2010年1月アーカイブ

2010.01.29

1粒のチョコで幸せになる、銀座ショコラハーツ

女性同士で交換する“ガールズチョコ”

  • 「1粒のチョコで幸せになる」と提唱している「マザーレンカ」の池田貴子社長

 毎年この季節になると、美味しいチョコレートとの出合いが楽しみな「バレンタイン・フェア」なのだが、新しいチョコレートを仕掛ける元気な女性たちとの出会いも、私にとってはもう一つの楽しみといえる。

 2年ほど前、東京・銀座1丁目に会社を設立した「マザーレンカ」の池田貴子社長もその1人である。

 今年プランタン銀座に初登場のブランド「銀座ショコラハーツ」の仕掛け人。ベルギーから直輸入した材料で作ったカラフルなタブレット型チョコレートに、小物が入るスパンコール地のミニトートを組み合わせた黒のオリジナルポーチも付いて、なかなかおしゃれだ。

 「最近、バレンタインデーに女性同士でチョコレートを交換しているシーンを幾度か目撃していまして、女子向けを意識したガールズチョコを作ってみたのです」と、池田さん。確かに、プランタン銀座が行った「バレンタインデーに関する女性の意識調査」でも、女性同士でチョコレートを贈り合うことに65%が積極的だった。

華道家からベンチャーへ転身

  • カラフルなチョコレートとキラキラした雑貨の組み合わせが女性好み(3780円/税込み)

 花が大好きだった池田さんは、中学時代から華道にのめり込み、都内の女子高を卒業後、いけばな講師を目指して、迷わず専門学校の池坊中央研修学院に進学。21歳で講師の免状を取り、百貨店のカルチャースクールなどで教え始め、たくさんの生徒に囲まれていた。

 ところが、運送会社を経営していた父親ががんで亡くなり、「今まで社会のことを何も知らないまま好きな世界で生きてきたけれど、これからは自分で何かしなければいけないという気持ちに初めて駆られました」。サラリーウーマンとして再スタートする決意をしたのは、まもなく30歳になるころだった。

 まずは、転職情報誌で見つけた不動産投資のベンチャー企業の秘書募集に応募した。「代表も私と1歳違いだったし、ベンチャーの秘書なら会社経営のイロハが学べると思ったから」という。会社の株式上場にも立ち合い、また、同社がM&Aで取得した沖縄のホテルの経営では、全室の覆面調査を実行し、大胆なコストカットを実践した。その仕事ぶりに目を付けた大手のホテルから声がかかり、1000室以上もあるホテルの総支配人を任されたこともある。

 2007年に経営コンサルタントとして独立。「基本的に仕事が好きで、与えられたことは何でも楽しんでやってしまうタイプなんです。でも、目指すのは会社経営。きれい事では済まされない生々しい現場での処理に忙殺される毎日から解放されて、『起業したい病』がむくむくと頭をもたげてきました」

母から学んだ幸せ上手

  • 1月半ばのプランタン銀座のバレンタイン試食会は、女性同士でのグループ参加が条件

 そんな時、10年近く働いたベンチャー企業の代表の言葉が胸をついた。

 「自分にこれしかないと思えるものが見つからないうちは起業しても成功しないぞ」

 それからだ。自分を再度見つめ直した。「食いしん坊で、人との出会いや重要なシーンは食べ物の記憶とともにあり、絶対に忘れない。これって、特技ですよね」。ならば、食にかかわる仕事、それも一歩先というより半歩先を行くくらいのトレンドを意識したビジネスを手がけようと決めた。

 たどり着いたのが、多くの有名ショコラティエが使用する高級チョコレートの原材料ブランドとのライセンスビジネス。そして、日本のマーケット向きに、「世界に誇れる銀座メイドを」と考えて誕生したのが、オリジナルブランドの「銀座ショコラハーツ」だった。

