フランスアーカイブ

2012.04.09

屋形船でシャンパーニュお花見

朝の情報番組を見ていたら、きょうは隅田川のお花見の話題一色でした。

東京は、桜のシーズン。

私も、週末、隅田川のお花見に参戦してきました!

銀座のシャンパーニュ・バー、ヴィオニスの阿部ソムリエの企画で、

「屋形船でoh! hanami」。

80人乗りの屋形船を40人で借りきって、シャンパーニュは飲み放題という、

シャンパーニュ好き、サクラ好きには見逃せない企画なんです。

 

 

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屋形船が出発したのは、午後1時、晴海のトリトンスクエア前の公園内にある小型船発着所から、隅田川を上っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

12040702.JPGシャンパーニュ飲み放題に登場したのは、「フィリポナ レゼルヴ・ロゼ・ブリュット NV」。


1522年にアイ村で創業した老舗のシャンパンハウス。著名なクロ・デ・ゴワセ畑の黒ブドウを一部使用したロゼ・シャンパーニュ。ちょっぴりオレンジがかったサーモンピンク色、チェリージャムのようなやわらかな香りにほれぼれですが、何といっても、味わいにふくらみがあって、ロゼの中で大好きな1本です。

ピノ・ムニエ55%、シャルドネ25%、ピノ・ノワール20%。

オレンジ色の輝きに魅了されますね。

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お料理は、屋形船料理です。

アサリの佃煮なんかもあって、江戸前です。

最後は、定番のてんぷらで、キスやアナゴ・・・。

 

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ハマグリの蒸し煮。ハマグリがとっても大きいんです。

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スカイツリーが見えてきました・・・。

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やはり、ポイントで、記念撮影してしまいますねえ。

 

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観光船は、ぎゅうぎゅうの満員でした!!

スカイツリーを撮影するのも、一苦労・・・

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晴れた青空と白い雲、桜は満開・・・で、もう言うことなし、でした。

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2012.02.29

松嶋啓介シェフ&石田博ソムリエの素敵な晩餐

お久しぶりです!
まだまだ凍える日々(東京は今日雪でした!)が続いておりますが、皆さま、楽しいワインライフを送っていらっしゃることと思います。


さて、先日、日本ソムリエ協会の機関誌「ソムリエ」の佐藤編集長の音頭取りで、メディア分科会がスタートしました。マスコミ関係者の中には、ワイン好き(酒好き?)が多く、協会会員に名前を連ねる人も少なくないのです。特に何かの目的があるというわけではなく、ま、楽しく飲んで交流しましょうという気軽な食事会。当日は、月刊誌の締め切り日と重なって、雑誌関係者の出席がなかったことがやや寂しかったのですが、新聞社やテレビ関係者が集い、なごやかな会になりました。


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場所は、原宿の「レストラン・アイ」。ちょうどオーナーの松嶋啓介シェフがニースから帰国中。松嶋シェフのオリジナル料理それぞれにベテランソムリエの石田博さんがワインを合わせるという、ぜいたくな企画でした。


テーブルには、フランスの春を彩る黄色のミモザの花が・・・。今年は、ファッションの世界でも、ミモザ色が満開のようです。

 

 


本日のシャンパーニュは、「NVブルーノ・パイヤール・ブリュット・プルミエ・キュヴェ」。

ニースのKEISUKE MATSUSHIMAで、ハウスシャンパーニュとして出しているもの。

オーナーのパイヤール氏はプロヴァンスにも家があって、そうしたご縁もあるそうです。


ミネラル感もしっかり感じられ、口の中に広がる柔らかくきめ細かな泡は、いつまでも飲んでいたいと思わせるおいしさでした。

 

 

 


まずは、シャンパーニュのお供3品。

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続くアミューズは、カリフラワーのクリームとコンソメジュレ、生ウニの組み合わせ。カリフラワーの濃縮された自然の甘さが印象的でした。

 

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ここでサービスされたのは、シャトー・ペスキエの「2010 ヴィオニエ」。

 

アヴィニョンのはずれのヴァントゥー山にあるこのシャトーは、松嶋シェフが修業時代から世話になっているそうで、今では家族ぐるみのお付き合い。あの「情熱大陸」の撮影ロケもここが舞台でした。

 

自然が豊かで、大のお気に入りの場所で、松嶋シェフにとってはたくさんのインスピレーションがわく「デザイン工場」でもあるそうな。エチケットには桜がデザインされています。

 


1皿目の前菜は、帆立貝柱、ブロッコレッティ、キャヴィア、貝類のエミュルション。帆立貝柱のソテーと味わいのやさしいブロコレッティ(日本では茎ブロッコリーと呼ばれています)との組み合わせ。帆立のヒモからとった旨みいっぱいのスープをカプチーノ仕立てにして、キャヴィアの塩味とさわやかなレモン・オリーブオイルがアクセントです。


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次にサービスされたワインは、フランソワ・ヴィラールの「2009 サン・ジョセフ・ブラン フリュイ・ダヴィユラン」。

 

ローヌ地方屈指の作り手、フランソワ・ヴィラール。品種はマルサンヌとルーサンヌ。

 

ブドウをしっかり完熟させているので、ブドウ本来の味わいが楽しめて、白い花の香りも心地よいのです。複雑みも感じられ、それでいてフィニッシュは爽やか。丁寧に造られているなと感心させられた1本でした。

 

 

 


2皿目の前菜は、ランド産鴨のフォワグラのキューブ仕立て、栗のブイヨンを添えて。キューブ状のフォワグラは、フォワグラそのものを味わうテリーヌ・ナチュールと、黒トリュフ風味の濃厚なクリームで仕上げたクロケットの2種。栗のふくよかな甘さが広がります。


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3皿目の魚料理は、真鱈のローストとひよこ豆のピュレ。真鱈とひよこ豆は、地中海地域の定番の組み合わせ。ガーリック入りのパン粉をまぶして香ばしくローストした真鱈に滑らかなひよこ豆のピュレを添えて、レモンとセージの香りのソースで爽やかな風を演出です。

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ここで登場したワインは、ドメーヌ・ド・ラ・トゥール・デュ・ボンの「2010 バンドール・ロゼ」。

 

有機栽培の畑からエレガントなバンドールを造ることで知られる生産者です。

年間300日は目がくらむほどの晴天が続くという典型的な地中海性気候。ムールヴェドル、グルナッシュ、サンソーのブレンドです。典型的な従来のスタイルのバンドールとはちょっと違って、フレッシュでナチュラル、柔らかさも感じられます。

 

 

 

 

4皿目の肉料理は、プロヴァンス地方でもよく食べられる仔牛をローストで。リードヴォー(胸腺肉)はパン粉を軽くまぶして揚げ焼きにしたパネソテー。クルミと合えたジャガイモのニョッキは、イタリア・ピエモンテ州の定番の付け合わせだそうです。今でこそ、松嶋シェフの住むニースはフランス、ピエモンテ地方はイタリアですが、このあたり、13-16世紀、もともとはサヴォワ家が治めたサヴォワ公国(サルデーニャ王国の前身)という一つの領土だったのです。松嶋シェフは、サヴォワの食文化を表現することにも熱心だと聞きました。


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赤ワインは、イタリアワインの登場です。トリンケーロの「1999 バルベーラ・ダスティ ヴィーニャ・デル・ノーチェ」。

 

アグリコーラ・トリンケーロは、ピエモンテの著名なリストランテ・ダ・グィードの経営者一族。

バルベーラ100%。1929年に植えられた畑で、良年にのみ最上のブドウを選んで造られるもので、骨格がしっかりして、こなれたタンニンが上品、酸もいきいきしています。「アスティの宝石」と呼ばれるのも、納得です。

 

 

 

 

 

