2009年9月アーカイブ

2009.09.28

「サロン・ド・テ アンジェリーナ」で楽しくマリアージュ

私のワイン講座では、3か月に1回、レストランで料理とのおいしいマリアージュを体験していただいています。


場所は、プランタン銀座の本館2階「サロン・ド・テ アンジェリーナ」

9月25日の回は私を含めて12人参加なので、ワインは6本プラスデザートワイン1本そろえました。


フランス料理出身の塩川シェフが、それぞれのワインに合わせた料理を作ってくれる、自分で言うのもなんですが、ちょっとぜいたくで、とっても楽しい講座です。(だいたい私自身がとっても楽しんでいるのです!)


「アンジェリーナ」は、モンブランだけじゃない! 

本格派フランス料理もお手ごろなんですよ。

 

今回は、講座の生徒さんのリクエストに応えてワインを選びました。

 

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左から、

シャンパーニュ・ブリュット ブラン・ド・ブランNV(ドゥラモット)
ソーヴィニヨン・ブラン 2009(シレーニ セラーセレクション)
ロエロ・アルネイス ベルドゥーディン DOCG 2006(ネグロ・アンジェロ・エ・フィリ・ディ・ジョヴァンニ・ネグロ)
レッド・ローズ2005(デヴィッド・フランツ)
メルロ オーディネール2006(小布施ワイナリー ソガペールエフィス)
シャンボール・ミュジニー2007(ドメーヌ・デュジャック)


 

09092702.jpg最初のシャンパーニュは、先日もご紹介したドゥラモットの「ブラン・ド・ブラン」。「サロン」の妹分といわれているシャンパーニュ、シャルドネ100%です。


カリカリに焼いたプロシュートとイチゴのミルフィーユ仕立てと合わせます。プロシュートのほどよい脂分とクリームチーズの酸味、イチゴのフレッシュな味わいが、繊細な「ブラン・ド・ブラン」を引き立てます。

 

 

 

09092703.jpg2つめのソーヴィニヨン・ブランは、人気が定着してきたニュージーランド南島のマールボロ地区で造られるドライでフレッシュな白ワイン。ほのかなやさしい甘みが残ります。


毛ガニのロワイヤル・蕪詰め。シャキッとした蕪の歯ごたえがよかったです。カニのような甲殻類、合いますねえ。

 

 

 

09092704.jpg3つめのロエロ・アルネイスは、イタリア・ピエモンテ州のDOCG白ワイン。1960年代に復活したアルネイスという土着品種100%。タナロ川をはさんで、有名なバローロ生産地域の反対側で作っています。

いささか濃い目の麦わら色で、アカシアのような花の香りととろりとした口当たり。個性的な味わいです。

ワイナリーの歴史は、1670年にジョヴァンニ・ドメリニ・ネグロ氏にまでさかのぼれるようです。


ナスのキッシュ仕立てにのっているのが、ホロホロ鶏のローストです。ソースは、タマネギのみじん切りを炒めてブイヨン、バター、小麦粉、牛乳などで煮詰めたスービーズソース。ミルク系の味わいがこの白ワインとはよくマッチしていました。

 

 

09092705.jpg4つめのレッド・ローズは、南オーストラリアのロゼワイン。名前の通り、華やかなローズ色。味わいは、チェリーというかプラムというか。

この生産者、デヴィッド・フランツ氏のウェブサイトはなかなかユニークでした。オーナー氏と妻とが赤ワインを掛け合ってワインまみれになっている姿がトップページに現れるので・・・。

料理は、キングサーモンのフリットと蒸した有機野菜の組み合わせ。レモンの酸味がきいたオランデーズソースでいただきました。

 


 

09092706.jpg5つめは、赤ワインで、長野県志賀高原山麓の小布施ワイナリーから「メルロ」を。

メルロ主体でカベルネソーヴィニヨンがブレンドされています。「ソガペールエフィス」ブランドは、自社農場ブドウと国内の優良農家のワイン専用ブドウを選んで造っているそう。国産果実100%使用なのですね。


ワイナリーの歴史は100年以上さかのぼりますが、欧州系のワイン用ブドウの畑を本格的に拡大したのは、1990年代初め。一般消費者から、ワインの樹1本1万5千円で購入してもらうワインの樹オーナー制度を設けています。

また、「ドメーヌソガ カベルネソーヴィニヨン プライベートリザーブ」は、全日空欧州線のファーストクラスにも採用されているといいます。


さて、今回飲んだ「メルロ」のボトルの裏には、こんな説明がありました。

「樽貯蔵など時代遅れと笑うがいいのです。小布施では、日本産ボルドー系品種は樽貯蔵して初めて真価を発揮するという強い信念のもと、100%樽貯蔵にこだわっています」。

 

09092707.jpgなるほど、熟したプラムの香り、ほんのり柔らかな樽の香りがして、味わいは複雑、滑らかなタンニンも心地よく感じられました。

 

リンゴとフォアグラのソテーにベリーソースを添えて。言うことありませんね。国産ワインの進化が頼もしく思える一品でした。

 

 

 

 

09092708.jpg最後の赤ワインは、やはり先日ご紹介した、ドメーヌ・デュジャックの「シャンボール・ミュジニー」です。デュジャックがシャンボールに持っている畑は、わずか0.53ヘクタールといいますから、貴重ですよね。


可憐な淡いルビー色ながら、ミネラルたっぷり、果実味豊かで、味わいはふくよか。

「エレガントですね!」と、最近ワイン用語を上手に使い始めた生徒さんの一言に、このワインの真髄が表されているような気がします。
茸のクリーム煮を詰めた仔羊のローストで締めくくりです。

 

そうそう、デザートも忘れられません。

モスカート・ドルチェ2008(ガイエルホーフ)

 

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 用意したモスカート・ドルチェは、私がイタリアの旅で最後に訪れたミラノのレストランで、店のご主人からプレゼントされたデザートワイン。北イタリア・トレンティーノの甘口白ワインです。

 

マロンの入ったティラミスと、キウィとピーチのジェリー。真ん中のジェラートは、なんとヨーグルトにオリーブオイルを合わせたもの。デザートワインとの相性、楽しくいただきました。

 

自宅で合わせるときの参考になりますよね。

最初のシャンパーニュとの組み合わせ、早速サンデーブランチで実践して、好評でした!

