2010年8月アーカイブ

2010.08.21

シャンパーニュ~グラン・クリュ特別コレクションから

大変ご無沙汰してしまいました。


このブログにちょくちょく立ち寄っていただいている方々から、「このところ更新が滞っているみたいだけれど、どうしたの?」などの声もいただいております。


本当にごめんなさい・・・。

「GINZA通信」というコラムを連載しているヨミウリオンラインで、6月から「アンチ!エイジング」をタイトルに掲げたビューティーコラムも受け持つようになったので、その仕込みでも忙しくしていました(言い訳を並べるのは虚しくなるので、やめますけれど)。

ではでは、気を取り直して――。


相変わらず、ワインはほぼ毎日いただいております。8月初めにはチェコとポーランドに旅して、パリにも2日ほど。その間、地元産を中心に様々なワインを試しました。

帰国したら、日本全国「猛暑列島」と化していて、こういう時は、やはり泡ばかりを飲んでしまいます。

 


ところで、飲めば飲むほど、そして、産地や品種や造り手のことを知れば知るほど、奥が深く、その個性の豊かさに圧倒されるのが、シャンパーニュです。


10802001.JPG1997年のニコラ・フィアットの6つの村の特徴が出ているというグラン・クリュ(特別畑)の6本をブラインドで飲む機会がありました。

18歳で渡米してコーヒービジネスで成功したニコラ・フィアットがフランスに帰国して1976年に設立したメゾンです。その2年後、ワシントンでジスカール・デスタン仏大統領(当時)を迎える晩餐会で供されてから、一気に有名になりました。

フランスで最も多く消費されているシャンパーニュの1つといえましょう。


このニコラ・フィアットの「グラン・クリュ特別コレクション」は、シャンパーニュの村を限定してそこの畑の単一ブドウ品種のみで造られたもの。シャンパーニュ地方全域321村のうちの300村のブドウを使用している同メゾンだからこそ可能なコレクションだそうです。

 

シャルドネ100%のブラン・ド・ブランが3本、ピノノワール100%のブラン・ド・ノワールが3本です。


色調は、一般的には、ブラン・ド・ブランの方がグリーンがかっていて、ブラン・ド・ノワールの方がより濃い色合いのはずなのですが、

 

10802002.JPG

 

写真にすると、右側の方が淡い色に見えますが、これは照明のマジック。う~ん、実際には、外観からのジャッジは文句なしに難しい!

 


味わいは、ブラン・ド・ブランは、すっきりさわやかな切れ味、ブラン・ド・ノワールはボリューム感があって余韻が長め、といえましょうか。
種明かしをすると、左から1番目と2番目と5番目がブラン・ド・ブラン、3番目、4番目、6番目がブラン・ド・ノワール。エチケットのカラーが、それぞれに変えてあって、な~んかキュート。


10802003.JPG

 

 

それぞれ、ちょっと解説しますと、


10802004.jpgまず、ブラン・ド・ブラン。エペルネの街の南に広がる丘陵の東縁、コート・デ・ブラン地区は、シャルドネの聖地です。


1番(写真)は、メニル・シュル・オジェ村。この村は、「サロン」に代表される高品質なシャルドネの産地。クリュッグの単一畑「クロ・デュ・メニル」があるのもこの村。最初は青リンゴをかじったようなきりりと引き締まった酸を感じますが、時間とともに、カリンやブリオッシュ、甘い焼き菓子の味わいも広がりました。さ~すが、です。


2番は、シュイィ村。エペルネの駅に近い場所です。嫌味のない鉱物的ニュアンスが目立つけれど、より繊細な印象。


5番は、クラマン村。癖がなく、エレガントなタイプ。香ばしいローストの香りが残りました。

 


 

お次は、ブラン・ド・ノワールです。


10802005.JPG3番は、アンボネイ村。2008年にリリースされたクリュッグのあの高価な「クロ・ダンボネイ」があるのが、この村ですね。アンズや赤果実の風味があってピノノワールらしさを感じます。酸味もこなれて、肉厚なふくらみがあって、余韻も長い。これも、さ~すがです。


4番(写真)は、アイ村。ボランジェ、ドゥーツ、アヤラ、フィリポナなど、著名メゾンがたくさんある村です。濃厚、肉厚、骨太・・・。良質のシェリー酒のようなニュアンスも。細かな泡立ちがいつまでも続いていました。香りはズバリ「奈良漬」と覚えておきたい(これは賞賛の言葉です)。これも、さ~すがでした。


6番は、ヴェルズネイ村。蜂蜜の甘く芳しい香りにバターのアクセント。濃厚な中にも繊細でエレガントさが感じられました。それにしても、最後まで、ブラン・ド・ブランかブラン・ド・ノワールか、判断が一番難しい1本でした。


 

 

ちなみに、レクチャーを受けた11人の中で、「これが一番美味しい!」と人気があったのは、2番と4番でした。

 

10802006.JPG私の本来の好みは、どっしり型の4番。

 

ただ、この日は夏風邪をひいてのどもはれていて、繊細でやさしい6番(写真)が美味しく思えました。

 

濃厚な味わいは、元気でエネルギーに満たされているときの方が断然楽しめるんですね。

 


ほんと、体調によって、ワインの好みは随分と左右される気がしますが、皆さんはいかがですか?

