新しい歌舞伎座が開場し、4月2日からこけら落とし公演が始まった。東銀座の歌舞伎座周辺は、物見遊山の人々も含め、連日大にぎわいだ。
明治半ばの1889年に初代が開場し、新歌舞伎座は5代目になる。「伝統と革新の両立」がうたわれているように、背後に高層ビルが建ち、バリアフリー化や座席背面の字幕モニター設置など快適性を向上させた以外は、見た目ではそれほどの変化は感じられない。しかし、見えないところに新しい技術が駆使されている点も忘れられないだろう。
内覧会を含め、私の視線で追った新歌舞伎座の注目ポイントをいくつかご紹介しよう。
名画と写真は要チェック
まず、正面玄関を入って最初にお目見えする
もう1つ階段を上って3階に行くと、売店横を通って食事処「
こだわりの幕の内弁当と特製スイーツ
「花篭」では、芝居小屋から生まれたこだわりの幕の内弁当を食べたい。江戸文化研究家の松下幸子・千葉大名誉教授の監修で、江戸時代の芝居茶屋で食べられていた弁当をできる限り再現したのだそうだ。特に、焼き豆腐とかんぴょうの煮物の2つは欠かせないもの。逆に、現代の幕の内弁当で定番のおかずになっている揚げ物は入れていない。
「かぶき幕の内」(2100円)は予約制で食事処でのサービスになるが、折り詰めの「江戸風幕の内」(1000円)は、東銀座駅に直結した木挽町広場の売店でも買える。また、木挽町通りをはさんだビルにある「日本料理ほうおう」では、幕間に「ほうおう膳」(予約制、3500円)が楽しめる。
1階の喫茶室「
舞台裏をのぞいてみよう
歌舞伎座タワー5階には、約450平方メートルの屋上庭園がある。歌舞伎作者河竹黙阿弥が愛した石灯籠とつくばいが据えられている。4月23日には新設のギャラリーがオープンする。歌舞伎の衣装や小道具などを展示する企画展や衣装をまとって撮影できる体験型写真館もあって、ここは誰でも自由に入場できる。
ちょっと舞台裏をのぞいてみよう。
庭園から赤く塗られた五右衛門階段を下ると、4階の幕見席のロビーに出る。この階には、2室の板張りの稽古場がある。また、3階には楽屋や洗濯室、風呂場などに加えて、立ち回りなどで見られる宙返りの練習をする砂場、通称「トンボ道場」も設置された。これまでも砂場はあったそうだが、専用の空間として独立させたところが新しいそうだ。
奈落が画期的に
舞台下の空間である
それにしても、奈落とは、本当に真っ暗であった。サンスクリット語で「naraka」が転じて「奈落」となったが、本来は仏教用語だ。地獄や地獄に落ちることを意味する。舞台の上の華麗さとは対照的に、舞台下には不気味なほどの暗がりが広がっていた。
幸せになる「逆さ鳳凰」
さて最後に、歌舞伎ファンの間で今ひそかにささやかれている「ウワサ」を一つ。
歌舞伎座の屋根には、シンボルである鳳凰の紋をかたどった瓦が並んでいるが、一つだけ逆さになっているものがあるそうな。「逆さ鳳凰」といわれて、これを見つけると幸せになるという。
何かと話題の多い歌舞伎座から、当分の間目が離せそうもない。
(読売新聞編集委員・永峰好美)