女性の心を歌い続けて30年
万葉集の歌や、日本女性の生き方に影響を与えた与謝野晶子、金子みすゞ、岡本かの子らの詩歌500編あまりに曲をつけ、女性たちの心を30年以上歌い続けている、シンガー・ソングライターの吉岡しげ美さん。
私は古くからお付き合いをさせていただいているのだが、その吉岡さんが6月、「七夕」をテーマに、プランタン銀座のカルチャースクール「エコールプランタン」で素敵な講座を開いてくれることになった。
“男は仕事、女は家庭”から自由に
吉岡さんは音大卒業後の20代半ば、東北に住む女性詩人、新開ゆり子の作品に出合って以来、女性ならではの豊かな生命感にあふれる言葉にこだわってきた。
低音のアルトで、静かに情感たっぷりに、ピアノを弾き、歌い上げる。1970年代のウーマンリブ運動の洗礼を受けた「アラ還(アラウンド還暦)」世代で、「“男は仕事、女は家庭”といった伝統的な男女の性別役割分業にとらわれず、もっと自由に生きようよ」というメッセージは、同世代の女性たちを中心に共感を呼んだ。
私自身はそのちょっと下の世代だが、金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」や与謝野晶子の「君、死にたまふことなかれ」は、何度聴いても心が震える。
思いは時代や国境を超えて
活動の場は国内にとどまらない。欧米はもちろん、近年は韓国、フィリピン、中国などのアジアを中心に、現地の語り部の朗読を交えつつ、コンサートを開いている。「君、死にたまふことなかれ」は、中国でも歌った。時代、そして国境を超えて連綿と流れる反戦・平和への想いを伝えたい――活動の軸足はぶれることはない。
とはいえ、どこか乙女チックな面影の残る吉岡さんが続けている毎年恒例のイベントに、7月の東京都内での「七夕コンサート」がある。今年で13回目。中国からイケメンの二胡奏者や京劇スターを迎え、吉岡さんの音楽詩とのコラボレーションが楽しめる企画になるそうだ。
あなたも作詞、作曲に挑戦!
さらに、七夕コンサートは広がりをみせている。
「織姫と彦星の出会いをはじめ、ロマンチックな世界に誘ってくれる七夕って、幼いころから大好きでした。七夕についていろいろ調べているうちに、中国の鎮江市が七夕伝説発祥の地であることを知り、市の関係者に、『七夕祭りを盛り上げてはいかがでしょう』と提案したところ、驚いたことに即採用。その翌年、鎮江市主催の第一回・日中七夕友好コンサートが開かれ、今年で4回目になります。私も毎年出掛けて、七夕伝説にちなんだオリジナルの新曲を捧げているんですよ」と、吉岡さん。
さて、今回6月にエコールプランタンで開催する3回シリーズ(6月5日、12日、19日)の講座のタイトルは、「吉岡しげ美の七夕に願いをこめて~世界にひとつだけの、あなたのオリジナルソングを作ろう」である。
「七夕」にそれぞれの想いを託し、作詞と作曲に挑戦。音譜が苦手でも、「こんな感じに」と鼻歌を歌えば、それを吉岡さんがアレンジしてくれるというからすごい! 出来上がった曲は譜面にして渡してもらえるので、記念になる。
いつの間にか、あなたも立派なシンガー・ソングライターになっているというわけだ。
七夕のロマンを求め、中国の古都・鎮江へ
さらに希望者は、旧暦の七夕にあたる8月15日から3泊4日の鎮江ツアーに参加して、吉岡さんのコンサートの舞台に一緒に立てる。
中国の鎮江市は、上海市の北東230キロほどに位置する。ちょっと調べてみると、美肌づくりに欠かせないといわれる高級黒酢「香酢」の産地だったり、雪舟が「唐土勝景図巻」で描いた禅寺・金山寺(味噌でも有名ですね)があったり、「大地」を書いたパール・バックが18年間暮らした旧居が残っていたり、見所はいろいろ。ツアーでは、七夕伝説ゆかりの地を巡ったり、地元の人々と交流を深めたり、なんだか楽しそうだ。
この夏、あなたも、七夕のロマンを歌うシンガー・ソングライターを目指してみてはいかがだろうか。
(プランタン銀座取締役・永峰好美)
◆吉岡しげ美さんのホームページはこちら