 

美味しいワインをいただくためにも、はやく風邪を治さないと、ね。

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2010.08.20

フィリピンから届いたエコ小物

被災者遺児のため、単身フィリピンへ

  • ポップでキュートなエコ雑貨「ecomismo」

 フィリピンのストリートチルドレンを支援する日本のNPO法人アクション(東京都武蔵野市)の横田(はじめ)さん(33)と知り合ったのは、今年の6月初めだった。

 国際協力関係のNPOやNGOを束ねているある団体の知人から、「フェアトレードの進化系のような形で、現地の女性たちの起業支援を始めた若者がいる。国際協力のNPOでは、ニューウェーブの注目人物」と紹介された。

 横田さんは、1991年のフィリピン・ピナツボ火山噴火で被災したルソン島西部で、家族を失った子どもたちの支援を続けて16年になる。当時高校生だった横田少年は、被災地にある児童養護施設の様子を耳にして、いても立ってもいられず、単身フィリピンへ乗り込んだ。「何かさせてほしい」と身振り手振りで訴え、住み込みで40日間、壊れた壁の再建などを手伝った。

 社会人になって正式にNPO法人を設立、日本から大学生らを募集して、施設の子どもたちと一緒に農作業や建物の改修に励んだり勉強の相手をしたり、ボランティアを体験してもらうワークキャンプを毎年実施している。今までに2000人以上が参加した。

手作りエコグッズを商品に

 1年の半分はフィリピンで生活し、バイタリティーあふれる横田さんが、「今度こんな商品を日本で売りたいなって思っているのですけれど、どうでしょうか?」と、取り出したのが、ポップなデザインのポーチや財布など。作りもしっかりしていて、「なかなか、かわいい雑貨じゃないの」というのが、私の第一印象だった。

 聞けば、フィリピンで、菓子の包装紙をリサイクルして手作りしたエコ商品という。

 英語のecology(エコロジー)のecoと、スペイン語のmismo(まさしくそのもの)とを組み合わせた「ecomismo(エコミスモ)」なるオリジナルのブランド名もしゃれている。

 「作り手も売り手も、そして買う人も、商品にかかわる人たち皆が、『まさしくこれこそ、エコ!』と自信をもっていえるような仕組みを作りたいと思うのです」と、横田さんは話した。

 路上の子どもたちを支援していく中で、「この子どもたちを学校に通えるようにするには、親たちに仕事がなければ始まらない」ことに気づく。そんな時、菓子の包装紙を利用して、実に器用に小物入れを作っているお母さんに出会い、アイデアが広がったという。

環境教育と雇用創出のために

  • プランタン銀座本館1階のファッション雑貨売り場で

 道路の排水溝が整備されていないフィリピンでは、路上に捨てられた菓子袋などの廃棄ごみが詰まって、少しの雨でも洪水に見舞われることが多かった。洪水対策と街の美化、身近な環境教育、そして母親たちの雇用創出を目指し、日本のデザイン会社の協力を得て商品化にこぎつけた。

 フィリピンではまず、路上や学校、家庭などで、菓子袋を回収。それらをしっかり洗浄、乾燥させ、しわが多いものにはアイロンがけ。決められたサイズに裁断してから、色分けをしてデザインを考え、1つ1つ丁寧に折り畳みながらナイロン糸で編んで強度をつけ、ファスナーなどを付けて完成だ。

 小さなポーチを完成させるまでに、1000回以上の折り込み作業が必要で、工程ごとに担当を分け、多くの人の手によって一つずつ手作りされている。

 子育て中のお母さんたちに配慮して、研修後は自宅作業を基本として、50人以上の女性が参加している。この内職で彼女たちは、月にフィリピンの一般男性が稼ぐ3分の2ほどの報酬を得ているそうだ。

 「エコミスモを作ることで、社会とのかかわりを持てたことがうれしい」「頑張って、子どもたちの教育費を貯めたい」など、いきいきと働いているという。

モノが持つストーリー

  • 商品の背景には、フィリピンのお母さんたちの物語が……

 「エコミスモ」は、プランタン銀座の若手女性バイヤーたちの間でも、「文句なしにかわいい!」と好評だったので、8月初めから銀座の店頭に置くようになった。

 小型のポーチやキーケース、ペンケースから、大きめの財布まで。価格は800円台からとお手ごろだ。

 「デザインがキュートで、ポップな色合いがいい」「触った感じが面白い」「手ごろな値段なので、プレゼントに最適」など、幅広い年齢層のお客様から支持されている。

 また、これらの商品の背景には、フィリピンのお母さんたちの素敵なストーリーがあることを知ると、なおさら関心を持っていただいているようだ。

 地球の裏側で作っている女性たちに思いを馳せながら、このキュートな商品を手元に置いていただければうれしい。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆NPO法人アクション

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)