2009年7月アーカイブ

2009.07.31

イタリア縦断の旅から~その6

エミリア・ロマーニャ州パルマから、一路ピエモンテ州アルバを目指します。

約230キロの旅です。

 

西側はフランスと国境と接するピエモンテ州。アルプス山脈の麓に位置することから、ピエモンテ(山麓)と呼ばれるようになりました。

千年以上も前からワイン造りを始めた土地です。

 

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イタリアワインの王様、バローロや、弟分のバルバレスコなど、イタリアを代表する赤ワインで知られていますね。


伝統品種のネッビオーロ種を使いますが、名前は、晩秋にネッビア(霧)が立ち込めるころにブドウを収穫することに由来するとの説があります。


ピエモンテ州の中部から南部、アルバを中心にするランゲ地方が、バローロの産地。

約1600ヘクタールの土地に、千近くもの生産者がいるそうです。

今回の訪問ワイナリーは、フォンタナフレッダ社。


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フォンタナフレッダは、小規模生産者の多いこのエリアで、全体の約7%に相当する110ヘクタールを所有。最大の所有面積を誇ります。

その半分以上でネッビオーロ種が栽培されており、全バローロの15%を造っているリーダー的存在です。


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イタリア全土統一(1861年)後の初代国王ヴィットリオ・エマヌエーレ二世の息子が相続した狩猟地を切り開き、ネッビオーロ種を植えたのがワイナリーの始まり。

クーネオ県のセッラルンガ・ダルバで、19世紀後半のことです。


設立から100年以上が経った1999年、新たな改革が始まります。

若き醸造家ダニーロ・ドロッコ氏を招き、2002年から新シリーズ「テニメンティ・フォンタナフレッダ」をリリース。

以来、伝統の重厚な造りに近代の技の新風を吹き込み、「モダン・トラディショナル」という地位を確立しつつあるといいます。

 

広報担当のピエール・マリオ・ジョヴァノーネさんが案内してくれました。


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深い緑に包まれた「思索の小径」を散歩しながら、

 

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同社を象徴する噴水の広場へ。

元王家の領地だけあって、敷地内には高貴な雰囲気が漂います。


 

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黒鳥さんもお出迎えしてくれました。

 

 

 

 

 

 

 

従業員宿舎も敷地内に完備。300人が暮らすそうです。ベランダに洗濯物が干されていたりして。もちろん、チャペルも。

 


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ネッビオーロ種が植えられた畑へ。水はけのよい石灰質の土壌です。

 

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醸造所を見学して、

 

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この地下道、王様が愛人のところに通うために造ったとか?

愛人たちには、タバコや塩を売る権利を与え、自立の道を開いたそうですが。

 

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カウンターを囲むモダンなテイスティングルーム。

 

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試飲したワインは次の通りです。

代表的なピエモンテの4品種です。


090604060.jpg1)2008 ガヴィ・デル・コムーネ・ディ・ガヴィ
2)2007 ドルチェット・ディアーノ・ダルバ ラ・レプレ
3)2005 バルベーラ・ダルバ・スペリオーレ  パパゲーナ
4)2005 バローロ セッラルンガ・ダルバ

 

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1)は、「ガヴィ村で造られたガヴィ」という名の生産地区限定の白ワイン。コルテーゼ種を使います。青リンゴやレモンのような、クリーンでフレッシュな香りが特徴。若干あとに苦味が残り、これがまたアクセントになって飲みやすかったです。

お刺身にも合いそう!

2)は、ドルチェット種です。

ドルチェットといっても、甘みが特徴ではありません。色は黒味の強いルビー色で、ミントのようなハーブの香りを感じました。柔らかな果実の甘さの味わいがありますが、タンニンもしっかり。

エレガントというよりぴちぴち元気な印象です。

夏場は13-14度で飲むのがいい、とアドバイスを受けました。

 

090604065.jpg3)は、バルベーラ種特有の強い酸味だけでなく、果実味、タンニン、アルコールのバランスが取れていました。

木樽の香りがかなり強く感じられました。

聞けば、熟成の木樽は、9割がフランス・アリエ産、1割がアメリカンオークを使用しているとか。

 

4)は、さすが限定地域の「バローロ」です。

バローロ地域の入り口、セッラルンガのブドウを使います。

より複雑な香りとブドウの凝縮感のある味わいです。

品種はネッビオーロ種。

タンニンもソフトで、エレガント。

濃厚な色合い、赤い果実やフレッシュなチェリーの味わい、カモミールの香り、バラのニュアンス、それにバルサミコやキャラメルの印象も。

 

 ピエモンテ州のワインは、コルテーゼとかネッビオーロとか、基本は単一品種で造ることが特徴なのですね。畑も細分化されていて、なんかフランス・ブルゴーニュに似ていますね。

ちなみに、バローロを選ぶなら、1996-2001年、2004年ヴィンテージがグレートだそうです。

1996年、1999年、2001年、2004年が特にグレート!

それだけ、価格も高いわけですけれど。

 

さあ、日も暮れてきましたので、ディナーへ。

フォンタナフレッダの敷地内にあるグリルで、招待ディナーです。

パルマで生ハムランチを楽しみ過ぎたあとなので、おなかの余裕に自信がありません。

 

素敵なバーカウンター。本日のおすすめなどが記されています。

 

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とりあえず、泡から。

 

090604067.jpg2005 コンテッサ・ローザ アルタランガ スプマンテ・ブリュット

「コンテッサ・ローザ」とは、ヴィットリオ・エマヌエーレ二世夫人でワイナリー創設者の母でもある、ローザ伯爵夫人のこと。夫妻が住んでいた館は、現在も「ローザの館」と呼ばれ、世界中から訪れるVIP顧客をもてなすゲストハウスとして使われています。


 シャンパーニュと同じく、瓶内2次発酵で仕込まれたスパークリングです。
泡はきめ細かく、トーストしたナッツの深い香りが・・・。

泡好きな私の胃は実に心地よく刺激され、なんか食欲が出てきました!

 

 

 

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2008 ロエロ・アルネイス プラダルポ

ロエロの地域は、アルバの北側を流れるタナロ川の北。ちょうど川をはさんで、バローロ生産地域の反対側に位置します。

 

赤はネッビオーロ種、白はアルネイス種です。

 

アルネイス種の来歴ははっきりしていません。

19世紀から20世紀に知られるようになり、一時は忘れられていた品種だったようですが、トリノ大学の研究が農家の実践に生かされ、1960年に復活したようです。

淡い麦わら色、トロピカルフルーツやハチミツの味わい。

スカンピのシンプルなグリルに合いますね。

 

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2006 ネッビオーロ・ダルバ マルネ ブルーネ 

大樽のピエモンテ・スタイルでなく、小樽での熟成後に瓶内熟成させるモダンスタイルのネッビオーロです。
手軽に、この偉大なるブドウを味わうのにはよいのではないでしょうか。

フルーティーでタンニンも豊かですが、軽やかで若飲みできるタイプです。

カジュアルに、サーディンのグリルやマグロのたたきといただきました。

 


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090604073.jpgお肉とたっぷり野菜のグリルに合わせたのは、

待っていました!

2004 バローロ・ヴィーニャ ラ・ ローザ


先にご紹介した、伯爵夫人の名前が付いたバローロ。

3つのクリュ(畑)の中では、もっとも女性的なやわらかさやエレガンスさをもったバローロといわれています。

 

こなれたタンニン、しっかりした骨格。豊かな果実味とともに、カカオやミントの香りも。深い味わいの高貴なバローロでした!

売店で、即買いの1本でした。

 

090604076.jpg「食べられるかなあ」などと心配したのは、まったくの杞憂でして。

 

デザートまで、しっかりいただきました!

 

かくして、グルメの里での夜も更けゆきます。

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2009.07.29

イタリア縦断の旅から~その5

イタリア滞在5日目。


午前6時。早起きの私の朝は、トスカーナのブドウ畑のお散歩から始まります。
トスカーナらしい糸杉の植え込みを見ながら、足取りも軽やか、です。


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ホテルの前に広がるサン・フェリーチェの自社畑には、遊歩道が整備されていました。空を見上げれば、ブドウの若々しい緑の葉が朝日に照らされ、輝いています。

 


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090604004.jpg「ボンジョルノ!」 ワイナリーで働く人たちの朝も早いんですね。


 

 

 

 

 

090604005.jpgプールサイドでのヘルシーな朝食をすませて、

 

 

 

 

 

 

 

トスカーナ州の北、エミリア・ロマーニャ州のパルマに出発です。

約220キロの旅です。


車窓から、赤い小花が咲き乱れるお花畑が見えました。

 

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090604007.jpgエミリア・ロマーニャ州といえば、ヨーロッパ最古の大学として知られるボローニャ大学が有名。

そして、北部エミリア地方には、生ハムやパルメザンチーズなどの産地として名高いグルメの里、パルマがあります。

 

19世紀初め、当時のパルマの支配者だったナポレオンの二番目の妻、マリア・ルイージアは、芸術文化だけでなく、生ハムなどの地元農産物を世界に伝え、今日のグルメの里の基礎をつくりました。


ただ、エミリア地方はポー川流域の肥沃な平地だったため、高品質なワイン造りには向かないようです。

カジュアルに飲める発泡性赤ワイン、ランブルスコが知られていますよね。
 

 

パルマ市内から数十分。ランギラーノ地区へ。

パルマには200社以上の生ハム工場があるそうですが、ランギラーノ地区は「これぞ真のパルマの生ハム」といわれるほど上質のものを生産しているのだとか。

 

午後1時を過ぎていたので、まずは、ランギラーノの街が運営している生ハム博物館で、ランチをいただきました。ハムとサラミづくしの招待ランチです。


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とりあえず、切り落としの腸詰サラミとホウレンソウ入りのプチパン。

自然酵母でつくったパンのシンプルな味がおいしい!

