私のワイン講座で、生徒さんのリクエストがあって、スイスワインを飲む企画を催しました。
「ラヴォーのワインを飲みたい!」とのリクエストです。
レマン湖の北岸にあるラヴォーのブドウ畑は、急斜面の段丘の美しさにより世界遺産に認定されています。写真でもご覧になった方は多いのではないでしょうか。
太陽の照射、湖面からの反射、そして太陽の熱を蓄積して夜放熱する土壌から、「3つの太陽がある畑」とも呼ばれています。チャップリンが晩年を過ごした土地としても知られていますね。
スイスワインは生産量が少なく、日本のワインショップの店頭ではほとんど見かけません。スイス名物チーズフォンデュを出すレストランでさえ、置いていないところも多いのでは?
でも、なんとか探し出しました!
スイスワイン3本を入れた当日のラインアップは、
NVノートン コセチャ エスペシアル エクストラ・ブリュット(ボデガ・ノートン)
2007ウィユ・デュ・ペルドリ ヴァランタン ロゼ(ジャン・ポール=リュダン)
2006ベ・ブラン(ソシエテ・ヴィニコル・デュ・ベ)
2007甲州 白根シュール・リー(シャトー・マルス)
2008ドール・セレクション(ドメーヌ・コルニュルス)
2005ラ・モット カベルネソーヴィニヨン(ラ・モット)
山梨の「甲州」を入れたのには、ちょっと理由があります。それは、またのちほど。
最初に飲んだノートンのスパークリングは、アルゼンチン・メンドーサ地区の畑で、オーストリアのクリスタルメーカー、スワロフスキー社が1989年から所有しています。
ボトルの形がユニークでおしゃれですね(写真左)。さすが、ガラス細工へのこだわりを感じます。泡はきめ細かく、ちょっと甘みのあるさわやかな柑橘系の味わい。これからの季節によさそうです。
さて、スイスのワインについて概要を復習してみますと、ワイン産地は大まかに3つの地域に分類されます。
①南西部のフランス語圏スイス・ロマンド
②東部のドイツ語圏スイス・アレマニック
③南部のイタリア語圏ティチーノ
このうち、主にレマン湖の北岸からローヌ川流域にかけて広がるスイス・ロマンドで、全体の8割以上を生産しています。今回選んだ3本も、この地域のものです。
「ウィユ・デュ・ペルドリ ヴァランタン ロゼ」は、レマン湖の北、ヌーシャテルを代表するロゼワイン。
山うずらの目という意味で、ピノノワール100%で造られます。収穫したブドウをプレスする前24時間桶に浸すことによって、サーモンピンクの美しいロゼ色になります。
フレッシュな赤い果実の香りが印象的。しっかり冷やして、シーフード料理と合わせたい!
「ドール・セレクション」は、ローヌ川渓谷のヴァレー州で古くから親しまれてきた赤ワイン。
ピノノワールとガメイで85%以上、そのうちピノが51%以上なければならないと決められているそうです。
チェリーの香り、タンニンも優しく、イチゴジャムのような風味を感じたのは、やはりガメイの影響でしょうか。
ほかに、ガメイとピノを掛け合わせたガラノワールという品種もブレンドされていました。
味わいは軽やか。チキンのグリルとか、ハムなどの盛り合わせとかと、美味しくいただけそうです。
さて、白ワインの「ベ・ブラン」です。
実は、ラヴォーのワインが入手できず、お隣のシャブレ地区のベ村の白ワインを取り寄せました。
ミネラル感のあるいきいきした仕上がりで、飲みやすいです。
品種は、スイスで最も主要なシャスラ。「火打石の香りが特徴」と、説明にありましたが、いささか硬めのミネラルな感じを指すのでしょう。
このシャスラと味わいの比較をしようと、日本の甲州を選びました。
先日来日した、ワイン評論家の大御所、ジャンシス・ロビンソン女史が、甲州と最も似た味わいとして「スイスのシャスラ」を挙げたからです。生徒さんの評価は、「甲州の方が透明感があるけれど、コクがあってより美味しい」でした。
それにしても、スイスワインはカジュアルでどんな料理にも合いそう。特に女子には楽しめます。ジャンシスが語るところの「これからは白ワインの時代」を象徴する1品種であることは間違いなさそうです。
ジャンシスへのインタビューは、日本ソムリエ協会の「ソムリエール」5月号に掲載の予定ですので、また改めてレポートします。
おまけですが、今回の講座で最後に飲んだ「ラ・モット」は、やはりリクエストに応じて用意した南アフリカのワイン。
ケープタウンから内陸に入ったフランシュフックにあるワイナリーで、オーナーは、カルティエやピアジェをもつリシュモングループ。
フランシュフックとは、フランス地方の意味。17世紀、ルイ14世により追放された新教徒のユグノー派の僧たちが移り住み、ワイン醸造技術を広めたのです。
カシスのような熟成した果実の芳醇な香りと豊かなアルコールのボリューム感の広がりに、圧倒されました。カベルネ好きには、おすすめ!です。