今年で90回目を数える「東をどり」に行ってきた。新橋花街の初夏の風物詩で、5月24日から27日までの4日間、銀座6丁目の新橋演舞場で開かれた。
演舞場には、開演前から長蛇の列。毎年この催しを楽しみに、はとバスで乗り付けるというおばあちゃまたちのグループもいて、そのおしゃべりを聞いていると、こちらもうきうきしてくる。
新橋演舞場の創設や東をどりのはじまりについては、2011年5月27日付の小欄で書いたので、ご興味のある方は参考にしていただきたい。
復興支援への特別な思い
2011年以降の「東をどり」には、踊りのプログラムをはじめ、演舞場のあらゆるところに、被災地・東北の復興支援への特別な思いが込められている。
以前、東京新橋組合頭取の岡副真吾さんにお話を伺った時、「被災直後、まず優先されるのは命、続いて、生活の基本となる衣食住。さらに、人がひとらしく、きらきらと輝いて生きていくためには、文化は不可欠なものではないだろうか。先達が築いてきた伝統芸の灯は守らなければなりません。日本の踊り、音楽、料亭の食文化などが一つにまとまって体験できる東をどりは、日本人の心の潤いであり、誇りでもある。文化復興の一翼を担うことができるのでは」と語ってくれた。今年のプログラム第二部は、「にっぽんの四季」をテーマに据えた。春の巻は、太閤秀吉の「醍醐の花見」、夏の巻には、人気芸者の喜美勇さん演じる「滝の白糸」の水芸が登場。秋の巻は、「陸奥の旅」と題して、東北地方の民謡「さんさ
特産食材と知恵や伝統のコラボ、料亭の食…グルメ巡り
「東をどり」では、幕間のグルメ巡りも楽しみの一つである。2階のロビー中央には、昨年4月から始まった「やっぱ銀座だべ」プロジェクトの企画商品が並んでいた。被災地の特産食材と、銀座の企業や商店が持つ知恵や伝統を結びつける試みだという。
私が注目した一つは、三陸気仙沼産の厚焼き
もう一つ、石巻の水産加工会社と東京の「丸の内シェフズクラブ」が協力して完成させた「
自宅に戻って、開けてみた。野菜のうまみと昆布だしがきいていて、ほんのり山椒の香りがアクセントになっている。いやはや、缶詰といっても、これほど
今回興味深かったのは、普段なかなか行く機会のない、新橋の料亭の卵焼き食べ比べ。私は、新喜楽、金田中、吉兆の三つの卵焼きを、
さて、幕が下りて、本格グルメタイムの始まりだ。地下の食堂で松花堂弁当が待っていた。同じ献立で、新橋の6料亭がそれぞれにつくり、競い合っているのだから面白い。お客は、どの店の弁当がくるかは、ふたを開けてからのお楽しみである。
私のは、金田中のものだった。マスの木の芽焼き、ソラマメの蜜煮、ウナギの白板昆布煮、稚アユ空揚げ…など。周りをみると、異なる料亭のものを互いに分け合って味比べしている人も多かった。
帰り際、うちわや扇子のコーナーをひやかし、銀座くのや見たての朝顔の手ぬぐいと、松崎煎餅がつくる「東をどり煎餅」をおみやげに。
非日常に
(読売新聞編集委員・永峰好美)