2013.05.17

ブルゴーニュワインと和食のマリアージュ

ブルゴーニュワインが充実「マルシェ・ド・ヴァン銀座」

  • 銀座日航ホテルの対面にある「マルシェ・ド・ヴァン銀座」

 以前からかなり気になっていたけれど、いつも通り過ぎるだけで、訪れていない店って、ありませんか?

 私にとってのそんな店の一つが、銀座8丁目、銀座日航ホテルの対面にある「マルシェ・ド・ヴァン銀座」だった。入り口に置かれた木箱には、フランスのブルゴーニュワインの瓶がさりげなく飾ってある。約2000本をそろえたワインセラーをのぞかせてもらうと、やはりブルゴーニュワインが充実していた。

 豊通食料というワインのインポーターが運営している店舗で、その前身は、ブルゴーニュファンにとって伝説的な存在、三美(ミツミ)なのだそうだ。そういえば、銀座のシャンソニエで、時々セミナーを開いていたワイン研究家の金子三郎さんから、「80年代、ここに来れば、日本ではなかなかお目にかかれない造り手のものに巡り合うことができた。無愛想だけれど飛びきりワインに詳しいオヤジさんがいた。ここでワインを買って、5丁目の洋書店イエナに行って、6丁目の交詢社ビルのバー、サンスーシーで一杯グラスを傾けるのが、私の銀ブラコースでした」と聞いたことがある。

  • 入り口には、ブルゴーニュワインの瓶がさりげなく
  • セラーにはブルゴーニュを中心に約2000本のワインが並ぶ

ブルゴーニュワイン+和食=おいしく、からだにも良い!

  • ブルゴーニュワイン委員会のピエール=アンリ・ガジェ委員長
  • 「有栖川清水」で開かれたイベントは大にぎわい

 今週、産地ブルゴーニュから、36人の生産者が来日した。東京・広尾の懐石料理店「有栖川清水」では、生産者団体ブルゴーニュワイン委員会の主催で、「ブルゴーニュワインと和食の繊細なマリアージュ」というイベントも開かれた。

 健康志向に後押しされて、和食ブームは世界的に広がっている。

 「ブルゴーニュワインも、和食と相性がいいのでしょうか?」。ブルゴーニュワイン委員会の委員長として来日した、メゾン・ルイ・ジャド社長のピエール=アンリ・ガジェ氏に聞いた。

 「エレガントで繊細で、軽やかで、精巧で、健康的…。ブルゴーニュワインを表現する言葉と和食を形容する言葉は共通している。両者はハーモニーがとてもいい。ブルゴーニュワインを飲んで和食を食べていれば、おいしく、かつからだにも良いのです」

 ガジェ氏は、30年ほど前から、前社長の父親と一緒に訪日しているが、最初は今まで経験したことのない香りの違いに戸惑い、なじめなかったそうだ。それが段々おいしいと感じるようになり、今では「日本に向かう機上で、これから1週間日本食を食べられると思うと、本当にうきうきしてしまう」というほどの和食ファンに。「天ぷら、寿司、鉄板焼。名前を知らないけれど好きなものも数え切れないほどある」という。

ワインと和食のこだわりの組み合わせ

  • ワインに合わせて和食メニューを考えた「ヴィオニス」の阿部誠さん
  • シャブリ・グルヌイユには旬のハマグリとかつお節(フランス食品振興会提供)

 さて、イベントで登場したワインと和食の組み合わせには、銀座のシャンパーニュバー「サロン・ド・シャンパーニュ ヴィオニス」のオーナーソムリエ、阿部誠さんが知恵を絞っている。

 マコン・シャルドネには、わらびの白和え、リュリーにはうまみを凝縮させた鯛の昆布締め、特級のシャブリ・グルヌイユには焼き蛤、シャンボール・ミュジニーには蒸した合鴨ロースのゆずコショウ風味、マジ・シャンベルタンには牛ひれ肉の照り焼き、といった具合だ。

 ほかにも、あなごの湯葉揚げ、銀だらのふき味噌焼き、和牛とごぼうのうま煮など、本格的な和食メニューが続いた。

 「シャブリには生がきが王道と思っている人が多いでしょうが、ここは日本の旬の貝、ハマグリを合わせてみました。かつお節としょうゆで焦がして、さらにうまみを凝縮させた。ちょっと面白いでしょう」と、阿部さんが教えてくれた。

「UMAMI」に魅了

  • (左上)シャブリ・グルヌイユには旬のハマグリとかつお節(左下)シャンボール・ミュジニーに、合鴨ゆずコショウ風味(右下)マジ・シャンベルタンに、牛ひれ肉の照り焼き(右上)日本の春から初夏には欠かせない山菜も登場(いずれもフランス食品振興会提供)

 「UMAMI(うまみ)」という日本語は、もはや飲食業に携わる人ならば、だれでも知っている。とはいえ、うまみの基本である「昆布の海のヨード臭さ、かつお節の魚臭さは苦手」という外国人は少なくないのでは…。

 そんな心配をよそに、テーブルを見ると、どんどんお皿が空になっていった。ガジェさんも、カツオのたたきを、ポン酢とショウガにつけておいしそうに頬張っていた。

 あれこれ取材しているうちに、私は随分と食べそびれてしまったけれど、銀座に戻って、教わったマリアージュをゆっくり試してみたいと思った。

  • ガジェ委員長(左)はカツオのたたきがお気に入り
  •  最後は、手を天にかざして踊るヴァン・ブルギニオンで、締めに

 (読売新聞編集委員・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)