デザートは、冬場の食材として松嶋シェフがお気に入りという栗カボチャをさっくり焼き上げたビスキュイに。ビスキュイにナイフを入れると、ホワイトチョコのガナッシュと合わせた栗カボチャのクリームがとろり。マロンのアイスクリームも濃厚で大満足。

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デザートに合わせて、ドメーヌ・ジャンティーユの「2009 ミュスカ・デュ・カップ・コルス」をいただきました。

 

イタリア半島西のリグリア海に浮かぶフランス領コルシカ島のワイン。マスカットを使った甘口の白ワインで、柔らかな甘みはこの品種ならではの味わいでした。

 

 

 

 


最後に、待ってました!松嶋シェフ登場!! プライベートなこととか、フランスの情報とか、いろいろとぶしつけな質問もしてしまいました。ゴメンナサイ。でも、にこにこと、しかも率直に答えてくださって、うれしかったです。


12022015.JPG南仏の晴れた青空を思い浮かべながら楽しんだ晩餐でした。

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2011.11.22

阿部誠さんのヴィンテージ・シャンパーニュ

大・大・大お久しぶりのブログの更新です。

ほんと、更新のサボり癖って恐ろしいもので・・・。

 ところで、あまりに素晴らしく、記録に残しておかないと忘却の彼方に消えてしまうという焦りもあって、再びブログと向き合うことにしました。
 それは、11月19日、ホテル西洋銀座3階のフレンチ「レペトワ」で開かれた、阿部誠さんのヴィンテージシャンパーニュの会でした。


11111901.JPG 阿部さんは、銀座で「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」を営むオーナー・ソムリエ。2002年度全日本最優秀ソムリエで、「阿部誠のシャンパーニュを極める」(ワイン王国)などの著書があります。
 この本に掲載されているシャンパーニュを中心に、今まで8回のシャンパーニュディナーが開催されてきたのですが、その最終章ということで、今回、ヴィンテージ・シャンパーニュを比較試飲する企画が実現しました。


 実は、この秋、8回目のシャンパーニュディナーに参加して、「ヴィンテージ・シャンパーニュもぜひお願いしますね」と阿部さんに言ったときには、「なかなか垂直で揃えるの、大変なんですよね」と、ちょっと弱気な反応だったのです。


 でも、サ・ス・ガです!!


 本と同じアイテムのMoet et Chandon社のグラン・ヴィンテージをしっかりそろえてくれました。
 ワインリストは以下の通りです。
 Moet et Chandon Brut Imperial NV(マグナム)
 Moet et Chandon Grand Vintage 2003
  Moet et Chandon Grand Vintage 2002
  Moet et Chandon Grand Vintage 2000(マチュザレム)
 Moet et Chandon Grand Vintage Collection 1995(蔵出し)
 Moet et Chandon Grand Vintage Collection 1992(蔵出し)
 Moet et Chandon Grand Vintage Rose 2002

 

11111900.JPG マグナムは1500mlで、通常ボトルの2本分。瓶が大きい分、熟成が倍の時間でゆっくり進み、通常のものよりも「美味しい」といわれています。
 マチュザレムは6000mlで、通常ボトルの8本分。いや、これは私は初体験。せいぜい店頭で空ボトルがディスプレイされているのを見たくらい。阿部さんでさえ、それほど開ける機会がないそうです。あまり大きなボトルになると、かえって熟成が進みづらいとも聞いていましたが、どうかなあ。
 蔵出しの1995年と1992年は、直前までシャンパーニュのモエ・エ・シャンドン社のセラーで熟成させていたものだそうで、市場にはほとんど流通することがありません。


 AOC規定では、ヴィンテージ・シャンパーニュは3年間の熟成が義務付けられていますが、実際は、規定よりも長く熟成させて出荷されるのが一般的。醸造責任者にとっても、「NVは毎年同じ味わいのものを造らなければならない苦労があるけれど、ヴィンテージ・シャンパーニュはその年の特徴を生かして造れるので造りやすい」ともいわれています。


 では、阿部さんのテイスティング・コメントを中心に・・・。

 

11111902.JPG まず、2003年。

 ピノ・ムニエ43%、ピノ・ノワール29%、シャルドネ28%。春に激しい霜と雹害に見舞われ、また、夏は記録的な猛暑で、酸は穏やか。難しい年でもあったので、生産しているメゾンは比較的少ない。

 出来の良かったピノ・ムニエの比率が高いのが特徴で、味わいやわらかい。濃いイエローで、泡はどこまでもきめ細かい。洋ナシ、カリンの果実の甘いニュアンスが支配的。ブリオッシュ、キャラメル、ナッツの上品な熟成香も。ドサージュは5gと少なめ。

 

 

 

 

料理は、柔らかなフォンダンフォアグラと冷製マツタケ入りコンソメゼリー。

 

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 2002年は、今年のリリースで、市場ではほとんど完売状態。阿部さんは、2007年に、2003年産がリリースされる時、現地カーヴでこの2002年産もテイスティングしたそうだが、その時に感じた角がとれてやわらかくなり、エレガントさを増している印象とか。シャルドネ51%、ピノ・ノワール26%、ピノ・ムニエ23%。ドサージュ5.5g。2003年よりも外観にグリーントーンが残る。白桃や洋ナシといった果実香に加えて、バタートースト、ミネラル感、鉄っぽい香りも。全体的に若さをが感じられ、ポテンシャルの高さがある。
 料理は、オリーブオイルでソテーした手長エビ、細切りサラダ添え。柑橘類のビネグレットソースで。


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 2000年のマチュザレムは、ヴィオニスのセラーで1年間ほど寝かせたものだそう。

 コルクを開ける阿部さんの手にも随分と力が入っていた。見ているこちらも、いきんでしまった感じ。でも、さすが、最後は、汗しながらも、ぽんっと、上品な音で締めくくられました。

 

11111905.JPG それにしても、おっきなコルクです。通常サイズのコルク(右)と比べると大きさの違いが歴然!

 

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ミレニアムということで、多くのメゾンがヴィンテージ・シャンパーニュを造ったけれど、雨が多く不安定な気候で、開花後は気温が高く、難しい年。シャルドネ50%、ピノ・ノワール34%、ピノ・ムニエ16%。ドサージュ9g。色調はきれいな黄金色で、熟成が進んでいる印象。黄色の果実、バタートースト、オレンジピール、加えてキノコやアーモンドの熟成香も。酸が柔らかく、泡立ちも滑らかに溶け込んでいる。


 料理は、真ダイの山ゴボウ、フランス産キノコ添え。栗のカプチーノ・ソース。

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11111909.JPG 蔵出しの1995年。ピノ・ノワール50%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%。熟成が早く進んだ年で、濃縮したドライフルーツやコンポートの果実香、シナモントースト、それにスパイスの香りも。香りのふくらみに厚みがある。

 


 続いて、蔵出しの1992年。ピノ・ノワール40%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%。酸とミネラルがエレガントに溶け合って、素晴らしいバランス。キャラメル、ヘーゼルナッツ、ピスタッチオ、クレームブリュレのニュアンス。

 

 

 

 

2本の蔵出しに合わせた料理は、青首鴨をシンプルなジュドブフと。 

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  11111911.JPG最後は、2002年のロゼ。

 ピノ・ノワール62%、シャルドネ30%、ピノ・ムニエ8%。赤ワインとアッサーブラージュ。ドサージュ5..5g。穏やかなスパイス香、酸もきれいにまとまっていて、全体的に若々しい印象。

 

 

 

 

 

 

 

 


 デザートは、赤い果実を添えたパンデピスとはちみつ香るヌガーグラッセ。

 

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 私の印象ですが、2000年はマチュザレムのボトルだったせいか、思った以上にミネラルが感じられ、意外に若々しさを感じました。
 蔵出しの2本は、実に感動的でした。厚みのある95年と酸のバランスのいい92年とでは、味わいは違うものの、ともに、デゴルジュマンまでの12-13年間、メゾンのカーヴで一定の温度・湿度管理の下保管されていたというから、ほぼパーフェクトな保存状態なのでしょう。泡立ちは弱くなっているけれども、余韻の長さはどこまでもどこまでも舌の上に広がっていきました。

そして、ロゼ好きの私は、グラスに注がれたこの色を見てフィニッシュするだけで、幸せな気分になるのでした。 
 

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2011.05.04

シニアワインエキスパート合格! 銀座「レカン」でお祝い!!