 

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「箸やすめ」に、野菜のピクルス、小タマネギやキノコのマリネ。

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生ハムを、その場で切ってくれます。

これがフレッシュで・・・。

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14か月熟成、36か月熟成の生ハム、コッパ、そして究極の生ハムといわれる「クラテッロ」という豚のお尻の部分、サラメ・ディ・フィアーノなどなど。

 

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発泡性の「マルヴァジア・コッリ・ディ・パルマ」を合わせます。

パルマ産のDOC。

ハムづくしで口の中に残る脂肪分をぬぐい取り、料理をより食べやすくする効果があります。

マルヴァジア種は、ギリシャからイタリアに伝えられた品種。緑色がかった麦わら色の軽くてフレッシュな味わいで、泡好きな私は、これでずっと食事が続けられることが、もううれしくって・・・。

 

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パルマ産生ハムはイタリアの生産量の6割を占めています。

その歴史はローマの時代までさかのぼり、パルマ地方に伝わる伝統的な技法で作られ、芳香な風味とまろやかな味が特徴。

 

伝統的技法というのは、天然塩だけで味付けされ、スモークをかけず、12か月以上をかけて、塩漬、乾燥、熟成が行われます。

特に、乾燥・熟成は300日から600日と長期間に及び、余分な水分と脂身が抜けてまろやかなとろけるような風味が生まれる、というわけです。

 

そういえば、「クラテッロ」は、漫画「美味しんぼ」にも出てきたような・・・。

作曲家ベルディの出身地、ズィベッロにあるクラテッロ協会の会長がやっている店に、次回は行ってみたいなあ。

この小さな街には、ジュゼッペ・ベルディ劇場があって、新人歌手の登竜門として知られるコンクールもあるそうですから、オペラ好きも要チェックなんですね。

ベルディもたくさんおいしい生ハムを食べて、音楽のインスピレーションを得ていたのでしょうか。

熟成が進むほど香りは芳醇で、アミノ酸の旨味も加わって、ほんと美味でした。


 

090604024.jpgサラーメ、つまりサラミについてですが、イタリアはいまや100メートルごとに異なるサラーメが作られているいわれています。

 

細挽き、中挽き、粗挽き等の肉の挽き方、塩・ニンニク・トウガラシ・フェンネルシード・ワイン等味付けの違いによって、個性あるサラーメができるそうです。

北イタリアでは豚肉を細かく挽き、穏やかな味付けをするのに対して、南に行くと肉は粗挽き、トウガラシなどでよりスパイシーに仕上げる傾向があるとか。

 

リキュールのような赤のスプマンテは、エミリア地方の主力ワイン、ランブルスコ。「レ・テヌーテ アソーロ レッジャーノ」。

 

26か月熟成のチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノとの相性が抜群です。

 

チーズは、ジャムやハチミツと合わせてもおいしいですね。
赤タマネギにバルサミコ酢とレモン汁、サトウキビなどを加えたジャム、オレンジとリンゴのブレンドジャムです。 


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地元のスイーツをいただきました。
パルミジャーノを使ったものと、柑橘系のリキュールをたっぷり浸み込ませた生地に、チョコレートとフランボワーズジャムをサンドイッチにしたもの。

微発泡の「マスカート・ドルチェ」は、干草の香りが加わって、とってもさわやか。 

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あまりにおいしかったので、リキュールたっぷりのスイーツを、おみやげに買いました。

プランタン銀座の広報スタッフは、お酒大好きな女性が多いので、大好評でした。

 

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090604030.jpg最後の締めに、アルコール度数37%のリキュール「バルニョリーナ」を。

赤い果実の爽快な酸味を感じました。

 

パルマの生ハム、やはり現地で食べると、こんなに脂肪分がとろけるようにマイルド、自然なやさしい甘みに包まれるというのは発見でした。

地元スプマンテをお供に、本当に堪能しました。

 

イタリア旅行に出掛ける食いしん坊さんには、パルマははずせない場所、おすすめです!!

 

 

 

Ghirardi Onesto(ギラルディ・オネスト)社の工場見学へ。

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工場を入ったところに、生ハム・ローズの壁紙が目に付きました。 

 

 

 

 

 

  

 

熟成期間別に、いろんな熟成庫をのぞきました。

 


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最高品質のイタリア産豚肉だけを使用し、防腐剤・保存料などの添加物を一切使わず、海塩だけを使用。長い熟成プロセスを経て丁寧に作り上げる職人技に感嘆!

 

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午後4時、バローロの故郷、ピエモンテ州に出発です。

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2009.07.27

1990 ブルネッロづくし

知人が毎月主催しているワイン会の今回のテーマは、1990年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノの飲み比べ。
最近すっかりイタリアにはまっている私は、メールでお知らせが入るやいなや、即申し込みました!

場所は、神田のワイ・ヴィラージュ。

 

イタリア旅日記の連載もちょうどトスカーナを後にしたばかりなので、ここで閑話休題。

味わいの記憶が残っているうちに、この素晴らしい出会いをご紹介しておきます。

 

ワインリストは、次の通りです。

 

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1)NV アグリパール ブラン・ド・ブラン レ・セット・クリュ
2)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(テヌータ・フリジアリ)
3)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(バンフィ)
4)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アジィエンダ・アグリコーラ・ラ・トーレ)
5)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ レニーナ(ピエーヴェ・ディ・サンタ・レスティテュータ )
6)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(アルジャーノ)
7)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(シロ・パチェンティ)
8)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ウゴライア(リジーニ)
9)1990ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ ヴィーニャ・ディ・ピアンロッソ (チャッチ・ピッコロミーニ・ダラゴーナ)

 

スイマセン、後から気づいたのですが、9)のブルネッロを並べるのを忘れていました。

この中で、一番高価なのにぃ・・・。

 

ところで、この人気イタリアDOCGワインについて簡単なおさらいをしておきましょう。

 

ワイン好きなら、一度は聞いたことのある名前、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。


濃いルビー色で、熟成するとともにガーネット色に変化していきます。

プラムやアーモンドの個性のある香り、凝縮した果実味、アルコール分は高く(12.5%以上)、タンニンもしっかりしているので、力強いけれども独特の柔らかさの印象が残る赤ワイン。

 

赤身肉やジビエ料理に合うといわれ、私も大好きなイタリアワインの一つです。

 

本日のお料理は、こんな感じでした。

 

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ホタテのスモークのサラダ仕立て・レモン風味、

フォアグラとトリッパのソテー・バルサミコソース、

豚白モツと野菜の煮込み風ペンネ、

牛ハラミのロースト・キノコの赤ワインソース。


内臓好きなので、特に、モツの食感とペンネの歯ごたえ、さっぱりした味わいが気に入りました。

 

ブルネッロの歴史は比較的新しく、今から140年ほど前、新しいブドウ品種の誕生に始まるといいます。


モンタルチーノは、トスカーナ州シエナの南東50キロ、標高500メートルほどの丘陵にある小さな街。

14世紀には、シエナ共和国の要塞として栄えました。

古くから岩がちな土地で、石灰分が多い粘土質の石灰質土壌です。

 

そんな街で、地元に農場をもつクレメンティ・サンティという男が中心になって、キャンティなどに使われていたこの土地原産のサンジョヴェーゼ種の分枝系(クローン)から、サンジョヴェーゼ・グロッソ種(ブルネッロ)を生み出したのです。


石灰質土壌に強く、また、従来のサンジョヴェーゼよりも色が濃く力強い味わいでした。19世紀の中ごろ、140年も前のことです。

 

そして、この新しい品種でワイン造りを手がけたのが、クレメンティの孫にあたる、カテリーナ・サンティとフェルッチョ・ビオンディ・サンティ。

フェルッチョは、ジュゼッペ・ガリバルディ率いるイタリア統一運動に参加、仕事を終えてトスカーナに戻ったとき、ウドンコ病にやられて荒れ果てたブドウ畑に唖然とします。
「愛するトスカーナのために、ブドウ畑を取り戻そう」と心に決め、祖父が開発した品種を徹底研究したそうです。

 

とはいえ、最初からビジネスがうまくいったわけではないようです。

開発から数十年、ブルネッロで造られるワインはパリの博覧会などでも好評で、徐々に人気者になりました。
特に米英で人気を博し、1970年ごろからは投資もスタート。

1980年にイタリアで初のDOCGに認定され、生産量が飛躍的に増えて、90年代にはバローロの生産量を超えるほどに。

 

モンタルチーノ周辺に広がる約千ヘクタールのワイナリーの中で、百か所以上で造っているそうですが、ワイナリーごとに熟成のヴァリエーションが異なり、それもまた魅力の一つなんです!

