新歌舞伎座の開場以来、連日にぎわいが続いている銀座の街。そこにもう一つ、新たな注目スポットが加わった。高層の歌舞伎座タワー5階に、4月24日オープンした「歌舞伎座ギャラリー」だ。
四季折々の企画展…オープニングは「歌舞伎の美 春」
目的は、歌舞伎を中心とした日本の伝統文化の魅力を世界に発信すること。季節に応じてテーマを変える企画展が目玉の一つだ。オープニングの企画展のタイトルは、「歌舞伎の美 春」(6月30日まで)。早速出かけてみた。
入り口を入ると、まず、桜色のタピペストリーに丸く大きく描かれた花の文様に目を奪われた。舞台の壁や欄間に描かれ、背景の一部として溶け込んでいる「花丸」だが、単独で見ると、こんなにも華やかだったのかと改めて驚かされた。
普段目にすることはできない「道具帳」コレクション
続いて、「道具帳」のコレクション。これは、舞台の設計図に当たる。細やかな筆づかいの一つひとつに、大道具方のこだわりが透けてみえる。役者たちは、この道具帳を見ながら完成した舞台を思い浮かべ、「ここの屋台はもう少し大きく派手に飾ってほしい」など大道具方に注文したりするのだそうだ。
桜にちなんだ6つの歌舞伎作品の道具帳が飾られていた。歌舞伎は初心者レベルの私でもわかる、「
さらに進むと、「吉原中之町」の道具帳をもとにした大きなパネルが迎えてくれる。「
ところで、天井から吊られている「桜の吊り枝」は、歌舞伎には欠かせない大道具の一つだが、歌舞伎座と新橋演舞場とでは、色が異なるのだそうだ。淡い方が歌舞伎座で、濃い方が演舞場だと聞いた。
オープン記念トークショーは中村梅玉さん
ギャラリーの奥に併設されている木挽町ホールでは、今後様々なイベントが行われる予定。そのステージには、これまで歌舞伎座で使われていたひのきが利用されているという。オープン記念のトークショーには、歌舞伎俳優の中村梅玉さんが登場、「歌舞伎は、衣装や道具類、楽器に至るまですべて含めて、世界に誇れる総合舞台芸術。展示を見て、こんなに美しい衣装を着けるのならば、歌舞伎の舞台を見てみたいと興味を持ってもらえればうれしい」と語っていた。
まだまだ見どころはあるけれど、あまり種明かしをしてしまうと、楽しみが半減するので、このあたりで…。
パリでも人気急上昇、創業160年老舗の日本茶カフェ「寿月堂」
さて、私が注目したもう一つのスポットが、ギャラリーに隣接している日本茶カフェ「寿月堂銀座歌舞伎座店」。築地で創業して160年になるお茶と海苔の老舗、丸山海苔店が運営するカフェだ。数年前からパリで緑茶人気が上がっているとのうわさを耳にしていたが、その中心的な店が寿月堂パリ店だった。パリ店を設計した隈研吾さんが、約2000本の竹を使って茶禅の世界を再現している。
店のスタッフの説明を聞いて、日本茶についてあまりに無知な自分に恥じ入った。早摘み新芽から出るふくよかな香りとまったりとした味わいが特徴の緑茶は75度前後の湯で60秒間くらいかけて抽出。渋みも苦みもしっかりしたコクのある深蒸し茶は、80-85度で30秒くらいでいただくとおいしい。緑茶の基本は、日本人として学んでおかないといけないなと、反省しきり。週末には、急須でゆっくり煎茶を入れてみよう。
歌舞伎なりきり写真にチャレンジ
さらに、お楽しみスポットを挙げるとしたら、白塗り、衣装、かつらで歌舞伎の役に扮装できる「スタジオアリス歌舞伎写真館」。一度変身にチャレンジしてみるのも面白そうだ。「京鹿子娘道成寺」の主人公、
春らんまん。今年の桜の季節はあっという間に過ぎてしまったけれど、その余韻を思い返し、和の気分に浸ることができる貴重な空間でもあった。
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(読売新聞編集委員・永峰好美)