 

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2009.09.26

インド産ワイン~「SULA」(スーラ)

私が講師を務めるワインクラスの生徒さんの中には、とっても好奇心旺盛な紳士がいらして、

「世界中のいろんな国の様々な種類を飲んでみたい!」

と、いつも難しいお題をいだだきます。

 

先日のリクエストは「インドのワイン」でした。

私にとっても初体験!

そういえば、よく利用する東麻布のワインショップで見かけたような・・・。
それで、「世界のワイン」コーナーで見つけました!!


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2008スーラ・ヴィンヤーズ シュナンブラン =左
2008スーラ・ヴィンヤーズ シラーズ =右

 

太陽をデザインしたエチケットが結構キュートで、歌って踊り狂うインドのコメディ映画をつい思い描いてしまうワインです。

ほかにも、ソーヴィニヨンブラン、ジンファンデル、カベルネソーヴィニヨン、それにスパークリングワインなどがありました。

 

スラ・ヴィンヤーズは、インド西部の商業都市ムンバイ(ボンベイ)から180キロ北東にあるナシクの町にあります。

随分前になりますが、取材でボンベイを訪れたことがあります。

気温も高く湿気も多く、とてもブドウが育つ環境ではないと思っていましたけれど。

ところが、このナシクの町は海抜610メートルの高地で、カリフォルニアやスペインに似た気候なのだとか。

 

ワイナリーのオーナーのラジーブ・サマント氏は、米スタンフォード大学卒業後、シリコンバレーで金融の仕事で活躍、1997年、故郷のインドに戻ってワイン栽培を始めました。

カリフォルニアで、ワインの楽しさに魅せられちゃったのでしょうね。

そして、ソノマの有名ワイン・コンサルタント、ケリー・ダムスキー氏をインドに招聘し、空調システムを導入、また、環境保全型のブドウ栽培を実践しているといいます。

 

シュナンブランは、パイナップルやマンゴーなど南の果実味がいっぱいで、酸味はやわらかく、フレッシュな味わい。タンドリーチキンなど香辛料のきいた料理との相性もよさそうです。

なお、ワイナリー・オーナーからは、「夏の夕刻に飲むのが最適なワイン」とのアドバイス・メッセージが付いておりました。

 

シラーズは、ブルーベリーのような味わいとスパイスの香りが広がり、滑らかなタンニンが結構後をひきます。ちょっと冷やしてから出したのですが、あまり冷やさない方がよかったな、という印象でした。

 

いずれにしても、千円台前半で買えるコストパフォーマンスのよさは素晴らしいです。


インポーターさんの資料によれば、アラン・デュカス氏のモナコの三ツ星レストラン「ルイ・キャーンズ」のワインリストにも採用され、また、イタリアではアンジェロ・ガイア氏が、カリフォルニアではコッポラの「ルビコン・エステート」のシェフ・ソムリエ、ラリー・ストーン氏が惚れ込んでいるというのだから、やはり気になる存在ですね。

 

サマント氏が目指すのは、「世界に通用するアジア最高のワイン」。

日本の国産ワイナリーも負けられませんね。

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2009.09.22

京都先斗町のフランス会席

来月10月には、ミシュランガイドの京都・大阪版が初めて発売されるそうです。

どんなお店が星をとるのか、ちょっと楽しみですね。

またちょっとした京都ブームが起こるのでしょうか??

 

ところで、関西方面に用事があったので、時間を見つけて、井上晃男さんがオーナーシェフを務める「先斗町 禊川」に出掛けました。


鴨川のほとり、京都・三条大橋を渡った先の「先斗町歌舞練場」からほど近く。

 

09092201.jpgこのあたり、昭和初めのレトロな建物から三味線や長唄の旋律が流れ、舞妓さんのお稽古姿が目に浮かびます。


先斗町通りにある「先斗町 禊川」は、築150年以上という元お茶屋さんの純日本的な佇まいの中で、「お箸でいただくフランス会席」を売り物にしています。

 

09092202.jpg開店30年近くになるそう。京焼など和の器にも注目です。


井上さんとのお付き合いは、今年のバレンタインフェアで、オリジナルブランドのチョコレート「メゾン・ドゥ・イッテー」をプランタン銀座に出品していただいたことで、ご縁ができたんです。

この時のバレンタインの様子に関しては、「GINZA通信」でも触れていますので、チェックしてみてください。


今回、井上さんはブルゴーニュにワインの買い付けに行かれていて、残念ながらお会いすることができませんでしたが、お店のスタッフの皆さんに、とても楽しくフレンドリーに応対していただきました。
長年サービスのプロとして活躍している中野信人さんと、英語のほかイタリア語やフランス語も堪能で、時に全体の半数を占める外国人客にも丁寧な説明が好評の田中治子さんです。


さて、お料理ですが・・・

 

09092203.jpgまず、5種類が並ぶ先附。

アンチョビの入ったパイはさっくさく、

器に入ったプルロット(オイスターマッシュルーム)のソテーに初秋の風を感じます。あわせて、シャンパーニュをグラスでいただきました。

 

 

 

 

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賀茂ナスのムースには、赤ピーマンのソースを添えて。9月半ばといっても、気温30度を超える暑い日でした。ガラスの器が涼しさを運びます。


酸味のあるリンゴのソースでいただくフォアグラのソテー、絶品でした。マディラソースとかバルサミコソースとかと違って、さっぱりした印象。甘みと酸味のバランスがよいのでしょうね。


09092206.jpg白ワインをいただくことにしました。

2006ムルソー レ・グラン・シャロン(ドメーヌ・ギィ・ボカール)


ブルゴーニュ・ムルソー地区では、ムルソーの実力派といわれる家族経営の生産者です。

畑は、コシュ=デュリのいとこで最近めきめき人気が上がっているアラン・コシュ=ビズアールの向かい側。

 

外観は濃い黄金色で、とろりと粘性も強めです。

パイナップルの甘めの香り、コクがあって、ふんわりまろやか、余韻も長い。こういうムルソーは、和素材を生かしたフランス料理をよりおいしくしてくれます!

