2011年1月アーカイブ

2011.01.16

帝国ホテル懐かしの味めぐり

東京のホテルの中で、好きなホテルを挙げるとしたら、まず、帝国ホテル! と答えます。
毎年正月元旦は、家族で泊まってゆっくり過ごすことにしています。


帝国ホテルは1890年(明治23年)の開業で、昨年11月3日に、節目のセレンディピティ(120周年)を迎えました。
それを記念して、今年の元旦、第13代総料理長・田中健一郎さんの企画で、「懐かしの味めぐり」という素敵なイベントが催されました。

 

2011010123.JPG

 

 

「フォンテーヌブロー」や「プルニエ」など、同ホテルで一時代を画した著名レストランの名物料理11品のデギュスタションです。

 

 


2011010124.JPG 2011010125.JPG

 

 

 

 

 

 

 

2011010126.JPG 2011010127.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

料理はこんな具合で続きます!

「ヨミウリオンライン」に連載中の「GINZA通信」(1月14日付け)に詳しく書きましたので、そちらをチェックしていただければうれしいです。

http://otona.yomiuri.co.jp/pleasure/ginza/110114_01.htm

 


このとき一緒に供されたワインはといえば・・・


 

 

     

2011010128.JPG 2011010129.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モエ・エ・シャンドン ロゼ・アンペリアル 


ハッピーな気分にしてくれる、きめの細かいロゼ・シャンパーニュ。

泡好きな私は、年の初めを、こんな繊細なロゼ・シャンパーニュで始められたことに感謝!です。 

 

 

 

2011010111.JPG

2007 シャブリ・グランクリュ レ・クロ(ドメーヌ・ルイ・ミシェル)

 

1850年より5代に渡る家族経営のドメーヌ。

 

樽発酵を一切行わず、ステンレスタンクのみで仕上げているので、たっぷりの果実味ときりっとしたミネラルにあふれています。

 

さすが、グランクリュ畑「レ・クロ」! スパイスと花のニュアンス、ハチミツなどの芳醇な香りがあって、ボリューム感・複雑性に富みます。 

 

 


 

 

2011010112.JPG

2003 シャトー・カントメルル

 

このところ評価の高いボルドーです。

 

2003年は猛暑の年でしたから、色合いも果実の風味も、とっても濃厚。

でも、どこかエレガンスさもあって、えぞ鹿のステーキともよく合いました。

 


 

 

それから、デザートワインは、バルザックの「シャトー・モンジョア」でした。

 

 

ゆっくり3時間余りのイベントのあとは、料理をつくったシェフたちが勢ぞろいでお見送りしてくれました。

 

2011010113.JPG 

 

 

さて、年末年始、帝国ホテルでいただいたワインは――

年越しの12月31日は、鉄板焼きの「嘉門」。

伊勢えび、そして和牛のフィレをベリーレアで。

  2011010102.JPG 

2011010103.JPG

 

2011010104.JPG

 

2011010105.JPG

 

 

2011010101.JPGコルドン・ブルー ブリュット・セレクト(シャンパン・ドゥ・ヴィージュ)

 


その家名は、スイスのレマン湖のほとりを流れるヴィージュ川に由来します。

設立は1837年、1876年のフィラデルフィア万博でグランプリを獲得するなど、海外でも早くから高評価を得たシャンパーニュ。

ピノノワール50%、ピノムニエ25%、シャルドネ25%。

 

軽やかで爽やかで、バランスのとれた味わいでした。

 

 

 

 

 

元旦の初日の出。東京は快晴でした。

 

 

2011010106.JPG

 

 「伊勢長」のおせちをルームサービスでいただきました。

 

2011010107.JPG 

 

1月2日の夜は、「東京・吉兆」で。


和食に合わせて、
2009 甲州きいろ香(シャトー・メルシャン)を選びました。

 


2011010114.JPG日本固有の品種「甲州」の香りのポテンシャルを研究するため、同社は2004年、フランス・ボルドー大学醸造学部のデュブルデュー研究室と「甲州アロマプロジェクト」を発足。

 

同研究室の富永敬俊博士(故人)の指導で、甲州ワインから、グレープフルーツのような柑橘系の特徴ある香りのある「3-メルカプトヘキサノール」の存在などを発見したのです。


 

甲州きいろ香は、その研究成果を受けて誕生したもので、2005年が初ヴィンテージ。

2009年は、グレープフルーツやライムのフレッシュな味わい、吟醸香のような華やかさも持ち合わせていて、魚料理や刺身とベストマッチングでした。

 

 

 

 この日の料理は、こんな具合です。

 

2011010115.JPG 

2011010116.JPG 2011010117.JPG 2011010118.JPG 2011010119.JPG

 

 

ご飯は、大好きな蟹ご飯でした!

