2014年3月アーカイブ

2014.03.26

GINZA FASHION WEEK

  • 銀座の3つの百貨店がタッグを組んだ「GINZA FASHION WEEK」
  • 各店のパンフレットには銀座を楽しむヒントが満載

 そぞろ歩きが楽しくなる桜の季節――東京・銀座は、「GINZA FASHION WEEK(GFW)」(3月31日まで)で華やいでいる。

 普段はライバル関係にある3つの百貨店、松屋銀座、銀座三越、プランタン銀座がタッグを組んで開催するイベントで、今回で6回目(プランタン銀座の参加は5回目から)。ズバリ「GINZAを楽しもう」を、共通テーマに掲げた。

 日本のものづくりの知恵を集積・融合し、発信しているのも、銀座の魅力だ。そうした「世界のGINZAから、ファッションで日本を元気にしよう」との思いが、各店が展開する独自テーマの中に込められていて、興味深い。

松屋銀座“JAPAN BLUE”

 松屋銀座は、「JAPAN BLUE」をテーマにした。古くは着物や浴衣、近年ではデニムなど、いつの時代も愛されてきた日本の藍色に着目している。

 同じ「ブルー」といっても、素材やデザイン、ポップなモチーフのあしらい方で、洋服の表情がこんなにも変化するものかと、改めて驚かされた。

 注目は、展示品の中にあった、「G.DRESS」のロングニット。たて編みの匠の技術をもつ北陸・吉田産業と、ワコール、松屋銀座の3社で共同開発した商品だそうだ。吉田産業は、伸縮性抜群の編みタイツを製造することで知られる会社。一見して変哲もないニットなので何がすごいのかわからない。だが、着てみると自在に伸びて、からだにほどよくフィットする感じがたまらないらしい。「昨秋売り出した当初はまったく売れませんでした。販売員がインナーとして着て、その着心地を率直に伝えることで、試してみようかなと思うお客様が増えて人気が出ました」と、担当者。

  • 松屋銀座は日本の藍色に着目
  • 中央にあるロングニットには、編みタイツに使われている匠の技が生かされている

 

プランタン銀座“華やかに春の銀座を楽しもう!”

 客層の中心を20-30代の女性が占めるプランタン銀座のテーマは、「華やかに春の銀座を楽しもう!」。日本人が愛する桜に目を付け、ピンクや花柄のトレンドアイテムをピックアップ。通勤、デート、アフターファイブのシーンごとに、若々しい装いの提案をした。

 ファッションもさることながら、ここでは、愛らしいスイーツに目がいってしまう。さくらクリームがたっぷり入ったピンクのエクレアは、プランタン銀座直営の「サロン・ド・テ アンジェリーナ」から。ちょっぴり塩味が感じられる桜餅の風味、これこそ日本の春の味わいだ。パリで百年以上続く老舗菓子店の伝統と世界に誇る繊細な和テイストが融合した何ともおしゃれなスイーツだった。

  • 桜色や花柄で若々しい装いを提案したプランタン銀座
  • さくらクリームがたっぷりのピンクのエクレアが愛らしい

 

銀座三越“ギンザ レトロ モダン”

  • 銀座三越には、伝説の「VAN」の紙袋が革製クラッチバックで登場

 銀座三越は、「ギンザ レトロ モダン」がテーマ。ストリートファッションの草分け「みゆき族」やアイビールックが流行した1960年代のファッションを今風に再現してみせた。

 銀座の大通り、晴海通りから1本南側に入ったのがみゆき通りで、1960年代、アイビールックのファッションに身を包んだ若者たちであふれ返っていた。ボタンダウンシャツにニットタイ、肩の線を落とした三つボタンのジャケット、細身のコットンパンツ…。通りの名前から、「みゆき族」と呼ばれた。

 女性の場合、「みゆき族」ならではのファッションアイテムといえば、リボンやワンピースの共布で作ったヘアアクセサリー、大きめのクラッチバックなど。スタジャンの小脇に抱えているのは、「VAN」の3文字ロゴがプリントされた伝説の紙袋…ではなくて、驚くなかれ、当時の形を活かしてヌメ皮クラッチバックとして再現されていた。

  • ニューヨーカーの鮮やかな赤のブレザーはパターンオーダー品
  • 「みゆき通り」にたむろする「みゆき族」(1965年7月撮影)

 「VAN」を創業したのは、日本の男性ファッションをリードした粋人、石津謙介さんだ。アメリカの雑誌で知ったアイビールックを日本流にアレンジし、若者たちの間に大ブームを起こした。

 10年ほど前になるが、生前の石津さんに当時の話を聞く機会があった。

 「問屋に商品を持っていくと、『おっ、カネが来たぞ』と言われたほど、売れに売れた。大卒初任給が2万3千円程度の頃、VANのスーツは1万6千円。決して安くないはずなのに、店にはお客が待ち構えていて、VANの文字が記された段ボールが届くと、ふたも開けずに『そのまま欲しい』と取り合ったらしいんです」

 ロゴ入り紙袋を抱えた「みゆき族」の登場は、まさに社会現象だったのだ。

 銀座三越には、31日までの期間限定でVANショップが設けられているほか、日本にブレザー文化を根付かせた「ニューヨーカー」のパターンオーダー品なども登場。東京五輪に沸いた1960年代の世界にタイムスリップしてしまいそうだ。

 3店3様で、新しい銀座の楽しみ方がまた一つ、発見できそうな気がする。

 (読売新聞編集委員・永峰好美)

この記事のURL | Trackback(0) | Comment(0)

2014.03.14

終わり良ければ、すべて良し!

