2009.06.19

達人がお勧め、銀座の手みやげ

選ぶ基準は「私が好き!」

  • 手みやげ達人の甲斐みのりさん(エコールプランタンで)

 家族に、知人に、お世話になった方々に、お礼や感謝の気持ちをこめて、ちょっと気の利いた手みやげを選ぶとき――自分のセンスや心配りが試されているようで、結構緊張することって、ありませんか?

 「これ、銀座で買って来ました!」と言って渡すと喜ばれることが多いのだけれど、銀座には名店が多過ぎて、選ぶのには本当に難儀する。

 文筆家で、「女性の永遠の憧れ」をテーマに雑貨の企画なども手がける甲斐みのりさんは、手みやげの達人。プランタン銀座のカルチャーセンター「エコールプランタン」で、お話を聞く機会があった。

  • 甲斐さんが選んだ銀座手みやげ。添え書きの便箋もポイントです

 アラサー世代の甲斐さんは、子どものころから大のお菓子好き。

 「中身よりも、お菓子の入った袋や箱、紙やリボンを欲しがり、鳩サブレーの缶に入れて大切に集めては、時々取り出して眺めたり、包み紙で封筒を作ったり。お菓子の図鑑が一番の愛読書でした」

 静岡から大阪の大学へ進学。そのコレクター癖は、京都暮らしで老舗巡りが日課になり、さらにエスカレートする。

 「甘くておいしいから好き。形や色がかわいいから好き。素材や名前の由来を知ったらなおいとおしくって。お菓子探しをしているとどんどん興味が広がり、楽しくて、自分だけで独占しているのがもったいない気持ちになってくるんです」

 この喜びを、もっと多くの人と分かち合いたいとの思いから、手みやげへの関心も強まっていった。

  • 静かな路地裏にある「木挽町よしや」

 手みやげは、自分の気持ちを紹介するもの。だから選ぶ基準は、「私が好き!」でいいのだという。「短い手紙を添えれば、もっとステキになりますよね」

 銀座には、「デパ地下も含めると、数え切れないほど手みやげ向きの店がある」(甲斐さん)けれど、あえて6品を選んでもらったところ……。

 1)千疋屋総本店の「くり抜きゼリー」

 2)プランタン銀座本館地下2階にあるアールハートのハート型ケーキ「ロイヤルハート」

 3)洋菓子舗ウエスト銀座本店のクッキー「ヴィクトリア」

 4)資生堂パーラーの「チーズケーキ」

 5)銀座三越2階にあるラデュレの「マカロン」

 6)木挽町よしやの細工菓子「ねりきり製ミニチュア果物」

 その一つ、木挽町よしやを久しぶりに訪ねてみた。

焼き印入りオリジナルどら焼き

  • いつも笑顔を絶やさない「よしや」の主人、中村良章さん

 歌舞伎座に近い、銀座東3丁目交差点あたり。江戸開府当時は海辺で、船から木材を運び出すポイントだった。江戸城修築の時、木挽き職人を住まわせていたことから「木挽町」という町名が生まれた。戦後改称されたが、付近には、いまもこの江戸地名を冠する老舗が少なくない。

 手入れの行き届いた鉢植えの緑に誘われて、ふらりと路地に入ると、「どら焼き」の黄色ののぼり旗が目印だ。

 同店の主人、中村良章さん(60)が、変わらぬ笑顔で迎えてくれた。

 大学で機械工学を学んだ中村さんだが、卒業後、家業の和菓子工房を手伝った。金沢出身の父親は14歳で家出し、上京して一旗揚げようと、銀座に工房を開いた。随分と繁盛したが、バブル崩壊後は商売も先細り。中村さんは、老舗和菓子店でアルバイトをしたり、きこりをしたりで食いつないだ時期もあった。

  • 店で預かっている焼き印が壁にずらり

 「銀座で開いた親父の夢を消すまい」と頑張って、工房跡に「よしや」をオープンしたのが10年前。

 「当時たまたまテレビで東大寺の瓦の葺き替え作業を見て、瓦の裏に『よしや』と屋号が入っていたのを発見。店の名前はこれだ!って思ったのね。僕の名前も良章(よしあき)だし、ちょうどいい」

 団子や細工菓子などで人気店になり、特に食品サンプル好きな外国人客にもうけて、ニューヨークタイムズ紙でも大きく紹介された。

 「それがね、今はどら焼き屋のおやじになっちゃってね」と笑う。

  • ほどよい甘さのどら焼きが大人気

 客が自らデザインした焼き印を注文し、それを使って名前入りのオリジナルどら焼きを作ってくれるのである。1個110円。ほどよい甘さのこしあんをふんわり包むクリーミーな皮の風味がやさしい。

 結婚や出産のお祝いにという個人客から、営業マンが社印を入れて取引先に配る企業まで。また、歌舞伎役者に演歌歌手、人気の男性ダンスユニットなど、芸能界にもファンが多い。現在店で預かっている焼き印は千本以上にもなる。

 一日千個焼くことも、たびたび。先日、二千二百個の注文を受けた時には、さすがに腱鞘炎になった。

「今のところ、他の和菓子に手が回らないんだよ」

 そう話しながらも、「先日、十二単をテーマにしたお茶席の菓子の注文が入ってさ。道具づくりから始めるから、出来上がりをあれこれ想像していくと、楽しくて仕方ないねえ」と、頬を緩ませた。

 やはり中村さんの中にある、和菓子職人のDNAがうずくのだろう。

 ご主人にちょっと余裕ができたら、母の誕生日用に、愛らしい細工菓子を注文したいと思う。

 (プランタン銀座取締役・永峰好美)

◆甲斐みのりさんのホームページ

 http://www.loule.net/index.html

◆木挽町よしや

 東京都中央区銀座3-12-9 電話03-3541-9405

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永峰好美のワインのある生活

<Profile> 永峰 好美 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。プランタン銀座常務取締役を経て、読売新聞編集委員。『ソムリエ』誌で、「ワインビジネスを支える淑女たち」好評連載中。近著に『スペインワイン』(早川書房)