 

2011010120.JPG

 

 

卯年なので、茶碗も・・・

 

2011010121.JPG 2011010122.JPG 

 

 

 

というわけで、今年もたくさん美味しいワインを掘り起していきたいと思っておりますので、よろしくお付き合いくださいね。

 

この記事のURL | Trackback(0) | Comment(0)

2011.01.14

帝国ホテル120年の味

 東京・日比谷にある帝国ホテルは、1890年(明治23年)に開業、「東洋一の迎賓館」とも呼ばれ、昨年11月3日、120周年を迎えた。

 120周年を記念して、今年の元旦、第13代総料理長・田中健一郎さんが「懐かしい帝国ホテルの味めぐり」という素敵な企画を催した。

 「フォンテーヌブロー」や「グリル」「プルニエ」など、一時代を画したレストランの名物料理がデザートも入れて11品、デギュスタション(テイスティング)・スタイルで供されたのである。

懐かしい味11選

 ご興味がある方もいらっしゃると思うので、1品ずつご紹介したい。

 1品目、「レインボールーム」からは、スモークサーモンとカリフラワーのバヴァロワとオマール海老の取り合わせ。スモークサーモンの塩加減がやさしい。

 2品目、世界のレストラン・ベスト10にも選ばれたことがある「レ・セゾン」からは、たらば蟹のスフレ・キャビア添え、ソーテルヌワインのソースで。

 3品目、フランスのアルザス地方のビアホールをイメージして造った「ラ ブラスリー」からは、シャラン産鴨のテリーヌ、りんごのサラダと金柑のチャツネを添えて。

  • スモークサーモンとカリフラワーのバヴァロワ
  • たらば蟹のスフレ
  • 鴨のテリーヌ

 4品目、ホテル・ハスラーのシェフを招いてオープンしたイタリア料理の「チチェローネ」からは、スパゲッティ、魚介のソースと共に。ムール貝やホタテ貝などの魚介がトマトソースと絡まって、ミートソースのシーフード版といった趣に。

 5品目、1958年にオープン、定額料金で食べ放題のスタイルが話題になった「ヴァイキング」から、珍しい(きじ)のコンソメスープ・シェリー風味。1960年の冬メニューだそうで、繊細でふわっとした柔らかな味わいが特徴だ。

 6品目、魚介の専門レストラン「プルニエ」から、旬の魚介のすり身をはさんだ寒平目のデュグレレ風。デュグレレ風とは、19世紀のフランスの料理人、アドルフ・デュクレレの名前から由来しているそうだ。当時のフランス料理には珍しく、ソースにトマトの酸味が生きている。

  • スパゲッティ
  • 雉のコンソメスープ
  • 寒平目のデュグレレ風

 7品目はお口直しで、ドンペリニヨンのグラニテにフルーツのジュレを浮かべて。

 8品目、本格フランス料理店として1970年に登場した「フォンテーヌブロー」から、仔牛の喉頭肉、牛舌とフォワグラのプレゼ・ヴォロヴァン仕立て、アルフォンス13世風。パイの中にじっくり煮込んだ肉が詰められていて、濃厚ソースは絶品だ。

 グルメブームのはしりで、文化人や経営者のお客に愛された同店は、食材はほぼフランスで使うのと同じものをそろえ、高級ワインもチーズも野菜も、日本になければ空輸で取り寄せていた。田中総料理長にとっては、一番思い出深い店でもあるという。

 9品目、「グリル」から、えぞ鹿のステーキ・トリュフソース、料理長風。ちょうどいい具合に熟成させたえぞ鹿は、とってもジューシー。

  • グラニテとフルーツのジュレ
  • 仔牛の喉頭肉と牛舌など
  • えぞ鹿のステーキ

 10品目、小さな器のなめらかチーズプリン・フルーツ飾り。

 11品目、イチゴのパイ・サバイヨンソース添え。「ムッシュ」といえばこの人、名料理長の誉れ高い第11代総料理長、村上信夫さんのスペシャリティ。1979年から250回を超える人気催事「村上信夫とフランス料理の夕べ」で供されたという。