  • 銀座ベルビア館のエレベータで、気になるお知らせを発見!

 「終わり良ければ、すべて良し!」。ふと立ち寄った東京・銀座のテナントビルのエレベーターで、そんなキャッチフレーズが気になった。

 どうやら、「有終のシメごはんフェス2014」というのが開かれているらしい。お酒を飲んだ後の「シメごはん」というと、すぐ思いつくのは、鍋料理の最後の雑炊。席を移して、ラーメンと餃子なんていうのもありだろう。でも、ここで提案されているのは、もっとおしゃれな個性のあるメニューのようだ。ちょうど軽い会食が終わって、もう少しお腹に入れたいなと思っている時だったので、早速チャレンジすることにした。

シメごはんの誘惑

  • ドイツビール専門店で、とりあえずの白ビールとムール貝の蒸しものを注文

 向かったのは、銀座2丁目の銀座ベルビア館8階のドイツビール専門店「シュタインハウス銀座」。

 とりあえずのビールは、お店のおすすめの白ビール。ヴァイスビア・ゴールドといって、大麦麦芽だけでなく、小麦麦芽も使って造られるまろやかな味わいのビールという。小麦を使っているせいか、バナナやパイナップルのようなフルーツの甘みと、後味に残る爽やかな酸味が感じられるビールだった。

 「通常は白ソーセージなどを合わせるのですが、今回のシメごはんフェスでは、こちらをまず召し上がってください」と促され、ムール貝の白ビール蒸しを注文した。ヴァイスビア・ゴールドで蒸しあげているという。トウガラシのピリ辛とムール貝の海の塩味がほどよい加減だ。内臓が心地よく刺激されて、ぺろりと食べてしまった。

 ここで、皿に残ったムール貝の出汁が効いたスープには、パンを浸しながら食べたいところだが、ここからがシメごはんの真骨頂。スープは、再び調理場へと帰って行った。

 しばらく待っていると、スープのお皿は、パスタに大変身! シュペッツレという南ドイツなどで食べられる卵麺が出てきた。これが、もちもちした食感で、とてもおいしい。ムール貝の出汁(だし)に生クリームなどが加わったコクのあるクリームソースがからまる。意外にしつこさもなく、満腹のはずなのに、ついついスプーンが進んでしまう。

 ああ、これが「シメごはんの誘惑」とでもいうものなのだろうか。

 そんな感想をお店のスタッフに言ったところ、「シェフの自信作なんです。でも、お店では、ビールと一緒にアイスバインやソーセージをたっぷり召し上がる方が多いのです。ムール貝は注文しても、お腹がいっぱいになってシメまでたどりつけないと言われるのですが…」と、ちょっぴり残念そうだった。

  • 白ビールで蒸しあげたムール貝はピリ辛味
  • ピリ辛で内臓が刺激されて、食が進む

 

  • 残ったムール貝のスープは、この後調理場のシェフの元へ
  • スープのお皿は、バスタに変身。「シメごはん」の醍醐味です

 

逸品ぞろいのラインナップ

 この企画は、三井不動産商業マネジメントが東京の日本橋、赤坂・霞が関、銀座エリアで運営する商業施設内の店舗で展開されている。銀座では、飲食店18店舗が参加し、3月25日まで開催される。フランス風食堂では、フォアグラにコンソメスープをかけていただく「フォアグラ茶漬け」や、串揚げ店では、おでんの出汁を使ったさっぱり鯛茶漬け、沖縄料理店では、さっぱりエビ塩スープ仕立てのソーキそばなどが提案されている。

 もちろん、「別腹スイーツ」も用意されている。イタリアンバールでいただく、ひんやりジェラートにエスプレッソをかけたアフォガートや、表面がぱりぱりのカラメルが香ばしい冷たいカスタード、カタラーナなど。「お酒の後は甘いもの」派にもうれしい。

 ところで、夜遅い帰宅後、私がよく食べる「シメごはん」は、ピリ辛の豆乳スープに豆腐と冷蔵庫の残り野菜を入れて作るスンドゥブ風。夜9時以降の炭水化物の摂取はなるべく控えているつもりなのだけれど、麺類好きな私は、つい手が伸びてしまうこともあって…、ダイエットに失敗を重ねております。食いしん坊の私は、「シメごはん」の誘惑にはなかなか勝てそうもない。


「有終のシメごはんフェス2014」
http://mi-mo.jp/pc/special/shimegohanfes2014/


 (読売新聞編集委員・永峰好美)

この記事のURL | Trackback(0) | Comment(0)

永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)