 

続いて、

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アワビとホタテ、ジロール茸のソテーに、白ワインとレモンジュースを合わせた「ランデブーソース」。ギンナンのえぐみが日本の秋ですね。

お吸い物は、岩手県産のマツタケを使ったコンソメスープ。マツタケの香りに酔いが進みます。


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手長エビのソース・シャンパーニュには、黒トリュフがアクセントに。シャンパーニュ好きの私にとっては、これまた絶品!◎でした。
アマダイは、ケッパーやイタリアンパセリで香ばしく仕上げたグルノーブル・スタイル。


09092211.jpgお口直しのソルベは、宮崎県日向産のヘベス。

「平兵衛酢」と書き、夏の酢ミカンと呼ばれているそうな。

 

スダチより玉が大きく、カボスより香りが優しく、ユズより薄皮でたっぷり果汁がとれるのだとか。

 

 

 

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最後の肉料理は、山口県産の黒毛和牛で特製デミグラソースがやさしい味でした。

09092212.jpgあわせて、軽くピノノワールをいただきました。

2006ACブルゴーニュ(ドメーヌ・フランソワ・ブッフェ)

この生産者も、家族経営で、すべて手作業でつくっていることで定評があります。

フィルターをかけないので、果実味がとても豊か。まろやかな旨みもありました。

 

 

 

 


09092215.jpg仕上げに、カツオ出汁のきいたおにぎりのお椀。

香の物と一緒にいただいて、日本に生まれてよかった!と実感です。

 

 

 

 

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デザートは、黒ゴマのアイスクリームにイチジクのコンポート添え。

そして、お得意のチョコレート。どれもとっても美味しいんです。

カモミールティーでいただきました。


丸の内の東京會舘で、伝統的なフレンチクラシックの基本を体得した井上さんの料理は、素材そのものの美味しさを生かすというだけでなく、素材ごとに工夫された様々なソースの登場に、ドキドキします。

デミグラとかシャンパーニュとか、ソースの存在で素材の美味しさが倍増した印象でした。


当日実にタイミングよく料理を仕上げてくれたのが、井上シェフの薫陶を受けた万木(ゆるぎ)裕幸シェフです。


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京都・先斗町なんていうと、ちょっと構えてしまいますが、

ここは一見さんでも大丈夫。

お時間があれば、ぜひ。

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2009.09.19

秋の連休を100倍楽しもう! 名門フランスワインのお買い得セール

待ちに待った秋の大型連休がスタートしましたね。


家でリラックスして飲むもよし、友人と集まってわいわい飲むもよし・・・。

プランタン銀座のワイン売場では、昨日18日から、人気ドメーヌの品揃えでは定評のあるインポーターさんのご協力で、注目のフランスワインのお買い得セールが始まりました。

この際、日常飲みのワインよりもちょっとランクアップさせたいなと思っている方には、とってもおすすめ!!


まず、シャンパーニュは、「ドゥラモット」4種類が勢揃い!

 

09091601.jpgドゥラモット ブリュットNV(税込4725円)
ドゥラモット ブラン・ド・ブランNV(税込6090円) 
ドゥラモット ロゼNV(税込6930円)
ドゥラモット ブラン・ド・ブラン1999(税込6930円)

 

「ドゥラモット」は、幻のシャンパーニュとして知られるあの「サロン」の姉妹メゾン。

納得できるブドウが出来た年しか造らないという頑固なこだわりをもつ「サロン」ですが、その畑のブドウを使っているのが「ドゥラモット」です。「サロン」のセカンドブランドといってもいいのでしょう。

クリーミーな泡立ちと柔らかい口当たり。きめ細かな泡がグラスの底から立ち昇る様を見ていると、丁寧に造り込まれたシャンパーニュであることが実感できるんです。

青リンゴのようなフレッシュな風味に続いて、焼き立てのクロワッサンのような香ばしさ、グレープフルーツのようなほろ苦さも感じられます。


09091602.jpgシャルドネを得意とする造り手ですから、繊細で切れのいい「ブラン・ド・ブラン」のバランスのよさがこのブランドの真骨頂でしょうか。

「ロゼ」は、淡い輝きの華麗なピンク色で、ちょっとスモーキーな味わいは、私の好みでもあります。

 

そして、何と言っても私のイチ押しは、1999年ヴィンテージです。

「ブラン・ド・ブラン」の爽やかさに、とろりとハチミツやバニラのニュアンスが加わって、エレガントな仕上がりです。

スイーツ好きでお酒がそんなに得意でないわが友人も、「世の中にこんな美味しい飲み物があったんだ!」と感動しておりました。

 

 

お次は、ブルゴーニュ。
 
09091603.jpg500年続く名門ドメーヌが丁寧に造り上げた有機栽培のスタイルは、「世界一の白ワイン」と多くの評論家が絶賛・・・

といえば、

そう、ドメーヌ・ルフレーヴ。


ピュリニー・モンラッシェ2007(税込7980円)
ブルゴーニュ・ブラン2007(税込4725円)
 

 

 

 

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 しなやかで、華やかな香りがあって、それでいて濃厚で力強さもあるブルゴーニュのモレ・サン・ドニ。それを語るには、やはり、私も大好きなドメーヌ・デュジャックです。

 

デュジャックからは、3種類がいずれも7000円を切る価格で登場!