日本ソムリエ協会認定の「シニアワインエキスパート」に合格しました!!


ワインエキスパートの資格を取ったのは、1997年。当時に比べると、イタリアのDOCGがうんと増えたり、EUのワイン法が変わったり、日本ワインが進化したり・・・。ワインの世界も様々な変化がありました。


試験は、1時間でマークシート60問を答える筆記と5種類のテイスティング。
「次の南西地方のAOCの中から、主要品種がNegretteで造られているものは?」
「チリのぶどう栽培の父と呼ばれるシルベストーレ・オチャガビアが、フランスの高級ぶどうの導入やフランスの技術指導者を招いて本格的なワイン造りを始めた年は?」
こんな問題が並びます。
 

シニアワインエキスパートとして、さらに楽しいワインライフをワイン好きな皆様と共有していけるように、このブログをつづっていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

さて、合格お祝いに、銀座の「レカン」に出掛けました。真紅のアールヌーボー調のインテリアに囲まれて、ちょっとリッチな気分を満喫できるお店です。
シェフソムリエの大越基裕さんは、私のテイスティングの師でもあります。感性ではなく、テロワールや造り手の醸造法から科学的に分析するテイスティング理論には、定評があります。


料理はシェフの高良康之さんにお任せです。
最初のアミューズは、

 

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素敵な器を開けると・・・


  2011043002.JPG赤ピーマンのムースにウニが載せられ、エビのニュアンスを生かしたビーツのジュレで固めてあります。

ポール・ロジェ(2000年)のシャンパーニュと一緒にいただきました。

 


次のプレートは、クルマエビのカリフラワーソース。少しばかりスパイスが効いています。カリカリにした頭は、そのままガブリ。


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大越さんにグラスで飲む白ワインを選んでもらいました。

「シュナンブランかリースリングか」と問われて、シュナンブランを選択。


2011043004.JPG2006 Montlouis-Sur-Loire Maison Marchandelle (Stephane Cossais)

 


フランス・ロワール地方、ロワール川のヴヴレィ対岸に位置するモンルイ(南側)。「ブドウ本来のチカラ(酸味と糖度)を自然のままに調和させる」が信念の、いわゆる自然派らしいスタイル。ミネラル感の凝縮が半端ではありません。
しばらく置いて温度が上昇してくると、カリンのような花の香りが広がってきました。酸がしっかりしているので、ユズを使った和食などにも合いそうです。

 


造り手のステファン・コサは、2009年に、42歳の若さで他界。「フランスで評価が上がってきた時だったので、彼の死を残念がる声しきりでした。フランスで修行していた私にとっても思いで深い1本です」と、大越さん。

 

 

 

続く冷たい前菜は、ホワイトアスパラガスとズワイガニのシャルロット。

 

2011043005.JPG キャビアもたっぷり、パセリとカニのソースを添えて。さっとあぶったアスパラガスもジューシーで美味でした。

熱い前菜は、フォワグラのポワレ、定番のペリグリーソースで。タケノコと野ゼリのえぐみがアクセントになって、日本のレストランならではの春の味わい。


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お祝いのボトルは、やはりブルゴーニュの赤のグランクリュでいくことにしました。
迷ったあげく、大越さんのアドバイスで、

 

2011043007.JPG 1997 Chambertin Clos de Beze (Armand Rousseau)に。

1997年というヴィンテージは、自分ではなかなか選べない年ですが、今飲み頃なのだそうです。


「1994年、1997年、1999年、それに2004年は弱い年といわれていますが、素晴らしいといわれる1995年(1998年も)はまだまだタンニンが強く、1996年は酸が強い。今飲むには、状態がこなれてきた1997年をお勧めしますよ」と、大越さん。

ブラックチェリーの香りがグラスいっぱいに広がって、ボリューム感も十分。クリアな果実味は、造り手アルマン・ルソーの特徴です。凝縮した味わいが迫力の存在感!!

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魚のプレートです。

私は、ブルターニュ産のオマール海老、ヴァンジョーヌソースで。


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パートナーは、グリュイエールチーズをはさんだヤガラをシャンピニオンソースで。


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2011043012.JPG白のグラスワインに戻り、今度はシャルドネを。
2004 Pouilly-Fuisse (J.A.Ferret)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メインのお肉は、ハンガリー産のアニョー・ド・レ(乳飲み仔羊)。

そういえば、イベリコと並んで、味わいで人気上昇中のマンガリッツァ豚もハンガリー産。最近注目の産地です。背肉ともも肉、それに肩ロースをミンチにしたソーセージ。


2011043013.JPG 赤ワインが十二分に楽しめました。
 

 

 

お口直しは、面白かった!
温泉卵・・・みたいな一品。

 

2011043014.JPG 白身部分は、パイナップルトココナッツ、黄身部分はマンゴー味。ピーチのフレーバーです。

 

続くデザートは、静岡のアメーラトマトとイチゴ、フランボワーズのソルベを組み合わせ。 なんだか懐かしい甘さ。ミントリキュールのジュレがさわやかです。

 


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2011043018.JPGそれに合わせて、ロゼ・スパークリングをいただきました。

Bugey Cerdon Methode Ancestrale Rose (Raphael Bartucci)

ブルゴーニュの東、スイス国境に近いサヴォワ地方のスパークリング。ガメイ主体で、プールサール、シャルドネのブレンド。イチゴの甘みと酸味のバランスが、デザートの甘みをさらに引き立てます。

 

ベリー系デザートに組み合わせるベストマッチなワインですね。

さらに、さらに、デザートのプレゼンテーションが続きます。

 


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引き出しを開けたら、ショコラやらジェリーやら。宝石箱のように飛び出してきました!

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最後にエスプレッソで締めて・・・。

 

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ごちそうさまでした。
 

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2011.04.30

アンジェリーナで久しぶりのワイン講座

3か月に1回開催している、プランタン銀座本館2階「サロン・ド・テ アンジェリーナ」でのワインと料理のマリアージュを楽しむワイン講座。

3月は計画停電の影響で、営業時間を短縮していたので、開催を見送りましたが、4月、希望者が10人集まり、営業時間も通常に戻ったので、再開することにしました。


テーマは、「春のうららかな空気を楽しみながら・・・」にしました。心落ち着かない日々が続いていますが、ちょっとリラックスして元気になりましょうよ、という企画です。今回は初参加の方が3人いらっしゃいました。

 

ワインリストは次の通りです。


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2002 カドリーユ・クレマン・ド・ロワール ブリュット(ラングロワ・シャトー)
IGP ペイドック・トゥールーズ・ロゼ(ドメーヌ・ピッチニーニ)
2008 ブルゴーニュ・アリゴテ(ドメーヌ・ピエール・モレ)
2008 メルキュレイ・ラ・フランボワジエール(ドメーヌ・フェヴレイ)
2008 DOCボルゲリ ポッジォ・アル・ジネプリ(テヌータ・アルジェンティエーラ)

 

すべてのワインは、プランタン銀座地下2階のワイン売場でそろえました。

 


2011042102.JPG最初の泡は、ロワールの名門、ラングロワ・シャトーのヴァン・ムスー。現在、シャンパーニュのグランメゾン、ボランジェの傘下にある名醸蔵で、評価も高い!