 

・・・と、長くなりましたが、
改めて、今回の飲み比べの感想を少しばかり。


イタリアワインに詳しい方々も参加していた会でしたが、10人の参加者の中での一番人気は9)でした。

ぴちぴちと若々しいのに、ちょっとローヌのようなワイルド感もあり、セクシーでエレガント。

文句なくおいしい!! なんか、格が違うって印象です。


モンタルチーノの偉大な造り手、カーゼ・バッセで修行したロベルト・チプレッソ氏が醸造責任者を務めるようになって、設備も一新、次々とヒットを生み出しているようです。

と語ってばかりですが、スイマセン、このエチケットも撮影し忘れました。

 

私がほかに気に入ったのは、5)と7)です。

 

09070806.jpg5)は、言わずと知れたガヤが作るブルネッロ。

 

紀元前8世紀から続く伝統ある畑だそうで、とっても厚みのある印象。

ガヤの丁寧な醸造管理が力強さを造り出している、という感じ。

ブルーの手描き風イラストのエチケットも素敵です。

 

もしも出会いがあったら、即買いたい!

 

 

 

09070808.jpg7)のシロ・パチェンティは、もとはモンタルチーノのブドウ栽培農家で、ワイナリー元詰めを始めたのは1988年からだそうです。

 

ボルドー大学で学んだジャンカルロ・パチェンティ氏が最新式のステンレスタンクなどを導入、新しい試みに挑み、いまや「モダンブルネッロの最高峰の一つ」などといわれています。

 

モンタルチーノの北と南の異なる2つの畑のブドウをブレンドしています。
ロバート・パーカー氏は1990年ヴィンテージを92点と評価して以来、今までずっと90点以上の高ポイントを付けてきたとか。

難を言えば、ちょっとまとまり過ぎ、ですか。

私は、はねたブルネッロが好きなので。

 

09070807.jpgもう一つ気になっていた6)のアルジャーノは、スーパー・トスカンの「ソレンゴ」で知られるワイナリー。

 

500年以上も続く伝統の造り手です。

サシカイア、ソライア、ティニャネロなどのハイパー・タスカンを手掛けたジャコモ・タキス氏もコンサルタントとして参加しているとか。

 

酸はまろやか、タンニンも滑らかで、樽熟成のバニラ香も豊かで、おしゃれな造り方の印象です。

でも、ちょっとおとなし過ぎ?

 


いずれにしても、

8本のブルネッロにハズレがまったくなく、マーヴェラス!!! でした。

 

1990年ヴィンテージのポテンシャルの高さを感じさせる会でした。

 

それにしても、この会を主催するFさんの段取りのよさと人集め、声かけの上手さ、

ワイン調達担当のIさんの的確なセレクト眼に、今回も脱帽! です。

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2009.07.24

イタリア縦断の旅から~その4

イタリアのワイン産地の中でも世界的に最も知られているトスカーナへ。

中世の文化都市シエナの郊外にあるサンフェリーチェ社を目指します。


トスカーナ州は、さらに北のピエモンテ州と並ぶ、DOCG、DOCワインの宝庫。

トスカーナからウンブリアにかけての一帯は、紀元前8世紀にはエトルリア人がワイン造りをしていたという伝統ある地域でもあります。


思えば、30代の初め、休暇でシエナに住む友人を訪ね、その友人の紹介でキャンティを訪問したのが、私にとって初のワイナリー体験だったのでした。

とはいえ、「おいしい! おいしい!」と、何杯もグラスを傾けたことしか覚えていないのですけれど。


さて、トルジャーノからシエナに向かう途中、ヴァルディキアーナという高速道路の出口近くのアウトレットモールでお昼休憩。

 


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ランチには、バールで、チェリートマトがいっぱい載ったフォカッチャと冷たいビール。

 


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高級ブランドというより、イタリアのお手ごろブランドの衣服から、下着、コスメ、台所雑貨など70店舗近くが大集合のアウトレットでした。


リゾート仕様のオーガンディーのチュニックを見つけたので、70%オフにひかれて衝動買い!
今回の旅では。ワイン関連以外は買わないつもりだったのですが・・。早くも決心が緩みます。

 

シエナに向かう道はまっすぐです。

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ゆったりとなだらかに続く緑の丘陵の風景を楽しみつつ、この景色は中世のころからそれほど変わっていないのかもしれないな、と悠久の時の流れを思いました。

 

09060329a.jpg糸杉の道をしばらく走ると、サンフェリーチェ社が経営するシャトーホテル「ボルゴ・サンフェリーチェ」に到着。

 

サンフェリーチェは、714年から続くという古い畑でしたが、1978年、イタリア最大の保険会社RASの手に渡り、その豊富な資金力により、事業を拡大しています。


モンタルチーノのカンポジョバンニ農園の買収、マレンマ地方のペロッラ農園の買収、豪華な宿泊施設の経営など、ビジネスは成功しているようです。

現在210ヘクタールを所有、ワインやオリーブオイルのほか、トスカーナ地方特産のキアーナ牛の飼育もしているのだとか。 

 

 

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まずは、広いホテルの敷地内をツアー。

ボガオさんが案内してくださいました。

 

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醸造所を見学して、

 

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いよいよテイスティング。
オリーブオイルをたっぷりかけたパンをお供にします。

 

 

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ワインリストは、以下のとおり。

1)2008 ヴェルメンティーノ (マレンマ・トスカーナIGT)

2)2007 ペローラ (マレンマ・トスカーナIGT)

3)2006 DOCGキャンティ・クラシコ

4)2005 イル・グリッジョ (DOCGキャンティ・クラシコ・リゼルヴァ)

5)2006 プニテッロ

6)2004 ヴィゴレッロ

7)2004 カンボジョヴァンニ(DOCGブルネロ・ディ・モンタルチーノ)

 

 

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ヴェルメンティーノは、スペインからコルシカ島を経て、イタリアに伝わったといわれる品種。

トスカーナ州の北、リグーリア州サンレモあたりに植えられたようです。海の近くの風通しのいい乾いた丘陵地が好みのよう。

麦わら色で緑がかった色調。フレッシュでフルーティーで、わずかに苦味が残るのがアクセントに。

ソーヴィニヨンブランが15%ほどブレンドされているそうです。 

 

 

 

 

09060339.jpgこちらは、同じトスカーナのマレンマ地方で造られた赤ワイン。

地元のサンジョヴェーゼに、シラー、メルローを3分の1ずつブレンドしています。

 

シラーのコクのある甘みが加わって、果実の味わいが増しているように思いました。

 

 

 

 

 

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おなじみのキャンティ・クラシコ。

キャンティの歴史は古く、14世紀ごろに始まります。

プラートの街に始まり、フィレンツェの貴族、リカゾリ家によって広められ、さらに、アンティノリ、フレスコバルディ、フリーノ、チェッキなどの貴族が加わります。

 

ベッティーノ・リカゾリ男爵は、この土地に住み、香りのよいサンジョヴェーゼ種、甘みを増すカナイオーロ種、味わいにコクをもあらすマルヴァジア種やトレッビアーノ種を研究、食事に合うブレンドを考案した、というわけです。

これが今日のキャンティの基礎になりました。

その後、リカゾリ男爵は1848年に政界入りし、イタリアの首相になったそうです。

 

キャンティを算出する地域は石灰質土壌や砂利土壌で、ワイン造りに適した気候です。

生産量年間1億3千万本ほどで、DOCG、DOCワインの中でもっとも生産量が多いのです。

生産量の7割が輸出に回されています。

古くからキャンティを造っていた中心地は「クラシコ」と呼ばれて、全体の3割ほど。 

サンジョヴェーゼが主体です。

 

このワインは、酸がきわだち、とっても若々しい感じ。

それにしても、サンジョヴェーゼ=スミレの香り、とよく言われているようですが、

うーん、スミレの香りって思い出せないんですけれど。

   

09060341.jpgこちらは、「キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ」。

よりエレガントで、タンニンもこなれ、まろやかに仕上がっています。

最初のビンテージが生まれたのは1974年。

上品な芳醇さをアピールするため、エチケットには、ルネッサンスの画家ティチアーノの描いたLorを採用。

ちなみに、絵のモデルは、ティチア-ノ本人の父君らしいです。

この君主の髪と髭の色がグレーだったことから、「イル・グリッジョ」、つまり灰色の髭と名付けられました。

 

映画「ハンニバル」では、フィレンツェのカフェのシーンで登場、狂気のレクター博士がこのワインを飲んでいるんですって。

 

ところで、「キャンティ・クラシコ」のシンボルマークといえば、ガッロ・ネーロ(黒いオンドリ)。その由来にはこんな言い伝えがあるそうです。

中世の時代、シエナとフィレンツェが領土争いを繰り返していたころのお話です。

両都市の騎士が、日の出を告げる雄鶏の鳴き声とともに互いの国を騎馬で出発し、出会ったところを国境にしようという取り決めをしました。シエナ側は、美しい白いオンドリに美味しい餌をたくさん食べさせ、一方、フィレンツェ側は、小さな黒いオンドリを選んで、餌を与えずお腹を空かせたまま夜を過ごさせました。