モレ・サン・ドニ ルージュ2007(税込6930円)
モレ・サン・ドニ ブラン2007(税込6930円)
シャンボール・ミュジニー2007(税込6930円)

 

 

 

ルフレーヴ・ファン、デュジャック・マニアの方はまとめ買いのチャンスかも。

未体験の方は、この機会にぜひ試してみてはいかがでしょうか。

 

さあて、私は何を買って飲もうかなあ。

 

 

         

   

                                                                                                                                              

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2009.09.18

本場のタンゴを堪能、ブエノスアイレスの長い夜

タンゴ発祥の地ボカを訪ねて

  • カラフルに塗り分けられたカミニートの家々

 前回のペルー編に続いて、南米の旅で訪ねたアルゼンチンのお話をしよう。

 アルゼンチンで私が一番楽しみにしていたのが、本場のタンゴの鑑賞である。

 あの哀愁漂う、それでいて情熱的で力強い旋律に魅せられたきっかけは、30歳のころに観たフランス・アルゼンチン合作映画「タンゴ・ガルデルの亡命」だったと思う。パリの街頭でダンスを踊るアルゼンチン出身の若者たちの姿もさることながら、全編に流れるアストル・ピアソラの音楽が素晴らしかった。

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレス中心部から南に位置するボカ地区は、タンゴ発祥の地といわれている。南米屈指のサッカークラブ、ボカ・ジュニオルスのホーム・スタジアムがある地域だ。

 その一角に、タンゴ不朽の名作にちなんで、地元出身の画家、キンケラ・マルティンが造ったカミニート(小径)がある。百メートルほどの散歩道に軒を連ねる家々の壁やテラスはピンクやブルーなど大胆に塗り分けられ、また、絵画やオブジェがさりげなく置かれていて、街全体が“アート”している。

  • カミニートの道標
  • 壁面にタンゴのイラストも(ボカ地区で)

一糸乱れぬ足さばきにため息

 19世紀後半、ボカはブエノスアイレス唯一の港町で、イタリアやスペインなどヨーロッパから夢を求めてやって来る移民たちがあふれていた。

 そういえば、「母をたずねて三千里」のマルコ少年は、イタリア・ジェノバからブエノスアイレスに出稼ぎに行ったきり音信不通になった母を追って旅に出た。約1か月の船旅で、到着したのがボカの港だったっけ。

 「二十世紀最大の海運王」と呼ばれるアリストテレス・オナシス氏も、17歳のころ、ギリシャを離れてしばらくこの地に住みついた。最初は小舟の船頭をしていたが、第一次大戦中に葉巻や食肉の貿易で成功を収めた。彼の下宿屋は、スラム街にいまも残る。

 そんな雑然とした港町で、船乗りや労働者が、日常のフラストレーションのはけ口として酒場で男同士、荒々しく踊ったのが、タンゴの始まりという。男たちを相手にする娼館などにも広まり、男女で踊るタンゴの原型ができ上がった。

  • ダンサーの足さばきに思わずため息が……(アルマセンで)

 第一次大戦後、パリに渡ったタンゴは、上流階級の間でも絶大なる支持を得る。ピアソラのような名演奏家も誕生し、バンドネオンの切れのいいリズムとともに、官能的で洗練された踊りへと発展していく。

 日本では、1980年代後半に上演された、ブロードウェイの「タンゴ・アルゼンチーノ」が人気の火付け役になり、90年代以降、ダンス愛好家が着実に増えている。

 ブエノスアイレスの中心部に戻って、タンゴのライブが観られるタンゲリーアに出掛けた。

 「エル・ビエホ・アルマセン」という小ぢんまりとした店だ。開演は夜の10時過ぎ。ステーキでエネルギーをたっぷり補給して、ブエノスアイレスの長い夜に備えた。

 間近で観るダンサーの、緊張感を秘めた息づかいと一糸乱れぬ足さばきにため息が出る。

 帰国後も興奮冷めやらず、華麗なる一夜の体験を友人に話したら、銀座にも、アルゼンチンタンゴを楽しめる「クラブ・タンギッシモ」という場所があると教えられた。様々なタンゴのイベントを行っている「アルゼンチンタンゴ・ダンス協会」も銀座の地に居を構えているようだ。今度訪ねてみようと思う。

銀座線のモデル「地下鉄A線」

  • 地下鉄銀座線のモデルになったブエノスアイレスの地下鉄A線。木製の車両です

 さて、ブエノスアイレスで学んだ、「銀座ネタ」をもう一つ……。

 鉄道に詳しい方々にはよく知られたことだろうが、ブエノスアイレスで市民の足として親しまれて入る地下鉄は、日本最古の地下鉄銀座線建設のモデルになったそうだ。

 時は第一次世界大戦が始まる前年の1913年。ラテンアメリカ初の地下鉄A線が、ブエノスアイレス市内中心部、大統領官邸に面した5月広場と郊外の住宅地を結ぶ区間で開通した。

 大戦をはさみ、当時のアルゼンチンの経済発展には目を見張るものがあった。1人当たりのGDP(国内総生産)はフランスと肩を並べ、パリのオペラ座、ミラノのスカラ座とともに世界3大劇場の一つに数えられるコロン劇場がオープンするなど、文化面でも世界をリード、「南米のパリ」と呼ぶ人もいた。

  • (上)「カーサ・ロサーダ(ピンク・ハウス)」といわれる大統領官邸、(下)コロン劇場はいまだ改装工事中

 一方の日本。世界最初の地下鉄が誕生したロンドンでこの都市型交通機関を見て、日本での建設を考えた早川徳次氏(シャープ創業者と同姓同名だが別人)が、1919年、渋沢栄一氏の支援を受けて工事に乗り出す。その時にモデルにしたのがブエノスアイレスの地下鉄A線だったのだ。

 とはいえ、23年の関東大震災で着工が遅れ、現在の銀座線の一部、浅草―上野間に「東洋唯一の地下鉄道」が開通したのは、1927年(昭和2年)を待たねばならない。早川氏は、路線を決めるにあたって、自ら繁華街、銀座の交差点に立って交通量調査を試みたりしている。こうして、銀座線は新橋へ、さらに渋谷へと延伸されていく。

  • 迫力たっぷりのイグアスの滝

 さらに興味深いのは、ブエノスアイレスの地下鉄B線には、赤い車体に白いラインの旧丸ノ内線(これも銀座を通る路線)の中古車両が現役で活躍しているという。開業当時お世話になった恩返し?だろうか。

 ちなみに、アルゼンチンの最後は、世界遺産に登録されているイグアスの滝で締めくくり。悪魔ののどぶえというアルゼンチン側の滝壺近くまで行くボートツアーに参加して、合羽を着たにもかかわらず全身ずぶ濡れに。

 こんなおとなの水遊びも、思い返せば意外に楽しい夏の思い出になりそうだ。 

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2009.09.12

時空を超えた大自然の恵み

「太陽神の聖獣」アルパカのシチュー

  • アルパカは、アンデスの人々の暮らしの中に溶け込んでいる(クスコで)

