2011.04.08

春のトレンドまとう、70年代風スカーフ

 パリから広がった民主化運動

  • (左)今春のファッションは、スカーフがポイントに。ベルトとトートバッグがおそろいで、おしゃれ、(右)スカーフを組み合わせたチェーンネックレスはどこか70年代風(いずれも「組曲」)

 往年の1970年代ファッションが今シーズンの注目トレンドとして急浮上しているそうだ。

 中でもスカーフは、春の軽快なおとなスタイルを装うのに欠かせないアイテムと聞いて、クロゼットの奥にしまい込んでいたスカーフをチェックしてみた。

 いや、出てくるわ、出てくるわ……。一枚一枚広げてみるたびに、買った時や場所の懐かしい思い出も一緒に蘇ってきた。

 1960年代後半、パリで起こった民主化運動は、日本をはじめとする世界各国に広まり、ファッションにも大きな影響を与えたといわれる。流行の主導権がオート・クチュール(高級仕立て服)から徐々にプレタポルテ(既製服)へと移っていったのである。

 1970年代に入って、ソニア・リキエルやカール・ラガーフェルト、ドロテビスのジャコブソン夫妻、ケンゾーやイッセイなどの日本人も含め、プレタポルテ・デザイナーたちの仕事が注目される。イヴ・サンローランやカルダン、クレージュ、ウンガロなどのオート・クチュールのデザイナーたちもプレタのコレクションに力を入れ始め、自由なムードが洋服全体にあふれてくるようになった。

ファッション誌の鮮烈な記憶

  • 80年代後半から買い集めた私のエルメススカーフコレクション

 同時に、グッチやエルメス、ルイ・ヴィトンなど、高級皮革製品を扱う老舗ブランドのファッション雑貨人気が高まっていった。

 1970年に平凡出版(当時)から出版されたファッション雑誌「アンアン」は、美しいヴィジュアルが衝撃的だった。当時中学生だった私は、友人のおしゃれなお姉さんから「アンアン」を見せられながらファッション講義を受けたことを覚えている。

 リセエンヌルックとか、フレンチシックとか、BCBG(ベーセーベーゼー=上品なトラッドスタイル)とか、ブリティッシュトラッドとか、その時はよくわからなかったけれど、おとなになると素敵なファッションが楽しめるのだと、期待に胸をふくらませた。確か、ルイ・ヴィトンのバッグやエルメスのスカーフ「カレ」を知ったのも、「アンアン」だった。

  • 今も大切にしているグッチの「フローラ」

 とはいえ、1970年代後半、大学生になった私は、大学がアメリカンな雰囲気であったせいか、普段のキャンパスでは、これも平凡出版から創刊されたばかりの「ポパイ」や「オリーブ」をお手本に、アメリカンカジュアルに流れていった。ベルボトムのジーンズ、UCLA、スニーカー、ヘビーデューティーウエア……。当時の西海岸風アメカジのキーワードだったと思う。

 そんな折、商社マンだった父が母へのプレゼントに、グッチのスカーフを買って来た。色とりどりの花があしらわれた美しいデザインで、モナコのグレース王妃のために特別にデザインされた「フローラ」プリント。そのエレガントさに、目がくぎ付けになった。とてもうらやましくて、私は母に、大事に使うから共有させてと、提案した。このイエローの「フローラ」は今も大切にしている。

今年風、スカーフの着こなし

  • (左上)肩にかけてふわっとたらした自然なアレンジがおすすめ、(左下)胸元で結ぶ定番の結び方も根強い人気、(右上)背中の面積はおおきめにとると美しい、(右下)スカーフリングを胸元で止めて(いずれもプランタン銀座本館1階)

 社会人になって、記者として海外取材の機会が増え、少しずつ買いためたのが、憧れだったエルメスのスカーフ。アフリカ、仮面舞踏会、サーカスなど、シーズンによって変わるテーマも楽しみで、店頭で選んでいると、時が経つのを忘れた。80年代後半から90年代の初めにかけてのことだ。

 クロゼットの奥から蘇ったスカーフたちは、当時と変わらず、発色が鮮やか。20年以上経っているのに、質感も変わらず、老舗メゾンの底力を感じさせてくれる。

  • バッグに結んでヴァリエーションを楽しむ

 90年代には、エルメススカーフのアレンジの仕方マニュアル本が出るなどして、凝った結び方に四苦八苦してチャレンジしたものだ。では、今シーズンのスカーフはどんな風に使うのがいいのだろう。

 プランタン銀座のファッション雑貨売場担当がおすすめするのは、肩にかけてふわっとたらした自然なアレンジ。ほかに、三角に折って、胸元でくるくると巻き込んだ結び方(確か、ガールスカウト結びといっていました)も定番。背中の面積を大きめにとるのが、華やかさを演出するポイントとか。ポリエステルが3千円台から、シルクが4千円台から。

 スカーフリングを使う時は、胸のあたりでゆるく止めると今年風に。バッグに結んでみるのも、変化があってよさそうだ。

ワンピースやブラウスにも

  • (上)ヘアバンドでさわやかな印象に、(下)右上から時計回りに、シュシュ、ヘアバンド、ブローチ、カチューシャ(すべて「組曲」)

 さらに、スカーフを使った雑貨類が充実しているのも、今シーズンの特徴。プランタン銀座本館3階の「組曲」で見つけたのは、カチューシャやシュシュ、ヘアバンドなどの髪飾りや、ブローチ、ネックレス、それにキャンバストートバッグにベルトなど。

  • (左)ヴィンテージスカーフを使ったワンピースが人気の「ソロ プリュス」、(右)私の春のワードローブに加わったちょっとレトロなブラウス

 私のイチオシは、本館4階の「ソロ プリュス」のヴィンテージスカーフを使ったワンピースやブラウス。フランスのデザイナー、サミー・シャロンが一点もので作っているもので、私は、春のワードローブに、鮮やかなピンク系のブラウスを加えた。

 昔からのお気に入りを使うのもよし、エキゾチック柄の新作を取り入れてみるのもよし。

 おとな世代だからこそ余裕でできる、スカーフのアレンジ、あなたも挑戦してみませんか?

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)