その結果、黒いオンドリは空腹のために日が昇る随分と前に時を告げ出し、フィレンツェの騎士の出発はかなり早まったのです。こうして、フィレンツェは、キャンティのほとんどを手に入れ、領土を広げることに成功したといいます。

ちなみに、黒いオンドリは、1924年に発足したキャンティ・クラシコ協会の商標でもあります。

 

以上は、トスカーナの伝統的かつ代表的な品種のワインでした。

 

ところが、この「プニテッロ」は、ちょっと変わっています。09060342.jpg 

 

1981年から、サン・フェリーチェ社がフィレンツェ大学と独自のサンジョヴェーゼ種の共同研究を20年間続た結果、229種類の中から最後に選別したものなのだそうです。

 

長期熟成の品種で、DNA鑑定の結果、今までのものとは異なるまったく独自のブドウであることがわかり、2003年、トスカーナ州の土着品種として認められました。

「プニテッロ」とは、ポニーテールの意味。ブドウの房がこぶし状になっているところから。

濃いルビー色でダークチェリーの香り、タンニンもしっかり、力強いワインでした。
 

 

09060343.jpg 「ヴィゴレッロ」は、トスカーナで最近人気者のスーパー・トスカンの一つです。

 

スーパー・トスカンは、1968年、ピエロ・アンティノリ氏によって提案された「サッシカイア」が草分け的な存在です。

ティレニア海に面したトスカーナ州マレアンマ地方のボルゲリ地区。 現当主ニコロ・インチザ・デ・ロレッタ侯爵の父で大のボルドーファンだったマリオ氏が1944年、ボルゲリの小石の多い畑にカベルネソーヴィニヨンを植えていました。


ピエロ・アンティノリ氏は、ニコロ氏のいとこ。

伝統的で保守的なトスカーナで、カベルネソーヴィニヨンを使った、世界に通じる新しい味わいのワイン造りに挑戦を試みたのです。

1994年に、「ボルゲリ・サッシカイア」という単独DOCを取得。トスカーナ州のワイン造りを大きく変えていきました。

 

さて、この「ヴィゴレッロ」も、「サッシカイア」と同じころから研究されてきたワイン。

2004年ヴィンテージは、サンジョヴェーゼ種45%、カべルネソーヴィニヨン40%、メルロ15%のブレンドだと伺いました。

「ヴィゴレッロ」という名前は、生命力を意味するVIGOREから。

うーん、名前負けしていません!

タンニンしっかりで力強く、のみ応えを感じるワインでした。

こういうワインを飲むと、活力がわきますねえ。

 

09060344.jpg 最後を締めくくるのは、大人気の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」です。

まだまだ濃いルビー色、プラムの香り、力強いけれど、後口がとっても柔らかくって。

 

 

 

 

  

 

 

 

私は、「ヴィゴレッロ」が気に入りました。

売店でさっそく評判のよい2001年を2本購入、ブルネッロの1999年ヴィンテージも購入。

あと10年くらい寝かせたいです。

 

さて、夕食までの時間、広い施設を探検です。

 

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ゼラニウムの赤い花があちらこちらに植えられています。

 

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犬を散歩する人も楽しそう!

テラコッタのそばでたたずむネコちゃんも、しっとりした風景になじんでいました。

 

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教会もあります。

 

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ちょっとベンチで一休み・・・

 

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ブドウを使ったヴィノテラピーの美容スパの施設などを通り過ぎ、奥の方には、ハーブ園もありました。ラベンダーやミントなどなど。

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明るい陽光に誘われて、プールも大にぎわい。

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いったん部屋に戻りました。

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部屋には、うれしいワインのサービスもありました。

 

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そうこうしているうちに、ディナーの時間。

先ほどのプールサイドのレストランで。

 

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09060359.jpg マリネしたサーモンにハーブのレモン風味添え、タリオリーニというちょっと太麺のパスタはセージが練りこまれていて、白インゲンのコクのあるソースでいただきました。

地元産牛肉のサーロインステーキは、ナスのピューレでさわやかな味わいに。

パンがとっても美味でした。

 

 

 ワインは、先ほどテイスティングしたものの中から、

2008 ヴェルメンティーノ

2005 キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ

2004 ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

 

 

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デザートは、昨晩と同じく、冷たいセミフレッド。

イタリアの夏のスイーツなのですね。

モスカートワインとパッションフルーツの風味です。

デザートワインは、

2003 ヴィンサント・キャンティ・クラシコ DOC

 

ヴィンサントは、厳選されたブドウを数か月間陰干しし、干しブドウのようになった果実をゆっくり圧搾、小樽による醗酵のあと、5-6年の熟成を経て出荷される、とっても手間のかかったワインです。

トスカーナでは、カントチーニという、アーモンドが入った硬い焼き菓子ビスコッティーとよく合わせるみたいです。

 

このヴィンサントは、ちょっとローズがかったガーネット色。焼きリンゴや焦げたキャラメルの香り。

シェリーのアモンティリャードのような、余韻が残りました。

 

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教会の屋根の十字架のあたりに、月が上っていました。

静かな、静かな、満月の夜でした。

 

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2009.07.22

イタリア縦断の旅から~その3

滞在4日目の朝!
快晴です!!

 

私の宿泊した家族向けのファームハウスは、まさにルンガロッティのブドウ畑のど真ん中。

朝のやさしい光に誘われて、窓を開ければ、すくすくと元気に育つブトウ畑の緑が広がります。


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09060302.jpg部屋は4部屋。私の部屋は奥の左手。

各部屋の扉には、このあたりで古くから育てられているかわいらしいリンゴの絵が描かれていました。
   

09060303.jpg 窓からは、ブドウ畑が・・・。

 

 

 

 

 

 

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長期滞在が基本ですから、キッチンも食器類も充実です。


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広い芝生の庭には、パラソルと白いリクライニングチェア、プール・・・。

テラス席の青いタイルのテーブルが素敵だったので、昨晩飲んだ「ルビスコ・リゼルヴァ」を置いてみました。


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なんか映画の世界みたいです!

ブドウ畑を眺めながら、ひがな1日ワイングラスを傾けていたい気分!!

 

早起きの私は、朝の散歩も楽しみました。

リンゴの古い産地と聞きましたが、真っ赤に熟したチェリーも発見!

 

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朝食は、メインビルディングの小ぢんまりとした部屋で。手作りのパンと甘さ控えめのリンゴジャムがおいしかったです。

 

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09060312.jpg朝食のあと、ルンガロッテイ社の広報さんが醸造所を案内してくれました。

 

日本からのおみやげの金平糖に大喜び!です。


 

 

 

 

醸造所はこんな感じ。

 

 

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同社は、イタリア農務省からの委託で、ワイン造りの過程で生まれる残留物からエネルギーを再生するバイオマス・プロジェクトを、ペルージャ大学と共同研究しているそうです。

将来的には、醸造所で使用するエネルギーの70%をまかないたいのだとか。

 

ティスティングルームも素敵です。

昨日ワイン博物館で見た逸品のヴィジュアルが、右の壁ぎわに・・・。

 

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ワインリストは、以下のとおりです。

 

09060316.jpg2008 ブレッツァ

2008 フィアンメ
2003 ルベスコ・レゼルヴァ

2003 サン・ジョルジオ

 

09060317.jpg「ブレッツァ」は、ヤングラインと呼ばれ、「あらゆる人々に、特に若者たちに捧げる若々しいワイン」がキャッチフレーズ。グレケットが主要品種のウンブリアIGTの白ワイン。


フレッシュで、リンゴのようなさわやかな果実の香りと甘みを感じます。少々発泡が残っていました。

真夏、ぎんぎんに冷やして飲みたいです。

 

ちなみに、IGTワインとは、イタリアのワインの法律で、原産地表示ができるDOCG、DOCといったカテゴリーに分類されないけれども各地方の特色をもったワインのこと。

 

 

  

09060318.jpg「フィアンメ」は、サンジョヴェーゼとメルロのブレンド。

ダークチェリーの果実味にスパイシーさが加わります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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DOCGの「ルベスコ・リゼルヴァ」。

サンジョヴェーゼ種70%、カナイオーロ種30%。

標高300メートル、12ヘクタールの単一畑モンティッキオのブドウをセレクトして使います。年間生産約5万本。

1年の木樽熟成のあと、4年間瓶内熟成。

 

美しいルビー色、エレガントな果実味にうっとりです。

それでも、昨晩いただいた2001年と比べると、まだまだ若い!