 前回の小欄で、東京・新橋のペルー料理専門店「荒井商店」をご紹介した。そこのマダムが、ペルー旅行に出掛けるにあたってアドバイスしてくれた2つ目が「日本では手に入らない食材に挑戦してね。たとえば、アルパカとか……」だった。

  • 空中都市マチュピチュは、海抜2400mに浮かび上がる

 アルパカといえば、最近テレビCMでも、「ミラバケッソ」とかいう不思議な“呪文”とともに登場する、つぶらな瞳のおとなしそうな人気の動物。ラクダ科に属する。

 現地では「太陽神の聖獣」とも呼ばれ、荷物運びに、柔らかな毛から作る防寒衣料に、また、良質なタンパク源を供給してくれる食糧として、インカの人々にとっていまも欠かせない家畜だという。

 マチュピチュの入り口にあるレストランで出合ったのは、このアルパカをジャガイモやニンジン、ハーブなどと一緒に煮込んだシチューである。アルパカ肉はクセがあると聞いていたが、シチューになると食べやすい。後ほど紹介するが、ペルーでよく飲まれているブドウの蒸留酒、ピスコを加えてマイルドな風味に仕上げているそうだ。

キリストが食した?“ネズミ”の丸焼き

  • クスコ中心のアルマス広場。左手がカテドラル

 次に挑戦したのは、ちょっとだけ勇気がいった。現地ガイドのマリソルさんから教えてもらった「クイ」である。「私たちにとっては、お祭りの時にしか食べられない高価で貴重なもの」という。

 日本語では、テンジクネズミ!! 手元のガイドブックを見たら、歯をむき出したネズミ君が丸焼きになってこちらをにらんでいるではないか。

  • カテドラルにある壁画「最後の晩餐」。皿の上に注目を

 断っておくが、私はゲテモノ食いが趣味なわけではない。そりゃあ、アフリカやアジアの取材で、日本ではあまりお目にかかれないものを食べてきた経験はある。だが、食用とはいえ、「ネズミ」の丸焼きとなると、一瞬たじろぐ。

 決心したのは、インカ帝国の首都だったクスコの街の中心、アルマス広場に面したカテドラルの壁画を見てからだ。この堂内には、メスティソ(混血)画家のマルコス・サパタ作の「最後の晩餐」の絵がある。

  • こんがり丸焼きのクイ(クスコで)

 ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院にある、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「最後の晩餐」では、皿の上にあるのは魚料理といわれている。だが、クスコのカテドラルでは、皿の上に、丸焼きのネズミらしきものが載っている。これが「クイ」らしい。

 ペルー流解釈によると、「最後の晩餐」でキリストが召し上がりたいと思われたほど美味な食材なのだから、これは挑戦するに値するだろう。

 マリソルさんに予約してもらった地元レストランで、食べてみた。内臓を抜いたお腹の部分にはハーブ風味の穀物が詰められ、こんがりと焼き上がっていた。耳にあたる部分はニンジンで愛らしく飾ってある。

 店の人が上手に切り分けてくれたが、皮は厚くて硬く、食べられる肉の部分が意外に少ない。コクがあって、鴨のコンフィのような味わいがあり、なかなかおいしかった。

 ゆでジャガイモと、ロコトという肉厚のトウガラシに挽肉やタマネギを詰めて揚げたものが、同じ皿に添えられていた。

古代ナスカ人のスイーツ

  • (上左)ルクマのアイスクリーム、(上右)とってもジューシーなトゥナ。皿の右手、粒粒がある赤と緑の実、(下左)ペルー人が大好きなインカ・コーラ、(下右)甘いけれどアルコール度数が高いピスコ・サワー

 ペルーでは、果物の種類も豊富だ。グラナディア(パッションフルーツ)、チリモヤ、ブランキージョ。聞いたことのない果実がたくさんあった。

 その中で、「荒井商店」のマダムのイチオシだったルクマのアイスクリームを、ナスカの砂絵を見に行く途中で見つけた。

 ルクマは、黄色がかった緑色のミカンサイズの果物で、中身は橙色のカキのような感じ。古代ナスカ人も好んだらしく、当時の土器などにはルクマを食している場面が刻まれている。現地の人にいわせると、「水気が少なく、生だとまずい」そうだが、アイスクリームはクリのように濃厚な風味があった。ほかに、スープやケーキにも入れて食べるらしい。

  • マチュピチュの最高地点にある日時計で、太陽神のエネルギーをもらう

 その他の私のおすすめは、トゥナというウチワサボテンの実。みずみずしく、生のままスプーンで中身をすくうと、じゅわっと甘酸っぱいジュースが口の中に広がる。

 飲み物で忘れられない味は、インカ・コーラとピスコ・サワーだ。

 インカ・コーラは、首都リマ市建国400年を記念して1935年に発売された黄色いコーラ。米国では、ゴールデン・コーラと呼ばれているようだ。とっても甘い。

 ペルーで国内線の飛行機に乗ると、現地人らしき乗客の多くが注文していたから、人気なのだろう。当初はレモングラスの花粉で着色したらしい。

  • ナスカの地上絵は宇宙人のシグナル説もある。これはオウムの絵らしい

 ピスコ・サワーも、ペルーのいくつかのバーで口にした。ピスコはブドウの蒸留酒で、アルパカ・シチューの隠し味にも使われていたお酒。これに卵白とライムジュースを加えてシェイクしたカクテル。ガムシロップで甘みが付いているので飲みやすいが、アルコール度数は43度と高め。

 また、ペルーの南部、イカの周辺にはブドウ畑が広がっており、気軽に楽しめるタイプのワインが豊富にあった(ワインについては、プランタン銀座のホームページ内にある私のワインブログhttp://www.printemps-ginza.co.jp/wine/をご参照ください。近日中に南米ワインの情報をアップします)。

 この夏は、マチュピチュの神殿で、また、ナスカの上空で、時空を超えた大自然のエネルギーをもらったような気がする。

 さあ、秋からの仕事も頑張ろう。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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2009.09.11

