者の曽我彰彦さんに会ったとき、あまりに真っ黒な日焼けした顔だったのでびっくりしたそうです。時間さえあれば畑に出ているのが大好きな曽我さん。「愛車はトラクター」とワイナリーのパンフレットにありました。
今回いただいたシャルドネは、繊細で複雑で、樽からくるパワフルさとは違った、果実の風味がまろやかで、ちょっとくぐもった印象。曽我さんが何かで、「ブルゴーニュのルフレーヴ女史を尊敬している」と語っていたのを思い出しました。
ご本人は、「まだまだシャルドネは勉強中で、発展途上。もう少し時間がたてば樹も大きくなり、皆様に喜んでいただけるものが造れると思うのですが」と、謙虚でした。
活伊勢エビの特上スープ炒め煮。
ぷりぷりした歯ごたえの伊勢エビは旬の千葉県産。ネギやショウガの香りがやさしかった一品。
栃木県足利市のココ・ファーム・ワイナリーは、サミットにも登場したワインとして有名になりました。
1950年代、特殊学級の中学生たちが山を開墾し、600本あまりのブドウの苗木を植えたのが始まりでした。やってもやってもやりつくせない自然相手の作業・・・知恵遅れと呼ばれている若者たちが、きょうも急斜面で汗を流しています。
日本の赤ワイン用品種といえば、まず思いつくマスカットベリーA。赤い果実のフルーティーな味わいです。
標高700メートル、ブドウ成熟期の9-10月の寒暖差が大きいシャトー・メルシャンの長野県塩尻市桔梗ヶ原地区。国際コンクールの金賞受賞の常連です。
日本の「フィネスとエレガンス」を追求している日本のリーディング・ワイナリー。
明るめのきれいなルビー色。熟した果実にコーヒーのニュアンスなどが加わり、果実の力強さと新樽の風味のバランスのよさはさすが、です。
「日本ワインの全体的なレベルアップのために、技術データもできる限り公開している。それが、大企業の責任」と、担当者からが力強い言葉が・・・。
お肉は、和牛のアスパラ巻き煎り焼き オリジナルXOソースです。
XOソースはアミの風味にシャープな辛味が加わり単体ではおいしいのですが、個性が強すぎて、ワインの香りや味わいがよくわからなくなりました。XOソースとワインの組み合わせは、ちょっと難しいのではないでしょうか。中華料理に詳しい方、教えてください。
水で口を洗いなおして、
最後の料理、金華ハム煎り卵白チャーハン干し貝柱添え。
デザートは、マンゴープリン。
今回この会のために、東京店以外にも、香港や上海、北京のザ・ペニンシュラからシェフが集結。
とってもレベルが上がっている日本ワイン。今後ますます注目ですね。