  • プランタン銀座本館1階にオープンした「ショコラ・マルシェ」は、様々な年齢層のお客様でにぎわっている

 「1粒のチョコで幸せになる!」と、池田さんは提唱している。

 その発想は、75歳になる母親の小さな幸せ探しがヒントになっている。「美味しいものを食べても、面白い人に出会っても、母はどんな小さなことにでも感動して伝えてくれます。ほんと、『幸せ上手』なんですよね」

 ストレスを感じた時、たった1粒のチョコレートを口にすることで、脳内で幸福を感じさせる成分が分泌されて、小さな喜びを感じることができたら素敵だという。

 「機嫌のいい女性が増えれば男性も元気になって、経済も上向きになるんじゃないかなあ」。アラフォー女性社長の挑戦はまだまだ続く。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2010.01.24

大分由布院・亀の井別荘で

先週末、仕事で大分・別府に出掛けたので、由布院まで足を延ばしました。


宿は、一度は泊まってみたいと思っていた「亀の井別荘」です。


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加賀の国出身の現ご主人の祖父、中谷巳次郎氏が、亀の井バスなどの創業者でカリスマ実業家ともいわれる油屋熊八翁と出会い、大正初め、由布・九重連山に囲まれた水の由布院盆地に「VIP招待用の森の別荘」を建てる「夢」を実現したのがこの旅館のルーツ。


現在は、本館・洋間6室、和風の離れ15室。

3万平方メートルの森の庭園を楽しみながら、透明な天然掛け流しの大浴場露天風呂でほっこり温まりました。

 

さて、この日、お部屋でいただいたお食事ですが・・・

まず、ワイン、
2008キュヴェ三澤 甲州鳥居平畑 プライベートリザーヴ

 

10012401.jpg以前もグレイスワインの「甲州鳥居平」はご紹介しましたが、これは、社長自らの名を冠した甲州種のトップキュヴェ。

 

三澤茂計氏がぶどう栽培からこだわった限定ワインで、中でも「プライベートリザーブ」シリーズは、気候に恵まれた優良年のみに造られるそうです。


輝きのある淡いレモンイエローの色調、柑橘系のフレッシュな香りに、ぷうんと豊かなバニラのニュアンスが加わって、 ミネラル感もあり、なかなかエレガンス。

 

 

 

 

 

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冬の酒肴いろいろ

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一番手前になるクリームチーズの燻製は、オリジナルの手作り。おいしかったあ!

 

旬の魚お造り

10012404.jpg手前にある粘りの強いヤマノイモで、新鮮なタイなどをくるんで口に運ぶと、もう絶品です。

 

地鶏スープ小鍋仕立

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一番人気のお鍋だそうです。

これをめがけて、夏でも特別に注文なさるお客様が多いのだとか。

いや、コクのある鶏スープは、とってもやさしい味。ずうっと食べていたい気持ちになりました。

てづくりのコンニャクとネギがたっぷりで、アクセントに!

 

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牡蠣柚子釜焼

10012407.jpgワインは、特にこの柚子釜焼とよく合いました。冬の味覚ですね。

 

猪大根 菜花

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10012413.jpgせっかくなので、焼酎もいただきました。

オリジナルの「吟醸糟採」。


大分県久住町の佐藤酒造のもの。規模は大きくないけれど、精米所を持つ、つまり自家精米している酒蔵とか。香りはかなり強烈でしたが、猪肉との相性がよかったように思います。


「亀の井別荘」には、「鍵屋」という素敵な和雑貨を置いているお店が併設されていますが、そこで扱っていました。

 

 

 

 

黒毛和牛薬研堀焼

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とろけるような和牛です。

大分はやはりシイタケがおいしい!

 

柿なます

10012410.jpg油っぽくなった口の中が酸味でさっぱり。

 

特製のおそばをいただきました。

そばつゆは、江戸前よりも若干薄め。

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ご飯は、もちもちしたミルキーウェイをいただき、

 

冷たいデザートも・・・

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おなかにちょうどいいくらいの、旬の献立でした。

老舗旅館でも、最近は、厳選したワインを適正な価格で置いているので、うれしいです。

 

また、1月22日付けのGINZA通信には、亀の井別荘と並んで、由布院御三家の一つといわれる、「山荘無量塔」について書きましたので、興味のある方は、ぜひチェックしてみてください!! 