 

 

 

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「サン・ジョルジオ」は、ウンブリアIGTの赤。

5ヘクタールという限定畑のカベルネソ-ヴィニヨンに、サンジョベーゼ(40%)とカナイオーロ(10%)をブレンド。

「ルベスコ・リゼルヴァ」と同様、1年の木樽熟成、4年の瓶内熟成です。

ルンガロッティ社は、日本を含む44か国に輸出しているそうですが、ボルドータイプに造ったこのワインは、インターナショナルを意識したもの、と説明していました。

 

凝縮感があり、とってもパワフル。

タンニンもしっかりしていて、長熟による変化が楽しめそう。

ただし、私の好みは、サンジョヴェーゼのよさが出ている「ルベスコ・リゼルヴァ」かなあ。 

 

  

09060321.jpgワイナリーの売店で、お気に入りのルベスコ・リゼルヴァとスプマンテ、

それから、昨日のディナーで、リゾットの上にかけてあったバルサミコがおいしかったので、即購入。

 

さらに、瓶の形も気に入ったので、特産のウォルナットのリキュールもゲット!
荷物ばかり増えてしまいますね。

 

 

最後に、もう一人のオーナー、テレーザ・セヴェリーニさんが、ご挨拶に駆けつけてくださいました!
とってもエレガントな方です。

 

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テレーザさんは、ジョルジオ氏の妻マリアさんの最初の夫との娘。ペルージャ大学で醸造学の学位を取り、さらに、ボルドー大学の醸造学研究所で専門を究めました。

イタリアでは、女性のワインメーカー先駆者の一人として、とっても有名。

キアラさんと同じく、醸造関係の様々な組織の重職にあります。

1992年からマネジメントに携わり、また、国内外の広報やマーケティングも担当しているそうです。

「ブレッツア」など、いくつかのルンガロッティ・ブランド開発も先導してきました。

 

 

さて、これから車で約2時間半、トスカーナ州に向かいます。

 

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2009.07.17

イタリア縦断の旅から~その2

 ここ10日間ほどなんやかやとあわただしく日々が過ぎて、更新が遅れておりました。

「旅日記2回目はいつですか?」とのお声もちらほらと・・・。


気合いを入れ直して続けますので、どうかお付き合いください!!!

 

さて、6月2日。

イタリア滞在3日目から。

朝9時にナポリのホテルを出発、スーパーストラーダで約370キロ北の内陸ウンブリア州・トルジャーノを目指します。正味約4時間半の旅。ローマ周辺を廻って北へ、といったイメージです。


 

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イタリアの高速道路はアウトストラーダと呼ばれており、日本のETCに似たテレパスという無線式料金収受システムが整備。

アウトストラーダに続く高規格道路がスーパーストラーダですが、こちらは無料。

今回走ったのは快適な高速道路でしたが、場所によっては、牛の群れが出没するような田舎道だったりすることもあるそうです。


ところが・・・

 

1時間ほど走ったところで大雨というかゲリラ豪雨に降られ、なんとバスのワイパーが壊れてしまったんです。
あらら、いきなりのアクシデント!


サービスエリアに避難です。

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雨合羽を着て運転手さん1人奮闘して大変でしたが、私はといえば、どうすることもできず、おいしそうなサラミやらチーズやらを物色して時間を過ごしました。


それでも、思いのほか早く代替車が到着。

 

さあ、気持ちを入れ替えて、出発です!

 


09060203.jpgイタリア半島のちょうど真ん中に位置するウンブリア州は、イタリアで唯一海に面していない州。

北東にアペニン山脈が走り、その西側に緑の丘陵地帯が広がり、「イタリアの緑の心臓」とも呼ばれています。


州都ペルージャは、ローマからもフィレンツエからも、車で2時間ほど。

ペルージャををはじめ、アッシジ、オルヴィエート、スポレート、モンテファルコなど、エトルリア、古代ローマ、中世に栄えた都市国家の面影が数多く残されています。
 

 

私たちが目指すのは、ペルージャから南西に20キロほど下ったトルジャーノ。

テヴェレ川とウンブリア渓谷の間にある小高い丘陵地帯。車窓からの景色も変わってきました。

 

09060204.jpg紀元前のエトルリア時代からの要塞の街で、見張りの塔が今も残されています。


09060205.jpgちなみに、トルジャーノの地名の由来は、見張りの塔のトーレ・ディ・ジャーノから。

 

ジャーノとは、ギリシャ神話のヤヌスの神のことで、前後にある2つの顔で過去と未来を見つめることができる双頭の神様です。

そう、新年の1月、ジャニュアリーの語源としても知られていますね。

 

敵の侵入をどちらの方向からも見張ってくれるジャーノ神は、この街の守り神だったのでしょう。

 


今回の訪問ワイナリーは、ルンガロッティ社です。


トルジャーノのワイン造りはローマ時代から始まり、中世にはベネディクト派修道院によって保護されたという古い歴史があります。

 

でも、現在この地のワインが高い評価を受けるようになったのは、1960年代の初め、地元の地主、ジョルジオ・ルンガロッティ氏の村おこしによるところが大といえましょう。


彼は、世界中のワイン銘醸地をまわり、研究し、ワイン造りに投資を惜しまなかったといいます。

そして、当時は大量消費用で特徴もなく水のようだったこの地方のワインの改革を行ったのです。

現在は、2人の娘、キアラさんとテレーザさんに受け継がれ、先駆的な女性オーナーのファミリービジネス成功例としても注目されています。


ファミリーは文化活動にも熱心で、世界的にも有名な「ワイン博物館」の設立、また、五つ星ホテルやアグリツーリズモのファームハウスの経営などにも携わっています。


 

ファームハウスに到着したのは、午後5時半を回っていました。

ローズマリーの香りが漂います。


09060206.jpgオリーブに囲まれた自社畑は約250ヘクタール。

畑を見渡せるファームハウスは、17世紀の建物を解体し、木材をしっかり乾燥させてから再建したというこだわりよう。ファミリーの伝統への敬意と革新への情熱が、伝わってきます。

 

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荷解きもそこそこに、さっそく「ワイン博物館」の見学へ。


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1974年、先代のジョルジオ氏(1999年、89歳で逝去)が地域振興の思いを込めて設立したものです。 

この建物にもこだわりがあり、17世紀の貴族、ガラツィアーニ・バリオーニ家が夏の避暑用別荘として用いていたものとか。

 

そして、ジョルジオ氏の妻、マリアさんの存在も忘れられません。

美術史とアーカイヴについて学んだ彼女は、博物館づくりでも大きな役割を果たし、博物館を運営する基金設立では中心になって活躍したのです。

 

そう、ルンガロッティ社は、才能ある女性たちによってしっかり継承されている・・・のでした。

 


博物館の中は、ワインにまつわるコレクションがいっぱい。考古学的にも芸術的にも様々な観点から楽しめる21もの部屋がありました。

エッチングやデザイン画、また、ワインやブドウ栽培をテーマにした書物や資料が数多く収集されていて、時間が許せば、1日でも過ごしたいなって思いました。


撮影自由という寛容な施設だったので、気になるものをいくつかパチリ。

 


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09060224.jpgこの日のディナーは、

博物館のすぐ近くにあるルンガロッティ社経営の五つ星ホテル「ル・トレ・ヴァセーレ」のレストラン「ル・メラグラーネ」で。

 

 


まずは、ウェイテイングバーで、

冷たいスプマンテ「ルンガロッティ ブリュット」をいただきました。


 

 

 

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置物も気になりましたが、さらに、バーカウンターにあったスプマンテのお供(?)に、サクランボと一緒に丸い揚げせんべいがあったのが、とっても気になりました!

 

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そして、ダイニングに移動。


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09060231.jpgオリジナルの皿には、ホテルのブランドマークが・・・。


 

 

 

 

 

ワインリストは、以下の通り。ルンガロッティ社の代表的なワインです。
 2008 トッレ・ディ・ジャーノ
 2006 ルベスコ
 2005 ダルキス


 

トルジャーノDOCの白と赤をいただきました。

 

「トッレ・ディ・ジャーノ」は、トレッビアーノ・トスカーノ(70%)とグレケット(30%)をブレンドしたフレッシュでフローラルな辛口白。

 

「ルベスコ」は、ルンガロッティ社の旗艦となるワイン。サンジョヴェーゼ主体にカナイオーロを加えたソフトな果実味の赤ワイン。名前のとおり、ルビーの輝きに魅惑される外観でした。

ステンレスタンクで醗酵後、オークの樽で12か月、さらにセラーに12か月寝かせてから出荷されます。


 

赤ワインのルベスコで作ったリゾットには、羊乳から造る地元産ペコリーノチーズを使用。

コクがあって、私の一番のお気に入りでした。ワインもどんどんいけちゃいます。

 


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09060235.jpgデザートは、セミフレッド。

生クリームやメレンゲを加えソフトに冷凍させたイタリアの冷菓です。

グラッパに漬け込んだレーズンが添えられ、デザートワインの「ダルキス」との相性が抜群!

 

 


 

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CEOのキアラ・ルンガロッティさんがご挨拶に来てくださいました!

案内人の林茂さんとは、長いお付き合いのようです。

 

キアラさんは、ペルージャの大学で農業の学位を取り、ボルドーでも醸造コース で学び、早くからワインビジネスに携わっています。

モットーは、"maintaining, continuing,expanding "

伝統を重んじるがゆえに、その先に、様々な改革や実験への情熱がわき、また、発展に広がると、確信しているそうです。

CEOの仕事だけでも大変なのに、イタリアのワインツーリズム振興のための全国協会会長をはじめ、様々なワイン関連組織の役職もたくさん!