横浜中華街で中国ワイン

今年は横浜開港150周年の記念の年。


1853年(嘉永6年)にペリーが来航、翌1854年(安政元年)に再来航と日米和親条約の締結、そして、1859年(安政6年)の横浜開港につながる、というのが歴史の流れです。


横浜に行く用事があったので、中華街に寄ることにしました。


横浜中華街も、誕生150年なんですね。

横浜開港資料館では、中華街の歩みをたどる企画展も行われていました(10月25日まで)。

 

開港後まもなく横浜にやって来た中国人は、外国人居留地の一角に住み、西洋人と日本人の貿易の仲立ちなどをしながら横浜に華僑社会を根付かせたといいます。


遅めのランチは、「ペリー来航の間」があるホテル・ニューグランドで、名物のカレーを。

ここのクラシックなボールルームが好きです。


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09090302.jpg1927年(昭和2年)に開業した同ホテルは、初代総料理長にパリからスイス人のサリー・ワイル氏を招聘。

「コック長はメニュー以外の如何なる料理にても御用命に応じます」として、ア・ラ・カルトメニュー(一品料理)を取り入れ、また、服装や形式にとらわれない自由な雰囲気の「グリル」スタイルを導入したことで知られます。


09090303.jpgカレーライスは、開業時よりメニュー化されていて、マンゴ、マンゴチャツネ、チーズ、ラッキョウ、福神漬、パイナップル、オニオンフライ、ココナッツ、ボンベイダック、ピクルスの10種類の薬味が振る舞われました。

 

戦後の接収時には、GHQの将校たちにスナックとして愛されたといいます。

 

ここのカレーが有名になったのは、1960年代、所得倍増計画を行った当時の池田勇人首相が、「カレーでも食べながら」と、カレーミーティングを好み、週刊誌などがこぞって特集を組んでから。


今でも、1階の「ザ・カフェ」で、ビーフ、ポーク、シュリンプの3種類のカレーが食べられます。


小麦粉でとろとろのカレー、久しぶりに楽しみました。

幼いころ好んで食べた、出前のおそば屋さんのカレーライスを思い出します。

私はビーフカレーを頼みましたが、お肉がごろんごろん。

パイナップルの薬味をたっぷり添えていただきました。

 

さて、夜は、舌がしびれる刺激を求めて四川料理の重慶飯店本店へ。

お料理はこんな感じです。

 

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やはり、ここは麻婆豆腐がおすすめです。


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最初はビールにしましたが、せっかくなので、中国ワインを。


09090313.jpg長城葡萄有限公司が万里の長城の麓、河北省沙城地区で造る「長城ワイン」の赤と白です。

 

エチケットは、もちろん万里の長城です。

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白は、龍眼種(ドランゴンアイ)を使った爽やかな酸味の辛口。

赤はカベルネソーヴィニヨンとメルロのブレンドだそうですが、冷やし過ぎでよくわかりませんでした。

少なくとも白は、10年前に現地で飲んだときよりもずっと洗練された味わいになっていましたが。


ですけれど、舌がしびれる山椒の辛さとワインとの相性を探るのはなかなか難しいです。

本格四川料理に合うワイン、見つけた方いらっしゃいましたら、ぜひアドバイスお願いします。
 

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2009.09.08

イタリア縦断の旅から~その8(最終回)

イタリアの旅6日目。

最後の目的地ロンバルディア州のミラノに到着したのは夕刻でした。


大都会に来ると、どこで夕食を食べようか、迷いますね。
「最後の夜だから、ちょっといいレストランに行こうよ」「ワインをがんがん飲めるワインバー的なお店を選ばない?」・・・。

結局、私たち女性3人+紳士1人のグループは、「料理もがっちり、ワインも気軽にそれでいていっぱい」のミラノっ子が日常使いするお店に出掛けました。

モンテ・ネロ通りの「パスコーネ」です。

 

その前に、「世界で一番美しい鉄道駅」といわれるミラノ中央駅、

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ドゥオーモ、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリアなどをぶらついて、

 

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お店には午後8時過ぎに到着。
でも、だーれもいない!


それでも、お腹がプルンプルンの太っちょのおじ様(実はオーナー)が、陽気に迎えてくれました。

席も、お店の真ん中のいい感じの場所でした。


まずは、イタリア定番の前菜をリクエスト!

 

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泡は、地元の辛口スプマンテ、フランチャコルタ。

1997年にロンバルディア州初のDOCGに認められました。

「神の雫」にも登場したモンテ・ロッサのNVです。

 

 

 

 

09090229.jpgピノビアンコ、シャルドネ、ピノネロのブレンド。麦わら色で、白い花を感じさせる繊細な味わいです。


とってもカジュアルでリーゾナブルなワインリスト!

 

 

 

 

 

 

 

タコとかムール貝とか、魚介類系料理もあったので、

 

 

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09090209.jpg白ワインも・・・。


2007サンニオ・フランギーナ(マストロベラルディーノ)

ナポリのあるカンパーニャ州の白です。

古代から伝えられるフランギーナ種。

麦わら色でとってもさわやか。

 

 

 

 

 

お次はパスタ。
 
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パスタはイタリアの南と北で大きく違います。南ではデュラム小麦粉を使う乾麺、一方の北は卵を使う生麺です。

 

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パスタの起源に関する説は様々あるようですが、イタリアの食に詳しい林茂さんのお話によると、12世紀初め、当時アラブの支配下にあったシチリア島にクスクスのような形で乾燥パスタが伝えられました。

その後、ナポリ南のヴェスヴィオ火山とソレント半島の真ん中あたりにあるグランニァーノで本格的な製造がスタート。地中海の強い日差しと適度な海風が、乾燥パスタづくりに適していたのでしょう。

 

長期保存が可能になり使い勝手がよくなって、14世紀、アペニン山脈を越えてイタリア北部にも伝えられ、全土に広まりました。

当時の著作「デカメロン」には、エミリア・ロマーニャ地方の人々がスープ仕立てのマッケローニやラヴィオリにパルメザンチーズをかけて食べている様が記されています。


とはいえ、内陸では生パスタづくりが続いており、ここミラノは、もちろん手打ちパスタでした!