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2010.01.22

心静かな時を過す~「山荘無量塔」

由布岳山麓の清寧な宿

  • 由布院「山荘無量塔」の本館玄関は障子の墨文字が印象的

 年に一度、大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)でメディアに関する講義を行っている。約6千人の学生の半数近くをアジア中心に80か国・地域からの留学生が占めており、国際色豊かで教える側としても楽しい。講座には企業から人材を積極的に招き、学生のキャリア形成支援に力を入れているという。

 そして私にとってはもう一つ……。週末の午後の授業なので、その日は温泉宿に泊まってゆっくり、というのも楽しみなのだ。

 今回は別府からちょっと足を延ばして、由布院まで出掛けてみた。

 由布院の旅館御三家といえば、玉の湯、亀の井別荘、そして山荘無量塔。

 前回の小欄でご紹介した「ヒガシヤギンザ」の亭主、クリエイティブ・ディレクターの緒方慎一郎さんが、この山荘無量塔に最近増築された新館の離れ2棟をデザインしたと聞き、ぜひ内装を見たいと思った。

 「無量塔」は「むらた」と読む。

 感慨深いことを「感無量」というが、この「無量」は、仏教の経典の一つ、「無量寿経」に由来する。この世の中、私たちが想像できる範囲からは計り知れないくらいたくさんのご縁で結ばれ、素晴らしい感動をいただいているといった意味が込められているようだ。

 おしゃれな雑貨屋や食事処が並ぶ由布院の中心街からは少々離れた由布岳の麓にあり、木立に囲まれた静寂な空間に心が清められる。本館の玄関の障子に書かれた墨文字が、幽玄の場所へと誘ってくれるのだ。

  • 山荘に増築された新館に続く道
  • 古民家を移築した客室はレトロな雰囲気

心憎い仕掛けが生む、癒やしとなごみ

  • 緒方慎一郎さんデザインの客室には、サプライズな仕掛けが……

 客室はすべて離れ形式で、ほとんどが100平米以上ある。昭和初期の別府の古民家を始め、新潟や岐阜から移築された本館の客室は、落ち着いた木のぬくもり、さりげなく置かれたアンティーク家具の優しいレトロ感、純白のベッドカバーや天然毛の歯ブラシなどこだわりのアメニティーにも癒される。雪見障子もあって、そこから広がる白銀の風景はロマンティックな気分を盛り上げてくれる。

 さて、緒方さんがデザインした新館の部屋はというと、高い天井に、モダンな北欧家具と和のテイストとが何ともうまく融合したなごみの空間だった。

  • 銀座2丁目の「方寸MURATA」は無量塔のプロデュース

 居間の琉球畳の一部がせり上がってきて、掘りごたつになるといった心憎い仕掛けに、緒方さんが「ヒガシヤギンザ」で展開している食のサプライズな演出が重なった。

 実は、この山荘無量塔がプロデュースするレストランが銀座2丁目の銀座ベルビア館にあることを知った。

 「呑惣和洋 方寸MURATA」という。インテリアには、無量塔と同じく古民家の古材が生かされ、懐かしくも温かい雰囲気が漂う。BGMも凝っていて、その昔豊後の人々が聴いたであろう楽曲を選んでいる。

  • 強い粘りのヤマノイモのランチで元気になりそう

 ランチでは、大分名物の鶏天丼やゴマだれうどん、人気の豊後牛ハンバーグなどがあるが、私は、この時期おすすめの、山かけご飯をいただいた。

 「山うなぎ」ともいわれるげんこつのようなヤマノイモは、北秋田の特産だそうだ。長イモよりも粘りが強いのが特徴で、うなぎにたとえられるほど栄養価が高く、滋養強壮に優れているという。大分にかかわらず、日本各地から季節に応じて素材を厳選しているらしい。