クラシック音楽への造詣も深く、ワインの仕事とともに世界中を飛び回っていたことが多かったそうですが、2007年にジョヴァンニ君が誕生し、休日はほとんど彼との時間を楽しんでいるのだとか。

 

 

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帰りに、2001年の「ルベスコ・リゼルヴァ」をいただき、部屋に戻って4人でグラスを傾けました。

1990年にDOCGに昇格した赤ワイン、トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァです。


サンジョヴェーゼ主体で、トスカーナ州を代表するキャンティとほぼ同じ品種だそうですが、ウンブリアの穏やかな気候を反映してか、とってもまろやか。

いきいきとしたルビー色で、タンニンも柔らかです。

 


 

バスの長旅の疲れを一気に忘れさせてくれる、エレガントなワインの香りに包まれ、今夜もぐっすりです。
 

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2009.07.10

21世紀の吟遊詩人たち

銀座の街角で人生を歌う

  • 「シャンソンは魂のルネサンス」という長坂玲さん

 運転手と花売り娘の恋の哀歓を描いたルネ・クレール監督の映画「巴里祭」が日本で公開されたのは、1933年(昭和8年)。原題は、フランス革命記念日の「QUATORZE JUILLET(キャトルズ・ジュイエ)=7月14日」。

 なんとなく華やいだイメージの日本語タイトル効果もあって、観客は大入り。以来、日本ではこの日を「パリ祭」と呼んで楽しむようになった。

 ただし、「フランス人に『パリ祭』といっても通じませんよ」と、パリの友人から指摘されたことがある。

 フランスで7月14日というとすぐに思い浮かぶのが、1789年のフランス革命の発端となったバスティーユ監獄襲撃の日。1年後の1790年7月14日が建国記念日である。今でこそシャンゼリゼ通りのパレードや夜空の花火など、お祭り騒ぎになっているが、ルーツをたどれば、国民の間に多くの犠牲者を出した暗い過去を持つ祝日なのだ。

 外国の革命記念日を祝うこと自体あまり例のないことかもしれないが、それだけ日本人のフランスへのあこがれが強かったのだろう。そして現在も、7月14日が近づくと、日本のあちらこちらで、大小様々な規模のシャンソンコンサートが開かれている。

 東京・銀座では、7月12日からの3日間、「銀座シャンソンうた祭」が開催される。日仏交流150周年を記念した昨年に続いて今年で2回目。

  • 昨年の第1回「銀座シャンソンうた祭」。歌っているのが長坂さん

 初日の12日午後1時からは、プランタン銀座正面口の特設ステージで、プロ・アマにかかわらずテープ審査を通った歌い手10人が自慢ののどを披露する。

 シャンソンは、13世紀ごろ、街角で民衆の心や思想を語る吟遊詩人に始まるといわれる。21世紀の吟遊詩人たちもまた、銀座の街角のこのオープンスペースで、一人ひとりの人生の喜怒哀楽を、歌詞にそしてメロディーにと重ねていくのだ。希望、哀しみ、人間愛、情熱。聴く側もそれぞれに、しばし自分の人生を振り返り、拍手で感動を伝える。

 「愛の讃歌」「オー・シャンゼリゼ」「人生は過ぎゆく」……。どこかで耳にしたことのあるメロディーが、7月14日には銀座の街角に流れることだろう。

シャンソンは魂のルネサンス

  • 「銀座シャンソニエ マダムREI窓」の店内からカウンターを臨んで

 「銀座シャンソンうた祭」を企画したのは、銀座8丁目で「銀座シャンソニエ マダムREI窓」を経営する長坂玲さん。東京藝術大学でクラシックを学び、ベルギー王立音楽院オペラ科を首席で卒業。欧州で8年間歌手活動をしたが、銀座で飲食業を営む父親の急逝で帰国、生活を考え、シャンソン歌手に転向した。

 フランス語でシャンソンを歌い、フランス語で生徒を教えることができる貴重な日本人のプロ歌手だ。

 「がむしゃらに突き進んだ若い時と違って、人生の泣き笑いを知り、今日も楽しく前向きに生きていることに素直にありがとうっていえるようになった。年を重ねると、シャンソンにはまる人、多いんですよ」という。「シャンソンは魂のルネサンス」が、長坂さんの持論である。

 ちなみに、「銀座シャンソンうた祭」の後半2日間、13日と14日の午後は、「銀座シャンソニエ マダムREI窓」が舞台になる。

本場フランスにシャンソンを再発信

  • 「銀座からシャンソンの伝統を再発信したい」と語る伊藤雅治さん

 そもそも銀座には、シャンソンの伝統があった。中心になったのは、銀座7丁目、日本のシャンソン歌手の登竜門として知られ、美輪明宏や岸洋子、金子由香里らが活躍したシャンソン喫茶「銀巴里」。

 1954年の開店以来、フランスの文化の香りを伝える粋な場所だった。閉店して20年近くになるが、入り口のあった階段近くには「元銀巴里跡」の小さな石碑が建ち、シャンソンファンにとっての“聖地”になっている。最近は、中高年に限らず、若い層の間でもシャンソンへの関心が少しずつ広まっているとも聞く。

 長坂さんのシャンソン教室の生徒で、うた祭実行委員会委員長を務める伊藤雅治さんは、こんな抱負を語ってくれた。

  • 銀座並木通りを見下ろす

 「フランスの本場でも、シャンソンの伝統をどのように継承していくかが大きな課題と聞きます。フランスの文化的背景を理解しようと努めながら、フランスの言葉でシャンソンを学ぼうとする日本人が老若を問わずこんなにたくさんいるのって、すごくありませんか? 伝統文化と最新の流行とが交錯する街、銀座から、シャンソンの素晴らしさを改めて見直し、本場の若者たちに向けて再発信していきたいのです」

 ところで、この秋、「シネスイッチ銀座」などで公開されるフランス映画「幸せはシャンソニア劇場から」は、採算が取れずに閉館したパリ郊外のシャンソニア劇場に思いを寄せる人々が集まり、数々の苦難を乗り越えて歌声を復活させる物語。フランスで大ヒットした。

 舞台は1936年、ナチス・ドイツの軍靴の響きが日々高まり、暗い空気に包まれた時代である。そうした中でも、芸人魂に民衆は惜しみなく拍手を送り、素晴らしい職人芸に驚嘆する。映画は、シャンソンの旋律がこんなにも人々を輝かせるものなのかと、改めて教えてくれる。

 さて、大人の街、銀座では、シャンソンがどんなムーブメントを起こしてくれるだろうか。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

 ◆銀座シャンソニエ マダムREI窓

 http://chansonnier.chanson-tokyo.jp/

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2009.07.06

イタリア縦断の旅から~その1

 6月初めのイタリアの旅からはや1か月。

ブログでもリポートすると予告していたにもかかわらず、帰国後もワインイベントが相次いで、なかなかご報告できずにいました。

来週には、旅の友との写真交換会+ワイン会も開催の予定・・・。

記憶が薄れないうちに、旅の連載を始めることにします。

 

5月31日。成田からまず向かったのは、南イタリアのナポリ。ローマ乗り換えの国内線が遅延したこともあって、ホテルに到着したのは真夜中でした。

風呂上がり、冷蔵庫から冷えた「ベローニ・ナストロアズーロ」を取り出してグビッ。

ぐっすり眠れました。

今回のワインの旅は、アカデミー・デュ・ヴァンで講師を務める遠藤誠先生の企画。

イタリアワインの第一人者、林茂さんが同行。なんとも心強いです。


最初の訪問ワイナリーは、テッレドーラ社。

ナポリのある南のカンパーニア州で、ワイン・ルネッサンスを常にリードしている名門ワイナリーです。テッレドーラとは、黄金の大地の意味。

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ナポリやサレルノ、アマルフィなどの海岸沿いの温暖な地域はリゾート地として有名だけれど、カンパーニア州全体でみると8割以上が山がちだそうです。

そう、ヴェスヴィオ火山だけではないんですね。

そして、ブドウ造りは寒暖差の大きい山間部で行われてきました。

 

ナポリから内陸に60キロほど、山を二つほど越えたアヴェッリーノ。

マロングラッセに使う栗の産地でもありますが、南イタリアを代表するDOCGの赤ワイン、タウラージで知られています。


タウラージといえば、16世紀ごろから続くマストロベラルディーノ社の存在が忘れられませんが、そこから分家したテッレドーラ社は同ファミリーの一員。1978年にタウラージをはじめとする畑を引き継ぎ、独自にワイン生産をスタートさせています。

ここでは、カンパーニアの伝統品種しか栽培・醸造されていないんです。

 

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タウラージのアリアニコ種をはじめ、フィアーノ種やグレコ種など。

ギリシャ伝来の良質な品種があるのだから、何も国際市場で人気だからといってシャルドネとかカベルネソーヴィニヨンとか外来品種を取り入れる必要はない、との発想。

土着品種の見直しは、地産地消の考え方につながります。

 

 

  

テッレドーラ社の国際部門の営業を担当するルーチョさんはマストロベラルディーノ家の10代目。

祈りの場としての教会跡が残る畑、そして醸造所内を案内していただいてから、 


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いよいよ試飲です。

 