 
「カドリーユ」とは、ロワール地方のソミュール地区にある陸軍乗馬学校主催の競技会の名前だそう。

 

収獲はすべて手摘み。シャンパーニュと同じ製法で造られ、4年間じっくり寝かせています。深い黄金色で、きめの細かな泡が繊細。ハチミツ、バタートースト、クレームブリュレ・・・。厚みのある味わいが魅力的でした。シュナンブラン50%、シャルドネ30%、カベルネフラン15%、カベルネソーヴィニヨン5%のブレンド。

 

 


合わせた料理は、プロシュートのオマールエビとカニの詰め物、プチサラダ添え。


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2011042104.JPG2番目は、春の季節に味わいたい色も華やかなロゼワイン。地中海沿岸・ラングドック地方の西、60キロほど内陸に入ったミネルヴォワの造り手です。

 

設立は1990年と比較的新しいのですが、シラーを使ったスパイシーで引き締まった味わいで人気上昇中のドメーヌ。


エチケットがショッキングピンクで、かわいらしいのも特徴です。

このロゼも、グルナッシュとシラーが主体。果実味が豊かで、スパイシーなニュアンスが楽しめました。

 

 

 


料理は、赤ピーマンのムース・ペルノー酒のジュレとウニ添え、桜のクリームチーズのパン詰め、タイの赤飯詰め・笹葉蒸しの3点盛り。


2011042105.JPG 2011042106.JPG 
 

 

2011042107.JPG3番目のアリゴテは、造り手に注目です。

 

ムルソーの名門、コント・ラフォンは、長年、メタヤージュといって、別の栽培家に畑を貸し、収穫したブドウを分け合ってワインを造っていました。その畑の多くを1980年代後半まで栽培していたのが、このピエール・モレ氏でした。最高峰モンラッシェを含む4ヘクタールの畑です。造り出されるワインの評判も高く、その腕をかって醸造長として迎えたのがドメーヌ・ルフレーヴでした(2007年まで)。

 


モレ氏が自らの畑で造るビオデナミ100%。酸味が先行しがちなアリゴテも、彼の手にかかると、こんなにも洗練され、豊かなミネラルと樽の香りと溶け合ってクリーンでエレガントな味わいになるのかと、ちょっと驚きでした。

 

料理は、ツブ貝のブルゴーニュ風、子海老のパスタ巻きとともに。

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2011042109.JPG 4番目は、ジョセフ・フェヴレイのコート・シャロネーズ地区のモノポール(単独畑)です。

 

老舗ドメーヌのクラシックなスタイルは、ピノノワールの繊細さを生かしつつ、熟成のポテンシャルを感じさせる安定感があります。

 

 

 

 

 

 

 

料理は、ウナギとタケノコのデュエット、フォアグラ添え。ウナギには赤ワインが合いますね。

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2011042111.JPG 5番目は、イタリア・トスカーナの赤を選びました。

 

トスカーナのボルゲリといえば、サッシカイアやオルネッライア? それと並んで、最近大注目がこのテヌータ・アルジェンティエーラです。


アンティノリが資本参加し、また、ボルドー・サンテミリオンのシンデレラワイン、ラ・モンドットで知られるステファノ・ドゥルノンクール氏もアドバイザーとして参加しています。

 

穏やかな果実味とやわらかな酸、こなれたタンニン、そして樽のニュアンスもバランスよく感じられ、スパイシーな肉料理が恋しくなりました。

 

 


合わせた料理は、仔牛のタラの芽・アンチョビ詰め焼き、カレーの香りを添えた古根(ショウガ)ソースで。

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デザートには、ハーフグレープフルーツとハチミツのパフェ。

 

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今回、参加した皆さんの一番人気は、最初の泡、カドリーユ クレマン・ド・ロワール。それから、ドメーヌ・ピエール・モレのアリゴテ、最後のボルゲリも評価が高かったです。
 

 

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2011.04.23

ワインブログ再開~東京・広尾の「ア・ニュー」でパーカーが満点をつけたラトゥールを飲む!

 

大・大・大・・・お久しぶりでございます。

更新が滞ってしまったこのブログ、心を入れ替えて再開することにします!!
どうぞよろしくお願いします。

相次ぐ余震で、被災地におかれては気が休まらない日々が続いていると思います。心より皆様の平安をお祈りしております。
 

さて、再開第一弾は、予約が取りにくいフレンチレストラン、東京・広尾にある「ア・ニュー」(私も実際、3度チャレンジして振られました!)で先日催されたワイン会をレポートすることにします。
シェフの下野昌平さんは、「ル・ブルギニオン」のオープン時から携わり、フランスでは、トロワグロやタイユヴァンで活躍、代官山の「ル・ジュー・ドゥ・ラシェット」で3年ほどシェフを務めていました。代官山のお店は自宅近くでもあったので、何度か訪ねたことがあります。


今回のワイン・セレクションは、アカデミー・デュ・ヴァンの奥山久美子副校長。ご自宅のセラーで寝かせた、今では入手困難なボルドーのグラン・ヴァンが楽しみです。

 


 ワインリストは以下の通り。


 2000 Jacquesson Grand Cru Avize
  2007 Puligny-Monrachet 1er Cru Les Combettes  (Etiennne Sauzet)
  2001 Chateau Haut Brion (Pesaac)
  2001 Chateau Margaux (Margaux)
  2001 Chateau Mouton Rothschild (Pauillac)
  1995 Chateau Lafite Rothschild (Pauillac)
  1982 Chateau Latour (Pauillac)

 

2011042002.jpg 最初のシャンパーニュは、アヴィーズ村のビオの自社畑シャルドネ100%で造るブラン・ド・ブラン。  「白ブドウから造られる白ワイン」の意味をもつブラン・ド・ブランですが、シャンパーニュでは、コート・デ・ブラン地区のアヴーィズ、メニル・シュル・オジェ、クラマンなどで栽培されるシャルドネが有名です。ドサージュ(シャンパーニュの甘みを調整する砂糖の量)は3.5㌘(1㍑当たり)なので、かなり引き締まった辛口です。

マグナム瓶だったので、特に凝縮感とバランスが抜群でした。


つい最近、1997年ヴィンテージの通常サイズを飲みましたが、最初の印象は青リンゴやミネラル感が強く、香りはおとなしめだったように思います(時間とともにどっしりした広がりが出てきましたけれど)。やはり、マグナム瓶恐るべし、です。


ちなみに、金属の蓋ミュズレを開発したのもこの老舗メゾン(1798年創業)。ナポレオン皇帝の寵愛を受け、結婚式でも振る舞われた話は有名です。また、エジプト遠征、ロシア遠征にと、皇帝が戦いに勝っても負けても販路を拡大し、ナポレオン3世の時代になっても成長は続きました。1867年のパリ万博では100万本を売り上げたそうです。


合わせて、アミューズ3品。古代米のリゾット、タスマニア産オーシャントラウトのタルタル、ベーコンキッシュ。お皿にアミューズがちょうどよく収まるように穴が開いていて、そこにガラスの小器を差し込みます。

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続いて、桜海老のクルスティヤンとキャビアのサンド。駿河産の桜海老をピューレにしてからぱりぱりのえびせん状に仕立てます。サンドしたサワークリームがやさしい味。


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2011042004.jpg二番目の白は、ピュリニ・モンラッシェ村一級畑の中で芳醇さを誇り、最もモンラッシェに近い味わいともいわれるレ・コンベット。エティエンヌ・ソゼの娘婿ジェラール・ブドは1992年から買いブドウからもワイン造りをしているので、ドメーヌ名は冠していないそうです。2007年のブルゴーニュ白は、寝かせずいま飲んでも、おいしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