 由布院のぬくもりに思いをはせながら、しばし銀座でのランチタイムを楽しんだ。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◇呑惣和洋 方寸MURATA

 http://www.hosun.jp/

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2010.01.15

水がテーマのドキュメンタリー映画「ブルーゴールド」

ワインの話をしていると、「テロワール」というキーワードによく出合います。


「ブドウ栽培に適したテロワール(土壌・気候)とは何か?」と考えたとき、条件の一つに、「丘陵と山の段丘から成る起伏に富んだ地形」というのが挙げられることがあります。

それは、「保水」に適しているからでもあるんですね。

 

水・・・。

ワイン造りにおいても、当然のことながら「水」はとっても重要なのです。

今回、この水についてとても学ぶことが多いドキュメンタリー映画に感銘を受けたのでご紹介したいと思います。


「ブルーゴールド 狙われた水の真実」(1月16日公開)です。


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「『水』戦争の世紀」(モード・バーロウ、トニー・クラーク著)という本からインスピレーションを得た監督が、世界で起きている様々な水戦争の現状をドキュメントしていて、私自身、ほんと勉強になりました。


海に囲まれ山林が多い日本に住んでいると、あまり意識せずに暮らしているかもしれないけれど、途上国を中心にした今後の人口増加を考えると、水資源が不足することは容易に想像できますよね。
「20世紀は石油戦争の時代、21世紀は水戦争の時代」といわれる所以です。


 

サム・ボッゾ監督は当初、デヴィッド・ボウイが演じた「地球に落ちてきた男」の続編を作ろうと思って、水がなくなった地球を舞台として描かれるSF映画の企画を練っていたのだそうですが、本に触発され、SFよりもいま地球で起きていることを報告しなくては、との思いに駆られてメガホンを取ったといいます。


たとえば、こんなレポートがあります。
「(米国)北カリフォルニアの生態系の水が長い水道管と運河を経て州の南部に送られています。そこで育てた飼料は日本などに輸出されます。この飼料で育てられた神戸牛は、再び米国に輸入されます。"仮想水"がキーワードです。食糧の輸入は生産国の水を別の形で消費することです。自給自足にほど遠く、持続は不可能です」

 

 

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私たちが住むこの地球の中で、サステイナブルな水の循環を守るには、私たちはどう行動しなければならないか・・・。

次々にレポートがテンポ速く展開されて、追っかけていくのがちょいとたいへんではありますが、
「水は人権であり公共信託財である」という市民運動家の声に、何気なく飲んでいたペットボトルについて改めて考えさせられました。

 

渋谷アップリンクXほか、ヒューマントラストシネマ有楽町などで公開。
 

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2010.01.15

変化を楽しみ伝統を味わう~「ヒガシヤギンザ」

玉露一滴の悦楽

  • 「しずく茶」を体験。飲んでも食べても美味しいことを発見

 大のコーヒー党の私だが、「しずく茶」を味わえると聞いて、銀座1丁目のビルの2階にオープンした「ヒガシヤギンザ」に出掛けた。

 「しずく茶」は、玉露を1煎目から4煎目まで、味わいの変化を楽しむ作法である。何となく堅苦しいイメージがあったが、この店では、モダンな椅子席で、若いイケメン店員さんが専用の道具を使ってきびきびと入れてくれるので、すっかりリラックスして臨めた。

 まず、1煎目。湯の温度は体温程度だろうか。2分ほど醸したのち、ふたをしたまま左手で茶碗を持ち、ふたを少しずらして右手の指で軽く押さえながら水滴のしずくをいただく。一滴一滴に旨みが凝縮した高級な出汁といった感じだ。

 2煎目では、お茶の苦味がほどよく感じられ、3煎目になると、香りが華やかに開き、4煎目は、湯の温度も上がるので、煎茶のような渋みが広がる。

 そして、4煎目を飲み干した後の茶葉もしっかりいただいた。歯ごたえもあって、なかなか美味である。

 「ポン酢を少々かければ、立派なお酒のつまみにもなりますよ」と教えてくれたのは、同店の亭主、クリエイティブ・ディレクターの緒方慎一郎さんだった。

 商業施設のデザインに携わった後、海外などでの経験も踏まえ、「日本人として、日本文化をいまの時代に沿ったカタチで創造しよう」と、10年ほど前、「シンプリシティ」という会社を設立した。日本文化の中でも、生活に密着している食の分野に注目、東京・中目黒で和食レストランを開業した。また、6年ほど前から「モノとしての食の提案」として和菓子に取り組み始めた。

