2012.02.10

銀座の街を音楽で元気に「ジャズひな祭り」

  • 「ジャズひな祭り2012」のパンフレット 深澤さんの手作りの温かさが伝わってくる

 桃の節句にちなんで、東京・銀座では、3月4日、日曜の昼下がり、恒例の「ジャズひな祭り」が開催される。今年で7回目を数える小さなジャズフェスティバルだ。

 中心になっているのは、銀座の地を愛し、銀座のジャズクラブなどで活動を続ける、女性がリーダーのジャズバンド12グループ。40人ほどのアーティストが集まり、ワンステージ40分、24のプログラムを、銀座の8会場を巡って演奏する。

 1会場の定員は25名から60名。アットホームな雰囲気のライブハウスや本格的なカクテルが楽しめるおしゃれなバーなど、参加者も会場をクルージングしながらこの日一日ジャズ三昧で盛り上がれるのだ。

 「最初は男性主導でイベントづくりをしていましたが、今は姫たちにおはやしがついてくるといったなごやかな催しになりました」と、主催者でジャズピアニストの深澤芳美さんはいう。

  • ジャズピアニストの深澤芳美さん

 3月11日の大震災からまもなく1年が経つ。チャリティーライブで義捐金を集めるなど、ジャズ界でも活発な活動が広がった。

 「でも、あの日以来、やはり銀座は元気がないんです。アーティストもお客さまも皆、銀座が好きで、大人の街、銀座だからジャズを演奏したい、聴きたいという人も多いのに、演奏の場が少しずつ縮小されているのが現状。だからこそ、今回のテーマは『銀座より愛をこめて』として、銀座の街をジャズで元気にしようと呼びかけることにしました」と、深澤さん。

“元気の素”のヴォーカリスト、細川綾子さん

  • アーティストも聴き手も銀座の8か所の会場をクルージングする

 今回特に、“元気の素”を注入してくれるのが、アメリカ西海岸のサンノゼ在住のベテラン・ヴォーカリスト、細川綾子さんだ。

 深澤さんとの出会いは、10年ほど前にさかのぼる。細川さんが「日本の歌い手はなんか小さくまとまっているけれど、もっと自由に元気にやってほしいなあ。私、伝えたいことがいろいろあるのよね」と漏らしていたことを思い出し、特別にトークライブを企画したのである。

  • 米国在住のヴォーカリスト、細川綾子さん

 細川さんは、エラ・フィッツジェラルドに憧れてジャズの道に進もうと決心、14歳で浜口庫之助氏に師事した。米軍キャンプなどで歌い始め、1956年にコロムビア・レコードから歌手デビュー。

 米国人と結婚して61年に渡米し、サンフランシスコを中心にさまざまなステージに立ってきた。渡米は、幼いころからの夢でもあったという。

 60年代後半、“ジャズピアノの父”ともいわれるアール・ハインズにスカウトされて、グループ専属の歌手として活躍、花開いた。憧れのエラ・フィッツジェラルドも細川さんの舞台を聴きに来てくれた。

 「でも、順風満帆な時ばかりではなかったのよね」と、細川さんはいう。

オイルショックのしわ寄せで転業…

 「1970年代のオイルショックの時代、アメリカでもショービジネスの世界はしわ寄せを受けました。生演奏のできるジャズクラブがディスコやロックミュージッククラブに変わり、ジャズを歌う場所が少なくなって、転業を余儀なくされたミュージシャンもたくさんいました。私もその一人です。ちょうど離婚した直後で、生活のために銀行に勤めたけれど、歌はやめたくなかったので、週末だけレストランのピアノバーでほそぼそと歌ってきました。それまで華やかなナイトクラブで歌ってきただけに、ピアノひとつの伴奏で歌うのが寂しくて、精神的にも落ち込みました」

 その後、日系三世の男性と再婚。80年代半ばに、夫婦で日本に戻ったが、米国に残してきた家族のことが気になり、そして何よりも細川さん夫婦がアメリカが恋しくなったこともあって、97年に再び渡米。現在は、日米を年に数回往復しながら、日本のジャズフェスティバルなどでも活動を続けている。

 「私も高齢者の仲間入り。もっぱらサンノゼやサンフランシスコの日系人たちが主催するイベントやパーティーなどで仕事をしています。でも、チャレンジ精神は失っていないの。最近では、教会の聖歌隊に入りました。みんなについていくのが精いっぱいで、ソロで歌うよりも難しいけれど……」

米国でチャリティー活動に参加

  • 3月4日のプログラム。チケットは限定300枚

 昨年2011年3月11日、細川さんは、たまたま日本にいた。日本での仕事が次々にキャンセルされていく中、米国に戻ったが、やはり日本人。日本を離れることをとても後ろめたく思ったという。日本で開かれたチャリティーコンサートのほか、米国でもさまざまなチャリティー活動に参加して、震災後の日本を見守り続けている。

 日本のアーティストの間で、「ミュージシャンズミュージシャン(ミュージシャンの憧れるミュージシャンの意味)」と尊敬されている細川さんのトークライブをはじめ、女性ジャズアーティストの活躍に間近に触れられる貴重な機会――見逃せない。

 「ジャズひな祭り2012」は、3月4日午後2時~午後5時15分、銀座5~8丁目の全8会場で。チケット3000円で、全会場を巡れる(ドリンク代別)。限定300枚(売り切れ次第終了)。

 (プランタン銀座常務・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)