2010.10.01

話題の高知、銀座で“まるごと”堪能

銀ブラ「ふるさと」探訪

  • 8月、銀座1丁目にオープンした高知県のアンテナショップ「まるごと高知」。隣には、沖縄のアンテナショップが軒を連ねる

 銀座・有楽町界隈は、北海道から沖縄まで、全国20近くの「ふるさと」が集まる都道府県のアンテナショップ激戦区。今夏、銀座1丁目に、高知県のアンテナショップ「まるごと高知」が新たに加わった。龍馬ブームの追い風もあって、連日店内はにぎわっている。

 1階は、清流・四万十川の青さのりをはじめ、特産のユズやショウガを使った調味料などが並ぶ食品市場風。地下1階は観光情報発信のフロアで、酒のコーナーも充実している。2階は、和洋にとらわれない新土佐料理を提供するレストランである。

  • (上)週に3日も食べた、はちきん地鶏のフォー、(下)「土佐はちきん地鶏のチキンカレー」は土佐限定の商品とか

 お隣は、沖縄県の「銀座わしたショップ」、さらに足をのばせば、地産地消レストランとして知られる鶴岡の「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフがプロデュースするレストランが評判の、「おいしい山形プラザ」がある。天気のいい日には、銀ブラを楽しみながら、これらのアンテナショップをはしごする人たちも少なくないようだ。

 プランタン銀座でも、9月後半、「まるごと高知」とコラボレーションした高知フェア「龍馬のふるさと高知を食す」を開催した。特産品を使ったメニューの中で、こんがり焼いたはちきん地鶏のゆず風味を載せたベトナム麺のフォーが絶品で、私は、1週間の会期中に3回もランチに通ってしまった(フェアは残念ながら9月27日で終了)。

 はちきん地鶏のほどよい甘みと歯ごたえが忘れられず、おいしいもの探しに、「まるごと高知」を訪ねた。

 すると、ありました!

 「龍馬が好きやった軍鶏(シャモ)の血を引いちゅう」とのうたい文句にひかれて手に取ったのは、「土佐はちきん地鶏のチキンカレー」。ニンニクとショウガを効かせた高知限定の商品という。

 「はちきん」とは、高知の方言で、元気で明るく男気のある高知の女性のこと。そこから名前をとった「はちきん地鶏」は、昔からいた軍鶏を改良して育てたヘルシーな地鶏なのだとか。農場では、きっと活発に飛び回っているのでしょうね。

龍馬ファン垂涎の品々

  • 龍馬人気にあやかって、家紋入りティシュまで登場

 同じ棚に並べられていた「きびなごサーディン」は、上品な白の紙パッケージ入り。宿毛(すくも)湾産のきびなごをオリーブオイルに漬けたもので、こちらは早速夕食の食卓へ。やさしい天日塩とセロリの風味が穏やかで、トマトとモツァレラチーズのサラダにのせると、アクセントになった。私は、市販のイワシのサーディンよりお気に入りである。

  • 宿毛湾産のきびなごサーディンはサラダのアクセントに

 次に、地下の龍馬コーナーをひやかしに。龍馬ファンの聖地といわれる県立坂本龍馬記念館が編集した「龍馬書簡集」をはじめ、便せんやらキーホルダーやら、ファンにはたまらないであろうミュージアムグッズがいろいろある。

 ミュージアムグッズではないけれど、裏に龍馬年表が印刷されているのが目に留まり、「RYOMAふところティシュ」を買った。なんと、坂本家の家紋入りである。パッケージにある龍馬本人の写真に見入りながら、彼が懐に携えているのは、ピストルではなく、実は家紋入りティシュだったりして、などと想像したら、思わずくすりと笑ってしまった。

 「龍馬の水ぜよ」というネーミングの、室戸の海洋深層水を100%使ったミネラルウォーターも見逃せない。

室戸の水を愛した植村氏

  • (上)室戸の海洋深層水を用いた「ウトコディープシーテラピーセンター&ホテル」の海洋療法施設、(下)「ウトコ」の宿泊施設からは、太平洋が見渡せた

 室戸といえば、3年ほど前に亡くなられた、化粧品ブランド「シュウウエムラ」の創業者で、メーキャップアーティストの植村秀さんのことを思い出す。

 1950年代に渡米、ハリウッドでメーキャップアーティストとして活躍。パレットから飛び出したような豊富な色遣いは、シャーリー・マクレーンなど多くのスターを魅惑した。60年代、米国で愛用されていたクレンジングオイル洗顔を日本に紹介、現在のシュウウエムラ化粧品の前身会社を設立し、海外へも積極的に進出して世界的なブランドに育てた。

 2005年の夏、たまたまパリのフォーブルサントノーレ近くのホテルでお会いしたのが最後になった。当時記者からビジネス界に入ったばかりの私を、「新しい挑戦はいくつになっても楽しいよ」と激励してくださったのがうれしかった。

 シャンソンが流れる青山葬儀所での「お別れ会」に出席した翌日、私は、水へのこだわりを持つ氏が室戸につくった海洋療法施設「ウトコディープシーテラピーセンター&ホテル」に出かけた。

 室戸岬で取水されるミネラル豊富な深層水を満たしたプールでリラックスし、冬の太平洋をのんびり眺めながら、ライブラリーで著書に目を通した。「水なしに肌の美しさは語れない」「伝統は革新の連続である」……氏の哲学が透けるような言葉の数々を、私は手帳に書き留めたものである。

心に残る「15か条」

  • 県立牧野植物園のオリジナルノートがお気に入り

 龍馬コーナーの隣で、素敵なノートを見つけた。県立牧野植物園のオリジナルノート「赭鞭一撻(しゃべんいったつ)」だ。

 「私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じています」と語ったという高知出身の牧野富太郎博士は、日本植物分類学の基礎をつくった学者として知られている。植物園は、その博士を記念して造られた。

 「赭鞭一撻」は、博士が学生時代、勉強の心得をつづったもので、「忍耐を要す=我慢することが必要である」「精密を要す=正確であることが必要である」から始まって、15か条がノートの裏表紙に記されている。

 「跋渉(ばっしょう)の労を(いと)うなかれ=方々の山野を歩きまわる努力を嫌がるな」「書を家とせずして、友とすべし=本に書かれていると安心せずに、本を対等の立場の友と思いなさい」など、現場を歩くことの大切さを説く言葉には説得力があった。

 はちきん地鶏も海洋深層水も、龍馬、そして牧野博士も……。高知の魅力は尽きることがなさそうだ。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆高知県アンテナショップ「まるごと高知」

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)