料理は、今回私が一番気に入った、冷製白アスパラガスとアワビ・生ハムのコンソメジュレとともに。
ランド産の白アスパラガスは、砂地土壌での露地栽培。茎も太く、独特のえぐみが特徴で、これがとにかくおいしい!! 旬の味を堪能できる幸せを感じます。キャビアが添えられていましたが、こちらはカザフスタン産のベルーガ。最上のものです。お皿に飾られたハーブは、長野産のコウサイタイ。赤紫の茎の菜花です。


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さて、本日注目は、2001年ヴィンテージの3種類のボルドー・グランヴァン。2001年は、「エレガンスの年」ともいわれ、とても上品な味わいが期待できます。

 

コルクの状態も良好です。

 

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2011042008.jpgブラインドでいただきましたが、私が一番おいしいと感じたのは、オーブリオンでした。

メルロ52%(通常37%)、カベルネソーヴィニヨン36%(通常45%)、カベルネフラン12%。メルロの配合が多い分、早く色調が進んでいるようです。チョコレートの甘やかさとエレガントな印象、肉付きもいいです。

2000年が偉大過ぎてかすんでいるけれど、2001年はメルロの年として評価できるのです。

 

 

 

 

 

 

 

2011042009.jpgマルゴーとムートンを比べると、今まで飲んだ印象では、ムートンの方が若干苦手。ムートンというと、色が濃くて、エスプレッソの香りのイメージがあります。若いヴィンテージは固くて深みがイマイチ、10年くらい寝かせると、今度は「もうこんなに老いてしまったの?」というくらいへたり気味。

 

でも、今回のムートンは、ちょっと見直しました。収斂性も強く、時間の変化でこなれていく味わいが楽しめます。ブレンド比率は、カベルネソーヴィニヨン86%(通常77%)、メルロ12%(通常11%)、カベルネフラン2%。

 

 

 

 


2011042007.jpgただ、マルゴーと比べてしまうと、やはりマルゴーに軍配を上げたくなります。

 

オーブリオンよりもさらにチョコレートのイメージが強く、エレガントさに磨きがかかっていました。ブレンド比率は、カベルネソーヴィニヨン82%(通常75%)、メルロ7%(通常20%)、カベルネフラン4%。

 

 

ちなみに、パーカーポイントは、オーブリオン94点、マルゴー93点、ムートン89点。いつもはパーカーの評価とくい違うことが多い私ですが、今回の点数には異論がありません。

 


 

 

料理は、タケノコとフォアグラのソテー・中伊豆ベーコンの泡。こちらも旬の味わいですね。

 

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そして、お魚も赤ワインのシヴェソース。ネギ好きの私はうれしかったけれども、ネギの香りが少々きつく感じました。 


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さて、最後に、1995年のラフィット、1982年のラトゥールをいただきました。

 

 

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2つ比べると、やはり色の違いは明らか。写真ではわかりにくいかもしれませんが、左が熟成が進んでいます。右はまだルビー色で、十数年たった今もまだ若い。

 

 

2011042011.jpg1995年は骨格の年ともいわれます。ラフィットは、カシスの果実味、スギの土っぽさが特徴でしょうか。

 

奥山さんが購入したのは、まだ東京の帝国ホテルでクリスティーズのオークションを行っていたころで、1ケース買いした時の価格は、1本2万円ほど。いえ、私もワイン初心者のころ、1995年のボルドーのグランヴァンをプリムール買いしましたが、今から考えると、驚くほど安い価格だったこと、覚えています。

カベルネソーヴィニヨン75%、メルロ17%、カベルネフラン8%。


 

 

 

2011042012.JPG1982年はボルドーの偉大な年。ラトゥールはミネラルと塩味を強く感じて苦手でしたが、さすが1982年。文句なく、圧倒的なおいしさでした。カベルネソーヴィニヨン75%、メルロ20%、カベルネフラン4%、プティヴェルド1%。

 

1980年代のラトゥールは、生産量を増やして「薄っぺらい感じ」(奥山さん)が多いそうですが、1982年育ちのブドウの力でしょうか。

 

1982年は暑い年で、ボルドー好きの英国人からは酸が足りなくてダメといわれていたのを、パーカーが濃縮感と長熟の可能性を評価。それによって、パーカーは神の舌をもつワインジャーナリストとして、成功を収めます。1982年は、パーカー出世のきっかけになった年でもあるのですね。


ちなみに、パーカーは、1995年ラフィットに95点、1982年のラトゥールには100点をつけています。


 

料理は、肉が続きます。熟成和牛のロティ・トリュフソース。

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デザートは、さくらのパンナコッタ・春の泡とともに。

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アンリ・ジローのロゼと一緒にいただきました。

 

 

 

改めて、本日のワインのラインナップ。並べてみると、こんな感じです。

 

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2011.01.16

帝国ホテル懐かしの味めぐり

東京のホテルの中で、好きなホテルを挙げるとしたら、まず、帝国ホテル! と答えます。
毎年正月元旦は、家族で泊まってゆっくり過ごすことにしています。


帝国ホテルは1890年(明治23年)の開業で、昨年11月3日に、節目のセレンディピティ(120周年)を迎えました。
それを記念して、今年の元旦、第13代総料理長・田中健一郎さんの企画で、「懐かしの味めぐり」という素敵なイベントが催されました。

 

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「フォンテーヌブロー」や「プルニエ」など、同ホテルで一時代を画した著名レストランの名物料理11品のデギュスタションです。

 

 


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料理はこんな具合で続きます!

「ヨミウリオンライン」に連載中の「GINZA通信」(1月14日付け)に詳しく書きましたので、そちらをチェックしていただければうれしいです。

http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/ginza/110114_01.htm

 


このとき一緒に供されたワインはといえば・・・


 

 

     

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モエ・エ・シャンドン ロゼ・アンペリアル 


ハッピーな気分にしてくれる、きめの細かいロゼ・シャンパーニュ。

泡好きな私は、年の初めを、こんな繊細なロゼ・シャンパーニュで始められたことに感謝!です。 

 

 

 

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2007 シャブリ・グランクリュ レ・クロ(ドメーヌ・ルイ・ミシェル)

 

1850年より5代に渡る家族経営のドメーヌ。

 

樽発酵を一切行わず、ステンレスタンクのみで仕上げているので、たっぷりの果実味ときりっとしたミネラルにあふれています。

 

さすが、グランクリュ畑「レ・クロ」! スパイスと花のニュアンス、ハチミツなどの芳醇な香りがあって、ボリューム感・複雑性に富みます。 

 

 


 

 

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2003 シャトー・カントメルル

 

このところ評価の高いボルドーです。

 

2003年は猛暑の年でしたから、色合いも果実の風味も、とっても濃厚。

でも、どこかエレガンスさもあって、えぞ鹿のステーキともよく合いました。

 


 

 

それから、デザートワインは、バルザックの「シャトー・モンジョア」でした。

 

 

ゆっくり3時間余りのイベントのあとは、料理をつくったシェフたちが勢ぞろいでお見送りしてくれました。

 

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さて、年末年始、帝国ホテルでいただいたワインは――

年越しの12月31日は、鉄板焼きの「嘉門」。

伊勢えび、そして和牛のフィレをベリーレアで。

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2011010101.JPGコルドン・ブルー ブリュット・セレクト(シャンパン・ドゥ・ヴィージュ)

 


その家名は、スイスのレマン湖のほとりを流れるヴィージュ川に由来します。

設立は1837年、1876年のフィラデルフィア万博でグランプリを獲得するなど、海外でも早くから高評価を得たシャンパーニュ。

ピノノワール50%、ピノムニエ25%、シャルドネ25%。

 