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まずは、カンパーニア州で一番有名(?)な「ラクリマ・クリスティ・デル・ヴェスーヴィオ」(2008年)。

 

09060110.jpgこのワインにまつわる逸話も有名です。

天国の土地の一部を持って逃げようとしたサターンがヴェスヴィオ火山の麓で落としてしまい、そこにナポリの街ができました。

ところが、街の人々が悪の限りを尽くすので、天から見ていたキリストが涙を流し、そこにブドウの木が生えたそう。

そこから「ラクリマ・クリスティ」(キリストの涙)と名付けられました。

 

コーダ・ディ・ヴォルベ(キツネの尻尾の意味)種から造られる白はフルーティーでミネラル感を感じるスタイル。

ピエディ・ロッソ(ハトの赤い脚の意味)種主体の赤は、とっても果実味豊かでした。

 

続いて、DOCG3本です。


09060111.jpg古代ローマ時代からあったという白ワイン、「グレコ・ディ・トゥーフォ」(2007年)は、2003年からDOCGに昇格。

名前から推測できるようにギリシャ伝来種で、トゥーフォという軟らかい凝灰岩の土壌で育ちます。

濃い目の麦わら色で、ピーチやマンゴーなど南国のフルーツのフレッシュな香りがしました。


「フィアーノ・ディ・アヴェッリーノ」(2008年)も、2003年からDOCGに昇格した白ワイン。

フィアーノ種は、古代ローマ時代、アピ(ハチ)がよって来ることからラテン語でヴィティス・アピチアと呼ばれ、変化していったのだとか。

マスカット、ヘーゼルナッツの香りに、若干苦味がアクセント。

 

最後に、赤ワインの「タウラージ」(2003年)。

1993年に、南イタリアでは初めてDOCGに認められたワインです。

主品種のアリアニコ種は、古代ローマ時代にフェニキア人がギリシャから持ち込んだ品種。2003年の「タウラージ」は、100%アリアニコ、2年間の樽熟と聞きました。

濃いルビー色で、スパイス香、タンニンもしっかりした力強いワインでした。ピエモンテの長熟ワイン、バローロやバルバレスコの弟分ともいわれています。


お昼は、テッレドーラ社の招待ランチをいただきました。


09060112.jpgモッツアレッラにオリーブ、生ハム、パスタなど、当たり前だけれど、思った通りの"イタリアづくし"。 

 

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  09060120.jpgワインは「アリアニコ」(2007年)。

あまり日本ではお目にかかりませんが、果実味と木の香りがやさしく、トマト味のパスタや肉料理との相性が抜群。

 


 

さて、閑話休題。ミニ知識をいくつか・・・


ボンペイ遺跡の貴族別荘跡からは、ワインの貯蔵などに使われた壷、アンフォラが大量に発見されています。ワインの歴史を紐解くには欠かせない場所です。

そこで、マストロベラルディーノ社は、国の遺跡管理局からの依頼で、古代の品種を8種類実験的に栽培・醸造しており、販売も始まっているそう。

売り上げは、発掘現場の修復作業に当てられているといいます。

貯蔵や運搬に使われたアンフォラは、高さ50センチほどで、表面には美しく装飾されているものもあったようです。

古代ローマでは単位としても用いられ、1アンフォラ=25.79リットルと定められていました。
ちなみに、現在メールアドレスなどに使う「@(アットマーク)」はアンフォラに由来するともいわれています。アンフォラの形を記号で「@」と記したというわけです。


また、キッスの習慣はワインから? というエピソードも残っています。

古代ローマ時代、ワインは超貴重な飲み物で、財産と考えられていました。

そして、女性はワインを飲むことを禁じられていました。ある時、「主人が外出したあと、妻たちはこっそりとワインを楽しんでいるようだ」とのウワサが広がりました。

夫たちは一計を考え、帰宅したときに妻の口の周りをチェックするために、キッスを試みたというのです。挨拶としてのキッスはここから始まったという、イタリアらしいお話でした。


夕刻、ホテルに戻ると、大雨に降られました。


それでも、クリントン元大統領ら熱烈なるファンが多いといわれる老舗ネクタイ店マリネッラ(MARINELLA)をのぞきに、街に繰り出しました。店内は大雨にもかかわらず、満員御礼状態でした。

09060124.jpg90ユーロ、さすがイタリア、発色が素晴らしい! 旦那に紫色のを1本買いました。


近くのバールでしばし雨宿り。レモンチェッロをいただきました。

雨が上がってきたので、サンタルチア港に向かって、海岸沿いをぶらぶら。

空はどんよりしていましたが、雨上がりの歩道と潮風が心地よかったです。

 

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夜はピッツェリアで、カリカリのブルスケッタと本場もちもちのマルガリータをいただきました。

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ピッツアの向こうのお茶目顔は、旅のリーダー、遠藤誠先生、です!

ワインはもちろん、地元の「アリアニコ」で。


伝統品種の味わいに、発見、発見! の1日でした。

 

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2009.07.04

プロヴァンスのロゼも奥が深い!

銀座7丁目「"V."de Bistro Vionys」のマリアージュの会に出掛けました。


今回のテーマは、地中海のリゾート地、フランス・プロヴァンス地方。

マルセーユからニースに至るコート・ダジュール一帯に広がるワイン産地です。梅雨明け後の夏の強い日差しを待ち遠しく思い浮かべながら・・・。


プロヴァンスといえば、フレッシュでフルーティーなピンク色のロゼワインが超有名。魚介類と夏野菜をたっぷり使った郷土料理も期待できそうです。

 

ワインリストは以下の通り。
1)NMサブラン・ブリュット・オリジン (ドメーヌ・リステル)
2)2006フラン・ド・ピエ・グリ・ド・グリ・ロゼ (ドメーヌ・リステル)
3)2007バンドール・ロゼ (ドメーヌ・タンピエ) 
4)2006コート・ド・プロヴァンス・ロゼ (ドメーヌ・コマンドリー・ド・ペイラソール)
5)2006コート・ド・プロヴァンス・ブラン (シャトー・サン・バイヨン)
6)2006バンドール・ブラン (ラ・バスティード・ブランシュ)
7)2006ヴァン・ド・ペイ・デュ・ヴァール・メルロ (ドメーヌ・ド・トリエンヌ) 

 


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最初はシャルドネが主体の地元産ヴァン・ムスー。

砂質土壌が広がる南フランスのカマルグ地方にヨーロッパ最大のワイン畑を所有するといわれるドメーヌ・リステルのもの。

リステルは、企業姿勢として地域独自の自然環境保護を掲げ、また、ヨーロッパにおける「知的ブドウ栽培の先駆者」ともいわれているそう。


ピーチや白い花を思わせる香り、フレッシュでいきいきとした躍動感を感じさせるスパークリングです。「少々甘めに思われるでしょうが、食前酒としては楽しめるのでは」と、オーナーソムリエの阿部誠さんの解説でした。
熟したトマトをくり抜いた中にバジル風味の押し麦が入ったおいしいアミューズをいただきました。

 

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続いて面白い体験をしました!!

なかなか機会がなかった、ロゼワイン3種類の飲み比べです。

 

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1つめの「グリ・ド・グリ」は、最初のスパークリングと同じ生産者のロゼワイン。

品種はグルナッシュ100%で、やさしいアタックで、ふくよかなボリューム感が広がります。


2つめは、2年前に公開された映画「プロヴァンスの贈りもの」に登場してから大ブレイクのドメーヌ・タンピエの「バンドール・ロゼ」。このドメーヌ、著名なワイン評論家、ロバート・パーカー氏が「ワイン・バイヤーズ・ガイド」で、南仏の"5つ星ワイン"に挙げた4つのうちの3つを占めるなど、評価が上がっています。

第二次大戦後、バンドールのワインをAOCとして認知させるのに尽力したリシュアン・ペイロー(バンドールの父とも)がオーナーだったのですが、1990年代後半から業績が低迷。2000年以降、ダニエル・ラヴィエ氏が改革を任され、かつてのタンピエの酒質を復活させたのだといわれています。
品種は、ムールヴェードル55%、サンソー25%、グルナッシュ20%。スパイスの印象が強く、力強いロゼでした。


3つめの「コート・ド・プロヴァンス」は、赤い果実の風味の軽やかなロゼ。サーモンピンクの色が濃い目で美しく、パイナップルのような南国の酸味と甘みがさわやか。品種は、グルナッシュ、サンソー、ムールヴェードルのブレンド。

 

私は、スパイシーでコクのある「バンドール・ロゼ」が好みでした。


ロゼに合わせて、前菜は、野菜の宝庫プロヴァンスから野菜の詰め物3種。赤ピーマンにオレガノを効かせた豚の詰め物、カボチャのタルト、ズッキーニにエビの練り物を詰めてオリーブのタプナードを添えたもの。

 

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メインディッシュは、

待っていました! ブイヤベースです。

伊勢エビ、ホウボウ、イトヨリ、ホタテ・・・。カブやブロッコリーなど野菜もたっぷり。そして、ニンニクのペーストがアクセントに。


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白ワインの品種は、「コート・ド・プロヴァンス」がロール90%、ユニブラン10%。

