2009.06.29

ギリシャ、トルコ、グルジア・・・

私のワイン講座では、3か月に1回、教室を飛び出して、プランタン銀座の「サロン・ド・テ アンジェリーナ」で、料理とワインのマリアージュを楽しんでいただいています。


毎月テーマを、生徒さんにリクエストしていただいているのですが、今回は、「今まであまりお目にかかったことのないような変わったワインを飲みたい!」・・・でした。

 

こりゃ、難しい。
1か月前からワイン選びにプレッシャーを感じていました。

 

タイトルは、《ちょっと変わった生産地・品種に挑戦!》に決定。
ギリシャ、トルコ、グルジア、ハンガリーのワイン4本を中心に・・・

 

09062901.jpg左から、
 ギリシャ「レッチーナ・オブ・アッテカ」(コウルタキ)
 トルコ「カッパドキア 岩のワイン」(トウラサン)
 ハンガリー「2004 エグリ・ビカヴェール」(フンガロヴィン)
 グルジア「サペラヴィ」(GWS社)

 

そして、最初はイタリア白、最後はフランス赤で締めるという趣向にしました。

アンジェリーナで腕をふるう塩川シェフも、このユニークなワインのラインナップに、アイデアたっぷりの料理を用意してくれました。

 

まず、ワインを飲む前に一口


09062902.jpgトマトのジュレと桃の冷たいスープです。桃の甘みとトマトの酸味が口に広がり、夏を感じますね。

 

最初のワインは、イタリア・リグーリア州の2006 リヴィエラ・リグーレ・ディ・ポネンテ・ピガート(ラ・ロッカ・ディ・サン・ニコラオ)。


09062903.jpg世界遺産にも登録されているリヴィエラは、北はアルプス山脈を臨み、南はティレニア海に面した観光地。地中海性気候で、山と海からの影響を受ける土壌から、高品質なブドウが収穫されています。


品種はピガート100%。麦わら色の外観、青リンゴにハーブのニュアンスもあり、ナッツの苦味がアクセントになって、コクもあり、おいしい白ワインでした。アルコール度数は13%と意外に高いんですね。


09062904.jpg料理は、魚介類のマリネ・サラダ仕立で、オマール海老、ハモ、トコブシが並びます。

 

 

ギリシャの「レッチーナ・オブ・アッテカ」は、現地ではポピュラーな松ヤニを加えて風味付けした伝統的な白ワイン。

サヴァティアーノというギリシャの主要品種を使います。ちなみに、固有品種は300種以上とか。 


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ギリシャのワイン造りの歴史は古く、紀元前1600年ころのミノア文明の時代のものとして、クレタ島のクノッソス宮殿近くのヴァシペトロには、王家のワイン醸造場跡が残っているそうです。
ああ、一度訪ねなければ・・・。


松ヤニ風味のワインは、最初は木の皮のような苦味が感じられましたが、ズッキーニの花やトマト、黄ピーマンなどシンプルな旬野菜を盛ったギリシャ風サラダと合わせると、すっきりさわやかな味わいに。青い地中海の風を想像させてくれました。

 

 

お次は、奇岩で有名な世界遺産トルコのカッパドキアをモチーフにした「岩のワイン」。


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カッパドキアは、トルコのほぼ中央に位置し、標高1000メートルを超えるアナトリア高原中央部に広がる岩石地帯。

3世紀半ば、ローマ帝国の弾圧を逃れた修道士たちが移り住み、地下に信仰の場をつくり上げました。洞窟は年間を通じて12-13度に保たれることから、ワイン貯蔵にも優れていたのです。


オキュズギョズ、ボアズカレという聞き慣れない品種の軽めの赤ワイン。香辛料をちょっぴり効かせたナスのムサカといい相性でした。
ユニークなボトルがなかなか人気で、生徒さんの一人が持ち帰られました。

 

お次は、グルジア・カヘチ地方の「サペラヴィ」。サペラヴィは、グルジアの土着品種です。


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熟したブラックチェリーの味わいを、軽やかなタンニンがやさしく包み、バランスがよい辛口の赤でした。オークの香りもしっかりあって、国際コンクールでも金賞受賞というのにも納得です。

メルローにたとえられることもあるそうですが、それはタンニンの柔らかさからでしょうか。

 

グルジアは、コーカサス山脈の南、黒海とカスピ海の間にあって、北はロシア、アルメニア、アゼルバイジャンに接しています。

5000年以上前、コーカサスの山の湧き水で育った最古のブドウの原種で生まれたのがグルジアワインで、グルジアは「ワイン発祥の地」ともいわれています。
このワインがチグリス・ユーフラテス川を下ってエジプトに渡り、クレオパトラが一人グラスを傾けて涙を流したとの逸話も。グルジアワインが「クレオパトラの涙」と呼ばれる由縁のようです。


長寿大国グルジアでは、大地の恵みから得られるワインが健康に寄与しているのでしょうか。
料理は、ノルウェーサーモンのポワレ・赤ワインソース、ポワローのクリーム煮添え。

 

 

お次は、ハンガリーの「エグリ・ビカヴェール」。「牡牛の血」という名の赤ワインで、濃くて深い味わいといわれますが、意外に軽やか。

 

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ベリー系の果実の風味にスパイシーさが加わり、タンニンもなめらか。

ハンガリー北部の有数のワイン産地、エゲル産。ケークオポルトー、ケークフランコシュがブレンド。料理はやはり、肉でしょうね。


軽くスモークしたフランス産マグレ鴨にウドのサラダ添え。サフランで煮たきれいな黄色の小カブが柔らかくておいしかったです。

 

 

最後は、やはり好みのフランスワインで締めさせていただきました。南仏ラングドックを選びました。

2005 ロペラ・ミネルヴォア ルージュ(シャトー・ヴィルランヴェール・ジュリアン)


09062913.jpgシラー65%、グルナッシュ30%、ムルヴェードル5%。

果実味がいきいき、ローズマリーなどハーブの香りが南仏を感じさせます。

 

19世紀に、創業者エティエンヌ・ジュリアン氏が地元オード県に初めて鉄道を敷き、その収益で買ったのがこのシャトー。4代目は醸造の近代化に力を注ぎ、ミネルヴォアをAOCに昇格させた功労者。現在の所有者、ミシェル・ジュリアン氏は5代目。


「オペラ」という名前は、パリのオペラ座に使われている大理石が産出する地域なので。ブドウ畑にも大理石が含まれているらしいです。


09062914.jpg料理は、牛ササ肉の柔らか煮ソテー・マスタードとスパイスの香り焼き。アバラ骨に付いた肉、それもモモの付け根側の部分の肉だそうです。

 

 

最初のイタリア・リグーリアの白ワインと、最後のフランス・ラングドックの赤ワインは、プランタン銀座のワイン売場でも取り扱っています。2000-3000円台です。

 

デザートは、初夏らしく、抹茶のソフトアイスと旬果のカクテルゼリー。

 

09062915.jpgごちそうさまでした。
今回は歴史や地理のお勉強ができて、資料をそろえた私もとっても楽しかったです。


 

なお、読売・日本テレビ文化センター町屋(荒川区)の講座「ワインのある生活」では、7月期の受講生を若干募集しています。毎月第4金曜日午後7時から。体験受講も可。電話03-3802-7115でお問い合わせください。

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)