 読者の皆さんの中にも、「ああ、懐かしい」と思われる一品を見つけた方もおられるのではないだろうか。

  • チーズプリン
  • イチゴのパイ

「料理の世界も温故知新」

  • 開業約1か月後のメニュー
  • 「フォンテーヌブロー」で使われた食器など

 私の思い出はといえば……まだ幼いころ、新しもの好きの祖父に連れられて、バイキングに行き、調子に乗って食べ過ぎて翌日おなかの具合が悪くなったこと、また、洋服を新調して出掛けた「フォンテーヌブロー」では、初めてジビエを経験、燕尾服を着たカッコいいギャルソンと記念写真を撮ったことなど、いくつかのエピソードを思い返すと、楽しく、また、ちょっぴりせつない。

 「料理の世界も温故知新。伝統の味を大切に継承しながら、未来に向けてさらなる美味の追求に努めたいと思います」と、田中総料理長の言葉は力強かった。

 その話を聞きながら、私は、2005年に亡くなられた村上信夫さんのことを思い出していた。

“ムッシュ村上”とビーフカレー

  • 村上信夫さん(右)と田中総料理長
  • 料理を作ったシェフたちが一列に並んでゲストを見送る

 読売新聞本紙でいまも続いている連載記事「時代の証言者」で、私は、亡くなられる1年ほど前、インタビューした。忘れられない話題はたくさんあるのだが、田中総料理長と同じく、「料理の基本は温故知新」と言われていたのが印象的だった。

 古い知識を知ることで新しい料理も生まれる、というのであって、その例として、帝国ホテルのメニューにある「伝統のビーフカレー」を挙げながら、実に楽しそうに説明してくれた。

 《尊敬する師であった第8代の石渡文治郎総料理長が昭和の初め、フランスの名料理人、オーギュスト・エスコフィエから教わった作り方が基本になっています。タマネギ、ニンニク、ショウガ、ニンジンをバターで炒めてカレー粉を混ぜ、肉と刻んだトマトを加えてスープで煮る。最後に米の粉でとろみをつけます。このカレーは、1936年の二・二六事件の際、帝国ホテル近くで警備にあたった兵隊さん向けに炊き出しをしたところ、とても喜ばれたと聞きます》

 《石渡のオヤジさんは、エスコフィエ直伝のカレーに自分なりの味付けを工夫しました。野菜をじっくり炒めて甘みを引き出し、ソースは裏ごしせずにつぶつぶ感を残したのです。その後、代々の料理長は石渡流カレーソースを受け継ぎ、時代ごとの新しいアレンジを加えていきました。伝統の料理はこうして、さらなる輝きを増していくのだと思います》

 帝国ホテルの懐かしい味は、ムッシュ村上のにこやかな笑顔とともに、私の記憶にいつまでも留まることだろう。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

この記事のURL | Trackback(0) | Comment(0)

2011.01.07

悩める男女を励ます、原宿の母

自らを鼓舞する助けに

  • ズバズバ言うけれど、励ましのアドバイスも忘れないところが人気の「原宿の母」こと菅野鈴子さん

 先が見えない時代だからか、カリスマにすがりたいからか……。相変わらずの占いブームが続いている。

 初詣ではおみくじ、赤ちゃんの命名では字画、部屋の模様替えでは風水、というふうに、日本人の占い好きはとどまるところを知らない。

 雇用も老後も自然環境も、世の中は不安なことだらけ。瞑想、ヨガ、占い、パワースポット巡り……。神秘的なるものに触れることで内面を見つめ直して自分を鼓舞したいという気持ちは、年々強まる傾向にあるようだ。

 「私って何をやってもダメなんです。仕事も長続きしないし、彼氏もずっとできないし。どうすれば、いいんでしょうか?」

  • 原宿のマンションの1室には、手作りのこんな案内板が……

 正月早々、「原宿の母」のもとには、そんな悩める女性たちの来訪が絶えない。

 「原宿の母」とは、「プランタン銀座」のホームページで「占いコーナー」を担当する人気の占い師、菅野鈴子さんのことだ。

 菅野さんは占い師歴約30年のベテラン。吉本ばななさんのエッセイ集「パイナツプリン」(角川文庫)の「プランタンと私(?)」の章には、「言葉がばしっばしっと断定的で、ものすごい勢いで励ます」「とてもよく当たる」占い師として登場している。