「バンドール・ブラン」がクレーレット47%、ユニブラン40%、ブールブラン8%、ソーヴィニヨンブラン5%。

どちらもまろやかな酸味を包み込むほど果実味が豊か。さすが、南仏の味わいです。前者にはハーブ、後者にはナッツのニュアンスが加わります。


前者の造り手、シャトー・サン・バイヨンは、プロヴァンスの丘、地中海にほど近い場所にあります。 「サン・バイヨン」の名は、3世紀、ニームのアリーナでライオンと戦わされ殉教したカトリック信者に由来するとか。

この地域ではローマ時代からブドウ栽培が始まっていたようですが、1970年代にすべて植え替えられたとか。現在は、最新の醸造設備を使用したヴィオディナミを実践、ブドウの収穫量を抑え、自然界の働きに逆らわないグラヴィティ方式を取り入れていることでも知られています。


 

さて、最後に、赤ワインをいただきました。ドメーヌ・ド・トリエンヌの100%メルローの赤ワインです。


09070403.jpg聞けば、あのドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティとドメーヌ・デュジャックのオーナーが、1990年、南仏の地で、ワイン造りの新たな可能性を求めて築いたワイナリーだそうです。


エクス・アン・プロヴァンスの東南、海辺から30キロほど内陸に入った標高450メートルのロジ・ド・ナン。

ここは、古代エトルリア人がブドウを植えてから何千年もの間栽培が続けられてきた歴史ある場所。約40ヘクタールの畑に、シャルドネ、ヴィオニエ、シラー、メルロ、カベルネソーヴィニヨンが育てられています。

カベルネソーヴィニヨンとシラーをブレンドし、ヴァン・ド・ペイのカテゴリーで造るなど、新たな挑戦を続けているのです。


いただいたメルロは、ブラックベリーのリキュールやシナモンなどの香りが広がり、タンニンもまろやか。また、旧樽のロースト香が加わって、なんとも穏やかな味わい。

ボルドー好きといわれるジャック・セイス氏(デュジャックのオーナー)が楽しんで仕上げている、ような気がしました。

 

トリエンヌのワインは、南の太陽をいっぱいに浴びたブドウらしく、果実味がフレッシュでピュアな印象。値段も千円台からと買いやすいのがうれしいですね。

カベルネとメルロ、それにシラーの最上のキュヴェを選んでブレンドされている「サントーギュスト」を今度見つけたら、ぜひ買ってみたいと思います。


デザートは、冷たいヌガー・ド・プロヴァンス。ハチミツソースでいただきました。

 

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プロヴァンスはカジュアルなイメージが強かったけれど、ロゼ一つをとっても奥深いし、トリエントのように南仏ならではの挑戦も興味深いし・・・。

今回もいろいろと発見がありました!

だから、ワインの世界って、楽しいんですよね。 

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2009.07.03

銀ブラしながら旅行気分

ひと味違う「ふるさと」巡り

  • シーサーも歓迎してくれる「銀座わしたショップ」

 店内に一歩入ると、そこには南国の市場が広がっていた。

 パイナップル、パッションフルーツ、マンゴー、完熟ライチにシークワーサー。種類豊富なスパム缶をはじめ、黒糖ココアベースのパパイヤ入り沖縄限定黒カレーの包みにも、食指が動く。

 沖縄県物産公社が銀座1丁目で展開する赤い門構えの「銀座わしたショップ」。「わした」とは、沖縄の言葉で「わたしたち」の意味という。東京の空はどんより曇っているけれど、一足はやく梅雨明けした沖縄の青い海が目の前に広がっているようで、うきうきした気分になってくる。

 3丁目にある職場から近いということもあって、ときどきお邪魔して、私は南国の雰囲気を楽しんでいる。販売員さんも沖縄出身の方が多く、とっても陽気なのだ。

 必ず買うのは、二日酔い予防のお守りにしている「醗酵ウコン粒」。それに、「ちゅらら」シリーズのウォータータイプの洗顔料もお気に入り。石けんいらずのさらりとしたタイプで、沖縄の海洋深層水ミネラルに、月桃エッセンス、アロエベラエキスがブレンドされていると聞くと、もう美肌が約束されているような気がするではありませんか?

 このように、銀座・有楽町界隈には、全国の「ふるさと」が集まっている。地方自治体が、地元特産品の販売をはじめ、観光やUターン・Iターン情報の提供などを目的に出店しているアンテナショップ群である。

  • (上)宮古島ドラゴンフルーツやわらかキャラメル、(下)石垣島産紅芋グラッセ

 それに目をつけたJTB有楽町支店の橋本治男支店長(当時)が音頭を取り、各店の連絡組織をつくって「ふるさとアンテナショップガイド」の第一弾を送り出したのは、5年ほど前になる。そのつながりは現在の高井晴彦支店長に受け継がれ、いまは、沖縄をはじめ、北海道、秋田、長野、富山、和歌山、鳥取、大分、鹿児島など、18道府県のショップが掲載されている。

 銀座4丁目の交差点を中心にした約1キロ四方の地図が、これだけ豊かな地方色で彩られているとは……。「地方にとって世界の銀座の魅力は大きい。最先端の流行に触れつつ、ローカルな情報を直接発信していけるのですから」と、高井さんはいう。

 背景には、食の安全・安心や地産地消への関心の広がり、海外でも大人気のニッポンの味の再発見、また、東国原英夫・宮崎県知事のメディアを使ったご当地グルメPRへの注目度の高さなどもあるだろう。

夏スイーツで沖縄を満喫……

  • (左)東村パイナップルコンフィチュール、(右)沖縄ラム酒ケーキ

 そんなアンテナショップとプランタン銀座のコラボレーションも、6月の「Nipponの夏スイーツ」企画からスタートしている。第一弾として参加していただいたのは、沖縄県。沖縄の食材を用いた15種類のスイーツが勢揃いした。

 スイーツに注目してみると、私にとってこれまた新たなおいしい発見があった。

 「沖縄宮古島ドラゴンフルーツやわらかキャラメル」は、ドラゴンフルーツの甘酸っぱさに、種のプチプチッと弾ける食感がアクセント。「石垣島産紅芋グラッセ」は、まったり紅芋に自然なやさしい風味の黒糖がベストマッチ。パイナップル好きの私にとっては、「東村パイナップルコンフィチュール」もはずせない。休日の朝、バゲットに塗って、スパークリングワインといただいていたら、あっという間に……でした。

  • 「おいしい山形プラザ」では、地元野菜に注目

 そして、私の一押しは、「沖縄ラム酒ケーキ」。生地はふんわり、しっとり、真っ白なもち肌のような仕上がりが何とも驚きである。南大東島のサトウキビで造るグレイスラム社のラム酒を使用した芳醇な味わいは、大人だけのぜいたくといえそうだ。

 グレイスラム社の金城祐子社長は、小池百合子元環境相時代に発足した「環境ビジネスウィメン」でお仲間だった。産業廃棄物扱いにされていたサトウキビの絞り汁を主原料に、環境に配慮した食品開発に力を入れる島の女性社長である。ケーキは冷蔵庫でしばらく寝かせたら、味わいがマイルドになり、さらにおいしくなった。

 現在プランタン銀座で第2弾として展開中なのは、和歌山県とのコラボレーション。大正15年創業、梅に携わって百年という会社が、代表品種の南高梅を使って造り出した梅スイーツが並ぶ。オリジナルの梅ジャムを生地に練り込んだもっちり食感のマシュマロを、銀座にいらしたら一度お試しを。

おいしい地方を食べつくす

  • (上)月山のタケノコ、(下)山形のなっともづ

 さて、アンテナショップガイドには掲載されていないけれど、最近オープンして評判の銀座一丁目にある山形県のアンテナショップ「おいしい山形プラザ」にもぜひ足を運んでみたい。

 2階に併設するのは、地産地消レストランとして知られる鶴岡市の「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフがプロデュースした店。1階の地元野菜コーナーには、ゴボウアザミやアオミズ、アカミズなど、東京人には珍しい野菜がズラリ。庄内産の月山タケノコをゲットして、さっと炙っていただいた。期待した以上においしかったのが、尾花沢産のひめもちに南蛮納豆を包んだ「山形のなっともづ」。納豆のピリから具合がちょうどいい。

  • 「ぴょんぴょん舎」ではじゃあじゃあ麺に挑戦しよう

 アンテナショップめぐりの話題を書きながら、やはり食べ物中心になってしまうのは、私がやはり食いしん坊だからです。

 というわけで、締めは、銀座4丁目の路地裏にある、盛岡冷麺の専門店「ぴょんぴょん舎銀座百番」で。

 午後3時を過ぎていたら、じゃあじゃあ麺がおすすめだ。うどんをゆでるのに時間がかかるのだろう。ランチタイムの繁忙時間帯には出してくれない。ルーツは中国大陸の炸醤麺というが、熱々のうどんに黒ゴマ風味の肉味噌がのっており、私は、コショウを3振り、おろしニンニク少々とラー油多めでいただくことにしている。食べ終わったら、「チータンタンお願いします」と言うと、和風だしのおいしいスープを器に注いでくれる。

 銀ブラしながらこんな小旅行が楽しめるなんて、ちょっとお得な気分になりませんか? 

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)