2010.10.08

龍馬が歩いた銀座

剣術修行のため江戸へ

  • 土佐藩上屋敷があったとされる東京国際フォーラム周辺
  • 龍馬が通った「小千葉道場」は東京駅近くの鍛冶橋あたり

 前回の小欄で、坂本龍馬ブームで人気沸騰の高知県のアンテナショップ「まるごと高知」(銀座1丁目)をご紹介したが、アンテナショップの周辺、銀座・有楽町界隈には、龍馬とゆかりのある場所がいくつかあることを最近知った。

 今回は、当時の龍馬の生活範囲をたどってみることにした。

 龍馬と江戸の関係は深い。2回にわたる剣術修行や、土佐藩脱藩後に勝海舟に弟子入りした時を含めると、人生のターニングポイントともいえる時期に、少なからずこの地で暮らしている。

 下級武士の家に生まれた龍馬は、14歳の時から、地元の道場で小栗流剣術を学んだ。1853年(嘉永6年)、さらに剣の腕を磨くため江戸に向かい、北辰一刀流・千葉定吉道場(小千葉道場)に入門する。19歳の時だった。

土佐藩上屋敷の跡地は東京国際フォーラムに

 最初に滞在したのが、土佐藩上屋敷で、アンテナショップの目と鼻の先にある「東京国際フォーラム」のあたりといわれる。東京の代表的国際コンベンションセンターの一つで、日本初の国際公開コンペが行われたことで注目された。船を題材にした吹き抜けホールのガラス棟がユニークな巨大な建物である。かつては上屋敷跡の碑があったらしいが、今は見つからない。

 千葉定吉は、北辰一刀流の開祖・千葉周作の弟。高齢だった周作に代わって、龍馬に稽古をつけた。定吉の道場「小千葉道場」は、アンテナショップから外堀通りを東京駅方面に歩いてまもなく、鍛冶橋交差点付近といわれている。鍛冶橋は、江戸城の外堀、鍛冶橋御門にかかっていた橋であり、交差点の名称としてその名をとどめている。なるほど、土佐藩上屋敷からは非常に近い。このあたり、龍馬は毎日闊歩していたのだろうか。

 ちなみに、周作の道場「玄武館」は、千代田区神田東松下町にあった。上屋敷からは歩いて20分程度。龍馬も、出稽古などで訪れたことだろう。

 この年の6月、ペリー来航事件が起こり、龍馬は、江戸湾の品川海岸警備に借り出されている。

  • 区役所近くの案内板にあった「江戸復元図」に土佐藩下屋敷が記されている
  • 土佐藩築地邸跡は、現在の東京都中央区役所周辺

盟友・武市半平太と

  • 盟友・武市半平太が修行した「士学館」跡は公園に

 2度目の剣術修行は、1856年(安政3年)、22歳の時だった。盟友・武市半平太とともに滞在したのが、土佐藩中屋敷ないしは下屋敷で、土佐藩築地邸とも呼ばれている。上屋敷から銀座を通って徒歩10分ほど。現在は中央区役所のあるあたりだ。

 区役所の警備ブースのそばに、案内板があって、「坂本龍馬は、安政3年から同5年ころ、この地の土佐藩築地邸に寄宿しながら、桶町(現八重洲2丁目、京橋2丁目の一部)にあったとされる千葉定吉道場に通っていたようです」と記されていた。

 盟友・武市半平太は、幕末に土佐勤王党を結成して幕府打倒を掲げる。一時は、龍馬も同党に血盟するが、意見が合わず、半平太とは別れ、土佐藩からも脱藩する。

 その半平太が剣術を学んだのが、築地邸からほど近い、桃井春蔵の「士学館」。現在は、京橋プラザ前の小さな公園になっている。徳川家康が開削した三十間堀が屈折して、白魚橋で京橋川に注ぐ位置に当たる。京橋プラザを新築するにあたって、地中から護岸の石が掘り出され、いまは公園の植え込みの囲いに使われている。

多くの契機を得た銀座界隈での生活

  • 佐久間象山邸があった銀座東5丁目付近

 もう一か所、龍馬は小千葉道場での剣術修行のかたわら、佐久間象山に入門し、西洋砲術を学んでいる。銀座東5丁目付近、いまは電源開発のビルが建つあたりに、象山邸があったという。

 土佐脱藩後、九州などを放浪した龍馬は、再び江戸に向かい、小千葉道場に身を寄せていたようだ。そして、赤坂にあった勝海舟邸を訪問し、弟子入りするのである。

 龍馬の人生に大きな影響を与えた出会いや事件が起こった、銀座界隈のゆかりの地散歩――ゆっくり歩いても、1時間余で十分巡れる。高層のビルの間を吹き抜ける風に乗って革命の足音が響いてくるような不思議な気配、あなたも感じてみませんか?

(プランタン銀座取締役・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)