運命の不思議を感じて

  • タロットカードも自分でデザイン。ポップなカラーが気持ちを弾ませます

 実は、20数年前、東京・原宿の路地裏で店を張っていた彼女を取材して新聞記事にしたことがある。

 「あんた、家庭運ないね」「来春は恋人と別れるよ」と。ズバズバおっしゃる。でも、切り捨てるだけではなくて、励ましのアドバイスがひと言加わり、相手の心を和ませていたのが印象的だった。

  • デザイン学校に通っただけあって、こんなプチTシャツ作りはお手のもの

 広島の高校を卒業後、上京。専門学校でファッションデザインを学んだものの、「絵が下手過ぎて、先生から完全に無視」された。人なつこい性格を生かして観光バスガイドになったら、人気爆発。ところが、会社の重役に、ギンギンに派手な通勤スタイルを目撃されて、即刻クビに。

 その後、パントマイムの振り付け師、結婚式場の巫女、風呂屋の番台、田植えのアルバイトなどを転々。やっと見つけたOLの仕事も、1年も経たないうちに会社が倒産……。

 悪いことは重なる。失意のどん底、力なく原宿の横断歩道を歩いていると、いきなり自転車が全力疾走で体当たり。ところが、かすり傷ひとつ負わなかった。

 「こんな経験、小学生の時もあったっけ。げに運命とは不思議なもの」と思い直し、みかん箱を占い机代わりに、この道に首を突っ込んだというわけだ。

3人に1人が男性に

  • 占い部屋のインテリア。オレンジは幸運、赤は情熱、白はリセット、緑は再出発を表すカラーだそう

 最初は見よう見まね。1回300円の安さにひかれて、原宿通いの10代の少女たちが群がった。彼氏や学校の悩みを打ち明けられる姉貴のような存在になり、「原宿の母」と慕われた。

 「当たらなければ笑ってごまかせばいい」と軽く考えていたものの、占いの世界は奥が深い。のめり込む性格で、500人以上の友人・知人の手相を徹底分析、気学やタロットカードも猛勉強するまでに。努力実って、「信頼できる占い師」との口コミでうわさが広がり、今では大手企業のイベントやテレビなどにも引っ張りだこなのである。

 いま、原宿のマンションにある占い部屋を訪ねて来るのは、1日15人ほど。最近では、訪問者の3人に1人が男性になってきた。

 定職を見つけようと走り回っているのに、仕事が決まらないと嘆く20代のフリーター、借金が返せず、「今度借りるにはどちらの方向がいいか」と尋ねてきた脳天気な30代の会社員、「会社にたんかを切って辞めたけれど、後悔している」と肩を落とす40代男性……。

 「リスクを背負ってこの仕事を続けるのが怖い」と、か細い声で相談してきたのは、産婦人科の男性医師。ちょうど妊婦が病院をたらい回しされたというニュースの直後だったので、驚いたという。一方で、「赤ちゃん誕生という素晴らしい瞬間に出会える仕事なので、やりがいがあって、とても幸せ!」と目を輝かせる若手助産師の話には心温まった。

「いつでも遊びにおいでよ」

  • 昨年プランタン銀座で開いた「女子会」イベントでは、手相占いをやって大好評

 恋愛・結婚に関しては、男女の悩みに差がなくなった。

 「友人の結婚が相次いで、あせるんです」「いつ結婚できますか?」……母親に付き添われて来た30代の男性は、最後までずっとうつむいたままだった。

 一番多い質問は、「私の天職は何ですか?」だという。

 そこで、「何かやりたいことはあるの?」と聞くと、「ない」との答え。「趣味は何?」と聞いても、「特にない」、「習いたいこと、学びたいことはあるの?」と尋ねれば、「わからない」。

 「それじゃあ、とりあえず、私と一緒に占いでも勉強してみる?」と水を向けると、「はい」と素直な返事が返ってくる。

 「寂しい人が多いんだ。結局、真剣に自分の話に耳を傾けてくれる人を、みんな、求めているのではないかなあ。だから、いつでも気軽に遊びにおいでよって言っている」

 社交辞令ではない。実際、昨年のクリスマスには、2DKの部屋に80人もが詰めかけた。ただ一度、占ってもらったというだけの縁なのに……。

 ところで、「原宿の母」によると、今年は「激動の年」になるのだとか。ファッションでは、明るく元気の出るような原色が流行するそうです。

 さて、あなたなら、占いに何を期待しますか?

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◇「原宿の母」オフィシャルサイト

 ◇「原宿の母」鑑定ホロスコープタロット

この記事のURL | Trackback(0) | Comment(0)

永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)