軽やかで爽やかで、バランスのとれた味わいでした。

 

 

 

 

 

元旦の初日の出。東京は快晴でした。

 

 

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 「伊勢長」のおせちをルームサービスでいただきました。

 

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1月2日の夜は、「東京・吉兆」で。


和食に合わせて、
2009 甲州きいろ香(シャトー・メルシャン)を選びました。

 


2011010114.JPG日本固有の品種「甲州」の香りのポテンシャルを研究するため、同社は2004年、フランス・ボルドー大学醸造学部のデュブルデュー研究室と「甲州アロマプロジェクト」を発足。

 

同研究室の富永敬俊博士(故人)の指導で、甲州ワインから、グレープフルーツのような柑橘系の特徴ある香りのある「3-メルカプトヘキサノール」の存在などを発見したのです。


 

甲州きいろ香は、その研究成果を受けて誕生したもので、2005年が初ヴィンテージ。

2009年は、グレープフルーツやライムのフレッシュな味わい、吟醸香のような華やかさも持ち合わせていて、魚料理や刺身とベストマッチングでした。

 

 

 

 この日の料理は、こんな具合です。

 

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ご飯は、大好きな蟹ご飯でした!

 

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卯年なので、茶碗も・・・

 

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というわけで、今年もたくさん美味しいワインを掘り起していきたいと思っておりますので、よろしくお付き合いくださいね。

 

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2010.12.17

ロゼワイン講習会を終えて・・・

先日ブログでも告知しました「ロゼワイン講習会」を、12月15日、プランタン銀座地下2階のワイン売場で行いました。
当日飛び入りのお客様も含め12人の女性のお客様が参加してくださいました。

 

最初に、最近のトレンドの中で、欧米でなぜロゼワイン人気が高まっているのかをご説明。

30分という限られた時間の中なので、その後、早速試飲に移りました。

皆さん、ワイン好きな方のようにお見受けしましたが、「ロゼワインだけを5種類を飲む機会はとっても珍しい!」という声が多かったです。

試飲していただいたのは、5種類です。

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左から、
 ラングロワ・シャトー クレマン・ド・ロワール NV
 フリュッテル ラ・テット・ノワール ブリュットロゼ NV
 シャトー・ド・フェル ロゼ・ダンジュ ル・ジャルダン 2009
 E.ギガル タヴェル・ロゼ 2008
 トリエンヌ VDP・デュ・ヴァール・ロゼ 2008

 

最初の2本は、スパークリングワイン。1本目はロワール地方でカベルネフラン100%、2本目はプロヴァンス地方でグルナッシュ95%、シラー5%。
サーモンピンクの色合いは非常に似ているのですが、ロワールのはよりすっきり、プロヴァンスのはチェリーなど赤果実のニュアンスが強いように感じました。
フィンガーフードとしてご用意した、スモークサーモンのムースを合わせました。

ロゼ・ダンジュは、ほんのりと上品な甘さが「エレガント!」との声も。こちらは、カラスミとカブの酢漬けと合わせて。

タヴェル・ロゼは、濃い赤紫色の色合いに、「へえ、ロゼワインもいろんな種類があるのねえ」と、驚きの声が・・・。フルーティーな中にもスパイシーさがアクセントになっているので、プロシュートと柿のスパイシーロールと合わせて。

最後は、プロヴァンスの高品質、コストパフォーマンスに優れたロゼで締めくくり。いや、トリエンヌのロゼは、いつ見ても、愛らしいピンク色とコクのある複雑な味わいといった、小気味よいアンバランスさが、私を魅惑します。

 

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特に人気があったのは、クリスマスシーズンということもあってか、華やかなスパークリングワイン2種類と、3番目のロゼ・ダンジュ。

これら3本は、確かに、料理がなくても、アペリティフとして楽しめるタイプ。

フリュッテルはハートが描かれたエチケットもかわいらしくて、女友達へのギフトに最適かもしれません。

 

「ロゼって多様なんですね」と、短い時間ながら、皆さん、とても楽しまれて帰られました。

参加された皆さま、ありがとうございました。

 

また、様々なテーマで、ワインの楽しさをお伝えしたいと思いますので、そのときには、どうぞご参加くださいね。

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2010.12.13

ロゼワイン尽くし~12月15日には試飲会も

クリスマス会の前哨戦(?)として、私のワイン講座では、先日、プランタン銀座の「サロン・ド・テ アンジェリーナ」で、ロゼワイン尽くしの会を開きました。


ロゼワインだけで、前菜からデザートまで通すのって、なかなか珍しいですよね。

果実の爽やかな味わい、華麗な香りの広がり、そして食事との相性の良さで、ロゼワインにはまっている私のスペシャル企画でした。


揃えたロゼワインは7種類。

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左から、

ラングロワ・シャトー クレマン・ド・ロワール ブリュットロゼ NV
ヴァンジーニ ピノネロ スプマンテ エクストラドライ・ロサート NV
シャトー・ド・フェル ロゼ・ダンジュ ル・ジャルダン 2009
レザマン・デュ・シャトー・モンペラ ロゼ 2008
E.ギガル タヴェル・ロゼ 2008
VDP・デュ・ヴァール・ロゼ・トリエンヌ 2008
シャトー・ド・ピバルノン バンドール・ロゼ 2007

 

その一つひとつに、例の如く、塩川健シェフが、相性の抜群の料理を作ってくれました。
 

最初の2本は、スパークリングワインです。1番目は仏ロワール地方で、カベルネフラン100%。2番目はイタリア・ロンバルディア州で、ピノネロ(ピノノワール)100%。どちらもすがすがしい味わいですが、後味もしっかり、ふくよかなボリューム感を楽しめます。

お料理は、


まず、柿のカプレーゼ

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次に、バイ貝のクリュー、タコの軽いスモークとシブレットのリース飾りでクリスマスを演出!

 

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2010121304.jpgロゼ・ダンジュは、やはりロワール地方で、カベルネフラン100%。

 

ほんのり甘さがやさしくて、アタックも穏やか。新鮮なエゾ鹿のマリネの酸味とよく合いました。

 


 

 

 

 

 

エゾ鹿もも肉のマリネのサラダ仕立て グリーンマスタードソース

 

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4番目は、仏ボルドー地方で、カベルネソーヴィニヨン90%、カベルネフラン10%。2007年が初ヴィンテージというこのシャトーのロゼは、赤ワイン用のブドウより15日も早く収穫したロゼ用区画のブドウを使っているそうです。心地よいイチゴの風味にハーブのニュアンスが加わり、実に軽やか。

料理は、手長エビのマツタケスープ煮


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タヴェル・ロゼは、仏ローヌ地方で、グルナッシュ、サンソー、クレレットなどが主体。赤ワインを思わせるような濃いルビー色で、スパイシーな印象は近江牛との相性抜群です。

近江牛の手まり寿司


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2010121308.jpg「ロゼ・トリエンヌ」は、南仏プロヴァンス地方から。サンソー、シラー、メルロが加わります。

 

淡いピンク色の軽やかなロゼは、気持ちをハッピーにさせてくれます。

私の大好きなロゼでもあります!!

 

 

 

 

 

 

料理は、真鱈の湯煮 フレッシュトマトとハーブのソースで、地中海の風を感じましょう。


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最後は、やはり南仏プロヴァンスから、バンドール・ロゼ。ムールヴェドル、サンソー主体。ブルゴーニュからこの地に移り住んだアンリ・ド・サン・ヴィクトール伯爵は、バンドールではいまやトップメーカーになりました。華やかな香り、きめ細かなタンニンのひろがりは、さすがに存在感を感じます。

フランス産マグレカナールとフォアグラのポワレ 五穀米のリゾット添え

 

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一口にロゼと言っても、実にさまざま。色の違い、味わいの広がり、香りの多様性。楽しむポイントには事欠きません。

ヨミウリオンラインの「GINZA通信」でも、ロゼワインの魅力を語っていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

 

さて、ここでお知らせです!!