 現在、西麻布に和菓子のギフトショップ、青山にまんじゅう屋を展開している。今回、世界にも発信できる場所として銀座に茶房を構えることを決めたという。

  • (上)和菓子の販売コーナーは白の世界に包まれて(下)ギフトのパッケージも凝っている
  • 新感覚の日本茶茶房「ヒガシヤギンザ」の亭主、緒方慎一郎さん

五感で表現する和の心

  • そば粉のガレットは日本茶の引き立て役

 「しずく茶」体験も素晴らしかったが、さらなるサプライズは、その後に供されたハーブブレンドのほうじ茶と一緒にいただいた甘味である。

 京都のそば粉を使ったガレットに、あんこ、わさび醤油、レーズンバター、甘味噌を好みで包んで食べる。

 甘さ控えめで淡い藤色の美しいあんこも、レーズンがたっぷり入った芳醇なバターも、それ自体が主役になれる美味しさなのに、同時に、日本茶を引き立てる脇役としても抜群の存在感を示しているのだ。

  • 名物の葛きりもこだわりの味

 一見とがったメニューだが、その素材と職人を日本全国から探し出す嗅覚とエネルギーには、ミシュランガイド日本版の取りまとめ役も務めた藤原浩さんも一目置いている。同店名物の葛きりにも、そのこだわりが凝縮されていた。

 「世界を、グローバルな感覚を意識すればするほど、足元の日本文化に立ち戻る。日本の伝統文化を受け継ぎ、守ることは、常にその時代に合わせた革新を試みることでもあると考えます。ただし、無手勝流ではだめで、押さえなければならない基本ははずしてはならないんです」と、緒方さんはいう。

  • 茶房の一角には茶室のしつらえも

 茶房の一角に、外国人客にも楽しんでもらえるようにと椅子式の茶室が用意されていたが、基本的な伝統の茶事のしつらえはまったく崩されていない。「和の感性とは、そこに存在する空気感や奥ゆかしさ、そのものが秘めている五感の表現そのもの」と語る緒方さんの世界観がよく表されている。

 改めて、和菓子の販売コーナーで目を留めてみると、一つ一つの小さな菓子がそれぞれの物語を語りかけてくるようで楽しい。生い立ち、名前の由来、造り手(職人)の思い……。

 海外の友人が訪ねてきた時には、ぜひ茶室に案内することにしよう。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆ヒガシヤギンザ

 http://www.higashiya.com/shop/ginza/

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2010.01.08

銀座100年後の未来予想図

伝説の名店主集合

  • 銀座の名店主4人が語った「日本と銀座、次の100年」。右から、松崎社長、泉二社長、渡部社長、山本社長

 「影のCIA」と評される企業「ストラトフォー」の創設者、ジョージ・フリードマンが書いた「100年予測」(早川書房)という本が売れているらしい。

 人口爆発の終焉、宇宙太陽光発電による好景気の到来、米国とイスラム世界の戦争が終結、資源輸出国として生まれ変わったロシアと米国は再び冷戦状態になるが、ロシアの自壊で幕を閉じる。その後、一連の新興強国(日本・トルコ・ポーランド)が台頭、今世紀半ばに新たな世界大戦が起こり、世紀末になると、経済大国の1つに浮上してくるメキシコが米国と覇権を争う……などと分析している。あくまでも米国の世界戦略を中心に書かれたシナリオのようだが、「100年後の覇者は宇宙空間を征する国家」ということらしい。

