プロヴァンスアーカイブ

2009.07.04

プロヴァンスのロゼも奥が深い!

銀座7丁目「"V."de Bistro Vionys」のマリアージュの会に出掛けました。


今回のテーマは、地中海のリゾート地、フランス・プロヴァンス地方。

マルセーユからニースに至るコート・ダジュール一帯に広がるワイン産地です。梅雨明け後の夏の強い日差しを待ち遠しく思い浮かべながら・・・。


プロヴァンスといえば、フレッシュでフルーティーなピンク色のロゼワインが超有名。魚介類と夏野菜をたっぷり使った郷土料理も期待できそうです。

 

ワインリストは以下の通り。
1)NMサブラン・ブリュット・オリジン (ドメーヌ・リステル)
2)2006フラン・ド・ピエ・グリ・ド・グリ・ロゼ (ドメーヌ・リステル)
3)2007バンドール・ロゼ (ドメーヌ・タンピエ) 
4)2006コート・ド・プロヴァンス・ロゼ (ドメーヌ・コマンドリー・ド・ペイラソール)
5)2006コート・ド・プロヴァンス・ブラン (シャトー・サン・バイヨン)
6)2006バンドール・ブラン (ラ・バスティード・ブランシュ)
7)2006ヴァン・ド・ペイ・デュ・ヴァール・メルロ (ドメーヌ・ド・トリエンヌ) 

 


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最初はシャルドネが主体の地元産ヴァン・ムスー。

砂質土壌が広がる南フランスのカマルグ地方にヨーロッパ最大のワイン畑を所有するといわれるドメーヌ・リステルのもの。

リステルは、企業姿勢として地域独自の自然環境保護を掲げ、また、ヨーロッパにおける「知的ブドウ栽培の先駆者」ともいわれているそう。


ピーチや白い花を思わせる香り、フレッシュでいきいきとした躍動感を感じさせるスパークリングです。「少々甘めに思われるでしょうが、食前酒としては楽しめるのでは」と、オーナーソムリエの阿部誠さんの解説でした。
熟したトマトをくり抜いた中にバジル風味の押し麦が入ったおいしいアミューズをいただきました。

 

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続いて面白い体験をしました!!

なかなか機会がなかった、ロゼワイン3種類の飲み比べです。

 

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1つめの「グリ・ド・グリ」は、最初のスパークリングと同じ生産者のロゼワイン。

品種はグルナッシュ100%で、やさしいアタックで、ふくよかなボリューム感が広がります。


2つめは、2年前に公開された映画「プロヴァンスの贈りもの」に登場してから大ブレイクのドメーヌ・タンピエの「バンドール・ロゼ」。このドメーヌ、著名なワイン評論家、ロバート・パーカー氏が「ワイン・バイヤーズ・ガイド」で、南仏の"5つ星ワイン"に挙げた4つのうちの3つを占めるなど、評価が上がっています。

第二次大戦後、バンドールのワインをAOCとして認知させるのに尽力したリシュアン・ペイロー(バンドールの父とも)がオーナーだったのですが、1990年代後半から業績が低迷。2000年以降、ダニエル・ラヴィエ氏が改革を任され、かつてのタンピエの酒質を復活させたのだといわれています。
品種は、ムールヴェードル55%、サンソー25%、グルナッシュ20%。スパイスの印象が強く、力強いロゼでした。


3つめの「コート・ド・プロヴァンス」は、赤い果実の風味の軽やかなロゼ。サーモンピンクの色が濃い目で美しく、パイナップルのような南国の酸味と甘みがさわやか。品種は、グルナッシュ、サンソー、ムールヴェードルのブレンド。

 

私は、スパイシーでコクのある「バンドール・ロゼ」が好みでした。


ロゼに合わせて、前菜は、野菜の宝庫プロヴァンスから野菜の詰め物3種。赤ピーマンにオレガノを効かせた豚の詰め物、カボチャのタルト、ズッキーニにエビの練り物を詰めてオリーブのタプナードを添えたもの。

 

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メインディッシュは、

待っていました! ブイヤベースです。

伊勢エビ、ホウボウ、イトヨリ、ホタテ・・・。カブやブロッコリーなど野菜もたっぷり。そして、ニンニクのペーストがアクセントに。


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白ワインの品種は、「コート・ド・プロヴァンス」がロール90%、ユニブラン10%。

「バンドール・ブラン」がクレーレット47%、ユニブラン40%、ブールブラン8%、ソーヴィニヨンブラン5%。

どちらもまろやかな酸味を包み込むほど果実味が豊か。さすが、南仏の味わいです。前者にはハーブ、後者にはナッツのニュアンスが加わります。


前者の造り手、シャトー・サン・バイヨンは、プロヴァンスの丘、地中海にほど近い場所にあります。 「サン・バイヨン」の名は、3世紀、ニームのアリーナでライオンと戦わされ殉教したカトリック信者に由来するとか。

この地域ではローマ時代からブドウ栽培が始まっていたようですが、1970年代にすべて植え替えられたとか。現在は、最新の醸造設備を使用したヴィオディナミを実践、ブドウの収穫量を抑え、自然界の働きに逆らわないグラヴィティ方式を取り入れていることでも知られています。


 

さて、最後に、赤ワインをいただきました。ドメーヌ・ド・トリエンヌの100%メルローの赤ワインです。


09070403.jpg聞けば、あのドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティとドメーヌ・デュジャックのオーナーが、1990年、南仏の地で、ワイン造りの新たな可能性を求めて築いたワイナリーだそうです。


エクス・アン・プロヴァンスの東南、海辺から30キロほど内陸に入った標高450メートルのロジ・ド・ナン。

ここは、古代エトルリア人がブドウを植えてから何千年もの間栽培が続けられてきた歴史ある場所。約40ヘクタールの畑に、シャルドネ、ヴィオニエ、シラー、メルロ、カベルネソーヴィニヨンが育てられています。

カベルネソーヴィニヨンとシラーをブレンドし、ヴァン・ド・ペイのカテゴリーで造るなど、新たな挑戦を続けているのです。


いただいたメルロは、ブラックベリーのリキュールやシナモンなどの香りが広がり、タンニンもまろやか。また、旧樽のロースト香が加わって、なんとも穏やかな味わい。

ボルドー好きといわれるジャック・セイス氏(デュジャックのオーナー)が楽しんで仕上げている、ような気がしました。

 

トリエンヌのワインは、南の太陽をいっぱいに浴びたブドウらしく、果実味がフレッシュでピュアな印象。値段も千円台からと買いやすいのがうれしいですね。

カベルネとメルロ、それにシラーの最上のキュヴェを選んでブレンドされている「サントーギュスト」を今度見つけたら、ぜひ買ってみたいと思います。


デザートは、冷たいヌガー・ド・プロヴァンス。ハチミツソースでいただきました。

 

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プロヴァンスはカジュアルなイメージが強かったけれど、ロゼ一つをとっても奥深いし、トリエントのように南仏ならではの挑戦も興味深いし・・・。

今回もいろいろと発見がありました!

だから、ワインの世界って、楽しいんですよね。 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)