ロゼワインの楽しさをもっと多くの方に知っていただきたいと思い、12月15日(水)午後6時から、プランタン銀座地下2階のワイン売場「ロゼワイン講習会」(無料)を開くことにしました。
「講習会」といっても堅苦しいものではなく、5種類のロゼワインを飲み比べて、そのヴァリエーションの豊さを楽しんでいただきたいとの企画です。

私が、ロゼワインを楽しむためのミニ知識をお話しします。塩川シェフ特製のロゼに合うフィンガーフードもご用意していますので、お気軽にご参加くださいね。

定員12名。予約優先で、Tel:03-3567-7885(売場直通)に「ロゼ講習会に参加」とお伝えください。

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2010.11.07

「眠れる巨人」を飲み干す会

グラフィック・デザイナーで、ワイン愛好家としても著名な麹谷宏さんの主催で、「眠れる巨人」を飲み干す会というドキドキわくわくするワイン会に参加しました。

場所は、恵比寿のシャトー・レストラン「ジョエル・ロブション」。ボルドー5大シャトーとクリスタルの素晴らしいヴィンテージを、すべてマグナムでいただく、とってもゴージャスな企画です。


いずれも、麹谷さんが自宅のセラーで長年ゆっくり熟成させたボトル。
私は新聞記者時代、企画でセラーをのぞかせていただいたことがあるのですが、それはそれは素敵な地下室で、「私もワインになってここで眠りたい!」と思ったほどでした。

 

ワインリストは以下の通りです。


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 ルイ・ロデレール クリスタル 1994
 シャトー・オーブリオン 1983
 シャトー・ラトゥール 1978
 シャトー・ムートンロートシルト 1976 
 シャトー・ラフィットロートシルト 1970
 シャトー・マルゴー 1967
      (すべてマグナム)

 

2010110202.JPGワインの状態はパーフェクトでした。恐るべし、麹谷セラー!です。
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「クリスタル」は、白トリュフのような芳醇な香りを十分楽しめました。

泡も繊細で口当たりがやさしく、熟成したシャンパーニュの素晴らしさを経験しました。

 

 

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スモーキーな葉巻の印象、スパイシーな力強さを感じる「オーブリオン」、

筋肉質で骨太で偉大なる存在感で迫る「ラトゥール」、

コーヒーのような香りのニュアンス、90年代の華やかさはないけれど控えめでやさしい味わいがかえって愛おしくなる「ムートン」、

シルキーでエレガントで、ブルゴーニュワインにも似たクリアな表情をもち、「これぞ熟成の極致」の声も上がった「ラフィット」。


私は、若いヴィンテージではどちらかといえばアミノ酸の印象が強くて苦手だった「ラトゥール」が、熟成を経ると、こんなにしなやかに素晴らしく仕上がることに大いに感激しました。まだしばらく置けるくらい若々しさも感じました。


16人の参加者の人気投票で、一番だったのは、「マルゴー」でした。
いきいきした酸、凝縮感のある豊かなボディ、繊細さ、甘やかで官能的な誘惑・・・。

「いまだ紫色の力強さを感じる。マグナムの力ですね」と、麹谷さんも「マルゴー」に一票でした。 

 

 

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では、料理もご紹介しましょう。

 

アミューズブーシュは、レモンゼリーにウイキョウの香りのムース、タプナードをのせて。爽やかな味です。

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上品なブーダンノワールはフォアグラと共に。

テクスチャーがとっても繊細なガトー仕立てです。ピスタッチオのメレンゲは焼き菓子風。相性のいいリンゴがアレンジされて、シードルとハチミツのソースとともに供されました、

このブーダンノワールのスタイルはパリのレストランでも流行でした。

 

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パンもいろいろ。昔よりもバリエーションが増えて、楽しい!

アンチョビ入りミニクロワッサンやバジルのフォカッチャ・・・。

 

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帆立貝のポワレは、シチリア産アンチョビのちょっぴり塩味でアクセント。ユリ根のカプチーノは甘さが際立ち、帆立貝との微妙な味のバランスが絶品でした。サルディニア産のフレゴアというパスタはリゾット仕立てに。


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タスマニアのサーモンは低温でゆっくり火入れ。タマネギ、ピーマン、トマト、生ハムなどを炒め煮したバスクの伝統料理ピペラードを添えて。

 

 

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大山地鶏は筒状にして、72度の低温で1時間20分蒸し上げたという料理。とろけるようで、鶏肉の繊維が全然感じられませんでした。エシャロット、無臭ニンニク、ベーコン、小さなチイタケ(かわいい!)などをアレンジした赤ワインソースで。

 

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デザートは、リンゴと干しブドウとクルミのクランブル。

 

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美味しいミニャルディーズ

 

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さて、ボルドー5大シャトーについては、様々な挿話を伝え聞きます。せっかくの機会、麹谷レクチャーを中心に、頭を整理する意味でまとめてみました。

長くなりますが、歴史的エピソードは面白いので、ご興味のある方はぜひお付き合いください。「ワインの女王」(山本博著)も参考にしました。

 

まず、シャトー・オーブリオン。


2010110217.JPG1855年、パリの万国大博覧会の目玉商品として、フランスで最高のワインを出品することになりました。そこで、ボルドー・メドックで赤ワインの格付けが行われたのですが、ラフィット、ラトゥール、マルゴーと肩を並べて、メドック以外から選ばれた唯一のワインが、オーブリオンです。

 

80年代では、82年、83年、85年、86年、88年、89年、90年が素晴らしいといわれています。


16世紀のころは、「ポンタック」の愛称で呼ばれていたそうで、今でもボルドーの古いネゴシアンの間では使われているといいます。

 

当時のメドック周辺は治安が悪く、最初にボルドーワインとして発達したのは、オーブリオンのあるグラーヴ地区でした。ボルドー市議会に勤めていたジャン・ド・ポンタックが妻の持参金として土地を受け取り、以来200年同家の所有になったところに由来しています。


1785年に駐仏全権大使として渡仏した後の米国第3代大統領のトーマス・ジェファーソンは大変なワイン好きで、フランス中のワイン産地を旅しています。ジャフェーソンは、ボルドー赤の中でもオーブリオンが一番米国人の舌に合うと絶賛、ホワイトハウスにも大量に送っています。したがって、ホワイトハウスの晩餐会で最初に供されたフランスの極上ワインは、オーブリオンということになるようです。


その後、1801年に売りに出された時、手に入れたのが、ナポレオンの外相で美食外交の元祖として有名なシャルル・モーリス・ド・タレーラン・ペリゴール。

映画「会議は踊る」では、メッテルニヒをはじめヨーロッパの各国元首を手玉に取った傑物として描かれている人です。お雇いシェフ、アントナン・カレームが作り出した数々の美食には、常にオーブリオンが花を添えたといいます。

このように評判の高いオーブリオンゆえ、1855年の格付けの際に選ばざるを得なかったということでしょうか。


しばらくぱっとしなかった時期もありましたが、1935年に米国カ銀行家、クラレンス・ディロン(息子のダグラスは、ケネディ大統領の財務長官)が買い取り、孫娘でムーシィ公爵夫人であるジョアンが継承。1960年、グランクリュの中で初めてステンレスの発酵タンクを設置するなどして品質が一気に向上しました。

ちなみに、1875年、フランス全土を襲ったブドウの疫病、フィロキセラ対策のために、米国の苗木に接木して凌いだのも、オーブリオンが最初だったとか。米国とはどこか因縁深いワインです。