09090212.jpg午後9時半を過ぎたら、いつの間にか店の中は満席。

やはり人気店だったのですね。

 

そろそろ赤ワインも・・・。

「北イタリアに来たのだから」とリクエストしたら、

主人のおすすめが、

2007ラグレイン(J.ホーフシュテッター)

イタリアの最北、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の赤です。

かつてはオーストリア領だったので、今でもドイツ語が使われる地域もあり、「南チロル」とも呼ばれています。

ずばり、ラグレインという品種です。

ブドウの果実味がそのまま生きている感じでした。

 

お口直しのソルベをいただいて、

 

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お待ちかねのミラノ風カツレツです。

 

09090216.jpg焼き野菜をつけました。

 

  09090217.jpgカツレツは、さくっと、イメージ通りのおいしさ!!

 

ミラノに来たのだから、本場のチーズも食べなくっちゃ!


09090218.jpg三大ブルーチーズの一つ、ゴルゴンゾーラです。もともとブルー好きですが、塩気がマイルドでクリーミー。食べやすいです。


 

ご主人が、チーズに合わせるように、トレンティーノの「モスカート・ドルチェ」(ガイエルホーフ)を持って来ました。

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もう一つ、「これも合うよ」と、サルディーニャ特産のミルトを一杯。コケモモのリキュールですが、やさしい甘さです。
 

帰りがけ、ショップカードをもらったら、ご主人そっくり、つまりお腹でっぷりのイラストがポイントになっていました。

 


最近日本ではスリムでイケメンのシェフやオーナーが増えていますけれど、イタリア料理はこれでなきゃ、ね。こういうご主人の店だと、「毎日おいしいもの作って食べているんだろうな」と想像できますね。体重は気になりますけれど。


 
翌日は、夜の出発まで、ミラノの街中をショッピングしながらぶらぶら。

 

実はプランタン銀座と提携関係にあるパリのプランタンはいま、ミラノに本店があるイタリアの百貨店ラ・リナシャンテグループの傘下にあります。


ドゥオモの隣りにある同百貨店は、十年ほど前訪ねたときより、随分高級感が増した印象です。

 

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 中2階はイタリアを中心に高級ブランドがずらり。地下には雑貨を中心にイタリアンデザインのアンテナショップがあって、オリジナリティを感じます。店のショッピングバッグも垢抜けた感じです。

 

最上階はテラスが開放されていて、イタリア食材コーナーも充実しています。

 

 

 

回転ずしも大人気。
サーモンやマグロに合わせて、「イキ」というブランドのビールを飲みました。

 

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「ユズと煎茶を使ったのどごし爽快な生きビール」との説明がありました。

やや濁りを感じるフルーティーなビール。ユズの香りは、よくわかりませんでした。

 

このビール、オランダのビール会社「イキ・ビール」がベルギーの醸造所で造らせているそうで、ヨーロッパのアジア系料理店では最近見かけるようになったとか。

「イキ・ビール」の創業者は日本滞在経験もある日本びいきな人のようです。

 

昼下がり、ドゥオモの見えるワインバーでベッラ・ヴィスタのフランチャコルタのロザートを注文。


   

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09090228.jpgグラスを1杯頼むと、

パニーニやらオリーブやらポテトチップスやらフルーツカクテルやらが一緒に付いてきました。

デパートだったのでちょっと高め、12ユーロでしたけど。

 

 

いわゆる「ハッピーアワー」の時間帯にグラス一杯でいろいろつまみというか前菜が楽しめるイタリアで人気の「アペリティーボ」。その雰囲気が、ちょっと味わえました。

 

 

旅の締めくくりが、ロゼの泡。

ハッピーな気分で空港に向かいました。

 

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2009.09.07

500年の時が作った、食文化のフュージョン

東京で味わう本場ペルー料理

  • 熱帯の緑に囲まれた新橋の「荒井商店」入り口

 夏もとうとう終わりに……。この夏休み、皆さまはどのように過ごされましたでしょうか?

 私は、記者時代に未踏だった南米アルゼンチンとペルーに出掛けた。目的は、アルゼンチンでは本場のタンゴ観賞、ペルーは世界遺産にも登録されている空中都市、マチュピチュを歩くこと。飛行機を乗り継ぎ、日本から片道1日以上かかる旅である。

 未知の国の文化を知るには、まず食から。出発前に“予習”を兼ねて訪ねたのが、東京・銀座のお隣り、ビジネスマンでにぎわう新橋にあるペルー料理専門店だった。

 新橋の柳通りをしばらく歩くと、バナナの葉やらサボテンやらの南国の緑に囲まれた、ちょっと変わった入り口が目に付く。「荒井商店」という食べ物屋さんらしくない名前の店。若き店主、荒井隆宏さんは、フレンチの名店で修業後、ペルーの大自然にほれ込み、夫婦で1年間ほど滞在しながら地元の料理を学んだという。

 ちょっと遅い平日のランチタイムにお邪魔したら、お目当てのペルー料理は売り切れ。マダムに事情を話したところ、特別にペルー名物を作っていただけることになった。

 それがこの「ロモ・サルタード」。細切りの牛肉をタマネギやトマト、かりっと揚げたジャガイモなどと一緒に炒めた一品。ニンニクを効かせたしょうゆ味で、ライスも添えられていてとっても食べやすい。黄色味が強いアヒと呼ばれるトウガラシも辛すぎず、良いアクセントになっている。

 「ペルーは素晴らしいですよ。食文化のフュージョンを楽しんできてください。それから、日本では手に入らない食材もあるから、挑戦してね」と、マダムは言った。

  • 日本人の口にも合う「ロモ・サルタード」(荒井商店で)
  • インカ帝国の首都だったクスコの街の中央、アルマス広場

移民がもたらした多彩な味

  • クスコには、インカ時代の美しい石積みが残る

 マダムが示唆していた「食文化のフュージョン」は、ペルー最初の訪問地、インカ帝国の首都があったクスコでまもなくわかった。

 地元のたいていのレストランには、野菜が山盛りになったサラダバーがあった。

 クスコのある中央アンデスは、いま私たちが日常的に食べている多くの作物の原産地。ジャガイモやトマト、トウモロコシ、ピーナッツなど、サラダバーに並ぶ野菜や穀物は、インカ時代から栽培されているものが少なくない。