 それにヒントを得たというわけでもないのだろうが、「日本と銀座、次の100年」という興味深いテーマで、銀座の伝説の名店主4人から話を聞く機会があった。

  • 銀座4丁目の「松崎煎餅」は創業200年を超える

 伝説の名店主とは、創業210年の「松崎煎餅」(銀座4丁目)松崎宗仁社長、男の着物で呉服再生に挑んだ「銀座もとじ」(銀座3丁目)泉二(もとじ)弘明社長、メソジスト教会宣教師の伝道活動から始まった老舗書店の「銀座教文館」(銀座4丁目)渡部満社長、岡本太郎を生んだ「東京画廊」(銀座8丁目)山本豊津社長の4人である。

 「100年後の銀座での商いはどうなっているのだろうか?」という主催者の問いかけに、4人は、「明日生き延びるためにどうしようかと頭を悩ませている時に、100年後の予測はとてもとても……」などと前置きしながらも、それぞれ示唆に富むコメントをしてくれた。

「場力」を信じて挑戦

  • 「松崎煎餅」伝統の江戸瓦煎餅

 「幼い時から商売を継ぐのが当たり前と半ば洗脳されてきた」と冗談めかして語ったのは、「松崎煎餅」の松崎社長。「細く長く商いすることが大切」との先代からの教えを守り、「鉄の鋳型で一枚一枚心を込めて焼くことが原点」「商品を売らせていただいているという気持ちを忘れない」という。

 伝統は継承しながらも、100年後、時代の変化とともに、甘さや食感、添加物などへの配慮等、煎餅のカタチも少しずつ変わっていくだろう。湿気に弱いといった弱点もあるが、「乾燥地域ならば通用する」と、国際商材としての可能性をみる。

 21歳で鹿児島から上京し、「人生一度しかないのだから銀座で勝負をしてみたい」と考えた「銀座もとじ」の泉二社長。「銀座では新参者」と謙遜するが、今年創業30周年を迎える。2002年には、呉服業界では未開拓の市場だった男のきものに着目した店を開いた。「人生を変えてくれた着物にいつも感謝」しつつ、「ナンバー1」「オンリー1」「日本初」に挑み、競い合えるのも、銀座の「場力」だと信じている。「おもてなしの職人づくり」を掲げ、養蚕農家や着物づくりの現場の職人たちにも、年一度は銀座の空気を吸ってもらうようにしている。

 顧客の家族構成からいつ何を求められたかまで、全てを記録している着物カルテが何よりの財産だ。「先日、孫の成人式の振袖をつくりに来られたお客様に、お宮参りや七五三など成長の記録をお見せすると、涙を流して喜ばれた。カルテは、おもてなしのカタチです」。100年後も、カルテがしっかり残っている店でありたいという。さらに、「海外に出掛ける時にもっと着物を着て行ってほしい。着物の文化を知ることは、必ず男磨き、女磨きにつながるはずです」。

アジアのアート発信基地に

  • 銀座3丁目の「銀座もとじ」は、男のきもので注目されている

 銀座で110年以上の歴史を誇る「教文館」。確かに本は、銀座で買っても新宿で買っても同じである。だが、渡部社長は、「銀座という街が求める質に応じた品ぞろえ」に配慮しているという。年間7万タイトルが出版され、書店の大型化も進む。活字離れ、不況で単価の張る本が売れない、デジタル化の進展など、新しい波は来ている。だが、本の歴史をさかのぼれば、布から紙へ、大きく変化した時代だってあったのだ。

 オンデマンド出版も本格化し、また、100年後は、自動販売機のようにお金を入れると本が出てくるマシーンも登場しているかもしれない。とはいえ、あふれる情報の中から価値ある良書を見つけるのは、ますます困難を極める。コンピューターの検索機能だけでは判断できないからだ。「これからは『知の案内人』としての本屋の存在が大事になる。良い本を並べて、いかに人間が丁寧に相談にのることができるかが勝負でしょう」。

  • 銀座4丁目の「教文館」は、にぎやかな銀座中央通りに面している

 「美術品は世界の文化遺産。世界中を回り、物語を伝えるコミュニケーションの役目を果たしてきた」と語るのは、「東京画廊」の山本社長。そして、近代美術を商品化し、店頭に並べるという画廊のシステムは銀座からスタートしたそうだ。トマトケチャップやハンバーグまでポップアートにして、消費文化の物語を紡いだ米国のアートは、世界中の家庭に浸透した。日本では、浮世絵とともに発達した富士山アートが、日本人のナショナルアイデンティティにもなって、企業は縁起物として正月に飾ったものだ。ところが、若い世代の関心は、富士山よりもアニメーションや漫画に移り、それがまた、海外でも人気になっている。