 

 

 

 お次はシャトー・ラトゥール。

78年は良い年ですが、麹谷さんの娘さんの生まれた年でもあるそうです。

 


2010110218.JPGラトゥールは、ポイヤックの3つの1級シャトー(ラフィット、ムートン、ラトゥール)の中で一番南にあり、また、一番ジロンド川に近い場所にあります。

 

一般に不作とされる年でも、このシャトーが非常に良いワインを生み出すことは定評があり、「これだけ条件が整っていればだれでも良いものができる」と嫉妬心いっぱいにささやかれるほど。「ジロンドの恵み」を独り占めしているのです。


その昔、英国との百年戦争の舞台になったともいわれ、ラトゥールのエチケットには、往時の要塞を物語る塔がシンボルとしてデザインされています。現在でもシャトー・ラトゥールのブドウ畑の中に丸屋根の塔がぽつんと残されていますが、これはずっと後の17世紀に建てられたものだそうです。


17世紀後半、セギュール家が持ち主になり、以後300年近く所有、そのころからメドックのシャトーもグラーヴに追い付くほどめきめき腕を挙げてきて、主に英国の上流階級の間で大ブレイクしました。

 

セギュールといえば、バレンタインデーによく登場するハートのデザインのワイン、カロン・セギュールを思い出します。セギュール家のニコラは、どうやらラトゥールよりも、サン・テステフにあるカロン・セギュールの方にゾッコンだったらしいのです。

 

1960年代になって、このお金のかかる偉大なシャトーを維持できなくなって、英国のピアソン家に売ってしまいます。最近では、1993年にフランス国内で小売業で財を成したフランソワ・ピノーの所有に。グッチやイヴ・サンローランなどを傘下に置くピノーグループは、つい最近までフランスのプランタンも所有していた財閥です。

フランソワ氏はモダンアートの収集家としても知られていて、セーヌ川に浮かぶルノーの工場跡地に美術館を建設する計画を発表していましたが、実務の遅れから断念したとも伝えられています。

 

 

 

次に、シャトー・ムートンロートシルト。

 

2010110219.JPG歴史をひもとけば、18世紀後半、フランクフルトのユダヤ人街の一両替商だったマイヤー・A・ロスチャイルドの5人の息子の成功話から始まります。5人は、フランクフルト、ロンドン、パリ、ウィーン、ナポリで互いに助け合いながら政商として巨額の富を築いで、ロスチャイルド財閥の基盤を作りました。

ロスチャイルド財閥といえば、新橋と横浜間の最初の鉄道敷設や日露戦争、関東大震災後の復興などの融資元として日本との関係も深いですね。


この5人兄弟のうち、有名なのは、3男のロンドンのネイサンと5男のパリのジェームズ。


ネイサンの息子、ナサニエルは、1853年、ボルドーのトップクラスといわれたシャトー・ムートンを買いました。しかし、1855年のメドック格付けでは、第2級に。畑と建物の荒廃が理由でしたが、実際はロスチャイルドの国籍や新参者への反目があったのではないかといわれています。


そして、100年を越す努力の結果、ついに1973年、ムートンは一級に格付けされる時を迎えます。これは、ボルドーのワインの歴史の中でも例外中の例外。

「われ一位なり。かつて二位なりき。されどムートンは変わらず」と、同シャトーは記しています。ちなみに、この時の農業大臣はジャック・シラクでした。


ムートンの大成功の裏には、1923年、20歳でシャトーを任されて1988年に亡くなるまで様々な改革をしたバロン・フィリップ(かなりのプレイボーイだったらしい。でも、ワインはまさに天職だったようで)の存在があります。

特に、他のシャトーにも呼びかけて、いわゆるシャトー元詰めを始めた功績は大きいといわれています。それまでメドックでは、樽のままボルドーのワイン商人に販売され、彼らの手で熟成、瓶詰め、販売されていたのです。

 

ミロ、ピカソ、シャガールなど、著名な画家にモダンなデザインのエチケットを発注したことでも知られています。デザイナーだった夫人の影響もあり、ワインにまつわる美術品の蒐集を始め、シャトーの一角に美術館も建てています。

 

 

 

続いて、シャトー・ラフィットロートシルトです。

 

2010110220.JPG前項でお話したロスチャイルド家5人兄弟のうちフランスを受け持ったパリのジェームズが、1866年、自分の邸宅のあったラフィット通りと同じ名前だから買ったと伝えられています。


もともとラフィットは、先に登場したセギュール家所有の時代に名前を知られるようになり、ルイ15世の愛妾マダム・ポンパドゥールのお気に入りのシャトーでした。


当時、マダム・ポンパドゥールとコンティ王子がフランス最高の畑を手に入れようと競ったことがありました。狙いの的は、ブルゴーニュ。そして、王子の勝ちとなり、自分の名前を付けた「ロマネ・コンティ」を手に入れることに。

 

争いに敗れたマダム・ポンパドゥールは悔しくて仕方がありません。そこで、「これこそ本当のフランスワインの最高峰」としてラフィットを勧めたのが、ボルドーに島流しにあっていたリシュリュー男爵(「三銃士」に登場するリシュリュー宰相の親戚筋らしい)です。

 

男爵は、60歳のときに25歳の姫君と再婚するなど、かなりのドン・ファンでした。久しぶりにヴェルサイユに戻って、ルイ15世から若さの秘訣を尋ねられたところ、「強壮剤として医者からラフィットを勧められた」と答えたそうな。

かくして、マダム・ポンパドゥールはその豪奢な晩餐会の食卓にラフィットを欠かさないようになったといいます。

ちなみに、1970年、72年は、素晴らしい年でした。

 

 

 

最後は、シャトーマルゴーです。

 


2010110221.JPGフランス文化の華、ワインの女王・・・。マルゴーを形容する言葉はいろいろあります。

大戦後、米国の企業がシャトーを買いに乗り出した時、フランス政府は、「シャトー・マルゴーを売るのを認めることは、エッフェル塔やモナリザを手放せというのと同じこと」と、反論したといいます。


ラトゥールには古塔と瀟洒な邸宅があり、ムートンには輝かしい美術館があり、ラフィットにはフェリエール宮から運び込んだ由緒ある家具があります。

でも、佇まいの気品さ、優雅さからいえば、美しく整えられた並木道の奥から姿を現すシャトー・マルゴーの神々しさは群を抜いているのではないでしょうか。

ギリシャ風の円柱を並べたファサードをもつ建物は、典雅で端正。フランスのエスプリとシックさが結晶しているといえましょう。


シャトー・マルゴーの栄光の歴史には、常に女性たちの影があることも特徴です。

 

1960年代後半から評価が落ち出したシャトーを蘇らせたのは、1977年、ギリシャ出身でフランス全土に展開するスーパーチェーンで成功したアンドレ・メンツェロプーロス。当代きっての醸造学者、ボルドー大学のエミール・ペイノー教授に教えを乞いました。

アンドレ亡き後も、妻のローラ、そして娘のコリーヌが引き継ぎ、シャトーは不死鳥のように昔の輝きを取り戻しているのです。
 

 

 

今回の饗宴のテーブルセッティングもおしゃれでした。


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テーブルの中央に並べられたのは、麹谷さんがヴェネツィアで製作しているワインクーラー。

 

手作りなので、色も形も、同じものはありません。

 

グリーン、レッド、ブルー、薄墨色・・・。

 

クーラーの背後に写しこんでしまいましたが、アカデミー・デュ・ヴァン副校長の奥山久美子先生です。奥山先生は、このクーラー、3つも持っていらっしゃるそうです。

 

 

 

こうやって、並べてみると、なかなか壮観でした。

 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)