2010.03.19

端末お供に「IT銀ブラ」

東京ユビキタス計画に参加

  • ユビキタス・コミュニケータという端末をお供に、銀ブラへGO!
  • 端末の貸し出しは、地下鉄の銀座駅の広場で

 「未来の街で遊んでみませんか?」

 そんな誘い文句につられて「東京ユビキタス計画・銀座」なる実験に初めて参加したのは、3年前のことだった。

 「ユビキタス」とは、ラテン語で、「どこにでも存在する」という意味。どこでもだれでも好きな時に欲しい情報が得られる「ユビキタス社会」を実現しようというのが国土交通省の構想で、ちょうど銀座でも実験が始まったばかりだった。

 銀座4丁目を中心とする実験エリアでは、地下街の天井や銀座通りの街灯などにICタグ(電子荷札)や無線マーカーが設置され、手のひら大の専用端末をかざすと、現在位置や周辺情報が画面上に次々と送られてくる。音声ガイドもある――。

 街歩きのお供として、何やら便利そうな道具に思えたが、実際に使ってみると、当時はトラブル続きだった。

 ある実験協力店の店頭で、ICタグに端末を何度かざしても、情報が送られてこない。携帯電話で事務局を呼ぶと、「最近貸し出しが増えて、読み取り装置の不具合が出ている」といわれ、端末を代えてもらったものの、他店でも同様のトラブルに見舞われた。

 無線で情報を飛ばす数寄屋橋交差点周辺では、いくら歩き回っても、情報をキャッチできなかった。

 「うーん、銀座は多様な電波が飛び交っていますからねえ」と、事務局の弁。

 「IT銀ブラ」はまだまだ発展途上だなあというのが、当時の印象だった。

 あれから3年。

 「IT銀ブラ」は、確実に進化していた。

ほしい情報がすぐわかる

  • 銀座4丁目角では、和光の紹介が音声ガイドで流れる

 まだ風が冷たい3月の初め、地下鉄の銀座駅の広場で端末を借りて、銀座の街を2時間ほど歩き回った。実験エリアは、銀座4丁目交差点を中心に銀座通りと晴海通りの地上と地下。

 「銀座の顔」ともいえる4丁目角に立つと、和光の建物の歴史や店舗情報が音声でさっそく流れてきた。周辺の見どころ情報も自動的に表示されるし、行きたい店や施設を検索して目的地に設定すれば、音声と写真で道案内してくれるので、銀座に不慣れな人でも安心だ。

 端末と一緒に渡される銀座マップは、銀座らしい見どころのツボを押さえていて、音声ガイトとともに楽しめる。「銀ブラ」の由来になった喫茶店「カフェーパウリスタ銀座本店」やポークカツレツ発祥の店「煉瓦亭」など、「銀座はじめて物語」にしばし耳を傾けるのもいい。

未来のツールで過去へタイムスリップ

  • 銀座ガス灯通りでは、明治のガス灯が一部復元されている

 銀座煉瓦街にガス灯がともされたのは、1874年(明治7年)のこと。芝金杉橋と京橋の間に85基のガス灯が建てられ、銀座を照らした。

 当時のガス灯は黄色の炎が燃えているだけで、周辺を「照らし出す」ほどの明るさの威力はなかったようだが、行灯やろうそくの明りが頼りだった人々にとってはハイカラで珍しく、多くの見物人が集まったらしい。

 銀座通りの和光の1本裏手には、銀座ガス灯通りが残っていて、3丁目には、明治のガス灯を復元したものも設置されている。

  • 2丁目のカルティエの壁には、アーク灯建設のプレート

 ちなみに、銀座2丁目のカルティエ前は、電気を使った街灯が初めて建てられた場所。カルティエの店舗の壁面下に、「東京銀座通電気燈建設之図」というプレートが残る。そこには、「明治15年11月、始めてアーク灯をつけ不夜城を現出した」と刻まれている。

 アメリカ製発電機を用いて二千燭光のアーク灯が点灯されたそうで、こちらはガス灯よりもはるかに明るく、「まるで昼間のようだ」と人々を驚かせた。

 21世紀の先端ツールを使いながら、文明開化に沸く当時の銀座にタイムスリップするのは、わくわくする体験だった。

 体験期間は3月31日まで(要予約)。情報提供は、日本語のほか、英語、中国語(簡体字、繁体字)、ハングルの4言語5種類から選べる。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)