  • 銀座8丁目の「東京画廊」は、ビルの7階に。この通りには画廊が多い

 さて、次の物語はどんなものが語られていくのだろうか。「今までの100年は西洋文化に憧れ、それを学び吸収し、輸入する側でいたけれど、これからは日本から飛び出して、日本独自の物語を世界に売る時代。日本を世界にもっともっと知ってもらうことだ。アジアのアートの発信基地になることが100年後の日本の姿です」。

 堅実かつぶれない本業の「芯」を保ちながらも、時代をにらみ、海外をしっかり視野に入れた行動を考えている店主たち。銀座はいま、経営者の世代交代が進みつつある時だが、こうした発想は、次世代にも受け継がれ、21世紀の銀座の新しいカタチがつくられていくに違いない。

 さて、今年も、東京・銀座を中心に様々な情報を発信していきますので、ご愛読ください。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2010.01.06

帝国ホテルの「レ・セゾン」で

 年の初めのフレンチ・ディナーは、帝国ホテルの「レ・セゾン」です。

1月2日の初売りが仕事始めの百貨店業界。

正月は、家族で帝国ホテルで過ごすスタイルが、ここ数年定着しつつあります。


「2010年の新年メニュー」のメインは、フランス産スズキのシャンパーニュ風味ソースか、蝦夷鹿のポワレのマスタード風味のセレクト。

蝦夷鹿を選ぶことにしたので、ワインは、ローヌの赤?

若きエースソムリエのNさんに、「やはり気分はブルゴーニュなんですけれどね」と相談したら、おすすめの1本がこれでした。


10010601.jpg2001ニュイ・サン・ジョルジュ ラ・リッシュモーヌ(ドメーヌ・クリストフ・ペロ‐ミノ)


 

1937年に父アンリが設立し、93年から現当主のクリストフ氏に引き継がれて以来、評価を高めている生産者。

ペルナン・ロサンの畑など新しい畑の購入・拡張や最新技術の積極的な導入、そして、ブドウ果汁の凝縮度を高めることに細心の注意を払うことなどで知られています。クリストフ氏が畑の管理も醸造も一手に手掛けているそうです。

 

ソムリエさんに後からいただいたワインの解説には、「平均樹齢の高い畑を持ち、そして収穫したブドウを選果台で20人もの人でをかけて腐敗果実を取り除き、最後尾ではクリストフ本人が最終確認を行います。ここまで徹底した選果を行うのはDRCくらいと言われています」とありました。

他の資料では、収穫時期に雨が降って水滴がブドウの表面についている時などは、友人とヘリコプターをチャーターして、ブドウの表面に付いた水分を吹き飛ばしてから収穫に臨むというエピソードを読んだことがあります。

う~ん、なかなかの徹底ぶりですね!

まず、華やかなバラのような香りに包まれ、エレガントな酸、タンニンも滑らか。新年のお祝いには申し分のないワインでした。

 

さて、この日のお料理は、

ニンジンのジュレのアミューズに始まり、

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ガチョウのフォワグラ3種の味わい ナチュール、アーモンド、ヘーゼルナッツ

ヘーゼルナッツ味が気に入りました。


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バターがあまりに華麗にサービスされたので、パチリ!

 

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蝦夷鹿のポワレ マスタード風味のジュ アンディーヴのピュレとリンゴのベニエ

絶妙な焼き加減です。

 

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チョコレートのデザート パッションフルーツのジェリーと

 

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小さなお菓子たち

 

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体重を気にしつつ、今年も美味しいワインにお料理、大いに楽しむつもりです。

ワインのおつまみにも、いろいろチャレンジしてみたいし。

どうぞお付き合いくださいね。
 

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)