  • 野菜がいっぱいのサラダバー(クスコのレストランで)

 ジャガイモの種類は1000以上あるともいわれるが、マチュピチュ遺跡などで見られる急斜面と標高差を利用した段々畑(アンデネス)で、約500年前のインカ時代から作られている。

  • マチュピチュの段々畑は水はけや保水が良く計算されていた

 段々畑は太陽の昇る東向きに造られており、日中に太陽の熱で石が温まり、夜間も熱がこもって温室のような機能を果たしたらしい。インカの人々は、標高の高い寒冷地でジャガイモや雑穀のキヌアを、標高の低い温暖な場所では野菜や果物を、中くらいのところではトウモロコシや豆類を栽培していたという。

 サラダバーでは、こうしたインカ時代からの伝統野菜に混じって、ボウルに刻みネギが入っているのが気になった。まるで盛りそばを食べるときのような、長ネギの輪切りである。これにドレッシングやヨーグルトなどをかけてサラダとして食べるのだそうだ。

  • (上左)日系移民の影響が大きいサラダバーの太巻き(クスコで)、(上右)タジャリン・サルタード(リマ近郊で)、(下左)セビッチェ(マチュピチュで)、(下右)チュッペ・デ・カマロネス(リマ近郊で)

 「Makis」と呼ばれる野菜を具にした太巻きもよく見かけたが、これなどは明らかに日系人の影響だろう。先に紹介した「ロモ・サルタード」や、しょうゆ風味の焼きそば「タジャリン・サルタード」は、中国系がもたらしたといわれている。

 また、ペルーの名物料理、白身魚やイカ、タコなど魚介類と紫タマネギをレモン汁と香辛料で和えた「セビッチェ」や、川エビをトマトソースで煮込んだ「チュッペ・デ・カマロネス」も、土着のインディオと植民者となったスペイン、それに中国や日本などアジア移民のスタイルが少しずつ混じりあった料理と説明されている

 500年という時が作り出したフュージョン料理の文化は、変化に富んでいて、大自然とともに旅人を十分に魅惑して止まない。

 次回は、ペルーで挑戦した食材や飲み物についてお伝えしよう。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 荒井商店

 東京都港区新橋5-32-4 江成ビル1階

 電話03-3432-0368

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2009.09.01

初登場が続々「イタリアワイン100選」~無料セミナーも開催!!

プランタン銀座でご好評をいただいている「イタリアワイン100選」が、本日9月1日から本館地下2階のワイン売場で始まりました。


今回は3割が初登場の新着ワイン。

そして、北のトレンティーノ・アルト・アディジェから南のシチリアに至るまで、変化に富むイタリアワインの魅力をお伝えしようと、前回にも増して、売場スタッフの力が入った企画に仕上がりました! 


選定の中心になったKさんに、あえておすすめ5点を挙げてもらうと、

 

09083101.jpg右から・・・
1)2001バローロ ピアンタ・ディ・カステリオーネ・ファレット(カーサ・ヴェッキア) 税込7350円
2)2005インフェリ モンテプルチャーノ・ダブルッツォ(マラミエーロ) 税込5250円
3)2006プンタ・ディ・コッレ シャルドネ(マラミエーロ) 税込5250円
4)2005トレッビアーノ・ダブルッツォ(エミディオ・ペペ) 税込10290円
5)2005ドン・アントニオ(モルガンテ) 税込5040円

 

入社3年目のKさんは、若手ながらとっても勉強熱心。最近は、「わかりやすさとコストパフォーマンスのよさ」で、すっかりイタリアワインにはまっているそうです。
「初心者から上級者まで、絶対に楽しめるワイン!」としてすすめてくれたのが、2)と3)です。


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マラミエーロは、美しい山並みの広がるアブルッツォ州の最近注目の生産者。

 

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3)のシャルドネは、ブリュッセルのコンクールで「世界一おいしいシャルドネ」に選ばれた人気ワイン。新樽で18か月醗酵させていて、「樽のバニラ香がかなり濃厚。エレガントな果実味と酸味のバランスが取れています」。

2)は「地獄」というインパクトのある名前のワイン。「濃厚でタンニンもしっかり、どっしり風格があって余韻も長めです」。

 

09083105.jpg1)の「バローロ」の造り手カーサ・ヴェッキアは、1700年代から続く老舗ワイナリー。

カステリオーネ・ファレット村に畑があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

09083106.jpg4)は、こだわりのワイン哲学を持ち、「幻のワイン」とも称されるエミディオ・ペペの見逃せない一品。

エミディオ・ペペは、2008年7月の洞爺湖サミットでサービスされて、話題になりました。

 

有機栽培で育てたブドウを自然酵母で醗酵させ、酸化防止剤は使用せず、ラベル貼りまですべてが手作業。果実の圧搾はいまだに足踏みで行っているのだそう。

 

品種はトレッビアーノ100%。まったりとした旨味が感動ものです。

 

 

09083107.jpg5)は、ネロ・ダヴォラ種のシチリア産ワイン。

 

熟したダークチェリーの風味、ふくらみのあるタンニン。

繊細な南のワインのお手本といってもいいでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

「イタリア100選」は9月21日(月)まで。

特別企画として、参加型のセミナー企画にも注目です!!


 

9月4日(金)午後6時から プーリア州のオリーブオイル・セミナー(無料、定員10名)

 

9月10日(木)午後5時半から イタリアを代表するスプマンテ「フェラーリ」試飲セミナー(フェラーリ社社長によるレクチャーあり、無料、定員10名)
 

9月18日(金)午後6時から 優良生産者のバローロ、バルバレスコ、ブルネッロを飲み比べるワインセミナー(無料、定員10名)

 

セミナーの予約は、ワイン売場(03-3567-7885)へ。

定員に達した場合はお断りすることもございますので、ご了承ください。

 

また、9月19日(土)と20日(日)の2日間、サッシカイアやレ・ペルゴレトルテなど、一度は飲んでみたい!著名ワインの有料試飲会も実施予定です。価格に関してはスタッフにお問い合わせください。

 

盛りだくさんの内容!
100選のワインリストを前に、何を選ぼうか、私も頭を悩ませています

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)