東京・銀座では、東日本大震災以降減っていた外国人客が、このところ戻ってきた。
家電量販店や人気ブランドの化粧品専門店の前は、観光バスが横付けされ、たくさんのお土産袋を抱えた人々でにぎわっている。
アニメやキャラクターグッズ好きの聖地・博品館
銀座8丁目の「博品館トイパーク」は、アニメやキャラクターグッズ好きの聖地だそうだ。スタジオジブリからキティちゃん、ドラえもん、ちびまる子ちゃんまで、様々なキャラクター商品がずらりと並んだ2階フロアは圧巻だ。まる子ファンだという台湾からの観光客は、
いまや日本を飛び出し、アジアでも国民的人気キャラクターになった「ちびまる子ちゃん」は、1986年に漫画としてスタート、90年からテレビアニメが始まった(最高視聴率39.9%)。来年でテレビ放映25周年になる。流行の移り変わりが激しい昨今のアニメの世界で、日曜午後6時からの30分番組をこれほど長く続けている作品は極めて珍しいといえよう。
数々の名作を手掛ける“日本アニメーション”
その「ちびまる子ちゃん」のアニメを手がけている会社は、実は銀座にある。
1975年創業の日本アニメーションを訪ねた。商談スペースのあるフロアでは、ちびまる子ちゃんのパネルが迎えてくれた。
「まる子ちゃんの顔も、放映当初に比べると、結構変化があるんですよ」。そう教えてくれたのは、同社の石川和子社長。
確かに、放映第1話と現在を比べてみると、目の大きさや頬の形、前髪の切れ込みなどが微妙に違う。段々とべっぴんさんになっているような気もする。正義感の強いちびまる子ちゃんの発言に時々はっとさせられたことがあったけれど、様々な社会経験が表情をより柔和に変えたのかなあ、などと思った。
石川社長は2代目で、父の本橋浩一氏が創業した。本橋氏は70年の大阪万博で電力館をプロデュースするなど、イベント・プロデューサーとして活躍していたが、縁あってアニメ制作にかかわることになった。
「ライセンスをしっかり確立して、グローバルな展開を目指さないと、アニメ制作費は回収できない」「人間が成長していく過程で、できるだけ多くの感動的な場面と遭遇できるような健全な物語、その感動がどこの国でも通用する作品を制作していきたい」――。それが本橋氏の口癖だったと、石川社長は振り返る。
話題の「赤毛のアン」も制作
こうして誕生したのが、「世界名作劇場」のシリーズだった。
記念すべき第1作は、「フランダースの犬」。ベルギー・フランダース地方の、貧しいネロ少年とネロに助けられた犬のパトラッシュとの心の交流物語。ベルギー本国では、アニメを見て初めて物語の存在を知ったという子どもたちが多かったという。
そして今、NHKの朝ドラの影響で、再ブレイクしているのが、「赤毛のアン」(1979年放映)。NHK-BSプレミアムでは、この4月から、毎月曜日午後6時半に再放映されている。また、3月には、全50話を収録した「赤毛のアン Blu-ray メモリアルボックス」も発売されるなど、関連商品が続々登場している。
「赤毛のアン」は、少女時代、大好きな物語の一つだった。あいにくアニメになった時には大人になっていたので、見る機会がなかったが、今改めて見ると、その質の高さに驚かされる。
制作した作品は130以上
「私たちのこだわりは、監督やアニメーターらスタッフが、物語の舞台に出かけ、五感で実際に感じたリアルな世界観を作品にしていくこと。ネットの仮想空間だけでは感じ取れない微妙なニュアンスをこれからも大切にしていきたい」と、石川社長は意気込む。
「フランダースの犬」から数えて、制作した作品は130以上。創業40年の来年は、「世界名作劇場」の主人公や「ちびまる子ちゃん」、最近加わった青い女の子コアラの「ペネロペ」など、人気キャラクターを総動員した記念イベントで全国巡回を計画しているという。
幼い時に親しんだ物語を大人になってアニメで見直すと、新しい発見があるものだ。
<(卒業した時は)未来が1本のまっすぐな道のように思えたわ。でも今はそこに曲がり角があるのよ。角を曲がると、どんなことが待っているのかわからないわ。でも、あたしは、一番良いものがあるって信じてるの>…。「赤毛のアン」49話に登場するこの台詞に、私は胸が熱くなった。
(読売新聞編集委員・永峰好美)